Fate/betrayal   作:まーぼう

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モブが意味深な会話をしてますがこの作品の本筋とは特に関係ありません。


a raid

「比企谷……だよ……な?それに、メディアさんも……」

 

 葉山隼人はやや呆然と呟いた。

 なんでこいつがこんなところに居るんだよ。

 そんな意図を込めてメディアを見るが小さく首を振るのみ。どうもまったくの偶然らしい。

 

「あ-……奇遇だな、葉山。お前もサボりか?お互い見なかった事にしようぜ」

「待てよ」

 

 そそくさと立ち去ろうとしたがあっさりと捕まった。くっそ、立ち直り早ええ!腕放せ、目立つんだよお前。

 

「……なんだよ。別にお前のことチクるつもりなんかねえぞ。そもそもチクる相手がいねえし」

「とぼけるな。お前、何か知ってるだろう」

「何かってなんだよ。何の話だかわかんねえぞ」

「雪ノ下さんが行方不明になってる。昨日から家に帰ってないらしい。俺は知り合いに声をかけて自主的に捜索している」

「警察に任せりゃいいだろそんなもん。つうかサボって遊びにでも行ってんじゃねえの?」

「相手は雪ノ下さんだぞ。そんなことが有り得ると思うのか?」

「……」

 

 これはさすがに黙るしかなかった。トボけ方に無理がありすぎたな。俺もあまり冷静ではないらしい。

 葉山は尚も言葉を連ねる。

 

「雪ノ下の家も事態を把握したのはついさっきらしい。警察もじきに動くだろう。が、はっきり言ってこの事態は異常だ。雪ノ下家が彼女を見失うなんてあるはずがない」

 

 なにそれこわい。ごく自然にそんな認識になってる方がよっぽど異常だと思うのは俺だけでしょうか。

 

「OK、分かった。雪ノ下のことは俺の方でも気を払おう。で?なんで俺がそれに関わってると思うんだ?」

「勘だ」

「話になんねえ。俺はもう行くぞ」

「待てって言ってるだろ。……俺はついさっきまでお前のことを忘れていた。メディアさんのことも。俺だけじゃない。君たちが居ないことに誰も疑問を持たなかった。こんな事普通有り得るか?普通じゃない情況で普通じゃない事が起きたんだ。関連を疑ってもおかしくないだろう」

 

 確かに勘だがまったくの無根拠というわけでもないのか。しかもいいとこ突いてやがる。ホンっとメンドくせえ奴だな。

 

「たまたまだろ。俺なんかいつでも忘れられてるようなもんだしな」

「結衣がお前を忘れるなんてあるわけないだろうが」

「……」

 

 一言で撃沈された。守勢にまわるとひたすら弱いな俺。

 

(八幡様。暗示を使いますか?)

 

 メディアから念話で助け船が入った。確かにそれが一番手っ取り早くて確実なんだろうが……

 

「……分かった。知ってる事を話す。人気の無いところに行こう」

「駄目だ。ここで話せ」

「あ……?なんでだよ?」

「なんとなくだ。お前こそなんでわざわざ人目を避ける」

 

 こ……のヤロウ……!

 葉山は自身の記憶の異常が俺の(正確にはメディアだが)仕業だと感付いている。そしてもう一度やられる事を警戒している。

 別にこの場でも葉山の記憶を奪うことは可能だ。メディアの技量なら街中で魔術を使うこと自体はそれほど問題ないだろう。

 しかし今は、ただでさえ目立つ葉山がモブ男(俺)の腕を掴んで押し問答なんぞをしているせいで、ひたすら人の注目を集めてしまっている。これで葉山がいきなり呆けでもしたら、見る奴が見れば一発で魔術だとバレる。

 正直遠坂のところに顔を出してる時点で今さらではあるが、それは警戒を怠る理由にはならない。

 

 つーか本当にどうする?

 このまま葉山を振り切って強引に逃げた場合、『比企谷八幡が事件に関わっているかもしれない』という疑念、いや、おそらくは確信を持たせたまま野放しにすることになる。ついでにこの場を監視しているかもしれない誰かにマークされるおそれもあるだろう。

 メディアの暗示は強力だ。少なくとも素人に破れるようなものではない。

 だから学校の連中に俺の名前を出したところで「ヒキタニ?誰?」となるのは目に見えてるが、そこは葉山だ。どうにか纏めあげて俺の包囲網を構築するだろう。メディアの魔術があれば切り抜けるのは難しくないだろうが、そうなると他のマスターに発見される確率が爆発的に上昇する。

 加えて葉山は警察にも情報を提供するはずだ。しない理由が無い。警察が学生の言うことをどこまで信用するかは分からんが、教師生徒双方から信用の厚い葉山の言うことなら無視はしないだろう。

 て言うかあいつの親弁護士とか言ってたよな。だとすると警察にもパイプがあるだろうから、葉山と直接知り合いで個人的に信用してる警官とかも居るかもしれない。つうか居る気がする。だとすると警察も動くな。ぶっちゃけ詰みだ。

 遠坂が言ってた監督役とやらがどのくらい力を持っているかは分からんが、仮に公的機関に圧力をかけられるレベルだったとしても、葉山のつてで個人的に協力している学生連中まで抑制することはできないだろう。

 つまるところ、葉山をほっとけば俺は終わる。

 

 魔術は使えない。逃げることもできない。ならば適当な事を言って煙に巻くか?

 ……無理だ。俺がこいつを言いくるめられるイメージが湧かない。

 この一年間、葉山とはなんだかんだでよく関わってきた。その付き合いの中で葉山隼人という人間に対する印象は随分変わった気がする。

 

 俺が葉山に対して抱いていたイメージ。

 頭脳明晰運動万能眉目秀麗の完璧超人。

 人付き合いが良く愛想も良く面倒見も良いため男女共に絶大な人気を誇り、周囲から多大な期待を寄せられそれらに常に応え続ける実力を備える。

 柔らかい物腰に強い芯を持ち、誰にでも優しく平等で目端が効き、なおかつ他者の悪感情を理解しその上で受け入れる懐の深さ。

 つーか改めて言葉にするととんでもねえなこいつ。人脈まで含めた総合力で言えば雪ノ下すら相手にならんだろ。性格が良いため特定の誰かを敵視するようなことはまず無いが、いざ本気で敵に回してしまった時の危険度は陽乃さん以上ではないだろうか。

 ただ、これらの無茶苦茶とも言える美辞麗句には、正直に言えばやっかみが多分に含まれる。つまるところ、こんだけ凄くて良い奴なんだから勝てなくても仕方がないと、そう思い込みたかったのだ、俺は。

 しかし今は違う。葉山隼人はただの良い奴ではない。

 人並みに悩みもすれば妬みもする。誰かを嫌うこともあれば自己嫌悪だってする。

 葉山のことを噂でしか知らなかった一年前に比べれば、俺の中での評価そのものは大きく落ちているとも言えるだろう。が、それでもなお、初期からまったく変わっていない認識もある。

 

 すなわち、比企谷八幡では、葉山隼人には勝てない。

 

 何をどう考えてみても、この認識だけは変えられなかった。何故ならこれは、劣等感や思い込みではなく、ただの純然たる事実だからだ。

 葉山は俺の嘘をあっさり見抜くだろう。普段ならその上で見逃されるかもしれないが、今はそうはいくまい。懸かっているのは雪ノ下の安否なのだから。

 それにだ。仮にこいつを騙くらかすことに成功したとして、その後はどうする?

 葉山を手伝ってる奴の中に、雪ノ下をさらったのは魔術師だ、なんて考えてるバカはさすがに居ないだろう。

 魔術師ではない人間が魔術師に対抗するには、最低限相手が魔術師であることを認識していなければ話にならない。だから葉山達が雪ノ下にたどり着くことはないだろう。

 が、葉山の影響力、そして捜索対象が雪ノ下であることをを考えれば、協力者は結構な数になるはずだ。今はそうでなくともすぐに膨れ上がるだろう。下手をすれば三桁を越えるかもしれない。

 それだけの数が雪ノ下を追うとなると、もしかしたら、何かの間違いで真実にたどり着いてしまう人間も出るかもしれない。

 

 万が一、そうなってしまった場合、そいつはどうなる?

 

 自覚も無いままに魔術の世界に首を突っ込んでしまえばまず助からない。俺がどうにか無事なのは運良くサーヴァントという護衛を引き当てたからだ。

 無論、それはただの可能性だ。確率で言えば要らん心配となる率の方がずっと高い。それでも思い当たってしまった以上は無視するわけにもいかん。

 そうなると、どうにかして葉山達の活動を止めなければならない。だけどどうやって?

 集団そのものに働きかけるような方法は全て却下だ。そんな手段は持ってない。となると集団の核に干渉するしかないわけだが、その核たる葉山にどんなアプローチをすればいいのやら……

 

 結局良い案が何も思い着かず、俺は深くため息を吐いた。

 

「分かった。事情を話す。だけど場所は変えさせてもらうぞ」

「人気の無い場所に行くつもりは」

「人気ならむしろ多いはずだ。少し移動するけどな。……それと、俺は事実を話すつもりだが、お前は多分信じないぞ」

「……分かった。良いだろう」

 

 

 

 

「…………なあ、比企谷」

 

 その場所を一言で現すならば混沌だった。

 通常ではあり得ない装束に身を包んだ者たちが当然のように闊歩し、狭い空間の至るところで意味不明な矯声が上がる。

 そんな中で俺たちは、比較的静かと思われる一角に腰を下ろした。

 無論静かと言ってもあくまで比較的の話なので、すぐさまそこの住人が声をかけてくる。俺は慌てることなく、むしろ慣れた調子でそれに対応した。

 

「おかえりなさいニャンお兄様♡お姉様♡今日は何を食べてくれるニャン?」

「妹の手作りふわふわオムライス。あとMAXコーヒー」

「メイドさんが心を込めて作ったカレーライスを。飲み物は超神水をお願いします」

「わかったニャン!そちらの新しいお兄様は何にするニャン?」

「え……えっと、その、コーヒーを……」

「了解ニャン!メイドさんのもっと美味しくなるおまじないサービスは」

「あ、今日はいいです」

「わかったニャン!すぐに持ってくるから待っててニャン♡」

 

 妹系ネコミミメイドさんが離れたのを確認してから葉山に切り出す。

 

「で、何から話す?」

「…………聞きたいことは色々あるけどとりあえず、なんでメイド喫茶なんだ?」

「腹減ってんだよ。元々メシ食うとこ探してたわけだし」

「……よく来るのか?この店」

「ああ、メディアが気に入っててな。よく連れてこられる」

「そっちか!?」

 

 大げさに驚くなよ。こいつ学校でも別に隠してなかったろ、オタク趣味。

 葉山が頭を抱えている間に飲み物が届き、食い物もすぐだろうからとそれを待ってから話すことにした。

 

「……まず、雪ノ下がどうしてるかだが、それについては俺にも分からん。自分の意思で姿を消したのか、何かあってそうせざるを得なかったのかもだ。ただ雪ノ下が消える直前、何者かがあいつに接触してたのは間違いない」

「何者か?誰だ?」

「分からん。ただ、魔術師なのは確実だ」

「…………は?」

 

 オムライスをパクつきながらの俺の口から飛び出た単語に、葉山はポカンと口を開けて静止する。なかなかレアな光景だ。写真に撮れば女子に良い値で売れるかもしれない。

 どうにか持ち直した葉山は絞り出すように口を開く。

 

「……なんだよ、魔術師って」

「魔術を使う人間のことだ」

「なんで魔術師って分かるんだ?」

「魔術を使って調べた」

「……ということは、比企谷も魔術が使えるんだな?」

「俺には無理だ。調べたのはメディアだ」

「……メディアさんはどこで魔術を覚えたんだ?」

「こいつはもともと人間じゃない」

「いい加減にしろっ……!」

 

 ドン!と拳を打ち付けられたテーブルが揺れる。

 一瞬浮き上がったコーヒーカップが倒れ、黒い液体が床を濡らした。

 

「比企谷、俺は、真面目に話してるんだぞ……!」

 

 葉山は怒りを隠すことなく、歯を剥いて俺を睨みつける。

 俺はそれに臆することなく、冷たく言い放った。

 

「最初に言ったぞ。お前は多分信じないって」

「まともに話す気は無いんだな?」

 

 葉山はそう言うと、五百円硬貨を置いて立ち上がった。

 

「分かった。好きにしろ。俺もそうさせてもらう」

 

 そう吐き捨てると出口に向かう。その去り際、背中越しに呟くような言葉が聞こえた。

 

「見損なったよ、比企谷」

「これも前に言ったと思うがな、俺を買いかぶりすぎなんだよ、お前は」

 

 葉山はそれに応えることなく、足早に店を出て行った。その葉山を見送り、それまで黙って成り行きを見守っていたメディアが口を開く。

 

「よろしかったのですか?」

「とりあえずは上等だろ」

 

 人間は、一度『違う』と決め付けた可能性を疑えない。

 雪ノ下の捜索に行き詰まれば、そのうちオカルトの可能性を考え出すバカも現れるかもしれない。その時に魔術の可能性を疑えば、うっかり本物にぶち当たってしまうかもしれない。

 しかしこの段階で葉山に『魔術なんかあるわけない』と明確に意識させておけば、仮にそんなことを言い出す奴が表れてもすぐに否定してくれるだろう。葉山の言うことなら聞くはずだ。

 

「危険も大きいと思いますが」

「……分かってる」

 

 他の人間に対してはそれで済むだろうが、葉山個人に対しては違ってくる。後になって条件が揃えば『もしかしたら』と思わせてしまうかもしれない。

 しかし今回のこれは必要なことでもあった。

 おそらく俺たちについているであろう監視者に対し、葉山が完全に無関係であることをアピールしなければならない。

 ここでの会話が聞かれていればこれで葉山への興味を失うはずだし、例え声の届かないところからの監視だとしても、葉山が見当違いの捜索活動をしているところを見ればそれ以上の手出しはすまい。無論、監視なんてのが俺の妄想だというのならそれが一番だが。

 もっとも……

 

「それでも、確実ではありませんよね?」

 

 俺の思考を先回りしたかのようなメディアの言葉に、うめく。

 そう、これらは全て俺の希望的観測に基づくシミュレートにすぎない。おそらくそうなるだろうとは思っているが、それでも絶対などあり得ないのだ。

 だけどな……

 

「……お前は俺に何を期待してんだよ。天才マンじゃあるまいし、なんでもかんでも計算通りとかできるわけねえだろ」

 

 こいつといい葉山といい、俺を何だと思ってんだ。俺はただのぼっちだぞ。

 そりゃそれなりにスペック高いって自負はあるがそれだけだ。こんなもんが限界だろ。

 

「……そうですね。失礼いたしました」

 

 メディアは何か言いたげにしていたが、結局は何も言わずに食事に戻った。

 

「そういえば、隼人さまもおっしゃってましたがどうしてメイド喫茶なのですか?」

 

 そしてふと顔を上げると、それまでとまったく関係ないことを聞いてきた。

 俺は肩越しに後ろを指差して口を開く。

 

「後ろの席の会話、聞こえるか?」

「? はい」

「何の話だと思う?」

「アニメか何かでしょう?機関とかタイムマシンとか言ってますし……ああ、なるほど」

 

 メディアは得心して頷いた。

 聞かれちゃまずい話をするなら人の居ないところに行くか、聞かれても問題無いところに行くかのどちらかだ。

 こんな場所で魔術がどうとかなんて話が聞こえたところで、それがマジだなんて絶対に思わない。木を隠すには森というやつだ。

 

 

 

 食事を済ませた俺たちは、雪ノ下の手がかりを求めて街をうろついた。まずは霊地とやらでもっとも手近だった新都の公園だ。

 

「しっかし何もねーな」

 

 ただひたすら、それこそ無駄に広いだけの空間を眺めてポツリと漏らす。

 いつだったか、奉仕部で十年前の大災害の話題になった時、メディアはここの名前に反応していた。今思えばここが霊地だったからなのだろう。

 それもあって少しは期待してたのだが、結果は空振り。分かったのはこの土地が呪いに汚染されてるということくらいだった。

 

 というわけで次。

 

 公園から近いのは教会と、その北側にある森。

 教会は遠坂が行くことになっているので森へ向かう。教会も帰りに少し覗いとくか。

 メディアが言うにはこの森は霊地ではないらしいが、なにやら魔力を感じるとのこと。近くまで来ると、実際に人避けの結界が張ってあった。少なくとも何かがあるのは確実なようだ。

 メディアの先導で結界にかからないように慎重に進む。俺にはまったく判断がつかんからすげえ不安。

 しばらく歩を進めると、やがて洋館が見えてきた。なんかゾンビとか出そうなやつ。……夜じゃなくて良かった。いや、案外仲魔と思われるかも?

 メディアは立ち止まってそれを見つめる。ただ見てるだけに見えるが、魔術で中の様子を探ってるんだろう。

 やがて目を閉じて小さく息を整えると、こちらに向き直って口を開いた。

 

「この館自体はただの隠れ家みたいなもののようです。トラップの類も無さそうですね。ただ、二階の一室に妙な反応がありました」

「妙な反応?何だ?」

「分かりません。ですが公園で検出された呪いに良く似た波動を感じます」

 

 呪い……?繋がりがさっぱり見えん。つっても情報が無さすぎるから当然だが。

 

「……調べてみるしかねえか。鍵、開けら」

「やっと追い付いた」

 

 開けられそうか?と続けようとしたところで、知った声に遮られた。

 

「……こんなところがあったんだな。それで、ここに何があるんだ?」

「葉山……!?」

 

 街で別れたはずの葉山が、俺たちの歩いてきた道から姿を現す。

 

「……葉山、お前、なんでここにいる」

「比企谷が何か知ってるのは確実そうだったからな」

「後着けてきやがったのか、テメエ……!」

「言ったぞ。俺も好きにさせてもらうって。……お前は異常に勘がいいからな、苦労したよ」

 

 最悪だ……!

 ここは結界の内側。葉山が何者か、聖杯戦争にどの程度関わっているかは関係ない。ここに居るという時点で敵がこいつを見逃す可能性は消えた。

 魔術師にとって一般人は虫と同じだ。

 毒があるかもしれないから念のために潰しておこう。始末する理由なんてそれで充分なのだ。

 

「それで、何なんだこの家?全然使われてないみたいだけど」

 

 葉山は俺の反応を気にかけることなく近寄ってくる。事情を知らないのだから当たり前なのだが、その呑気さに腹が立つ。

 俺はつい顔を逸らして舌打ちした。

 

 

 

 それはまったくの偶然だった。

 

 

 

 顔を逸らした先、日の傾き始めた森の木々の隙間に、白い何かが踊るのが見えた。

 

「メディア!」

 

 その瞬間猛烈な悪寒を感じ、それが何かを理解する前に自分のサーヴァントの名を叫ぶ。同時に念話を使い、言語ではなくイメージで命令する。

 メディアはそれに応え、俺たち三人を包みこむように障壁を展開した。直後。

 

「うわああぁぁっ!?」

 

 森から無数の何かが飛来して障壁を激しく打つ。それをバチバチと弾き返す派手な音に葉山が悲鳴を上げた。

 

「な、なんだ、なんだ!?」

 

 障壁に弾かれて落ちたそれは、黒い両刃の短剣。それと同じ物をもった者が、森から姿を現す。

 それは黒ずくめの男たち。

 細い身体に漆黒の衣装を纏い、一様にドクロのような仮面を着けた男。それがざっと二十人ほども湧き出てくる。

 

「アサシン……!?」

 

 メディアの驚愕に満ちた言葉が、俺の耳を打った。


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