ガンダム00  マイスター始めてみました   作:雑炊

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今回戦闘描写はありません。

それでは本編をどうぞ。


十六話―――話の転換点。あと、友達がいるって良いよね。寂しくないって意味で&次回への布石

(……あ、行ってくれたみたいね)

 

そう思いながら、あたしは機体近くの茂みから顔を出す。

見つからなくて良かった、とは思っていない。見つかったらその時はその時だし。

…それにしても、今日は厄日ね。

まさか先生を送り届けた帰りに、エイジと出くわすなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前 リビア ヤフラン付近 PMC所有施設

 

「へ?あたしのイナクトでAEUはスペインの“サジェント デ・ガジェゴ”まで送って欲しいって?」

 

『…なんでそんな長いセリフをもう一回反芻するんだよオメェは…』

 

「う~ん………読者への配慮?」

 

『なんじゃそりゃ……?』

 

その日、仕事でリビアは地中海近くのヤフランという都市近郊にある施設に来ていたあたしの元に、本当に、本当に珍しい事に“先生から”連絡が来た。因みにこの“先生から”って部分重要ね。

その内容は、新しい契約先の代表と会う為にスペインの北部の国境近くのサジェント デ・ガジェゴという町まで行く予定だったが、肝心な時にMSが使えず、何とかチュニジアのタタウイヌまでは来れたものの、ウチの使えない上司のお蔭で其処から先の飛行機のチケットも取れず、如何しようかと迷った結果、一番腕が良い(と思われる)あたしに送り迎えを頼むという物だった。

幸い此処からタタウイヌまでは、そこまで距離は無い。向こうで、推進剤の補給もしてくれるらしい。

無論、途中での補給も必要だから、そちらの手配もしてくれるとの事。故に…

 

「OK!ちょっと待ってて先生!!5時間以内に行くわ!!」

 

『おう、頼むぜ。んじゃ切るぞ』

 

…故に結構あっさりとOKサインを出した。

まあ、補給よりも何よりも、先生と長時間狭い空間に二人っきり…………ゲヘヘヘヘヘwww

…とと、ちょっと顔が下品になってたくさい。

周囲の男共が奇妙な物を見るような目で此方を凝視している。

直ぐに顔を元に戻して立ち上がり、此処の管理者の所まで足を運ぶ。

勿論、今からチュニジアのタタウイヌまで向かう為だ。

とりあえず、色仕掛け+3時間くらいやってやれば十分だろう。

……いや、本番なんかしてあげないよ?勘違いしないように。あたし本番は先生にして貰う心算だから。

意味が分かって無い人はそのまま流しちゃって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、その後少しゴタゴタしたり、18歳未満お断りな事がありそうで無さそうでやっぱりあったりしてから直ぐに施設を飛び立ってタタウイヌまで向かい、其処で先生と合流してそのまま(真に残念だが)何事もなく補給と休憩とを繰り返しながら、実質4日程度でサジェント デ・ガジェゴに到着。そこで名残惜しいけど先生と別れたあたしは、次の仕事の為にスペイン南部のジブラルタルのラ・リネア デ・ラ コンセプションまで向かおうと、機体を飛ばしていたのだが……

 

「…はぁ…調子乗るべきじゃなかったわね……」

 

チラ、とぶっ倒れたままのイナクトを見る。

解りきった事だが、現時点の技術ではユニオンのとあるエースパイロットのお蔭で戦闘機形態から人型形態への変形は可能だが、人型形態から戦闘機形態への変形は、理論上不可能。

まあ、よしんば出来たとしても、可変翼や左腕がゴッソリ無くなっている今の状態では変形自体はできても飛ぶ事など絶対に不可能だろう。と、いうか今の状態でも空中に上がる事すら不可能そうだ。

 

「…ああ……如何しましょ……?」

 

ラ・リネア デ・ラ コンセプションまで、まだまだかなりの距離がある。

同じ組織の人間に迎えに来てもらえば良いのだろうが、後でこの事を知った先生にとんでもなく怒られる可能性がある。

……でも、それ以外に方法は無い。

 

「…仕方ない、わよねぇ?」

 

兎も角、このまま此処にいれば、調査の為に来たAEU軍や地元の警察にどんな事をされるか解ったもんじゃない。

急いで機体に戻って、再起動させる。

幸い、其処まで破壊されていた訳ではないので、近くの町まで歩く事くらいはできそうだ。

後は其処から同じ組織の誰かに迎えに来てもらおう。先程も言った通りの問題もあるが、この状況では致し方ない。見返りに身体を要求されるかもしれないが、それ位は慣れっこだ。最悪前を要求してきたら無理矢理組み伏せるか殺してしまえば良いし。

 

「……ああ…でも……怒られるだろうなぁ……自業自得だけど」

 

そう呟きながら、あたしはなるべく人目に付かない様なルートを選びながら、機体を歩かせ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あれ?あたし………いったい?

ママやパパと一緒に親類の結婚式に出席して、それから――――

 

「―――――」

 

「―――――――――――――」

 

――――?誰かが話す声が聞こえる。でも誰だろう?両方とも聞き覚えがない声だ。

 

「――――――――――――ぞ」

 

「――――え!―――――を―――――――い―!」

 

「―る―」

 

……何か言い争っている?―――――ううん。これは、片方がもう片方を心配しているんだ。

……でも、誰が?

 

目を開けようとしたところで、あたしは何か細長い物に乗っけられた。同時に、そのときの衝撃が身体に響いて、あたしは少し声を漏らす。

 

「―――――!クッ……うぅ…」

 

痛い。まるで体の肉や骨に皹が入っているようだ。

少し身動ぎするだけでも、それなりに痛い。

 

「―――い!患者の意識が!!」

 

…漸く耳がキチンと聞こえるようになってきた。それでも、頭の方はまだ朦朧としている。

意識に霞が掛かっていて、ぼんやりとしか物事を考えられない。

取り敢えず周りの状況を確認しないと――――そう思って瞼を開ける。

瞬間、眩しい程の太陽の光があたしを襲った。

ずっと目を閉じていた弊害か、本来の明るさよりもずっと明るく感じる。

思わず、目を細めてしまった。それでも、首だけを動かして周りを見る。

白い大きなガラス張りの建物に、白衣を着た男性や、ナース服を着た女性が居る事から、此処はどうやら病院らしい。

――――病院?何であたしは病院にいるんだろう?

確かに教会で親類の結婚式を兼ねたパーティーに出ていた事は憶えている。

ただ、其処から先が―――――

 

「――――――あ?」

 

そのとき、あたしは視界の隅にこの場には似合わない異質な物―――――片腕の無い、マントを羽織った三色(トリコロール)の巨人を見つけた。

 

瞬間、頭の中に火花が散る。

 

 

 

 

「……あ………」

 

……そうだ、あの時、沙慈と国際電話で話していたら、突然繋がらなくなって、そしたら誰かがあの機体を見つけて声を上げて―――――

 

 

「あ……あ……」

 

……そしたら、アレに突然何処かからミサイルが放たれて、そのまま戦闘状態になって―――――

 

 

「あああ……あ…ああ……あ」

 

……会場がパニックになっちゃって、パパやママと一緒に逃げようとしたら突然教会が爆発して―――――

 

 

 

 

 

「あああああああああああああ………」

 

それで、パパとママは――――――――!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

頭が…瓦礫で、つぶさ、れ……て………!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よーし……落ち着け…良い子だ…」

 

不意に、パニックになって身体を縮めたあたしの頭に、誰かが手を当ててこう言った。

 

「大丈夫……大丈夫だ……まだお前は、本当に一人ぼっちになった訳じゃないぞ…」

 

優しい声色で、話しかけてくる。

声は聞いた事がない。まるで女の人みたいな声。

―――――だけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、むろ…?」

 

「…………………悪いな。そんな名前ではないよ」

 

どこかその人は、アムロに似ていて―――――――その人が、そういった瞬間、あたしは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、目を覚ましたあたしに教えられたのは、パパやママ、そしてあたしの親類のほぼ全員があの場で亡くなったという事実と、あたしの左腕が瓦礫で押し潰されていて、使い物にならなくなってしまったという事だった。

幸いな事に、後者の方は再生治療で如何とでもできるという事だったが………家族や親類が全て居なくなってしまったという事実は、私の心に大きなショックを与えるのに十分だった。

 

孤児。

 

まさに、今あたしはそれとなってしまっていた。

 

聞く所によると、幸いパパとママの遺してくれていた莫大な財産のお蔭で、生活するだけならば何一つ不自由する事は無いらしい。このまま学校に通い続ける事もできるし、2、3年働ければそれ以降は質素な暮らしを心掛けるだけで一生遊んで暮らせる。

 

――――そんな事を聞かされても、あたしの心に何一つ波風は立たなかった。

……と、言うか、なんかもう如何でも良かった。

つい昨日まで至って普通に話して、笑いあってて、次の休日には皆で何処かに出かけようとか、その内、沙慈の事も紹介するから、その為に国際電話で話をしてもらおうとか――――そんな事を言い合っていた家族は、もう何処にもいない。

顔を何処に向けても、あのやさしい表情は、何処にも見当たらない。

 

――――あたしは―――――一人ぼっち。一人ぼっちになってしまった。

 

―――――そんな事があってから、今日でもう3日目。

 

(…寂しい)

 

背筋に氷を無理矢理突っ込まれたかのような寒気が、心にぽっかりと穴が開いたかのような空虚な感覚と共に、あたしに襲い掛かってきた。

目を覚ましたあの日から一人になるといつもこうだ。

無意識に、残った右手であたしは自分で自分の身体を抱きかかえる。

それでも、そのいっそおぞましいとも言える感覚は治まらなくて……段々と、あたしの身体は震え始めた。

 

(……寂しい……あたしは一人ぼっち……寂しい………!)

 

この3日間、どんなに頭を振っても、その単語が脳裏から離れてくれない。

一人ぼっちは嫌だと、心が叫んでいる。

でも、あたしには如何する事もできない。

何時も傍に居てくれている筈の沙慈や、彼のお隣に住んでいてたまにふらっと居なくなるアムロも、今は此処には居ない。

 

(…寂しい…寂しい…寂しい…寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい!!!!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…寂しい……よぉ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……オイ。お姫様泣いてるぜ?やっぱ早く来た方が良かったんじゃねーか?」

 

「……誰の所為で此処まで遅くなったと思ってるのさ…本当は今日の朝にはもうとっくに着いてる筈だったのに」

 

「ハイハイ、どうせ途中で拾ってもらったくせに下痢ってトイレから3時間ほど出てこなかったあたしが悪いですよーだ」

 

「ホントだよもう……というか、何であんな所でヒッチハイクしてたのさ?」

 

「仕事の関係だな」

 

「何さその仕事って「キニスルナ」…気にするよ。なんでカタコトになってるんだよ…」

 

…………不意に、あたしの耳にそんな声が入った。

それは、3日前のあの時とは違って、酷く耳になれた声で………

 

「よ、災難……って言葉で片付けられねーか……沙慈。持ってきた果物の中に林檎か、それに似たもんあったよな?剥くから寄越せ」

 

「自分で取りなよ、もう……ルイス、大丈夫?」

 

「………あ……」

 

顔を上げたら、目の前に二人が居た。

アムロは相変わらず、どこか疲れた様な顔で……それでも、どこか沈痛そうで。

沙慈は本気で心配してくれてるのか、いつものヘタレ顔を、さらにふにゃっとさせて。

 

それでも、やり取りや雰囲気はいつものまんまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――大丈夫……大丈夫だ……まだお前は、本当に一人ぼっちになった訳じゃないぞ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の、“誰か”の言葉が、頭の中に響く。

そう、あたしは………あたしは………!

 

 

 

 

 

 

「んお?」「る、ルイス!?」

 

思わず二人に抱きついた。

それで一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…寂しかった…よぉ……」

 

そのまま、あたしは泣き出してしまった。声を上げて、涙をこれでもかというくらい流して。

……何時ぐらいぶりだろう?こんな風に泣いたの?

 

「……ハァ…よしよし、寂しかったのな…ほれ、此処にいっから好きなだけ泣け」

 

「…うん。僕たちは此処にいるから。好きなだけ泣きな?ルイス」

 

「う…え……えええええええええ………うええええええええええ………」

 

パパやママや、親戚の皆が皆居なくなってしまってから3日目。

あたしは、始めて泣いた。

……一人ぼっちじゃないって事が嬉しくて、パパやママが居なくなってしまった事が悲しくて。

 

 

 

 

 

――――――沙慈とアムロの二人が居る事が、本当に嬉しくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「林檎の皮が剥き終わったというかゴメン流動食の方が良いかと思ったから微塵切りにしてヨーグルトの中にぶち込んだ後砂糖と大量に混ぜちゃった。食べる?」

 

「うん、食べる」

 

「ホレ」

 

そう言って手渡された器を右手で貰おうとする。

ところが沙慈それを横からとって、困ったような顔でこう言った。

 

「ダメだよアムロ。今ルイスは片手が使えないんだから」

 

「あ、悪りぃ。んじゃ、スプーンやるから食わしてやって。俺はその内に次の果物剥いちゃうわ。確か洋梨あったっけ?」

 

「ラ・フランスの事?確か在ったと思うけど……あ、確かスウィーティも在ったよ」

 

「………怪我人に柑橘系って大丈夫なのか?」

 

「果物だから、たぶん大丈夫だと思うけど……」

 

「オケ、んじゃ剥くわ」

 

そう言いながら、アムロは自分で持ってきたリュックサックの中から出した果物ナイフを手にとって、沙慈が持ってきた籠の中から洋梨と緑の皮を持つグレープフルーツに良く似た柑橘系の果物――――スウィーティを手に取ると、あたし達の目の前でササッと剥き始めた。

程無くして二つの果物は全ての皮を剥かれて丸裸になる。

それを食べやすい大きさにスライスしていくアムロ。それに、何処か何時か見たママの姿が被ってしまって……

 

「あれ?ルイス?」

 

「…あれ…?」

 

また、涙が出てきてしまった。

気付いてくれた沙慈が拭ってくれたが、涙は一行に止まる気配が無い。

その度に何度も沙慈が拭ってくれたが、それでも止まらない。

そんなあたしの様子に気付いたアムロが溜息を一つ吐いてから、徐に近くのティッシュ箱を取ったかと思うと、其処から大量にティッシュを取った。

そしてそのままそれを纏めると…

 

「わぷっ」

 

「止まらねぇんだったら、こういったの目に当ててろ。その内止まる。あと、水を飲め。水分を取れ。脱水症状なっちまうぞ?どうせ碌に飯なんぞ食っとらんだろう」

 

「……食べてるもん」

 

「嘘コケ。無意識に目で果物とか追ってただろうが。なぁ、沙慈?」

 

「え?其処僕に振るの?」

 

「沙慈、どうなの?」

 

「え!?まさかの2方向から!?」

 

そう言ってから、沙慈はウンウン唸りだした。

もしホントだったら……如何しよう?嘘だったらアムロを殴るけど。

 

「…?」ブルッ

 

「? 如何したの?」

 

「いや、寒気が……で?」

 

「え…え~と………それは……」

 

「どうなの?沙慈?」

 

「………」

 

 

…………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……追って、ました」

 

「マジか……」

 

ヤバイ。恥ずかしい。

一気に顔が真っ赤になるのが分かる。

俯きがちな顔から目だけを動かしてアムロの顔を見る。

……うわぁ…すんごくイイエガオで此方を見てらっしゃる……

具体的には「ドヤァ……?」って感じで。

……とりあえず、そのドヤ顔止めなさい。

 

 

 

 

 

 

その後は、至って普通だった。

いつも通りに(今回は主にあたしが)果物を食べながら取り止めの無い話をしたり、最近の世界情勢について軽く話してみたり、些細な事で沙慈とアムロが無意識にコントを始めて、あたしはそれを楽しく眺めてて………そういえば、話の途中で至って自然にパパとママとの思い出とか、そういった事を話してみたら意外と心がスッキリしたのには驚いたなぁ………と、言うかむしろ…

 

(…落ち着く…?)

 

そういった表現がしっくりくる様な不思議な気分だった。

今迄ささくれ立っていた物が段々と無くなっていく様な……沸騰していたお湯が段々と冷めていくような……そんな感覚。

一瞬悲しいという感情が一周してこうなったのかと思ったけど、それとはやっぱり違って……う~ん……なんというか……

 

「…ん?どした?」

 

「ふぇ?…う、ううん。なんでもない」

 

「…? へんなヤツだな……」

 

 

 

――――――アムロがいる、から?

 

 

 

なんというか、そんな感じがする。沙慈と一緒にいると心があったかくなってくるんだけど、何故かアムロの場合は何処までも落ち着くのだ。

まるで――――パパとママが一緒にいてくれるみたいに。

 

(でも、たぶんそんな事言ったら、アムロ微妙な顔するんだろうなぁ……)

 

そう、思った所で、突然病室には似つかわしくない、ピピピピという電子音が鳴り響いた。

はて?なんだろうと思って辺りを見渡すと、アムロが何かに気付いたような顔をしてから、失礼と呟いて上着のポッケから小さな端末を呼び出した。音はどうやらそこから鳴っている様だった。

怪訝な顔をして、アムロは通信端末の画面を見た。瞬間その表情がすごく苦々しい物に変わる。

一体如何したんだろう?そう思ってから彼に声を掛けようと―――――

 

「―――悪り。ちょっと話してくるわ」

 

―――――した所で、彼はさっさと病室から出て行ってしまった。

後に残されたのは、驚いた顔をしているあたしと沙慈だけ。

…一体如何したんだろう?

不思議に思って顔を見合わせるあたし達。其処に今度は顔を青くしてアムロが戻ってきた。

そんな彼に沙慈が声を掛けるが、アムロはそれに一言も返事を返さないままTVをつけてチャンネルを回し始めた。

その内、チャンネルがとあるニュース番組で止まる。

 

其処に映っていた物に――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……てきた凶悪なテロ行為に対して、ユニオン、人類革新連盟、AEUは軍事同盟を締結、国連の管理下でソレスタルビーイング壊滅のための軍事行動を行っていくことを、ここに宣言いたします!』

 

 

 

 

「…え?」

 

「な…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、あたし達を絶句させるのには、十分過ぎる衝撃を持ったニュースだった。

 

AEU、ユニオン、そして人革連の各陣営が手を組み……更に其処へと“ガンダム”の“動力炉のコピー”が何処からか提供された、なんて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……面倒な事になってきたなぁ……オイ」

 

TVの音しか聞こえない静かな病室の中で、呟いたアムロのそんな言葉だけが、絶句したままのあたしの耳に嫌に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、アムロは暫らくの間ニュースをずっと見続けていたけど、暫らくしてからまた携帯の向こうにいる誰かと2,3言何かを喋ると、直ぐに荷物(とは言っても、碌に無かったが)を纏め始めた。

沙慈が突然そんな事をし始めたアムロに言葉を掛けるが、アムロは「ちょっとやばい事になった」というだけで、あんまり反応してくれない。

その内荷物を纏め終わったのか、「今直ぐ行かなきゃならん所が出来たから行って来る」とあたし達に言ってからリュックを背負ってドアの方へと向かう。

と、その途中で何かを思い出したかのように立ち止まって、顔だけを此方に向けた。

 

そして一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうそう。ルイス。友達なんだから、なんかあったら遠慮なく国際電話なりなんなりで呼べよ?来れれば直ぐ来るから。あと、沙慈はなるべくルイスがいいって言っても近くに居てやれ?彼氏なんだから」

 

んじゃな、と、それだけ言ってアムロはドアの向こうに消えていった。

ポカンとしたままあたし達は病室に残される。

二人とも、声が出せなかった。と、言うか、アムロの突拍子も無い行動には慣れているとは言っても、これは流石に急過ぎたから……何と言うか、喋るタイミングを失ってしまった。

…でも、暫らくしてから突然沙慈が笑い出した。

驚いて如何したの、と声を掛けても笑いっぱなしで返事を返してくれない。

やがて一通り笑って満足したのか、目じりの涙を拭いながらこう呟いた。

 

 

 

 

 

「いやぁ、アムロって、何処まで行ってもアムロなんだなぁって」

 

「……どうゆう事?それ?」

 

「そのままの意味だよ。カッコいい事言ってるつもりなんだろうけど、なんかこう……『いつも通り』だなって」

 

「…あー……そうかも」

 

そう言われれば、そうなのかもしれない。

いつも通り、3人で話したりして、その内アムロが突然誰かから呼び出されたりしていなくなり、それをあたし達が見送る。……ホントにいつも通り。

別れ際に何か言っても全然格好良く見えなくて、むしろコミカルだかなんなんだか分からなく思えるのも。

 

「…ホントになんだかなー…」

 

そう言いながら、あたしはベッドに背中から倒れこんだ。そして目を閉じながら、少し考える。

パパやママ。叔父さんや叔母さん達は―――――もういない。いなくなってしまった。

 

 

…でも――――――

 

 

目を開けて、沙慈を見る。

いきなり目を向けられてキョトンとしている彼に、私は笑いながらこう言ってやる。

 

「沙慈」

 

「ん?」

 

「結婚しよっか」

 

瞬間ブフォッ!!と聞こえそうなくらいに盛大に沙慈は噴出してから、むせ始めた。

上手く顔を逸らしてる辺り、相変わらずこういう所はすごいと思う。

 

「る、ルルルルルルルルルイスさん!?一体何言い出して「冗談よ冗談。でも、その内、ね?」そ、そのうちって……」

 

そう言いながら俯いてブツブツ言い始めた彼を横目に、また私は目を閉じる。

 

 

――――――でも、沙慈(恋人)やアムロ(友達)はいなくなってない。

今この瞬間だけは、ちょっと違うけど『いつも通り』。

 

そう考えると、少し前まで感じていた寂しさは、影も形もなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………やっぱ痛い」

 

歩きながら、痛む脇腹を押える。

向かう先は病院近くの町。

其処に相棒とヒクサーさんが車で迎えに来る。

……しかし其処までは、自力で歩かなければならない。

 

(…完治しないうちに動くもんじゃないな。本当に顔に出なかったか心配だわ)

 

そんな事を内心ぶつくさ言いながら、少し反省する。

……まあ、ルイスの元気(?)な姿が見れたのだから、無駄骨ではないと考えておこう。

 

そう思いながら前を向くと、前から黒塗りの軽自動車――――ビートルが走ってくるのが見えた。

向こうは俺の近くまで来るとゆっくりとスピードを落としながら止まり、そして――――

 

ガチャッガッドスンバタンブオオオオオォォォォォォォン………

 

――――そして見事な鮮やかさで俺を拉致ると、そのままUターンしながらスピードを上げ始めた。

無論運転しているのは……

 

「……あれ?姉さん?」

 

「…そうよ。なんか悪い?」

 

「いや?別に」

 

……何故か姉さんだった。おもわず疑問形で声を上げてしまい睨まれる。お、相棒も直ぐ近くに居たよ。つーか今首根っこ掴んだのお前かこの野郎意外とビックリしたぞ……しかし本当に何故?予定では迎えに来るのはヒクサーさんだったはず「予定変更したからよ。あんただってあのニュース見たでしょ?アレが原因よ」……地の文に割り込んで欲しくないのですが。

 

「うっさい。つーかアンタ顔に出易いのよ」

 

「まじか」

 

「マジで。で、これからの予定だけどアジトに着き次第出撃準備。今日の夜1130で中国の広州に向かうわよ」

 

聞いた瞬間、頭のどこかでスイッチが切り替わった。即座に“アムロ・レイ”ではなく“O-01”として質問する。

 

「その心は?」

 

「三大陣営連合軍……いえ、今は国連軍ね。国連軍がGNドライブ[τ]……つまり、擬似太陽炉を搭載した新型MS“GN-X(ジンクス)”のお披露目の為にソレスタルビーイングをを発見次第で攻撃する事が決定したのよ。そして今、アフリカにいるトリニティは人革の広州方面軍駐屯基地を狙うって命令受けている……つまりあたし達は、結果的に新型MSお披露目の為の生贄に扱いとなるトリニティを救援に向かうってワケ」

 

「なるほど……って、チョイ待ち。あいつら今アフリカにいんの?初耳だぞそれ」

 

俺がそう訊くと、姉さんは溜息を吐きながらこう返してきた。

 

「……一応、アンタがアジトについてから連絡はあったらしいのよ。ただそれに出たのが…」

 

其処まで姉さんが口にしたところで、大体の予想がついた。間違い無くそうなんだろう。

意を決して俺はその先を言った。

 

「……もしかして、師匠」

 

「ピンポーン……」

 

「マジかよ……」

 

そう言いながら頭を抱える。

そうなると、あの3人が今アフリカにいる理由も分かる。

間違い無く師匠の悪戯だ。大方、完治したらそちらに行かせるとでも言って、上手い事言い包めたのだろう。事こういうのに関しては師匠は天下一品の実力を持っている。アフリカなのは……おそらく、適当な任務を与えたのだろう。北西部には一部熱帯のジャングルとなっている部分にアジトもあるし。

 

「………まあ、良いか」

 

結果的には全て終わった事だ。IFを考えた所では物事進まない。スッパリ割り切らねば。

 

「次。俺の機体は如何するんだ?言っておくけどザフキエルじゃ新型相手は無理だぞ」

 

事実だ。というか、新型相手に問題ありありの機体で挑みたくない。愛着があるとはいえ2度もアレに乗って死に掛けているのだ。流石にそれで未知の相手と戦うというのは遠慮したい物がある。

しかし対する姉さんはまるでそれを見越していたかのようにフッと笑うと、こう言い放った。

……なんでもいいけど、姉さんがフッと笑うって似合わんな、相変わらず。

 

「まあ、そこら辺は安心しなさい。“アレ”の強化も終わったし、それで行ってもらうって。因みにキチンとリボンズが監督しながら指示を出して強化されてるから、きっと大丈夫なはずよ」

 

「………ゴメン。それ何一つ安心できないわ…」

 

「……大丈夫よ。たぶん」

 

「…当の本人は今何処?」

 

「あのクソ大使と一緒にヴェーダの所まで行ったわ」

 

「……それ、報復されるのが解ってたから逃げたんじゃね?」

 

「…………………………違うとおもうけど」

 

「オイその間は一体なんだ」

 

一気に不穏な空気が漂い始めた。

……師匠。とりあえず一体どんな改造施したんだ?せめて機体の操縦系がD(ダイレクト)M(モーション)L(リンク)S(システム)とか、座禅組んで生体エネルギーや脳波で操縦するようなぶっ飛んだ物になっていませんように………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程無くしてアジトへと到着した。

直ぐに更衣室に入って脇腹の傷をチェックしながらノーマルスーツに着替える。

……よし。開いてないな。念の為絆創膏変えて、その上から包帯グルグル巻いてしまおう。

そのままチャックを閉めてメット持ったら準備完了。ハンガーへと歩いていく。

その途中、珍しく俺と同じ白いノーマルスーツに身を包んだ姉さんと出くわす。

……うん。以前も見たけどキチンと出るとこ出てて、引っ込んでるとこ引っ込んでる。

 

「…何見てんのよ」

 

「姉の成長具合の観察」

 

「ぶっ飛ばすぞ」

 

「以前同じ様な事言って人の股間ガン見してた人に言われたか無いわ」

 

「重みが違う」

 

「アホ、明らかにこっちのほうが受けた被害デカかろう」

 

「喰うぞ」

 

「オイなんでそうなる」

 

そんな風にギャーギャー言い合いながら歩いていくと、その内ハンガーに到着した。

其処には片腕が無くなり、太陽炉が取り外されたザフキエルと共に、何か大きな物が2体ほど布に包まれておいてあった。

その上から、此方に気付いたヒクサーさんが呼び掛けてくる。

 

「あ、来た来た。おーい!アムロにヒリちゃーん!準備終わってるよー」

 

「ヒリちゃんって言うな!」

 

隣に居た姉さんが吼えた。そんなにあの渾名が嫌まあ、その気持ちもわからんでもない。

アムちゃん……うん。某少女マンガの主人公の女の子の名前っぽい語感で実にイヤだ。

 

そんな事を考えていると、目の前のデカイのの布が取り去られた。

その下から出てきたのは――――――とても見慣れたカラーリングの、俺にとって1番愛着があり、使い慣れたあの機体だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「GNPF-000“パーフェクトOガンダム”……Oガンダムに追加装甲と追加装備を取り付けた、改良機だよ」

 

乗ってみて、と促されるままに、相棒と共に乗り込む。

機体のシステムを立ち上げて、起動。

コンソールに各システムの状況が表示された後、各武装のデータが表示される。

全体的な感想としては、以前のフルアーマー装備の改良型、と言った感じ。

ただ、あれと違うのは背面部に特殊バックパックが装備され、それにビームと実弾の切り替えが可能なキャノンと、大容量GNコンデンサが取り付けられている点。右腕のツインライフルが以前のナドレ用を二つ取り付けたようなものではなく、よりコンパクトにシールドと一体化したような見た目になっている点。シールドの裏に機雷やビームサーベルが搭載されている点。追加装甲が更に厚くなり、脚部に付いていたスラスターが更にでかくなっている点。そして極め付けは、頭部にヘッドギアが追加されているという点だろう。

表示されている情報からすると、結構多機能らしいが……なんか、見た目が更にゴツく…

 

『どんな感じだい?キチンと調整されてるとは思うけど』

 

外から、ヒクサーさんの声が聞こえる。

ハッとしてチェックを再会し、一通り見た所で返事を返す。

 

「こっちは特に問題ないです!」

 

『OK!ヒリちゃん!そっちは!?』

 

『だ~か~らぁ!!そのあだ名で呼ぶなっつーの!!……ったく、こっちもOKよ!今から動かしても余裕!』

 

そんなヒクサーさんと姉さんのやり取りを聞いて「ん?」と思いながら左を見た。

其処には今のOガンダムを優に超えるでかさの見た事も無い水色と白の2トンカラーの……戦闘機?が鎮座していた。姉さんの声が其処から聞こえるという事は、どうやら彼女はこれで出撃するらしい。

 

『OK!そしたら二人とも、指示に従ってドッキング作業始めて!その後は、お互いに時間一杯シミュレーションとかでフォーメーションの練習とかして時間潰して!』

 

「分かりました」『了解っと』

 

言いながらコンソールにでてきたマニュアルに従って機体を動かす。

……って、言うかとうとう合体までしだしたか……その内、変形できるようになるんじゃないだろうな?Oガンダム?

 

「ソレハ無イダロ」

 

「言ってみただけだっつうか地の文読むな相棒」

 

最後の最後でこんなかい、とは絶対に言わんぞ。




如何でしたでしょうか?
どうも雑炊です。

いやー…もう2期に入るまでは女の子メインの場面なんか書きたくないと思うくらいに当時は難産でした。
と、言うかその頃に学校の授業で人間失格の映画なんて見ちゃったもんだから益々鬱ーな心理状態に陥ったりとか、なんか何時の間にかスランプ陥ったりとか、学年末テストが叫びだしたくなるような状態になったりとかで………口述試験に研究室配属にレポートに…………いやー大変でした。

と、言うわけで解説入ります。

まあ、見ていただければわかる通り、冒頭は前回何故ヤツがあの場に居たのかの説明です。無理矢理感があり過ぎ?ハハハハ……ちょっと自覚あります。
因みに前回の師匠の仕業という言葉の意味は、其処を指定したのが師匠だからという裏設定があります。が、其処まで気にしなくていいので流しちゃってください。

中盤からの場面はルイスのあの後の話。いやー心理描写難しい……
因みにまだあの2人は別れません。………っていうか、本作においては原作通り疎遠になる事すら無いかも。

で、Oガンダム復活!!ただし戦闘なし。&サポート機体登場!!ただ、もう予想できると思います。

で、パーフェクト装備の説明ですが、まあ、パーフェクトガンダムVer Kaのあの追加装甲をOOに出てくる奴っぽくした物を思い浮かべてください。
それでOKです。
もっと簡単に言うと、SDプラモの方のパーフェクトガンダムの中の人をOガンダムにした物、です。ヘッドギアも、あのプラモから採っています。


さて、次回からは1期佳境に入っていきます。
GN-X好きの皆さん、お楽しみの時間ですよー!
まあ、フルボッコにはならんと思います。
……へ?Oガンダム?あいつが彼らと戦うのはもう少し後です。

ではまた次回。
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