お前にふさわしいソイルは決まった!!   作:小此木

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第33話

 

 

 

以前から指摘されていたことだが、片腕となり星霊の鍵を失ってしまったルーシィの件だ。

 

「…ルーシィ、俺と同じように、周りにある魔力や魔素から〝星霊の鍵〟とやらは精製できないか?(そうそう、ルーシィちゃん。俺みたいに空気中の魔力やら魔素やらを指先に集中したら、鍵って作れねぇの?)」

「無理に決まってんでしょ!こちとら普通の魔導士じゃい!!」

「…なんだ、無理なのか(あー、やっぱ無理か)。」

「風の期待を裏切るルーシィには、失望したんだゾ。」

「えっ、何で私が悪い事になってるのよ!?」

 

このまま行けばルーシィは、これから迎え撃つ、或いは攻め込んで打倒する黒龍(アクノロギア)との戦闘で、この拠点で留守番役になってしまう。

 

「だが今後、私やユキノ、ソ…エンジェルでも太刀打ちできないような相手が出て来るやもしれん。ルーシィを守りながら戦闘を行うと云うのは恐らく無理だ。なので、決戦の際ルーシィだけこの拠点に残すと云う手m「それだけは絶対お断りよ!!」フ、予想通りの答えだ。」

「置いてきぼりなんて、絶対に嫌!やっとの思いで過去まで来て、皆が必死に戦っているのに私だけ安全な場所でのうのうと生き永らえているなんて絶対耐えられない!!」

 

それは、壮絶な未来を知り、その未来を変える為過去に来たルーシィの願い。

 

「私も連れてって。私が見てないところで、皆が死んでいくのなんて嫌よ!運命だろうが、天命だろうが、私がそんなものたたき壊してやるんだから!!」

「…碌に戦えないのに?」

「ぐうの音も出ない正論言うのは止めてよカグラ!?」

 

命尽きる最後まで仲間(無論、ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)と未来から来た自分を助け、匿ってくれたジェラール率いる魔女の罪(クリムソルシエール))と、目の前にいる自分が過去に戻った事でこの世界に招いてしまった黒き風達の未来を見届ける事。

 

「…そう言えば、()の技術ではどうだ?」

()って…あぁ、ワンチャンあるかもしれねぇな。)

「えっ、何か手があるの!?」

「…手だけに?」

「ユキノ、そう言うこと言わないでよ!?」

 

 

 

■□■□

 

 

 

「よう、久しぶりだな嬢ちゃん!」(黒き風アホ〇ルモード:努力の結果30分ぐらいなら喋れる)

「ハイハイハイ!ブラ…風、久しぶりです!()()()()までよく来ましたね。そ・れ・も!3人も女性を連れて…ハッ!ま、まさか(わたくし)に美の伝道師を再開させるために……おおっと、()()でも〝貧乏〟の()じゃ御座いませんよ!!美貌の美、美人の美、美形の美の()の事でございます!ハイハイハイ!!私が独自に開発した〝美の〟ダイエット食品『メタモちゃん』お一つどうですか?」

「いらn「何で、()()()()()()()にいるのよー!?」お前ら知り合いだったのか?」

「…ハイハイハイって、貴女、大手ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)のルーシィさんじゃないですか!?(わたくし)、貴女様とほとんど面識ないんですけど何故驚かれているんです?こっちの方が驚きたいんですけどー!?」

 

()()

 

「…そうなのか。おぉっと、話が逸れたな。あの町に行ったら、お前()いなくなっていて詳しく聞いたら、この()()()に籍を置いたって聞いてな。いったいどう云う風の吹き回しだ?」

「ハイハイハイ、そこは奥にいるフィンガースに直接聞いてくださいな。」

「うん?まぁ、分かったぜ。フィンガースのとこ行ったら、戻ってくるから。今日は、ダフネの嬢ちゃんに用があるからな。」

「ハイハイハイ、分かったわ…ま、貴方達の驚く顔が目に浮かぶけどね。(小声)」

 

何を隠そう、

 

「ルーシィ、一体どうしたんだゾ?ダフネの顔を見て驚いて。」

「…この世界ではどうか知らないけど、眼鏡にテンガロンハットの女ダフネに私とナツ、グレイはドラゴン関係で手痛くやられたことがあったのよ。機械仕掛けのドラゴンだったけど。」

「ああ、お前らもあのヘンテコなトカゲに襲われたのか?」

「って、()あのオンナに〝ナニ〟されたんだゾ!?言えないようなことだったら、此処からUターンして蹴り殺してくるんだゾ!!」

「貴様の()では無い!だが、後処理は任せろ!私の剣で跡形も残らないよう刻んでやる!!」

「いやいやいや、そんなことしなくてもいいぜ。昔の話だ。この先で待ってるっていう奴、フィンガースを襲ってた彼女のトカゲ共を殴り飛ばしてお灸を添えただけだから。」

「な、殴り飛ばしたってまさか…」

「ロボットトカゲ君は思った以上に脆かったから、ダフネの嬢ちゃんを殺さないようにするのに神経使ったわ。」

「「流石風(殿)だゾ!!」」

「…アンタらの話聞いたら、突っ込むことすら疲れるわよ。」

 

ギルド

 

「ようこそお越しくださいました。黒き風殿。」

「我ら、ギルド員全員貴方を歓迎します。」

「へっ、歓迎だぁ?此処のクソガキ(ギルドマスター)を蹴り飛ばして出てった奴に言う言葉じゃねぇぞ。」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)の本部。その最奥にフィンガースはいるらしい。

 

「…それでも、です。我らに別の道を示して下さった。これからは、お嬢を筆頭にこのギルドは変わっていきます。自己紹介が遅れました。お…私はスティング。」

「俺はローグ。」

「「ッ!?」」

<<ギン!!>>

 

最奥の部屋、ギルドマスターの部屋の前で殺気と怒気、そして魔力が急激に上がっていく。

 

「ど、どうしたー、スティングとローグ!って、どうして風殿が!?」

 

急激に上昇する魔力を感知したオルガがそこへ駆けつけ、来訪者に驚いた。

 

「此処で切り殺せば、未来であのような蛮行は行えまい…そして、ルーシィの右腕の恨みもある。」

「ええ、未来のユキノの恨み。そして、ユキノが受けた屈辱、此処でこのギルド潰せば一石二鳥ができるんだゾ。」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)のローグ。ルーシィが未来で出会ったのはもっと成長した未来の彼。ドラゴンの闇魔法に呑まれ、その力でドラゴンを使役した大罪人。

その罪を犯していないとはいえ、目の前に彼がいるのだ。今後未来の彼みたいになってしまう事もあるだろうと、カグラとソラノが処理しようとするのも仕方無いこと。

 

「ま、待ってくれ!ローグはまだ…いいや、俺たちで闇魔法に呑まれないようにするって評議院に契約書を作って許可が取れたばかりなんだ!未来のコイツが取り返しのつかない事をしてしまったのはみんな知ってる!!だが、やったのはコイツじゃない!!コイツじゃないんだ!そ、それに、未来のローグは今頃評議員の管理する牢獄に捕まっている!!」

 

スティングはローグを守るため、自身より格上であるカグラとソラノの目の前に立ち、今にも倒れてしまいそうに震えている両足に力を込める。

 

「で?」

「それだけか小僧?」

<<ドドン!!>>

 

だが、眼前の怒れる獅子の二人にはそんなことはどうでもいい事だった。さらに魔力は上がり続けている。

 

「ちょ、ちょっと二人とも私達の事で怒ってくれるのはいいけど、もう()()()()事よ!私の経験を聞いて、もう私が知ってる未来じゃなくなったって分かったわよね!だから、だからもう止めてよ…」

「…だが。」

「ルーシィは甘いんだゾ。悪の芽は此処で摘んだ方が未来のt「もういい、二人とも止めろ。」はぁ~い、止めるんだゾ。」

<<<<ズコッ!!>>>>

 

この時、スティングとローグ、オルガと未来から来たルーシィがズッコケた。

 

「…オホン。で、では、貴方方には現ギルドマスターに会ってもらう。くれぐれもビックリしないでくれ。」

「ん?まぁ、善処するわ。それと、身内が驚か…脅してすまなかったな。」

 

一門着あったが、風の一言で鮮血沙汰にならずに済んだ事だけは確信できた。

 

「邪魔するz…邪魔したな。お前ら帰るぞ。」

 

扉が開いて一番最初に部屋へ入った風は、()()を見てマントを翻し部屋から出た。

 

「ん?どうしたんだゾ?」

「風殿、どうしたんです直ぐ出てきて。」

 

不思議そうにするソラノとカグラ。

 

「どうしたの風?中に何があるって<ガチャ>…え、えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

そして、未来から来たルーシィはそのドアを開け、見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、あぁ、フィンガース。(わらわ)のフィンガース!魔力の無い世界で己が力を鍛え、あの〝風〟に体術を習い、魔力の扱いをこの数年一から学びなおし、スティングやローグ、力勝負でオルガを退けるとは!!流石(わらわ)のフィンガースじゃ!!」

「…いや、お嬢、それ昨日も一昨日も聞きましたよ。」

「何度でも、何度でも言ってやるぞ!!流石(わらわ)のフィンガースじゃ!!」

 

ソファーに座っているフィンガースの膝の上に寝ころび、ほっぺに何度も接吻しスキスキオーラを隠そうともしないミネルバの姿を。

 

 

 

■□■□

 

 

 

「…済まない。元々このギルドにいたんだが色々訳があって「訳など簡単なもの。(わらわ)のフィンガースがギルド内の試合で全戦全勝し、(わらわ)ギルドマスターの側近兼伴侶になっただけじゃ!!」そ、そう言う事らしい。」

 

驚く事にミネルバは剣咬の虎(セイバートゥース)のギルドマスターになり、その側近がフィンガースになっていたのだ。

 

「…これならユキノと雲に留守を頼まなくてもよかったかもな。それより、あのクソガキ(前ギルドマスター)はどうしたんだ?」

「…それが、大魔闘演武(だいまとうえんぶ)が終了した後、姿を眩ませたみたいなんだ。」

 

風は探し人が此処剣咬の虎(セイバートゥース)にいる事を知り、ユキノを家に残し(護衛に白い雲を置いて)てきた。以前のギルドマスターのやり方が酷すぎた為、またイチャモン付けられたらギルドごと潰そうとも考えていたが、ギルドマスターが娘のミネルバに代わり雰囲気も前とは打って変わって和気あいあいとしていたので杞憂に終わってしまった。

 

「あのガキ野放しにしていたら何するか分からんから気を付けとけ。」

「…ああ、評議院にも彼の危険性は連絡している。何かあれば此方に連絡してもらう手はずになっている。」

「済まぬ。父の蛮行を許してしまったのは(わらわ)にも責はある。そなたらからの罰は何でも受ける。だが、このギルドは見逃してくれんか。今再興しかけたばかりなのだ。この通りじゃ!」

 

ミネルバは躊躇なく自身の頭を風達に下げた。

 

「嘘、あのミネルバが私達に頭を下げるなんて…」

 

それに驚いたのは未来から来たルーシィ。どんな汚い手を使ってでも勝とうとしていた、彼女が知っているミネルバはそこにはいなかった。

自身がギルドの顔だと知っていて、それでも自分たちに責があるならギルドマスターとして謝ったのだ。

 

「自分達の責を認め謝る事が出来る。それが、上に立つものならどれだけ責任があるのかも…分かってるみてぇだな。じゃ、この話は終わりだ。」

「よ、よいのか!?(わらわ)達は「風殿は終わりと言った。」…済まぬ。」

 

そして、此処からが風達の本題。

 

「さて、おたくらのギルド員になったダフネの嬢ちゃんを借りられねぇか?」

「…ダフネを?いったい何故?」

「俺たちと行動してるルーシィちゃんな。、()()()()()()ルーシィちゃんで、ダフネの技術で()()()()()()()を再生させられねぇか?」

 

失ったルーシィの右手の復活だ。

 


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