ガンダム00  マイスター始めてみました   作:雑炊

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お待たせしました。
遠く離れた西の土地への赴任確定等、色々と諸事情が重なってゴタゴタし始めたのでちょっとここから投稿ペースが遅れていきます。
ご了承ください。

それでは本編をどうぞ



十五話―――なんか俺に最近良いとこないぞー……と、O-01がボヤいておりました(byヨハン)

 

「で?結局あの後どうなったのだ?」

 

厨房にて大惨事を繰り広げていた三兄妹を、気を抜けばアッサリと落ちてしまいそうな脇腹の痛みに耐えつつ(色んな意味で)鎮圧した後、即行鎮痛剤を自らに打ち込んで血で真っ赤になった絆創膏を取替え、すぐさま夕飯を作り直し三兄妹に振舞う。

幸いにも駄目になった食材がそれ程無かったので、直ぐに調理し直す事が出来たので、それ程時間は遅くない。それでも9時を当に回ってしまっているが。

…え?パフェ?食後に作るって言ったんだけど、「明日で良い」って言われたからまだ作ってないわ。

因みに今日のご飯はお粥……ではなく、鍋の中に色々と材料をぶち込み、醤油ベースで味付けをした雑炊である。

理由?いや、単にお粥だと三兄妹は食った気がしないだろう。三人が作ろうとしてたお粥のレシピ見たけど、普通の白粥に梅干一個落とすタイプの奴だったしな。

…え?それお前の為だけじゃないのかって?言っとくがこいつら自分達の分も用意しようとしてたのか、半端無い量作ろうとしてたからな?今使ってる鍋にギリギリ入り切る位の量作ろうとしてたからな?

 

と、そんな事言ってる場合じゃねえわな。

取り敢えず箸を一旦止めて、三兄妹からの報告を待つ。

暫らくしてから、ヨハンが掻い摘んで説明してくれた事を聞く所によると、

 

動作不良が起こった直後にアストレアがビームサーベルを振り下ろす→ザフキエル辛うじてそれを避ける。が、中破する→マズイと思ったヨハンがビームライフルでプルトーネを牽制→向こうが離れた所を狙ってミハエルが一気に切り込み、選手交代→二人が戦ってる内に、ネーナが中破状態のザフキエルを抱えて母艦に一時帰還→ある程度ミハエルとプルトーネのマイスター―――フォンの戦闘が長引いた所で、ヨハンの命令によりHAROがヴェーダに連絡して、向こうの首についている反逆防止用の爆弾を爆破→それでもまだ動いたのでミハエルが戦闘続行→止めを刺そうとしたところでプルトーネのコアファイターで逃げられた

 

…という事になっていたらしい。

……うわー凄いなー。

 

…え?誰がって?勿論フォンだけど?

だって首を爆弾で吹き飛ばされても生きてる上に、戦闘も続行できるとか……地味に凄いだろ。

俺だったら絶対無理だ。と、言うか、人間辞めてない限りは誰も出来ないと思う。

そんな事を考えながら、手元の空になった小鉢に鍋から雑炊を掬って、そこにポン酢を掛ける。

元がお粥だったので若干味が薄いかなと思っていたら、案の定だった為、少し掛けると良い塩梅になるのだ。個人的には少しと言わずにドバッと入れたいものだが、腹の傷を考えると少ししか入れられないのがちょっぴり残念だったりする。

へ?メット被ったままどうやって飯食ってんだって?メットのバイザーを口元だけ開けてるだけだ。

因みに内の身内の中では、師匠は俺と同じでドバッと入れる派。他、姉さん達は至って普通に少し入れる派だったりする。

 

で、俺に報告しているトリニティ3兄妹なのだが……

 

 

 

 

ダバダバダバダバ・・・・・・・・・

ブチュチュチュチュチュチュ・・・・・・・・・

パクパクパクパク・・・・・・・

 

 

「……やべぇクオリティ高けぇなぁ、オイ」

 

「? どうかしたの?」

 

「…いや」

 

言いながら箸を置いて、少し右手で頭を押える。

う~ん…まさかこういうパターンでこられるとは思っていなかった。

何がって?今から説明するよ。

 

まず、ヨハンだが……何故かポン酢ではなく、単なる酢を手元の小鉢にダバダバぶっこんでいる。インスタントラーメンに入れるのならば俺も共感できるのだが……キツくないのか?

 

ミハエルは……まあ、なんというか、ケチャップをこれでもかと言うくらいに掛けてから、グッチャグッチャと混ぜている。……ケチャラーだっけ?こいつ?

 

で、最後のネーナなのだが……見ている分には、至って普通である。……“見ている”分には。

問題なのは…この子、偶にではあるが、人の目を盗んで手元の小鉢に砂糖を少しだけ入れているっぽいのだ。実際、今も下に手を下ろしたと思ったら、次の瞬間小鉢の上に持ってって、指の間から何か落としてるもの。

 

……俺が言えた義理ではないが、この三人、もしかして味覚バカ?特にネーナ。

 

「……ミハエル」

 

「んぉ?ふぉひた(どした)?」

 

「口に入れたまま、喋るな。汚いから………まあいい。ちょっとケチャップとってくれ」

 

「おう。ふぉれ」

 

「すまん」

 

ミハエルからケチャップを受け取った後、じっとそれを見つめる。

……まあ、『食ってもいないのに頭ごなしに否定するのもどうか』と思ったから、まず手始めにこれからやってみようと思ったが……実際、やってみようとすると結構勇気が居るな。

……しかし、怖気づいている訳にもいかないか。

そう思いながら、空になった小鉢にまた雑炊を追加、そしてそこへとケチャップを投下し、混ぜる。

……それでは。

 

「…いざ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論;どれも案外と美味かったです。

 

というか俺もバカ舌の持ち主にカテゴリされる人間だから、不味いと感じるわけがないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなカオス過ぎる夕飯から、丸三日が過ぎた。

パフェ?キチンとあの後作ったよ3人分。メッチャ喜んでくれたよまた作ってくれとせがまれたよ脇腹がメッチャ痛いんですけど。

……うん、痩せ我慢はするべきじゃないね。

あの後、飯食って大体10分くらい経ってからまた突然痛み始めたよ。

たぶん、鎮痛剤が切れたか何かだと思うのだが……うん。焼け付く様な痛みっていうのはああいう痛みの事を言うんだ、と、再度無理矢理理解させられた。

まあ、それでも耐えられない痛みではなかったから、結局その状態で作ったけどねパフェ。

作り終わってから盛り付けて三人に渡した後一息ついた直後から、次の日の朝まで記憶が無い事態に陥ったけど。

 

人間って直立不動の状態で気を失ってもそのまま立ち続けることができるんだね。びっくり。

 

起きたときに凄まじい勢いで3人に心配されたよ。特にネーナなんか半分泣いてたし。

因みにいまだに痛い。

三日前よりかは遥かにマシにはなったけど、それでも激しく動く際に動きを阻害するのには十分だ。MSの操縦中の咄嗟の事態に反応する時、普通に影響が出るのが目に見えている。

 

(……まぁ、どの道今回は別行動なんだけどもね。)

 

等と考えながら、つい昨日自分と三兄妹に送られてきたミッションプランを思い出す。

向こうの今回のミッションは、アメリカはMSWAD基地にいる………誰だっけ?ま、良いか。確か、其処に居る何とかって博士の抹殺がメインのミッションだったはずだ。

…正直“抹殺”っていうのには、心底気が乗らない………これがもしも俺に来ていたら、傷の具合やその他諸々の事をこじつけて間違いなく拒否した所だ。

が、今回のミッションは俺ではなく三兄妹に対して直接出されたミッションで、俺が口出しできるような事ではない。

で、肝心の俺に対して来たミッションだが……

 

ピピピピ・ピピピピ・ピピピピ

 

「指定ポイント到着!指定ポイント到着!」

 

「了解だ。ヨハン、後は大丈夫だな?」

 

『問題はありません』

 

「ミハエル、ネーナも大丈夫だな?」

 

『おう!』『もっちろん!』

 

「よし……それでは、そちらのミッション成功を祈っているぞ。油断はするなよ……は、また後で会おう」

 

そう言ってから通信を切って、ザフキエルを反転させる。

向かうのは、スペイン北部にある、CB所有の秘匿ドック。

そしてその目的は…………もう一体の、相棒の回収。

 

「……ま、お前とはお別れになるって言うのは、ちょっと寂しい物があるけどな」

 

誰に言うでもなくそう呟いて、コンソールを撫でる。

色々とトラブルを引き起こしてはくれたが、ザフキエル自体は、俺は其処まで嫌ってはいなかった。最近は寧ろ愛着も湧いてきてたしな。因みに今は大破した左側の部分をスローネツヴァイ用の予備パーツで補修し、そこにシールドとサーベルをザフキエルのときと同じ様に取っ付けた状態だったりする。

 

(…感傷に浸ってる場合じゃ、無いか。)

 

息を吐いて気を入れ直す。

軽く脇腹を叩いて、傷の具合をチェック。

痛い。

けど、歯を食い縛れば耐えられない痛みじゃない。全力で戦って10~15分程度の時間なら無茶も出来そうだ。

 

「……んじゃ、行くぞ……頼むぜ、相棒。頼むからAEUの基地近くで機嫌を悪くしないでくれよ……」

 

呟いて、機体を最高速度でかっ飛ばす。

今の所嫌な予感はしないが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニオン領 アメリカ MSWAD基地

 

 

 

外は生憎の曇り空が広がる中、ユニオン技術者“レイフ・エイフマン”は自分の研究室でガンダムの動力と思わしき部分から発生される粒子、ならびにその動力機関についてのデータを再確認していた。

 

(…私の仮説通り、ガンダムのエネルギー発生機関がトロポジカルディフェクトを利用しているならありとあらゆる不可思議な点についての辻褄が合う!ガンダムの機体数が少ない理由も、200年以上の時間を必要としたことも……あのエネルギー発生機関を作れる環境はおそらく地球圏では無理だろう……だとすれば提示された条件下で誰にも気付かれること無く製造を行える場所は……木星か!?だとすれば考え付く事柄は120年前にあった有人木星探査計画しかない!まさかあの計画がガンダムの開発に関わっておったのか?!だとしたら、イオリア・シュヘンベルグの真の目的は戦争根絶ではなく………)

 

エイフマンの中で、段々と真実へと至る為の点と点が線で結ばれていく。

しかしその時、目の前のモニターに表示されていた数列や文字が消え去った。

 

「っ!?な、なんだ!?」

 

驚いて立ち上がるエイフマンを余所に、事態は展開する。

続いて彼の問いに対する答えが暗くなったモニターに表示された。

 

You have witnessed too much…(貴方は知り過ぎた)”と。

 

「なに!?」

 

あまりにも物騒なその言葉に驚く暇もなく、続いて基地内に警報が鳴り響く。

 

「何事じゃ!」

 

咄嗟に彼は基地管制に連絡を入れる。

帰ってきたのは悲鳴混じりのオペレータの声。

 

『観測室より通達!ガンダムと思われるMSが三機、EW9877方面から当基地に向けて進行中!』

 

「なんと……!」

 

エイフマンは即座に頭を働かせ、同時に立ち上がる。

 

「まさか、軍内部にも協力者が!?」

 

そうでなければたった今自分がガンダムの真実に近づいたことをソレスタルビーイングが知りえる筈が無い。

咄嗟に自分の机という机を調べながら、彼の頭にはある一つの仮説が浮かび上がっていた。

それはどこまでも真実であった。

 

(いかん!!だとすれば彼らの狙いは……!)

 

「この私か…!?」

 

彼がそう呟き、天井を見上げようとした瞬間に、その背後から極大の赤い光の奔流が迫り、それが部屋に至ったと同時にエイフマンの意識はその肉体ごとこの世から文字通り塵一つ残さずに消え去っていた。

 

それはユニオンの誇る天才科学者の、あまりにもあっけない最後の一瞬となった。

 

唯一エイフマンという科学者にとって幸運だったのは、以前から手書きの研究ノートを電子化して自宅のPCに保存する事癖を付けていたお蔭で、その研究ノートはこの世から彼ごと消滅するという危機を免れたという事実だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ミッション、完了……二人とも、撤退するぞ」

 

『え~?ヨハン兄、もう?』『シケテンナ!シケテンナ!』

 

『んだよ、暴れ足りねぇな…』

 

そんな二人の声を聞いて、私は内心で溜息を吐いた。

確かに、私達はあの地獄と言う言葉すら生温い苦行を乗り越えた(とは言い難いが)結果、確かにかなりの実力を付けたと言える。

しかし、今回は当初予定されていたミッションの進行とは少し違うのだ。

 

「我侭を言うな。このまま戦闘を続行すれば、O-01と合流する前に太陽炉の粒子が切れるぞ。……それに、あの状態の彼を一人で何時間も待機させるつもりか?」

 

『……あ、忘れてた』

 

『チッ…りょーかい。んじゃ、さっさとトンズラして、ポイントに向かおうぜ』

 

『さんせー』『シャーネーナ!シャーネーナ!』

 

そう言って、二人は機体を翻して離脱を開始した。

それを確認したと同時に、私は最後に自身がエネルギーの奔流を撃ち込んだ基地の惨状を目に焼き付ける為に、正面に向き直る。

 

と、次の瞬間、視界の隅に黒い3つの機影を私は認識した。

 

瞬間、その機影から、リニアガンが乱射される。

 

「ムッ!」

 

確認するかしないかの所で、私の身体は反射的に回避行動を取っていた。

同時に、右手のライフルで牽制の意味を込めて何発かビーム弾を放つ。

すると次の瞬間、3機の内の一機が隊列を崩して此方に突っ込んできた。

早い。瞬間的な加速量だけであれば、スローネよりも上だとぼんやりと思う。

その1機――――オーバーフラッグは空中で巡航形態から人型形態に変形すると、ソニックブレイドを展開して斬りかかって来た。

咄嗟に左手でビームサーベルを抜いて受ける。

至近距離から、プラズマとGN粒子のエネルギー干渉音が鳴り響く。

 

『兄貴っ!』

 

「大丈夫だ!先に行け!!」

 

言ってから、ビームライフルを至近距離で放つ。

が、その一撃は向こうの繰り出した蹴りによって向きを逸らされた。

 

実に良い腕前だ。

 

漠然と、そう思う。

おそらく機体の性能が五分であったのならば、互角以上に此方と渡り合えるだろう。

無意識に口元に笑みが浮かぶ。

不思議と気分が高揚してくる。

おそらくそれは、戦士としての私の本質が強敵の出現に対して歓喜している証拠だろう。

 

(…やれやれ…私も二人の事は余り言えんな。)

 

…しかし、悲しい事に、今はこの戦いを長引かせられるほどの余裕は、無い。

同時に、向こうと此方では機体の性能差という決定的な溝がある。

 

先程やられたように、向こうのブレードを保持していた方の腕を、足で蹴り飛ばす。

当たった瞬間、向こうの腕は(ひしゃ)げてしまった。

同時に衝撃でバランスを崩したのか、フラッグが仰け反る。

その隙を見逃す事無く、フラッグの左半身をサーベルで切り裂き、同じ様に左側も切り裂く。そしてダルマになった所で、ライフルの照準を腹部にあるコックピットに合わせて、引き金を引く。

 

「さらばだ」

 

不意に口から溜息を漏らすように声が漏れた。

放たれたビーム弾は、寸分の狂い無くフラッグの腹部へと吸い込まれていく。

瞬間、爆発。

それを確認するかしないかのタイミングで、予めライフルの下部に取り付けておいたマルチプルランチャーからGN粒子を含んだジャミング能力を持つ煙幕弾を数発放つ。

ポンッという気の抜けた音と共に、視界が赤を薄っすらと含んだ白い煙に覆われる。これで向こうのレーダー、及びセンサー類はまともに動く事は無いだろう。

機体を翻して、作戦領域から最高推力で離脱する。

粒子残量をチェック。残りは61.3%。

O-01との合流ポイントはスペイン北部のアジトらしいので、道中沿岸部のアジトに立ち寄って充電をする必要がある。

その事を鑑みると、戦闘はあと出来て2回が限度だろう。

フッと息を吐いて正面を見る。

少し離れた所にドライとツヴァイが見えた。どうやら待ってくれていたらしい。

通信を入れる。

 

「すまない、少々手間取った」

 

『ずりぃぞ兄貴!一人だけで楽しみやがって!』

 

『そうよ!!あたしも暴れたかったのに…』『ザーンネン!ザーンネン!』

 

「そう言うな…実際、粒子残量の事を考えれば、あの状態で相手を出来たのは私だけだったからな……まぁ、次はミハエルに譲るとしよう」

 

『やりぃ!!』『え!?あたしは!?』

 

「ネーナの機体は先程の砲撃で粒子を使い過ぎている。次の充電が終わるまでは、戦闘は無しだ」

 

『ちぇー……』

 

『ザマァ!ザマァ!』

 

『うっさいわよ!!』

 

そう言って、ネーナがHAROを叩いた。

その様子を見て、ミハエルが笑っている。思わず私も口元に笑みを浮かべた。

出来る事なら、このまま穏やかに行きたい所だが……さて、どうなるか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AEU領 スペイン 北部上空

 

「“…これが僕なんだ。誰かの陰になりたかったんじゃない。…納得させてみろ。お前が僕をこんな風に造り、そしてこのままにしておこうとする訳を”♪……」

 

個人的に気に入っている、2~3世紀くらい前のとある曲を口ずさみながら、俺はザフキエルを飛ばしていた。

因みに只今上にも書いてあると思うがスペイン北部上空。

流石は大陸と言うだけあって、雄大な自然が眼下に広がっている。

今の所、太陽炉が臍を曲げる傾向も無し。至って順調に目的地へと進めていた。

 

(…おや?)

 

不意に視界の隅っこに、華やかな催し物の気配。

カメラを望遠モードにして覗いてみると、そこは人気のない緑の丘の上にぽつんと建っている教会で、その中庭で、スーツやドレスに身を包んだ人達が白いタキシードと白いドレスに身を包んだ一組の男女を祝福しているのが見えた。豪勢な料理がテーブルの上に並んでいる。

どうやら、結婚式をやっているらしかった。

思わず、笑ってしまう。

今のこの混沌としたご時勢に、まるで「自分たちは関係ありません」と言って喧嘩を売っているようだ。

そう思ってしまって。

我ながらなんとも歪んで捻くれた思考だなあと思ってしまう事も、それを助長していた。

と、その中の一人の男性が此方に気付いた。

その手には携帯電話がある事から、どうやらGN粒子の電波妨害の被害を受けてしまったらしい。

彼に続いて、その周りの人達も此方に気付き始める。

 

あ、これは不味い。

 

そう思って、そそくさとその場を離れようと、スラスターの出力を上げる。

ちょっと姿を見られた程度なら、別に大丈夫だろ―――――そう思った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の隅に、2発のミサイルが映った。

 

(…ッ!!!)

 

咄嗟にライフルで撃ち落とす。

爆発。

直ぐにミサイルが飛んできた方向に顔を向ける。

 

瞬間、視界一杯に、青い戦闘機のような影が映る。

 

(んな…!!!!!)

 

今度こそ俺は驚いて、機体を大きく動かし回避行動を取る。

ガィン、という音が聞こえたから、少し接触したらしい。

顔を上げる。

その青い影は空中で体勢を整えると、一気に此方へと突っ込んでくる。

その姿に俺は見覚えがあった。

一見すると、フラッグやヘリオンと見間違えるかもしれないそのフォルム。リニアライフルの先に取り付けられたカーボンブレード。そして…その青い色。

間違い無く、つい先日タクラマカン砂漠で遭遇した、あのイナクトだった。

 

(…チィッ!!よりにもよって面倒臭いのに見つかった!!!)

 

ザフキエルに最高スピードを出させて、イナクトとドックファイトを始める。

流石に人型と飛行機では向こうの方に敏捷性等は軍配が上がるが、それを腕でカバーするのがガンダムマイスターという者だ。

 

ドンッ!!

 

「グッ…」

 

向こうは方向転換の為には旋廻の必要がある。

その分のロスを利用して追い付く為に、敢えて各部のスラスターを一瞬だけ最大出力にして、無理矢理直角もしくは90度以下の角度で方向転換する。

これは師匠曰く、21世紀前半で流行ったとある小説に出てくる瞬時加速《イグニッションブースト》という技術の応用なのだが、その技術そのものがMSでやればとんでもなく無茶な物である故に、無論この機動をした時に掛かるGも半端ではない。

はっきり言ってやばい。もしも機体がガンダムでなければまともにGを受けて、俺は今頃良くて失神か悪くてペチャンコだろう。

そうじゃなくても脇腹の傷があるのだ。はっきり言って早々時間は掛けられない。

 

「オオオオオオオオオ!!!!」

 

裂帛の気合と共にライフルを放つ。

掠った。右側の羽が少し欠けている。

同時に向こうのバランスが崩れた。人型形態になってバランスを取ろうとしているが、そこを見逃す訳にはいかない。

サーベルを左手で抜き放って、一気に接近して切りかかる。

それに対して、向こうはプラズマソードで対抗して、此方の攻撃を受け止める。

瞬間、以前聞いたあの声が接触回線を通じて此方へと流れてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アハハハハハハ!!!また会えたわねぇ、エイジィ!!!!』

 

『…ああもう訂正するのも面倒だからそれで良いわこの変狂女が!!!貴様とじゃれていられるような場所ではないのだ此処は!!取り敢えず機体全然違うのに何故分かった!?』

 

『勘よ!!』

 

『なにそれこわい!!』

 

言いながら向こうを蹴っ飛ばす。

対して向こうは吹っ飛ばされながらもリニアライフルの先に付けられたミサイルランチャーを此方に撃ち出して反撃してきた。撃ち出されたミサイルの数は5発。スピードは遅い。十二分に避け切れる。

そう考えて、回避行動を取ろうとして――――

 

「…!!!!チィィ!!」

 

―――咄嗟にライフルを撃って、ミサイルを2発、擦違い様に左手のサーベルで2発を切り落とす。で、残りの一発は――――

 

 

「ぎっ!」

 

――――シールドで、受けた。

視界が爆煙で、一瞬塞がれる。が、この程度で怯んでいてはいられない。

一瞬だけ後ろを見る。

さっきの教会だ。破片が飛んでいったりはしていないらしい。

ホッと胸を撫で下ろす。

が、よく見ると全員が全員ボーっと此方を見上げているだけで、誰一人として避難しようとはしていない事に気付いてしまい、顔が無意識に引き攣る。

 

(まさか、現実を受け止められていないのか!?そこまで平和ボケしているとでも言うのか!?)

 

そんな考えが頭を過ぎるが、次の瞬間、一人が喚きたてる様な素振りをしながら逃げ出したのを皮切りに、全員が弾かれた様に逃げ始めた。

しかし、不運な事に大勢の人間が一斉に逃げ出すには中庭の出口は小さ過ぎた。

一気に大混雑となる出口。それに付随して起こる2次災害とも言える事態。

ドレスに足を取られて、女性が一人転んだ。その上を大量の人間が駆け抜けていく。全員が必死なのか、下の女性の事などお構い無しだ。一気に女性の姿は人の波に呑まれた。

残念だが、あれでは無事では済まないだろう。下手をすれば、もう死んでいるかもしれない。

心の中で十字を切りながら、絶え間無くイナクトが放つミサイルやリニアガンの弾を、教会の方に行かない様に。尚且つ、向こうが教会の事態に気が付かないように、絶妙な位置を取りながらライフルやサーベルで打ち落とし、同時に積極的に反撃する。

無論、教会の方に意識を向けるのも忘れない。

どうやら、不運なカーペットになった人間が増えてしまったらしく、人の波の足元の端々から、スーツやドレスの切れ端が見える。その事に気付いた人が決して小さくは無い悲鳴を上げ、さらにパニックを大きな物にしているという悪循環まで起き、更には出口からだけでは埒が明かないと思ったのか、他の人を踏み台にして教会のガラスを叩き破り、そこから中に入って行く姿も見える。が、そういうのは大抵後ろから来た人間に踏み潰されるか、叩き割ったガラスの破片で怪我をして悶えるのがオチとなっている。

しかし、状況が状況だけに一切嘲りの言葉は言えない。生き残ろうとして必死になる―――――人間ならば、当然の行動だ。俺だってあんな状況に突然放り込まれたら、情けない事にああいった行動を取る自信がある。

 

等と考えていたら、向こうに気を取られ過ぎていたのか、何時の間にかイナクトに接近を許してしまっていた。

咄嗟に向こうが左腕で振り下ろしてきたプラズマブレイドを振り下ろされる前にシールドで腕を肘部分から抑えて動きを止める。

同時にけっして軽くは無い衝撃が、コックピットを襲った。

 

その、瞬間。つい最近味わった痛みが、俺の脇腹を襲った。

 

「…ウ…!ギ…ゥ………!!」

 

ともすればもれ出そうになる悲鳴を、歯を食い縛って留める。

最悪のタイミングで最悪の事態だ。

こうなってくると、俺ももう教会の事など気にしてはいられない。

非情かもしれないが、俺だって死にたくは無いのだ。

ライフルで相手の胴体に風穴を開けんと、標準をあわせてビームを放つ。

しかし、避けられた。

ご丁寧にこっちの腹に蹴りまでお見舞いしてくれている。

その所為で、脇腹の痛みは更に酷い物になる。

ともすれば意識は飛びそうになるが、そこを気合で何とかしつつ、イナクトを視界の正面に入れながらライフルで狙う。

今度は当たった。

放たれたビーム弾はイナクトの左手を吹き飛ばし、ついでと言わんばかりに背中の左ウイングまで一緒に吹き飛ばす。

 

(いけるか!?)

 

そう思いながらも気は緩めず、ライフルで狙いを付け続ける。

バランスを崩したイナクトは、そのまま滞空し続けるのが困難となり、地上へと落ちていく。

が、まだ背面のスラスター等は全て生きているらしく、狙いを付けられないように左右へと機体を大きく揺らしながら、隙在らばリニアガンで此方を狙い撃たんと銃口を此方に向けている。これではライフルで狙っても、避けられて逆にライフルを破壊されかねない。

仕方無しにライフルを構えつつも、左手のサーベルで止めを刺せるように構えてから、突っ込む。

残り500m。まだ遠い。牽制程度にライフルを撃つが、軽く避けられた。

残り300m。まだまだ。バルカンとライフルを併用して上手く相手を追い込む。

 

残り120m。そろそろ間合いに入る。左手のサーベルを何時でも相手の腹に突き入れられるように構える。

イナクトがリニアライフルで迎撃してくるが、少し身体を動かせばギリギリ回避できる。

回避。

しかし少しだけ左肩に掠った。が、支障は無い。

 

 

 

 

残り、50m。

 

間合いに、入った。

 

「シッ!」

 

手早くコンソールを叩いて、左手のサーベルにエネルギーの供給を集中させる。

警告が鳴るが、一発で決める心算だから別に問題は無い。

 

刀身が伸びる。

俺はそれを目の前のイナクトの腹に突き入れんと、左手を全力で振るった。

 

 

()った!!!

 

そう、思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、次の瞬間。あと一歩という所で、ビームの刀身が根元から霧散する。

同時に驚く暇も無く、ザフキエルの左腕が肩の付け根から吹き飛んだ。

やっと脳がその事に気付いて目をそちらに向けると、外れた腕が慣性に則って正面に吹っ飛んでいく所だった。

チラと見えた肩の付け根の部分は、胴体と腕を繋ぐジョイントが捻じ切れているのが分かる。

瞬間、俺はこの事態が何故起こったのかを理解した。

甦るのは、この機体を受領した時の師匠の『“ガンダムスローネ”のプロトタイプを君の技量に追いつける様に、大幅な改修を行った機体』という言葉。

あの時の大幅な改修というのは、“機体性能が低過ぎるから改修した”のではなく、“俺がしょっちゅうする、無茶な動きに耐え切れるように改修した”という事ではないのか?

だとすれば、ザフキエルの完成形とも言える“スローネ”の腕がこうなってしまうのにも合点が行く。

 

 

そんな事を考えている内に、事態は動いた。

左腕が無くなった事で俺はその原因について考察してしまう。その一瞬の隙を突いて、イナクトが此方を蹴り飛ばしたのだ。

反応する暇も無く、俺は吹っ飛ばされる。

同時に衝撃で脇腹の傷が更に痛み、意識が飛びそうになる。

 

2秒くらいの後に、ザフキエルは仰向けに地面に突っ込んだ。

ズッズゥゥゥン…という凄まじい衝撃が襲い、再び俺は意識を飛ばし掛ける。

何とかギリギリの所で踏み止まって急いで立ち上がろうとしたところで、今度はザフキエルの胴体を踏みつけられ、三度意識が飛びかけた。

 

(…あ、やばい。これは洒落になってない。)

 

痛みと失血で頭が朦朧とする。

 

『……あ~……今のはヒヤッとしたわ……流石じゃない』

 

そこへ接触回線によるあの耳障りな声。

ハッキリ言って勘弁して貰いたい。

 

『あら?だんまり?つまんないわね……ま、良いか』

 

うっせえな。こっちは今それどころじゃないんだ。黙りやがれ。

そう言ってやりたいが、口からは荒い息が出るだけだ。

それを聞いて向こうは益々不機嫌になったくさい様な雰囲気を醸し出したが、知ったこっちゃ無い。

 

『……あ、そういえば……』

 

すると向こうはそんな事を言いながら、リニアガンをこっちではなく、まったく別の方向に向ける。

一体何をする心算なのだろうか?嫌な予感が物凄いことになってるんだが…

 

俺がそう思った次の瞬間、向こうはこう言って、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの教会、ミサイル撃ち込んだら綺麗な花火が上がると思わない?あんた達みたいな組織って基本目撃者は消すって言うテンプレみたいな掟、在ったりするんでしょ?そしたら、あたしが変わりにやってあげるわ』

 

笑って、リニアライフルの先のランチャーから、ミサイルを二本発射した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……!!!!!!!!!!!!!!!)

 

咄嗟に朦朧としながらも、イナクトを渾身の力で吹き飛ばして起き上がり、ライフルでミサイルを打ち落とそうと狙いを付ける。

発射。

銃口からビーム弾が2つ発射される。

 

一発は命中。ミサイルは推進部と弾頭部分纏めてビームの閃光に飲み込まれて、消えた。

そしてもう一発は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あっ)

 

 

掠っ、た。しかもそれで推進部に在る羽の一部がゴッソリ無くなった為、動きが無茶苦茶になり、そのまま――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン!

 

そんな音を立てて、教会の右半分を、吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!…あ…クソっ!」

 

激情に任せてイナクトにライフルを向けるも、奴さんは既に脱出した後らしく、イナクトのコックピットハッチが開いているのが見えた。

俺は舌打ちを一つして、直ぐに捥げた左腕を改修するとザフキエルを教会の方に飛ばす。

あんな事の後に、この事態だ。無傷、というのは確実に無いかもしれないけれども――――――生きている人は、居る筈。

そう思いながら。

………後になって考えてみたが、やっぱりもう俺はこの時限界だったんだろうなぁ…いつもだったらこんな事考えずに、「あ、アレは駄目だな」とか考えて、さっさと目的地まで行っちゃうのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教会まで辿り着いた俺は、脇腹の痛みを必死に我慢しながら教会の中庭や建物の中を生存者探して駆けずり回る。

しかし、目に映るのは潰れたり、踏まれたりして死んだ人の無惨な死体。死体。死体。

死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死「ぅ……」た?

 

「……ぁ………ぅ………」

 

(居た!!!)

 

今の俺にとってはそれが天からの複音にすら聞こえる!

生存者だ!!少しこんもりとした瓦礫の下から、微かにだが声が聞こえた。

直ぐに相棒に指示を出して大きな瓦礫を退かしてもらった後、細かい瓦礫を必死に退かす。

大体4つくらい退かした時だった。

退かした瓦礫の下から、薄汚れて血が滲んでしまってはいるが、紺色のスーツを着た男の人と思われる体が見えた。その隣には、少し歳を取っていると思われる女性のドレスを着た姿も在る。

この人達がそうなのか?――――――そう一瞬思うも、彼らの首がある筈の所に、大きな瓦礫がブッスリと刺さっていたのを確認して、それは無いと頭を振る。

では、声の主はこの下から?直ぐにこの男女の仏様を退かす為に、周りの瓦礫も必死に退かす。

脇腹の傷?どうやらあまりの痛みに脳がその痛みを認識するのを辞めたくさいですが、何か?

まあ、今はそんな事を言っている場合ではない。

その内相棒もザフキエルから降りてきて手伝い始め、そのまま大体4分ほど。何個か瓦礫を退かす内に、やっと男性の方の遺体が動かせそうな事に気が付き、相棒と一緒にその身体に手を掛ける。

そのまま一気に転がす。

瞬間、その下からブロンドの綺麗な髪が何条か舞い上がった。

直ぐに状態を確認する為に、その顔を覗き込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途端に固まった。

 

だって、其処に居たのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ル、イス?」

 

……出来ることなら、なるべくこういう所で見たくはなかった、良く、見知った、友達の顔だったのだから。




如何でしたでしょうか?
どうも、雑炊です。

ハイ、ルイスさんの事件、そしておじいちゃん襲撃&抹殺&フラッグファイターハワードさん殉職イベ、結局勃発です。
ただ、どれも展開は替えさせて頂きました。
と、いうか、ただ原作通りにしてもつまらない、というか……小説版丸写しになりかねないっていうか……そんな感じです。
で、書き直しに書き直しを重ねた結果こんな感じに……さーて反応が怖いぞー(滝汗&乾笑

それでは解説行ってみましょう。

ルイス事件
→説明するまでも無く、原作では末っ子が引き起こしたアレです。
ただ、こっちではこんな感じに因縁を替えてみました。
ええ、大方の予想通りにこれで彼女の第2期登場フラグがONになりました。

おじいちゃん&ハワード
→で、こっちも一部展開を変更。おじいちゃんは兎も角、ハワードさんを倒したのは此処ではヨハンになりました。出番少なくてごめんよハワードさん…意外と好きなキャラなのに・・・・・・・・(半泣

そしてアムロがまたイイとこなし。今回は試合にも負けて、勝負にも負けて…と、踏んだり蹴ったり。
予定では次回くらいからまた活躍し始めますが……さて、この調子ではどうなる事やら……


と、いう訳で次回はついにアイツがなっが~~~~~~~い休暇を終えて、再び登場します。ちょっとだけ強化されて。
お楽しみに。

では、また次回。

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