Fate/betrayal   作:まーぼう

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第57話

 キュボッ!

 

 そんな音を立てて拳が空間を切り裂く。

 マンガなんかでは結構よく見る効果音だが、まさか現実で聞く日が来ようとは思ってもいなかった。しかもだ。その音を立てているのは、こともあろうに俺の拳だったりする。

 俺は胸の前で腕を畳んだ状態、見よう見真似のボクシングスタイルから最小の動作で拳を突き出す。いわゆるジャブというやつだ。

 音速を超え、空気摩擦で焼け焦げる拳は、衝撃波で皮膚が裂けて血と嫌な臭いを撒き散らす。

 その目視すら不可能なはずの攻撃を、しかし少女はあっさりと躱わしてみせた。

 

 白銀の甲冑を纏った金髪の美少女。

 葉山や戸部のような染めたものとは明らかに違う、夜闇の中でもなお輝くブロンドに、可憐ながらも凛々しさが勝る表情で不可視の剣を構えた彼女は、人間ではなかった。

 

 サーヴァント。

 伝説に名を残す英雄達。その概念が聖杯によってカタチと意思を得たモノ。

 目の前の少女の正体は分からないが、そのクラスはセイバーだ。

 剣の英霊。英雄中の英雄。

 今の俺はチート級のドーピングによってサーヴァント以上の力を得ている。しかしそれで勝てるなどと考えてはいけない。俺のイメージする英雄とは、自分より強い敵を倒すことに長けた者達のことなのだから。

 俺は鴨川会長のセリフを思い出しながら、ひたすら細かくパンチを重ねる。

 小さく、小さく。隙を作らないように、体幹を崩さないように。

 大振りは要らない。というか当たらない。

 セイバーはほとんど不意討ち気味の最速の初撃をガードしてみせた。単発の攻撃は一切通じないと考えるべきだ。

 加えて今の俺なら小技を当てるだけでも敵を倒し得る。ならばとにかく数を撃つ。

 セイバーも攻撃力の差を理解しているらしく、反撃はせず防御に専念している。途中、明らかな隙を何度か見せたにも関わらずだ。

 

(チッ……!)

 

 心の中で舌打ちする。

 狙いを読まれている。

 まともにやっても勝負にならないのは分かっていた。

 素人である俺が伝説級の戦士であるセイバーに、普通の方法で攻撃を当てることなど出来ない。ならば普通じゃない方法に頼るしかない。

 不意討ちは凌がれた。今可能な手段は限られている。

 すなわち、相討ち狙い。

 今の俺は、攻撃力はもちろん防御力も大幅に上昇している。急所さえ庇えば、無傷とはいかないだろうが一撃で倒されることはない。そしてこちらは一撃当てれば即戦闘不能にすることができる。

 相手に反撃の意図が無いのならと、攻撃の回転を上げる。無論、いつでもカウンターを撃てるように意識しながら。

 とにかく当たりさえすればどうとでもなる。なら手数で圧倒するのが手っ取り早い。

 だというのに。

 

 

(当たらねえ……!)

 

 

 そう、当たらない。まったくもって当たらない。

 身体能力が人外のレベルにまで引き上げられ、秒間十数発という意味不明な数字の攻撃が、機関銃の掃射のごとく空間を引き裂き続ける。

 セイバーはその全てを、躱わし、弾き、いなしていた。それもクロスレンジ、俺の距離でだ。

 セイバーは剣の間合いの内側に潜り込んだ俺を、その場で迎え撃っていた。

 敵からは際限なく攻撃され、自分は手出し出来ないその距離で。

 一歩も退かず。逃げもせず。顔色すら変えずに。ただひたすら、俺の拳を捌き続ける。

 

 

(160万人と、互角にやり合ってんじゃねーよ!バケモンが!)

 

 

 俺は内心で歯噛みしつつ、それでも攻撃を続けた。

 今の俺にできるのは、それだけなのだから。

 

 

 

 

 片膝を着いたスーツの女を見下ろし、告げる。

 

「口ほどにもなかったな、封印指定執行者」

「クッ……!」

 

 悔しげに睨み返してくるその眼差しに、内心で胸を撫で下ろした。

 ああは言ったものの強敵だった。単純に強かった。

 攻撃は速く、重く、読みも当て勘も並外れている。相手の状態が万全であったなら、膝を着いていたのは自分だっただろう。

 人の身でここまで強くなれるものなのかと胸中で舌を巻きながら、止めを刺すために距離を詰める。

 この女は見逃すには危険すぎる。そう判断して足を踏み出した、その時だった。

 

「!」

 

 唐突に左から飛んできた火球を飛び退いて躱わす。

 死角からの攻撃ではあったが気配が丸分かりだ。だから避けるのは簡単だった。しかし、

 

「チィッ……!」

 

 そのために距離が開き、その隙に女は体勢を建て直している。

 火球はキャスターのものだった。流れ弾、ではないだろう。この女へのアシストだ。

 

「仕切り直し、ですね。キャスターには礼をしなければなりませんね」

 

 女はグローブを口で嵌め直しながら言う。

 

「あなたのスピードは覚えました。次は同じようにはいきません」

 

 ハッタリではないのだろう。同じ戦い方はもう通じないはずだ。が、

 

「あれが私の手札の全てだとでも思っているのか?武芸百般は伊達ではないぞ」

 

 今までの手が通じないなら別の手を使えば良い。そもそもの話、常に手管を変えながら戦うのが私のスタイルだ。

 これはむしろこちらの土俵とも言える。こういう相手と渡り合うために、広く浅くを修めたのだから。

 

 次の手、そのさらに次の手をイメージしつつ、私は新たに双剣を投影した。

 

 

 

 

「くそっ!」

 

 ジタバタと暴れる金髪を組伏せ、自分の上着で後ろ手に縛り上げる。その上着に魔力を流し込んで強化する。これで簡単には動けないはずだ。

 身体強化の影響で力は凄まじかったが、動きそのものは完全に素人だった。ケンカ慣れしてる様子も無く、おかげでどうにか逆転できた。

 相手が起き上がれないのを確認してから注意をセイバーの方に向ける。

 

「セイバー!」

「こちらは大丈夫です!私よりもリンの援護を!」

 

 無茶苦茶な速度で攻防を繰り広げながらセイバーが答える。

 その声には油断は無いが、いくらか余裕が感じられた。遠坂の状況を把握出来てるあたり、本当に大丈夫そうだ。

 そう判断して遠坂を探す。あの次元の戦いでは援護のしようが無いというのもあるが。

 遠坂は苦戦していた。

 サーヴァントが相手なのだから当然だ。むしろ苦戦で済ませてしまっているあたり、遠坂の方がデタラメとも言える。

 遠坂はキャスターが次々に繰り出す魔術を避けるのに精一杯のようだ。時々思い出したように宝石を投げつけているが、キャスターにはまったく通じていない。

 

(ん……?)

 

 キャスターは遠坂の攻撃を、その場を動くことすらなく無効化している。爆発も、雷撃も、猛吹雪も、何一つ効いていない。

 しかし、俺には見えてしまった。遠坂の投げた三つの宝石。それが爆発した時、その内一つだけ何も起こらずに地面に落ちたのを。

 暗がりで良く見えないが、目を凝らせばキャスターの足下にはいくつかの宝石が転がっているのが見える。

 不発ではない。遠坂は何かを狙っている。派手な攻撃が多いのはこれに気付かせないためか!

 

 一瞬、遠坂と目が合う。

 手伝え。そう言われた気がした。もちろん異論など無い。

 遠坂の仕込みがどういうものかは分からないが、あまり近付くと巻き込まれるかもしれない。

 

強化開始(トレースオン)……!」

 

 俺は持ってきていた木刀と、足元から拾い上げた木の枝に魔力を流し込み、その形状を変化させる。魔術は未だに上手く使えないけれど、道具を創る術に関してならば成功率はそれなりに高い。

 弓と矢に変じたそれらを構え、キャスターの背に照準を合わせる。

 キャスターがうるさそうに右手を振ると、俺の放った矢が見えない力ではたき落とされた。当たり前だがキャスターにダメージは無い。

 しかしそれで十分だった。

 キャスターの意識がほんの少しだけ俺に向き、視線が一瞬だけ遠坂から逸れる。その一瞬に、遠坂はキャスターに向かって駆け出す。

 キャスターが視線を戻し、遠坂を迎え撃とうとしたその時、キャスターの足下で閃光が炸裂した。その光にキャスターが怯んだ隙に、遠坂は懐まで潜り込んでいる。

 

「しまっ……!」

「遅い!」

 

 遠坂の双掌打がキャスターの腹部にめり込む。息が詰まって浮いた顎を左肩でカチ上げ、体ごと旋回させて遠心力を乗せた右肘がこめかみを抉る。さらにその勢いを利用して全体重を乗せた後ろ回し蹴りを叩き込んだ。

 

「うっわぁ……」

 

 流れるように流麗、かつ凶悪な連続技に、思わずそんな声が漏れる。

 人間なら下手すりゃ死んでる。比喩では無しに。そのくらい見事な攻撃だった。

 事実、キャスターもダメージは大きかったらしく、どうにか起き上がろうとしているものの足元がおぼついていない。それでも無理矢理に立ち上がろうとして、結局成せずに膝から崩れ落ちる。

 

「魔術師が……格闘戦なんて……!」

「言ったはずよ。現代の魔術師は身体使ってなんぼだって」

「おのれ……!」

 

 キャスターが膝を着いたまま手を伸ばす。それを、遠坂のガンドが撃ち抜いた。

 

「ぐっ……!」

「ムダよ。もうあなたに魔術を使う隙は与えないわ」

 

 遠坂はいつでもガンドを撃てるようにキャスターに指を突き付けたまま、ジリジリと間合いを詰める。

 敵はサーヴァントだ。どれだけ優位に立っていようと油断して良い相手ではない。

 あと一歩。それだけ踏み込めめば止めの一撃を入れられる。

 遠坂はその最後の一歩を踏み出しーー

 

 

 

「比企谷、急げ!」

 

 

 

 背後からいきなり響いた大声に、遠坂が一瞬硬直する。

 

「っ!」

 

 その一瞬にキャスターが左腕を振るい、遠坂はそれを避けて大きく飛び退いた。

 キャスターの左手には、奇妙に曲がりくねった短剣が握られている。あれはーー

 

「遠坂!あれ、宝具だ!」

「でしょうね。でもそんなに心配要らないわよ。今の今まで持ち出さなかったってことは、敵に当てなきゃ効果を発揮しないタイプの武器ってこと。なら、当たらなきゃ良いだけよ」

 

 遠坂は余裕を見せつつも油断なく構える。

 キャスターも肩で息をしながら短剣を構えるーーが、正直隙だらけだった。はっきり言って、格闘戦で遠坂の相手になるとは思えない。

 魔力が尽きて魔術を使えなくなったのか。それとも宝具を出したことでそれに固執してしまっているのか。

 どちらか、またはそれ以外の理由なのかは分からないが、キャスターは魔術を使う気配が無い。これはチャンスだ。

 視界から二人を外さないようにしながら、公園のあちこちで蒼白い火を放つ魔術文字をみる。

 基点は既に三分の二ほどが焼け焦げ、残りも時を待たずして燃え尽きるように見えた。

 さっきの声は、俺が動きを封じた金髪の男のものだった。あいつはこの基点を見て焦っているのだろう。例え敵を倒せなくても、あと少し凌ぎ切るだけで形勢は崩れる。

 

 

 そう思った時だった。

 遠坂がキャスターとの間合いを詰め、同時に轟音が鳴り響いた。

 

 

 

 

「息が上がってきているぞ、キャスターのマスター」

「うる…….せえ!」

 

 ヒキガヤという名のその男は、私の言葉にかまうこと無く攻撃を続ける。が、その回転速度は明らかに低下してきていた。

 とはいえ、そのスピードは衰えてなお私を上回っているし、何よりーー

 

(目は、まだ死んでない)

 

 疲れが出始め体幹を保てなくなってきたのか、わずかだが身体が泳ぐことも少なくない。しかしそれでも隙は見せない。

 いや、正しくは隙は見せている。

 間違いなく本物の隙だった。ただしそれは猛毒入りの餌だ。食い付けば命に関わる。

 相討ち。この男の狙いはそれだ。

 どれだけ体勢を崩そうと、必ずある一定のバランスだけは保っている。うかつに手を出せば、能力差に任せた強烈な逆襲がくる。加えてさらにその先に何かを隠している気がする。

 しかしこのまま守りに徹していても、いずれ勝手に自滅するだろう。

 これだけ無茶苦茶なブーストだ。結界がそう長く持つとは思えないし、そうでなくとも人間の身体が耐えられるはずがない。

 

(できればその前に蹴りを着けたいが……)

 

 決着は早い方が良い。

 そうすれば仲間の援護に回れるし、長引けば確率は低いとはいえ間違いが起こる可能性は高まる。何よりも、1人の戦士としてこの男の覚悟には応えたい。

 とは言うものの、反撃の機会が無いことにはどうにもならない。膠着状態を脱したいのは相手も同じだろうがーー

 

 

「比企谷、急げ!」

 

 

 唐突に響いたその声は、ヒキガヤの仲間の金髪の男のものだった。ヒキガヤはそれを聞いて小さく舌打ちする。結界の限界が近いらしい。

 ヒキガヤは落ちていた攻撃の回転を再び上げる。がーー

 

「しまっ……!」

 

 ヒキガヤの口から悔恨の呟きが漏れる。

 ヒキガヤのラッシュの一つ、ほんのわずかに甘く入った一撃を剣で受け、その衝撃を利用して間合いから逃れる。

 追撃はーー無い。ヒキガヤはその場で肩を上下させている。

 私は一度も攻撃していない。にも関わらず、ヒキガヤはボロボロだった。

 体力が底を着いているのはもちろんのこと、自分の攻撃で発生させた衝撃波で服はズタズタ。袖は両方とも破れ落ちていて、持ち上げる力も残っておらずにダラリと垂れた両腕は、内出血で全体が赤黒く染まっている。

 

「ハァ-……!ハァ-……!」

「ここまでだな。投降する気があるなら命までは取らぬと約束しよう」

 

 人の身でサーヴァントとここまで戦ったのだ。それは称賛に価する。恐らくムダだと思いつつも、私は礼儀として投降を呼び掛ける。

 

「……」

 

 ヒキガヤは震えながらも腕を持ち上げ戦いの構えをとった。その瞳からは、闘志は微塵も失われてはいない。

 やはりか。ここで降るような者ならば、私とここまで戦えるはずがない。

 

「そうか。ならばーー勝負!」

 

 私は内心で最高の賛辞を送りつつ、最速で突進する。

 かくなる上は最高の技を以て葬るのみ。この強敵に、戦士としての誇りある最期を!

 ヒキガヤは私の突進に合わせて右足を振り上げ、そのまま地面に叩き付ける。

 

 

 

「ナメん、なァ!」

「!?」

 

 

 

 地面が、割れた。

 ヒキガヤの右足は地面を文字通りに踏み砕いていた。

 ヒキガヤを中心に半径2メートルほどにヒビが入り、アスファルトとタイルが浮き上がる。その反動も凄まじかったらしく、彼の膝から折れた骨が皮膚を突き破っていた。

 自分自身を破壊しながらの大技に、私もさすがに動きを止めざるを得ない。砕けた大地ごと突き上げられ、宙に浮いて身動きの取れない私を、ヒキガヤの眼光が射抜く。

 

 

「だるまさんがァ!」

 

 

 折れた脚を無視して引き絞られた左手。掌底の形をとったその手の平に、文字のような刻印が鈍く輝く。

 

連動式短縮呪文(パッチスペル)か!)

 

 連動式短縮呪文(パッチスペル)とは、予め詠唱しておいた呪文を封印術で圧縮凍結し、簡単なキーワードで解凍することで任意に魔術を発動する技術のことだ。

 先に封印を済ませておけば一言呟くだけで魔術を行使できるようになる。これを利用すれば魔術の素養を持たぬ者でも擬似的に魔術を使うことも可能だろう。

 先の大地を砕いた一撃。当然だが普通に地面を蹴りつけただけでは、どれだけ威力があろうとああはならない。なんらかの魔術が働いていたことになる。あれもこの技術を利用したのだろう。

 こう言うと恐ろしく便利なように思えるが、実は欠点が非常に多く、好んで使う者は滅多にいない。

 その欠点の一つが、一度解放した魔術は封印し直すまで使えなくなる、つまり弾切れを起こすこと。すなわち、

 

(これがこの男の切り札か!)

 

 連動式短縮呪文(パッチスペル)の構造的に次弾はありえない。それを抜きにしても、この勝負所で牽制は無意味だ。

 恐らくこれには、私を一撃で無力化するような術が封じられているはずだ。

 構えを見る限り接触式の術だろう。

 相手に直に触れて直接術を流し込めば、フィールドタイプの防護は意味を成さない。なによりここまで周到に戦いの準備をしてきたこの男のことだ。私に効かない攻撃は用意していないだろう。レジストは当てにするべきではない。

 

 私はヒキガヤに全神経を集中する。

 獲物の分だけリーチではこちらが有利。しかし体勢が崩れてすぐに攻撃には移れない。

 今私は宙に浮かされ、しかも敵に向けて飛んでいる。そして敵はそれを迎え撃つ形で構えている。

 勝負は一瞬。

 私の身体がヒキガヤの間合いに入る。

 

「ころんだァ!」

 

 ヒキガヤの縮められた身体が弾けるように伸び、一本の矢と化す。

 地面と、それを踏み締める左足が砕け、その反動を以て鏃となる掌底を打ち出した。

 これまでで間違いなく最速の攻撃。それが私を捉えるより、ほんの少しだけ早くーー

 

 

「おおぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 

 確かな手応えとともに、私の剣がヒキガヤの胸を貫いた。

 





 用語解説


 連動式短縮呪文《パッチスペル》

 遅延呪文《ディレイスペル》のバリエーションの一つ。
 遅延呪文とは、詠唱の完成から魔術の発動までの時間を遅らせる技術全般を指す。予め設定した時間だけ待機してから発動するタイプと、任意のタイミングで術を解放できるタイプがある。後者の方が技術的に高度。
 時間差によるフェイントに使うこともできるが、より一般的には複数の術の発動タイミングを揃えて一斉射を行うために使われることが多い。
 扱いには高いセンスが要求されるが、使いこなせれば凄まじい効果を発揮する。
 なお、遅延呪文はあくまでも術者が能動的に起動する術式を指すため、効果対象が領域内に踏み込むことで起動する機雷式《マインスペル》や、複数の条件を満たすことで起動する設置罠式《トラップスペル》のような受動起動型は別系統の魔術として扱われる。

 連動式短縮呪文は、予め詠唱した呪文に簡単な封印を施し、キーワードで解放することで任意のタイミングで魔術を発動させる技術である。
 封印の強度にもよるが解封のキーワードは大抵一言で済むため、普通に呪文を詠唱するよりかなり素早く魔術を放てる。が、欠点が非常に多い。
 まず使用する術に加え、封印と解封の術の分も魔力を必要とするため余分にコストがかかる。
 また、先に完成した呪文を封印する構造上、威力の調整や内容の変更が利かない上に、一度切りしか使えない。
 さらに封印できるのは底ランクの魔術のみ。(封印を強化すれば高ランクの術でも可能。しかしそれだと解封に手間がかかってしまい、そもそも使う意味が無くなる)
 これらの欠陥のため、高速詠唱を修得した、いわゆる一流以上と呼ばれる魔術師はまず使うことはない。

 なお、劇中で使用されたキーワード「だるまさんがころんだ」は純粋に比企谷八幡のセンスによって設定されたもの。
 敵の意表を突く、などの理由も無いこともないが、基本的にはただの思い付きである。
 実際に使う段階になってちょっと後悔したのは本人だけの秘密。

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