最新話です。
3兄妹ただいま地獄を見てます。
そして合同演習突入です。
それでは本編をどうぞ。
地獄の修行レベル10……別名“エクストリームガンダム地獄”(命名俺)
それは第1世代から第3世代の正式採用機や没となった機体までありとあらゆるCBの技術が使われた機体が、片っ端から各種100機前後で徒党を組んでたった1体の自機に本気で襲い掛かって来るという、まさに“地獄”と呼ぶに相応しい訓練用VRミッション・・・・・・・
………をさっさと終わらせる。ノンチューンのOガンダムで。
いや、つーかもうこれまでの地獄の修行を散々やってると、もういい加減目とか感覚とかが完全に慣れるね。
気分はもう無双ゲームやってる?みたいな?
というかコンピュータがいい加減馬鹿過ぎる。
対人戦では有り得ないような機械らしいミスとかかますからな、こいつら。
例えば以前何かでも言ったミサイルの雨霰による同士討ち。
最近はアブルホール系統だけではなく、それ以外のラインのガンダムにもミサイルランチャーをもったのが追加された為、その段数や攻撃範囲はさらに凄惨なものとなった。
が、これまでの経験からそういったこまい物を撃ち落とせる位にまで上達した俺の腕ならば、ピンポイントで撃ち落としてそのまま周りのミサイルも一緒に誘爆させて、そのまま自分だけ逃げるという芸当は余裕である。
御陰様で本当にこの攻撃パターンが来たら喜ぶようになったしな、俺……
しかもCP連中何が楽しいのかしょっちゅうこれ撃って来るし……本当にごちそうさまです。
他には、近接戦闘時にフェイント入れてこなかったりとか、武器を壊してやると途端に逃げ回るだけになったりとかetcetc……
まあ、それでも確かに慣れていない人から見れば、ハッキリ言って無理ゲー以外の何物でもない鬼畜難易度なのは変わって無いけどね。
俺だって油断すればたぶん落とされるし。
そんな事を考えながらシミュレータを出た先の光景を見た瞬間、俺はアホ面を晒した。
たぶんメット無かったら、それはそれは面白い表情してたんだろうなと思う。
死屍累々
死体が数多く重なっている事を指す四字熟語。
今俺の目に浮かぶ光景は、正しくそれだった。
…まあ、3人分しかない訳だが。
「……生きてるか?」
「「「………はい(おう)(うん)」」」
うん。返事が返せるって事は、まだ逝けるな。
字が違う?ほぼ同じようなもんだから気にするな。
「ならば今度はレベル3でやってみろ。因みに私は最新版の10をもう30週終わらせたので、今からお前らの夕食を作る。早く食いたければ早く終わらせろ。返事」
「…了解しました」「分かった…」「スイーツ食べたい…「リクエストなら受け付けてやるが」…ケーキ。イチゴの乗ったやつ」
そう来たか。思わず苦笑してしまう。
「了解だ。確か材料は有ったから、それらを使えば1ホールくらい出来そうだな。他の二人は?」
「……糖分が摂取できればなんでも良いので、ネーナと同じ物を…」
「肉………デカイの」
それを聞いて苦笑しながら俺はこう返す。
「了解だ。ステーキでいいな?今日の夕飯はそうしよう…よし。では訓練に戻れ」
言ってから足を備え付けのキッチンへと向ける。
確か材料ならばタンマリあったので、それ位なら作れそうだ、と口の中で呟きながら。
問題はキッチンの設備だが……最悪ザフキエル使うか…ビームサーベルの出力を最低限にすればコンロの代わりくらいにはなるだろ。うん。
「……兄貴、聞いたか……?」
「ああ………つくづく彼と我々の力量差を感じられるな……」
「最新版って事は、一番難しいって事だよね…」
「30週だってよ…」
「単純計算、我々がレベル1で既に梃子摺っている間に、既に15週終わらせていた事になるな」
「それで機体はノンチューンのOガンダム……」
「「「…………アレは本当に、人間か(かよ)(なの)?」」」
……フフフフフ…………言ってくれるじゃないか?ええ?(#^ω^)ビキビキ
「聞こえてるぞ貴様ら。頭に来たからレベル3すっ飛ばして最新版やれ。1週したら終わっていいぞ?」
「「「すいませんでした!!」」」「い・や・だ」
まったく……
初遭遇から、既に二日が経っていた。
残る時間は後五日ほど。
とりあえず、訓練の一環として、“地獄の修行”の最初期バージョン“レベル1”から、今俺がやらされている最新版までを順繰りにやらせている。
…が、流石はマイスターとなるべく生み出されたと自分達で言うだけあって、俺が当時あれだけ苦労していた最初期版、そしてその後に敵機体のAIのレベルが一気に底上げされた“レベル2”を、初見だと言うのに開始からわずか半日でクリアしているのは驚嘆を禁じ得ない。
……まあ、彼らが使っている機体は彼らの愛機のデータを使用しているため、俺とは条件が殆ど違う訳だが…それでも凄いもんは凄い。
……って、ん?
「……」
コロ……コロ……
「………」
…………はぁ……
「……ハロ。摘み食いしようとするんじゃない」
「…ダメカ?」
「駄目だ」
「ケチンボ!」
「うっせぇ」
「センサーテスト!センサーテスト!」
「そういう名目で結局食うつもりだろ。つーかなんだ?今度は味覚センサー取り付けたのか?何の意味があるんだ?」
「我々ニモ人権…ナラヌ“ハロ権”ヲ要求スル!手始メニ美味シイ物クワセロ!!!」
「却下」
「エェー……ナラバ革命ダ!!」
「じゃかましいぞぬしゃあ。どこぞのゲームにそんな話あったからマジで止めろ」
……そういえば、凄いといえば、コイツもそうだったな。
今度は味覚センサーか………いやな?コイツをちょっと前にメンテした時に、なんかよく分からないブラックボックスが存在してたから、何かなと思って調べてみたんだ。
そしたらコイツ、いつの間にか自分の身体の中に4次元ポケットみたいな分けの分からない収納スペースを実装していやがったんだよ!!!
思わず師匠と一緒に盛大に腰抜かしたわ!!!
だって四次元ポケットよ?
未来の世界の猫型ロボットのアレよ?
もう22世紀なんぞすっ飛ばして今や24世紀だが、それでもオーバーテクノロジーである事には変わりない!!!
しかもこれまた頭の痛くなる事に、漁って中に入っていた物を物色してみると出てくるわ出てくるわプラモに美少女フィギュアに戦隊ヒーロー物のオモチャから変身ヒーローのオモチャから、果ては如何考えてもこれR-18物だろと言うような物品まで!!
本関係も凄かった。
週刊誌や漫画雑誌や普通の雑誌は当たり前。
漫画や文庫本や普通の小説、児童向けの絵本も、まだ何とか許せる。
画集やゲームの攻略本も然り。
……だと言うのに次の瞬間出てきたものは、ものすんごくマニアックな種類の官能小説に、エロ漫画にエロ雑誌!!
同人誌なんか当たり前で、下手すりゃ“これ自主制作じゃねーの?”と思う物まで種類は様々!!
その数ざっと300冊以上!!!
危うく姉さんに見つかりそうになったわ!!
因みに普通の本も合わせると、その合計は5000冊以上!!
マジ何処に入っていたっつーか、全部出したら軽く(エロ本込みだけど)図書館できんじゃねーの!?と思うくらいの数だった。
って言うか、俺その直前まで普通に持ってたけど、重さなんか微塵も感じなかったぞ……?
……止めとこう。
これ以上踏み込んだら、なんか何処かから帰って来れなくなってしまう。
そこまで考えた俺は、溜息を一つ吐くと夕食の準備を再開する事にした。
もう既にスープとサラダ、そして3兄妹次男の“ミハエル・トリニティ”ご要望のステーキ自体は出来ているので、後は白米が炊き上がるのを待ちつつ3兄妹末っ子の“ネーナ・トリニティ”、そして長男である“ヨハン・トリニティ”ご所望のケーキ1ホールを調理するだけである。
…のだが。
ビィー!ビィー!ビィー!
「……またかよ?」
「マタダナアムロ」
「…ハァ……ああ、もう。相棒、再調整開始。細かい作業は俺がする」
「サッサト終ワラセタラ、御褒美クレルカ?」
「ステーキ、俺のから一切れくれてやるよ」
「半分ヨコセ」
「……3分の1だ。これ以上はダメだ」
「OK!!OK!!」
そう言って、機嫌良さそうにポーンポーンと跳ねながら、相棒はザフキエルの足元まで飛んでいく。
そしてそのままコックピットハッチを開けて、中へと一っ飛びすると、口からコードを出してザフキエルと――――厳密にはザフキエルに搭載されている、元Oガンダムに搭載されていたGNドライブと――――リンクを開始する。
程無くして、コックピットの中から相棒のこんな声が聞こえた。
「GNドライブ、出力不安定!不安定!ザフキエルトノマッチングに不備アリ!」
「チッ…やっぱりか。これで何回目だ?数えてるだけでもこの2日間だけで4回はあっただろ。単純計算半日に一回の割合でトラブル起きてるとか…」
「ザフキエルニナッテカラ!!ザフキエルニナッテカラ!!」
「…だよなぁ?機体の問題って事か?マッチング不備?…いや、でもキチンとチェックはしたはずだから、普通そんな事無い筈だしな」
「GNドライブ拗ネテル!!拗ネテル!!」
「んなワケあるか!!!お前みたいな超超超高性能AIが積まれている訳でも在るまいし!!……いや、もしかしたら付喪神って事も…無いか…いや、もしかしたら……?いや……でも造られてから100年も経ってる筈が……あれ?今まで月の裏側に浮いてた様な代物だから………いや、でも………う~ん…」
…まあ、今俺が何に悩んでいるかと言うと……見てくれたなら分かると思うが、何故か突如としてGNドライブが安定しなくなってしまったのだ。
当初は機体とのマッチングがちゃんと出来ていないのかと思ったが、相棒が調べたところ、そんな事は無いという事が分かった。
だからこそ分からん。
それ以外に原因らしい原因が無いのだ。
挙句の果てに相棒は太陽炉自体が、“拗ねている”と言い始める始末。
…いっそそれなら良いんだけど…
…と、ちょっとここで今俺が使っているGNドライブの出所について少し説明しておこう。
そもそも、俺の今保有しているこのGNドライブ。実はかなり謎が多すぎる代物である。
本来なら、
…つまり、オリジナルのGNドライブは、全部で6つしか造られていなかった……筈だった。
俺が師匠に拾われる、僅か1ヶ月前までは。
それは、まるで突然現れたという。
実際にその場に居た師匠は、俺にこう語ってくれた。
俺が師匠に拾われる約一ヶ月前。
そのとき師匠はOガンダムの性能テストの為、月の丁度地球と反対側のポイントに居た。
太陽の光は完全に月その物に阻まれ、唯一の光源は、師匠の乗るOガンダムのみ。
少なくとも“その時まで”は、師匠はそう思っていた。
違和感を感じ始めたのは、テストを始めてから、約1時間25分後。
師匠はふとモニターの隅に光を反射する鉄塊色の大きな何かを見つけた。
(……? なんだ?)
嘗ての人工衛星の成れの果てか…それとも、作業中の事故で命の灯火を消されてしまった、哀れな宇宙労働者の名も無き墓標の破片か……
何れにせよ、当時の師匠はこんな辺鄙な場所まで流れてきていた“ソレ”に軽い興味を覚え、機体のテスト序でにソレを持って帰ろうとした。
………しかし彼は、ソレに近付いて行くにつれて今度は自身の目に映る物を信じられない気持ちで見つめる事となる。
(認めたくない。)
…しかし、自身の目に映る物を認めない訳にはいかない。
(存在する筈がない。)
……でも“ソレ”はハッキリと解る位に其処に在る。
(何かの間違いだと思いたい。)
しかし――――――
今の師匠を知る者ならば、信じられないという顔をして見つめるであろう、極限まで狼狽したその表情。同時にグチャグチャになる思考回路。
気付けば師匠は何時の間にか“ソレ”を無意識にOガンダムの手に掴ませていた。
CBに所属している者ならば、一度くらいはその耳で聞いた事が在るであろう代物―――
―――オリジナルの
その後、持ち帰られたGNドライブは師匠の判断の元、計画に支障を及ぼす物として封印が決定。
そのまま師匠達が根城としている、“ある宇宙船”の一番奥で、“半永久的に封印されている”筈だった。
……俺が拾われるまでは――――――――
其処まで思い出した所で、
「調整完了!調整完了!」
という相棒の声で現実に引き戻された。
見上げると、ハッチの上で黄緑色の玉が一個、テーンテーンと跳ねているのが見える。
「コレデステーキ3分の1ナ!!」
序でに嬉しそうな声でこうも言ってきた。
それに俺は苦笑してこう返す。
「……まあ、偶にはもうちょっと御褒美を増やしても良いだろ……序でにケーキも半分くれてやるよ」
「ヤリィ!!!ヤリィ!!!」
そう言って再び嬉しそうな声を上げながら跳ねまくるハロ。
…最近本当に感情豊かになってきたよな…本当は機械じゃないんじゃないか?こいつ。
ドサドサドサッ
と、そこでそんな音が鳴り、俺と相棒は揃って音がした方に顔を向ける。
見れば案の定音の主は3兄妹だった。
どうやらシミュレータのレベル10を終わらせたらしい…って、早過ぎないか!?
まださっきから如何見積もっても1時間半しか経ってないぞ!?
流石はデザインベビーの兄妹だぜ……って、流石におかしいわい!!!
と、俺が戦慄しかけてた、その時である。
「…お…O-01……」
と、ヨハンが死にそうな声を上げて、此方を見る。
何故かその目には悲壮な覚悟が浮かんでおり、それで俺は更に混乱する。
一体如何したというのか?
「ど、如何したヨハン?そんな覚悟に満ちた目でこっちを見て」
「……罰されるのは覚悟しています。ですが、何卒私達からの願いを聞いてはもらえませんか?」
「いや、だから如何したんだ…?」
と、俺が其処まで言った所で、ヨハンは一瞬で体勢を変えると…
シュバッ
ダンッ!
「どうかこの訓練シミュレータのクリアは明日に回して頂けないでしょうか!!??」
……と叫んで、俺に見事なDO☆GE☆ZAを敢行してきた。しかも普通のではなくて俗に言う“ダイビング式”。
見れば他の二人の目にも同じような物が浮かんでいる。
『もう勘弁してください』と。
「………」
思わずメットの中で頬がヒクつく。
チラッと見えたが、全員のシミュレータのモニターに浮かんでいた総被撃墜数は、占めて856機。
単純計算して、もう既に一人約285回撃墜されている事になる。
軟弱者め!!等と言ってはいけない。
流石に誰でも此処までやってクリアできなかったら心が折れる。
特に“井の中の蛙大海を知らず”状態を地で行っていたこいつらは、特にそうなのだろう。
……まあ、俺はこれ初見だったら500回以上やってクリアできない自信があるけどな!!(大笑)
あれ?何故だろう?メカラアセガ……
「……? 何故泣いているのですか?」
「…いや、少し昔を思い出しただけだ。他意はない。……そうだ、な。流石にこれ以上やっても消耗するだけだろう。今日はこれぐらいにして、後は夕食を食べた後、格闘訓練をして終わろう」
俺がそう言うと、ミハエルとネーナから「え~!?」という声が上がる。
喧しいと言ってやりたがったが、グッと堪えて話を続ける。
「…とりあえず、君達のデビュー戦までは、既に5日を切っている。それまでにクリアできれば…まあ、問題は無いだろう」
そう言うと、俺は工具を持って、ザフキエルまで歩いていく。
そんな俺を見て、ネーナが疑問の声を俺に投げかけた。
「あれ?如何したの?」
「いや何。私の機体が臍を曲げたようでな。これから微調整だ。あと夕食はまだ米が炊き上がってないから食べられないぞ。摘み食いなどしないように。分かったな。特にミハエル」
「って、俺は名指しかよ!!!」
「当たり前だ馬鹿者」
そう言いながら、俺は再び機体に向けて歩き出した。
後ろから次男のギャーギャー言う声と、それを宥める長男と長女の声が、聞こえていたが……いつも通り無視する事にした。
4日と16時間後
タクラマカン砂漠:三大陣営合同演習地
ピッピッピッピ…ピピピ
「よし…此方ザフキエル、ポイントに到着した。アイン、ツヴァイ、ドライ。スローネ各機状況報告」
『此方アイン。ポイントに到着。今後の指示を待つ』
『此方ツヴァイ、ポイントには到着済みだぜ』
『ドライ、ポイントにとーちゃくっと……で?これからどうすれば良いの?』
…どうやら全機問題なくポイントまで辿り着けたらしい。
まあ、これ位は出来て当たり前だからな。
むしろ発見されたとか言われたら、後で問答無用で殴る。
・・・っと、指示出さなきゃいけないんだったな。
いつもはこんな事しないから、どうにも調子狂うな…
「とりあえずは周囲に動きがあるか、指定時間になるまではその場で待機だ。それ以降は基本的に各自の判断で動いてもらう事になる。ただし、此方の指示にはある程度従ってもらうぞ。良いな」
『アイン了解』
『ツヴァイ了解だぜ!』
『ドライりょ~かい!!』
元気の良い返事が返ってくると同時に、俺はフッと息を吐く。
この4日間、一応三人とも地獄の修行はある程度は終えていた。
…まあ、レベル10に関しては、被撃墜数平均で約500機超えた所でやっとクリアみたいな感じだったけど。
それでもたったの4日間で、レベル1~9をあっという間にクリアできるようになるとは恐れ入った…
おそらく今の3人の実力なら、この程度のミッションは何とかなる筈だ。
……それでも心配はある。
何せ戦場なんていう物は、シミュレーションとは違って、色々な不確定要素によって様々に変化する物だ。
理不尽さや敵の機体性能等は、遥かに“地獄の修行”の方が上だとしても、ただ敵が戦術も無しに、一斉に此方を殺しに来るだけのあれとは違い、実際の戦場では敵司令官による“作戦”が入ってくるため、どうなるかは分からない。
(………ああ、女々しいな、俺。)
ふと、そんな言葉が胸中に飛来する。
認めたくは無いが、どうやら俺は一応の教え子でもあるあの三人が上手くやれるのか不安らしい。
いや、今の実力なら大丈夫だと分かってるんだけれど、どうにも初日の“アレ”が…ね?
え?自分自身は如何なんだって?
……まあ、何とかなるんじゃね?だって俺だし。
と、其処まで考えた時だった。
ドーン!!
と言う音と共に、視界の隅で爆炎が上がる。
距離的には、此方からかなり離れているようなので、直ぐにこちらに来るようなことは無いだろう。
……確かあっちはミハエルの担当区画だったな。
念の為、一応全員に状況報告させておくか。
そう思った俺は、直ぐに秘匿回線を開くと、三人に通信を入れた。
「各機状況報告。特にツヴァイ。戦闘が始まった様なエフェクトが見えたが、如何した」
すると間髪入れずに三人から返事が帰ってくる。
『此方アイン。デュナメスとユニオンのMS部隊が戦闘を開始。敵部隊の中には対ガンダム用の特殊部隊も確認できます』
『こっちは人革連の連中とキュリオスが交戦中!なんか見慣れないピンク色のティエレンがいる事から、どうやら超兵も入ってるっぽいぜ!!』
『こっちはユニオンとヴァーチェが戦闘中よ!!こっちは特に変なのは居ないけど、一部の機体が捕獲用の電磁フィールド発生装置を持ってるみたい!』
ほう…もう始まったのか………って、ん?待て?
「ドライ、もう一度聞かせてくれ。一部の機体が…なんだって?」
『だーかーらー、一部の機体が“捕獲用の電磁フィールド発生装置”を持ってるんだって。わかった?』
その答えを聞いて、俺は簡単に思考の海へとダイブした。何か妙に引っかかるのだ。
(……捕獲用の?確かにこんな状況なんだから、数で押せばもしかしたら捕獲は出来るかもしれないけど、流石に準備が………まさか?!)
と、そこまで考えて咄嗟に周囲を見渡す。
すると丁度上空2時の方向に、緑色の粒子を撒き散らしながら此方へと降りてくるトリコロールの機体と、赤と白を基調とした
と、次の瞬間。
「アムロ!!アムロ!!9時ノ方向ニ敵機!!デカイノトチイサイノ!!」
相棒の声にハッとして其方へと目を向ける。
其処にはこの間見た、青色のイナクトと、イナクトの上半身を大型の一つ目ユニットに取っ付けたような大型の機体が、かなりのスピードで此方に近づいていた。
向かう先は……トリコロールの機体、エクシア。そしてツートンの機体、サキエル。
瞬間的に、俺は3人に叫ぶように声を荒げた。
「やはり今回のこの一件はガンダム捕獲の為の罠か!!」
と。
咄嗟に三人に指示を飛ばす。
「各機よく聴け!おそらく今回の演習は今言った通りにブラフ。故に若干ではあるが予定を変更する。指定時間は繰り上げて今から5分後。ドライはステルスフィールドを自身の判断したタイミングで展開しろ。あと、敵部隊にこれ以上の増援も考えられる為、戦闘はなるべくスピーディーに終わらせろ。良いな?!」
『『『了解!』』』
同時に俺はレーダーの範囲を最大にして、三機の動きを追う。
ヨハンとネーナはどうやら出るのを我慢していたらしいが、ミハエルの奴は我慢できなかったらしい。
レーダーを見る限りだと、敵を表す光点とツヴァイを表す光点がぶつかった後に敵を表す方が消えたので、どうやらもう戦闘に介入したらしい。
血気盛んな事だ。
ただ……
「…動き出すの、流石に早すぎない?もしかして、アイツ“スピーディーに終わらせろ”って所しか聞いてなかったり?俺指定時間は5分後ってちゃんと言ったよね?」
「アムロ、アキラメロ」
「ですよねー…」
俺のそんな呟きは、今俺の目の前でも行われている4機のMSの攻防の音にかき消されて、砂漠の夜空へと散っていった。
「つーか…」
「ドシタ?ドシタ?」
「…こんなに近くに居るのに、気付かれないって、どういう事なの……」
なお、4機との距離は大体250m。めっぽう近いから流れ弾とか普通に飛んでくる。
「……」
無言で返す相棒が、何気に珍しかった。
5分後
「おーおー、押されっ放しだよサキエルとエクシア…いや、良い感じに反撃できてるから互角なのか?」
先程のあの呟きから5分が経った。
指定した時間になった為か、レーダーで見る限りスローネの残った二機も戦闘を開始している。
そんで持って俺は……まだ気付かれていない(汗
いや、何でか知らんけど、本当に気付かれない。何故とか聞かれても困る。むしろ俺が聞きたい。
というか、ホントに何で?確かにステルス起動しっぱなしだしマントでカムフラージュもしてるけど、戦闘の余波でしょっちゅうマントははためいて捲れてるし、ステルスも表面のGN粒子が何処かへと流れていって穴だらけ。
…それでも気付かれないって一体……(汗
「…なあ相棒。俺って其処まで存在感無いか?」
「トイウカ地味。オーラトカ諸ニ一般人」
「…地味……地味……か……」
……まあ、しゃあないか。
地味なら地味で利点もキチンとある。
一般人とか最高じゃないか。潜入にはうってつけだろそういうの。うん。
……な、泣いてないもんねぇ!!!
……兎も角、それにしてもここまで気付かれないとなるともう呆れるのも忘れて感嘆するな。
……まさか、気付いてたけど無視してましたって事は無い…よな?
ありそうで怖いんだが。
もしそうだったら本気で泣くぞ。泣けるぞ。
ピピピピ
『こちらツヴァイ!キュリオスの救助と、人革連のMS部隊の排除完了!!ま、何機か逃がしちまったけどな』
と、ここまで考えた所で、ミハエルから通信が入った。
流石に一番に戦闘に介入していただけあって、終わるのも早かったらしい。
「了解した。流石に人の話を聞かないで一番に戦闘に介入しただけあるな」
『いっ!?いや、それはキュリオスが捕獲されそうだったから介入しただけで、別に面白そうだったから介入したわけじゃないぜ!?第一、アンタ言ってたじゃんかよ“それ以降は基本的に自身の判断で動いてもらうって”!?』
「“基本的に”と言っただろうが……それに………チッ。ああ、もう良いか」
『おおい!!??』
心外だ!と言わんばかりにミハエルが吼えるが、こっちは今それどころではない。
4機の攻防の中心地からザフキエルまでの距離は、ジリジリとこっちに迫っていたのか或いはこっちから迫ったのか定かではないが、既に100mを切っている。
そろそろ攻撃の流れ弾の飛んで来る数が凄まじいので、そちらに集中しなければならない。
俺はとりあえず吼え続けるミハエルを宥めると、簡単に指示を出した。
「とにかく、以降の動きを伝えるぞ。ツヴァイはキュリオスを援護しながら指定ポイントまで撤退。追撃部隊を確認した場合は僚機の安全を確かめた後に迎撃に当たれ」
『ポイントまで到着した場合は?』
「遊撃行動への移行を許可する。ただし制限時間までだ」
『OK!!』
そう言うと、ミハエルからの通信が切れる。
とりあえずこれで第一段階クリアってとこだろう。
思わず溜息が口から漏れる。
ピピピピ
『此方アイン。デュナメスの救助及び敵特殊部隊の撃退を完了。被弾は0。エネルギー残量は70%といったところです』
「了解した。流石は長男だな。先に戦闘を始めたミハエルが既にキュリオスと共に指定ポイントまで向かっている。デュナメスと共にそちらに合流し、ポイントに到着次第遊撃行動に移れ。追撃部隊を確認した場合は『僚機の安全確保を最優先し、安全を確保した事が確認できた後に迎撃行動に移ります』……うん。良く解ってるじゃないか。それで頼む」
『了解しました』
そう言って、ヨハンからの通信も切れる。
う~ん流石は3兄妹の長男。
頭が良く回るな。
お蔭で俺が命令する意味あるのか無いのか全く分からん……
「…で、あと残るは『ピピピピ』お、きたきた」
通信を開く。
案の定相手はネーナだった。
『此方ドライ!ヴァーチェの救助とユニオン軍の撃退に成功!!敵エース機と思われる機体も撃墜しちゃった!!』
「お、本当か?良くやったな。帰ったらご褒美くれてやろう。何かリクエストは?」
俺がそう言うと、彼女は『ホント!?』と言ってから、考え始めた。
うん可愛い。ネーナは刹那達と違って年相応の可愛さがある。微笑ましい。
そんな彼女はやがて何か思いついたのか、満面の笑みで俺にこう言った。
『それじゃあね……パフェ!!パフェ食べたい!!イチゴパフェ!!』
それを聞いて思わず苦笑が口から漏れる。
何とも女の子らしい。
が、そこまで和んでいられる状況ではないので、一気にスイッチを切り替えて指示を出す。
「了解だ。楽しみにしていろ。と、それは置いといて、だ。この後お前はヴァーチェと共に指定ポイントまで撤退しろ。先にアインとツヴァイが向かっている筈だから途中で合流すると良い。追撃部隊が出てきたら、キュリオス、デュナメス、ヴァーチェの援護に回れ。迎撃はアインとツヴァイにさせろ。指定ポイントまで到着したら、制限時間一杯まで遊撃行動を許可する。まあ、面倒臭かったら、もうその時点でステルスフィールド展開して良いぞ」
『ラジャ♪パフェ、ちゃんとお願いね♪』
「分かった分かった」
『絶対だからね!!』
そう言ってネーナも通信を切った。
これでチームトリニティは全員が任務を完了した事になる。
これで第二段階クリア……と言う事だろう。
とりあえず俺の個人的なノルマはこの瞬間に達成された事になる。
100点満点中60点といった所だろう。
あとは……俺の仕事が上手く行くかどうか、だ。
「……さて、相棒。そろそろ暴れるぞ?いい加減此処まで無視されると腹が立ってくるしな」
「ヤッチマウゼ!ヤッチマウゼ!」
「おう、ナイスな返事だ」
そう言いながら、エクシアを見る。
そっちは今、赤っぽいオレンジ色のあのデカ物が展開している蜘蛛のような足から発生されたプラズマフィールドで身動きが取れないでいた。
サキエルの方も、青いイナクトに阻まれて援護は望めそうに無い。
それを確認した瞬間、俺はザフキエルを一気に飛び上がらせると、最高速度でデカ物の上まで移動してビームサーベルを肩に付けたまま展開。
そして――――――
「どっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!!!」「オンドリャアアアアアアアアアア!!!!」
――――――相棒と共に威勢の良い方向を上げながら急降下して、デカ物の下半身を串刺しにすると、そのままビームライフルを何発か発射して、破壊する!
ドォォォォン!!!
腹に響く爆音と共にザフキエルが爆風に包まれるが、あまり気になる程の事ではない。
即座に地面に落下してから体勢を整えると、振り向きながらビームライフルを構える。
そしてそのまま一言。
「「ガン(俺)ダム、見(参)参(上)!!」」
……あ~…うん。これは締まらねーな……無いわ。うん。
『どうだ!!アグリッサのプラズマフィールドの味はぁ!?機体だけ残して消えっちまいな!!クルジスのガキがぁ!!』
「あああああああああアアアアアアアアァァァァァアアァァァアァァアァァァア!!!!」
三大陣営の合同演習への介入。
その最中、激しい猛攻に曝された私達は、各方面へとバラバラに分断された。
幸いにしてユリの乗るサキエルと一緒だったが…そこへヤツ―――アリー・アル・サーシェスが、イナクトの下半身に、嘗て太陽光紛争時に使用された“アグリッサユニット”を取り付けて、僚機の青いイナクトと共に私たちに襲い掛かってきた。
すぐさま応戦したが、途中ユリは青いイナクトと一騎打ちの状態となり、対して私はアグリッサユニットのプラズマフィールドに捕らわれて膨大な電撃の渦に叩き込まれていた。
「アアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
電撃に身を焼かれながら、私の脳裏に今までの光景が思い浮かぶ。
これが走馬灯、という物なのだろうか。
つまり私は、このまま死ぬ?
不意に頭の中に流れていた光景が、幼い頃の光景を映し出す。
そこでは、まだ小さかった私が、瓦礫に寄りかかって泣いている所だった。
……ああ、覚えている。確か、あの男に見捨てられて、彼が私の前から居なくなった後、あのガンダムを見て、その後一人ぼっちになった事に気付いて一人で泣いたのだっけ。
周囲では死んだ仲間の亡骸や、崩れ落ちたアンフの無残な姿が見える。
それを見て、私の中に明確に“死”という言葉が浮かび上がった。
(……死ぬ…?……死ぬ、のか?)
この歪んだ世界の中で……?何にも、ガンダムにもなれぬまま……?
あの時の様に失い続けたまま………たった一人で朽ち果てるというのか?
『刹那っ!!!今助けに…っくそっ!!邪魔するなぁ!!!』
不意にユリの声が聞えた。
電撃による異常な苦痛に耐えつつ、辛うじて動く目だけをそちらに向ける。
そしてそこで青いイナクトを何とかして振り払おうとしているサキエルの姿を見て、私の胸に、あの時私を助け、彼が立ち向かっていった白いガンダムの姿が思い浮かぶ。
…同時に、心の中に死に対する恐怖というものが生まれ始めた。
「ガン、ダム…………」
不意に口から言葉が漏れる。
同時に、ある思いが―――――あの日置いてきたはずの、死の恐怖が、ゆっくりと私を犯し始める。
(……嫌、だ………私は…………私は…まだ……死に、たくない…)
「ガン……ダム……!!」
やらなくてはならない事が……沢山あるんだ…!!
「ガン…ダム!!!」
必死に電流に抗って腕を動かそうとする。
ともすれば吹き飛びそうになる意識を、必死に呼び戻そうとする。
ガンダムを――――――エクシアを、動かそうとする。
「ガン、ダム……!!」
自分の半身とも言うべきこの機体を―――――――――――――
――――――どっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!!!』『オンドリャアアアアアアアアアア!!!!』
―――瞬間、響き渡る怒声が私の耳朶を打つと共に、私を戒めていた電撃が一瞬で消える。
変わりに襲って来たのは爆風による衝撃。
上手く動かない腕を必死に動かして、エクシアに防御体勢をとらせる。
ドォォォォン!
「クゥっ………!!」
ともすれば飛びそうになる意識を必死に保って、衝撃に耐えながら、必死に目を開く。
そこには――――――
エクシアと良く似た配色の身体。
しかし全体的なシルエットとしては、一般的なMSと比べると、やや逆三角形を重ねたような感じがする。
肩からはビームの刃を放ち、右手にライフル、左腕にシールド。
そして…身体を覆う、以前会った、あの白いパイロットスーツの人物が乗っていた機体に付けられていた物と、同じ様なマント。
…しかしその顔は……
「ガン………ダム?」
私の良く知る、あの日見た、白い、光の翼を持ったガンダムの物と酷似していた。
―――と、次の瞬間。
『『ガン(俺)ダム、見(参)参(上)!!』』
後ろに振り向いたそのガンダムから、何処かで聞いた事のある声と共に、何処までも締まらないキメ台詞…といったか?
それが放たれた。
『『『「………」』』』
瞬間、その場を何とも言えない雰囲気が支配する。
敢えて言わせて貰うならば、今のこの状況はこの一言に尽きるだろう。
これはひどい。
『バっ!?おまっ!?台詞違う!!何やってんだ相棒!?』
『絶対コッチノホウガカッコイイ!!モモデスガナニカ!?』
『作品シリーズ全然違うしそもそも局が違うわ!!??しかもそれ何年前だよ!?』
『作者カラスルト、オヨソ7年以上前ダ!?』
『何で疑問系なんだよ!?つーかメタ発言過ぎるぞ!!少しは自重しろ!!何でシリアスな局面で漫才せにゃあかんのだ!?』
『ソレガハロクオリティー!!!ナントカシテモライタクバ“ハロ権”ヲ認メロ!!!』
『却下じゃボケェェェェェェェ!!!!!!!!!!!』
…はぁ…
「テラカオス……」
思わずそう呟いた私は悪くない筈だ。
意識を手放しそうになったのも、絶対に悪くない筈だ。
確実に。
うん。
如何でしたでしょうか?
どうも雑炊です。
とりあえず今回は地獄の修行とアムロのGNドライブについての簡単な説明と、合同演習への介入の最初を書いてみました。
GNドライブについては、今は「ああ、そんな感じなのね」と、思ってくれると幸いです。
とりあえず言っておくと、“フェレシュテが持ってる物とは別物”です。
そして次回からVSサーシェスとアイツのコンビです。
後プラスして、“とある部隊”を出す予定です。
ヒントは“最低野郎”。
分かりますかね?
ただ、あくまでそれっぽいだけです。
それではまた次回