ガンダム00  マイスター始めてみました   作:雑炊

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というわけでミハエルくんの下準備話……だったはずなのですが何をどうして彼の出番があまり無いという悲惨な事態に。次回はかなり活躍するはずです。


そんな訳で基本安室の一人語りとでも言うべき本編をどうぞ。
いつもよりも短いかもしれません。


二十一話―――準備・オブ・リベンジェンスとか言ってみるけど、別に俺が復讐するわけじゃないんだよね(byアムロ

復讐と信念。

果たしてどちらの方が戦う理由としてマシかと訊かれれば、俺は迷わず『復讐』を選ぶと思う。

何故ならば、こっちの方が正当性を簡単に作れるからだ。

親を殺された、兄弟を殺された、友を、恋人を、家族を――――――挙げればキリがない。

他には金を取られただの、物を盗まれただの。

ハッキリ言って憎しみの連鎖がどうこう言う馬鹿が居るが、そんな物は俺は知らん。

古今東西南北話し合いなどの平和的手段で決着が着くのであれば、人間の歴史に『争う』といった類の言語は生まれてこない筈なのだ。

しかし存在するということは―――人間はそう言った笑い事では済まない根深い憎しみが絡んだ事象になると、どうしても復讐という手段を取りたがるものなのだ。

 

まあ、信念で戦っても良いが、その場合戦いに正当性が無ければテロも同然という事を頭に入れておきたい。

 

 

で、なんでこんな事を俺が言っているかというと、目の前の人間がモロに今出した例の『マシな方』をヤル気満々の血走った目で俺を見ているだけなのだが。

 

 

…うん。つまりは現実逃避なんだ。

 

 

「……で?」

 

「頼むから俺に機体を寄越せ!!ついでに俺を鍛えろ!!アイツに勝つには兄貴以上にならねえといけねえんだよ!!」

 

「……その前に私が殺してやろうか貴様」

 

ヨハンが死んだ事でタダでさえピリピリしている所にこれである。

取り敢えず人に物を頼む態度っていうものをキチンと勉強してから来い。

 

 

まあ何が起きているかというと、だ。ミハエルの奴がヨハンの敵討ちの為に今言ったみたいな事を言い始めた、と。

と、言うのもスローネドライは長い間補給無しで戦っていた為か現在フルメンテの意味も兼ねてオーバーホール中。

で、俺ら(残る二人のトリニティ兄妹含めたイノベ組)は暇で暇でしょうがない。(実行部隊が国連から逃げ回っている為)

師匠もアレハンドロのトコから報告終えて戻ってきてまた暇をもらってるらしいし。一週間くらい。

という訳でその暇潰しも兼ねて何かしようかと言い始めたらミハエルがこれである。

どうも以前から兄の実力に対するコンプレックスでもあったのか、その目標でもあった兄が倒された事でそこらの彼是が爆発してしまったらしい。

普段の彼と比べて2割増くらい殺気やら何やらがダダ漏れである。

 

んが、ぶっちゃけ俺は多分ヨハンであろうあの時の約束の件もあるのであまり乗り気ではない。

が、現実問題暇人を出すわけにもいかないし、何より面倒を見るとか言っちゃったのだ。やってやらない理由はない。

…ただ、やってもいいのだが、丁度いい所に機体が無い。

スローネの4号機に当たり、GN-Xのプロトタイプに当たる機体である『ヴァラヌス』はバラしてはいないけど今此処には無いし、かと言ってGN-X掻払ってくるのもアレだし…え?出来るのかって?出来るよ?Oガンダムと相棒が居れば。

…Oガンダム?ダメダメ。アレ今下手に俺か師匠以外が扱うと無茶苦茶なセッティングの所為で絶対廃人になるから。加速度とかそっちで。

 

「…フム。ビックリする程機体が無いな」

 

「何ぃ!?」

 

「煩いぞ。あと“機体”であって“期待”ではないから安心しろ」

 

言いながら顎に手を当てて考える。

あ、因みにメットはとっくに外している。

というか、前回のアレの準備中にメット外した状態でバッタリ会ってしまったのよね。

相棒も連れてたからもう言い訳不可能っていう。

 

まあ、それでどうかしたのかと言われれば別にどうともないんだけどね。

ただ、何故か二人共酷く驚いていて、ちょっと絶望したような感じになっていたのは何故だろうか?

 

「ただ単に刹那・F・セイエイにそっくりだったっていうのと、自分達よりもちっさいのに全面的に自分達の方が負けてるって自覚しちゃったからでしょ」

 

「いきなり出てきて何の用かリジェネ兄さん。あとちっさいは余計だコラ」

 

そう言いながらお玉による一撃を脳天に叩き込む。

そのまま痛点を抑えて悶絶しながら床に転がる兄さんを放っておきながら俺は昼飯の支度を進める。

 

…とは言っても、機体の不足はかなりの悩み所である。

万が一にOガンダムが使えなくなってしまった場合、その代理機体がないと俺が出撃できない。

しかもタダでさえ人員不足甚だしいCBにとって、暇人を出すのはかなりの損に成りうる。

そう考えると何とかしてやりたい物なのだが……現実とは非常であり、使える機体がないというのは一切変更のない事実――――――――

 

「――――――あ…いや?」

 

――――――あるよな?たった1機だけ、俺が乗った事のある奴が。

 

 

 

 

 

―――というわけで師匠。ザフキエルの強化案を相棒と一緒に作ってみたんだが」

 

「ちょ、おま、人が昼飯食ってる時に出すなし」

 

「(♯(・)ω(・)♯) ダマレッ!!」

 

「え、何でそんなに切れてるの!?」

 

無論前回とか前々回とか前前々回とかの色々を込めての一言である。

…え?関係無いって?すみません。

 

まあそれは兎も角として。

 

「兎に角こんな感じなんだが…今からできるか?」

 

言いながら見せたのはザフキエルに“トゥルブレンツユニット”と、アイン・ツヴァイ・ドライ3機それぞれの特徴的な部分をくっつけたような図面。

無論、俺設計である。プリントは相棒だけど。

 

「ふん……見た目のゴテゴテしさに反して、組み上げ自体にあまり時間が掛からない様になっているのか」

 

「というか、被弾部からパジれるようにした結果がコレなだけだけどな。乗るの俺じゃなくてミハエルだし」

 

「……ああ、成程、納得したよ。確かに君や僕が乗るのであれば、少しバランスが崩れても平気だものね」

 

「うっせぇ」

 

言いながらもしも俺が乗るのだとしたらどうするのかを考える事も忘れない。

どんな事も“絶対”は有り得ないのだから。

…とは言っても、多分、というか精々コレにビームガンとシールド取っつけるだけだろうが。

 

「いっそザフキエル単体で行ったほうが良いんじゃないかい?」

 

「いや、それは嫌な予感しかしないからそれは遠慮しておく」

 

具体的にはまた大怪我しそうな感じしかしない。

 

 

「と、いうわけでミハエルの訓練始めるぞー」

 

言いながらさっきまで“地獄の修行フルコース”(相棒考案)をウォーミングアップとして行っていたお蔭で既に屍と化しているミハエルを軽く蹴りつつ転がしていく。

ネーナが腰にしがみついて何か言っているが知った事か。兎に角あまり時間は無いどころかもしかしたら30秒後には出撃するやも知れぬのだ。時間は有効に使うべき。

 

「……突っ込まないからな?私は絶対突っ込まないからな!?」

 

「いや、別に良いって」

 

リヴァイブ兄さ…否、姉さんにそう言いながらミハエルを転がし続ける。

そういえば今日は姉さん露出が少し多めのメイド服なんですね。

とてもお似合いで眼福でございます。

 

「そ、そうか…?それなら、良いんだが……?」

 

「ちょっ!?アムロ!?そしたらあたしは!?あたしはどうなのよ!?」

 

「姉さん。お茶くれ」

 

「平然と顎で使った!?」

 

うん。ぶっちゃけ姉さんには何故か平然と命令できるわ。なんだろうこの格差……?…まあ、いいか。

 

「で、ミハエルどうする?少し休憩にするか?」

 

「却下ァ!!」

 

「威勢は良いけど顔から汗ダラダラ垂らして生まれたての子鹿の様な体制の状態で言っても何も説得力無いからなお前」

 

何とか少し体力が回復したのか、フラッフラの状態でミハエルが立ち上がる。

しかしもう誰が何処からどう見ても限界を迎えているのがアリアリと解るんだが。

俺だって鬼ではないのだ。こういう場合は休んだ方が良いと重々承知している。

……師匠は一切休ませてはくれなかったが。

 

「……」

 

「何だい?」

 

「…別に」

 

…思い出したら凄く腹立ってきたな。囁かな仕返しに今日の夕飯師匠だけ山葵を練り込んだ蕎麦にしてやろうか。大盛りで。

 

「残念ながらその場合は倍プッシュだ……!」

 

「…!!なん…だと!?…まあ特に辛くはないはずだし当たり前か。んじゃ、大盛り倍プッシュで作ってやるよ。けど、鼻はツーンとするぞ?」

 

「僕は一向に構わん!」

 

「ハイハイ変なコントやるんじゃないバカ師弟。…で、どうするんだ?」

 

っとお危ない危ない。あと少しでまたいつもの感じになる所だった。

比較的真面目な場でそういうのは自重したいので、こういう時真面目な感性を持つ姉さんは頼りになる。

…しかし師匠が意外と辛党だったとは……ってことは今までやってきた山葵系の仕返しに対するリアクションは全て演技だったと言う事か…くそう、これで仕返しのバリエが一つ無くなってしまった。残念。

 

(…マズイ。勢いで言ってしまったけどもしかすると墓穴を掘ったかもしれない……。まさか嘘だとはもう言えない……!)

 

……?何やら師匠が挙動不審になったが何なのだろうか?この状況では突っ込みたいが下手、に深入りするとロクな目に遭わないのは解りきっている為何も言わないけど。

…とと、そうだそうだミハエルミハエル…

 

「…休憩、だな。流石にこれ以上させたら復讐の前に死にそうだし……続きは明日にしよう」

 

言いながら反論しようとしたミハエルの首筋に手刀を当てて黙らせる。

 

「!? ミハ兄!?」

 

「安心せい。気絶しただけ。少し休めばまた起きるよ。……な?」

 

そう言ってミハエルを抱えながらネーナに笑いかける。

彼女は少し心配そうな顔だったが、それでも納得してくれたのか少し首を縦に振ってくれた。

それで十分。

俺はそのまま今担ぎ上げたバカを寝室のベッドへと叩き込まんと歩き始めた。その後をネーナと相棒が着いてくる。

意外と、ヨハンが居ないだけで何時も通りだった。

 

…それでも…

 

 

(……少し前まで居た奴が居ないと、寂しい、な)

 

そう思うのは、別に悪いことではない。少なくとも今は。

 

俺はそう思う。

 

 

 

 

 

「…フフ。なんともまあ、滑稽な無理をしているね」

 

アムロの背中を見ながら、僕はこう呟いた。

おそらく、長年彼を見てきたからこそ言える言葉だ。流石に師匠という名の育ての親をしてきたのは、伊達ではないという事なのだろう。

 

アムロは悲しいと思う物事に直面しても、決して泣く事がない。

 

感情を表に出して取り乱す事も殆ど無い。

 

全て、何時も通りに進めようとする。

 

…だが、そんな事ができる人間は普通居ない。

大なり小なり少しの同様は必ず出る物だ。

それは例えばかなりイカサマが上手い人間であってもそう。

表情には出なくても、目の動きや体温の変化。それこそ、僕達の様にイノベイドならば脳量子波を使って脳波や脳指紋等を解析してしまえば良いのだ。(お蔭で対人系のギャンブルにおいて、僕は態と意外では負けた事がない)

 

所がアムロにはそれが無い。

 

どこまでも、どこまでも平坦だ。

 

まるで、“人間ではない様に”。

 

 

…しかし、感情を読み取れば、その平坦な態度が嘘である事が一発でわかる。

自分と関わりがあったものが死んだという悲しみは、キチンと“悲しい”“寂しい”という感情で表される。

 

 

と、ここで彼の本質について僕の考えを述べようと思う。

彼自身は何一つとして気付いてはいないが、彼の本質は“大衆にとっての善人”であり“自らにとっての独善”でもある。

長い物には巻かれるのかと思いきや、時には手の平を返すかの様に少数の弱者の為に体を張る。

かと思えば大多数の笑顔の為に切り捨てられる少数を切り捨て、本当に何の問題も無い時にはアッサリと自分の為に他者を吹き飛ばす。

 

傍若無人で八方美人。

自分とその周りが幸せならばそれで良し。でも気に入らない奴は徹底的に叩き潰す。

 

僕程ではないにしろ、彼は邪悪な人間だ。

 

だが、そんな邪悪な面などは、この世に存在する“人間”というカテゴリの存在は少なからず持っていて当たり前なのである。

 

何せどんな聖人君子だろうと、自分の今立っている場所から丁度地球の裏側で他人が死のうと、それを知ろうとはしないのだから。

知ればそれは悲しむだろうが、一般的な人間ならば「ご愁傷様です」一言で終わらせてしまうものだ。

 

つまり、彼は一般人の持つ暗い面がにおいてもその部分が強化されているような物なのである。

 

…まあ、そうなった原因は確実に僕や他のイノベイドによる教育なのだが。

 

 

 

話を戻そう。

 

だからこそ、彼は今回ヨハン・トリニティが死んだという事実に対して、表面上に表さないだけで強いショックを受けたはずなのだ。

自分の周りを構成していた内の一つが消え、少なくとも彼はそれを悲しむ。

更にその死人を慕っていた者達が更に哀しむものだから更にその悲しみは増す。

 

そして、もしも彼が僕と始めて出会った頃や、計画発動前の状態ならば、彼は今回の件の元凶である僕に対して、キチンと感情を全て表へと出し、僕に殴りかかろうとするくらいのことはするはずなのだ。

 

所が、実際はそういう事が殆ど無かった。

 

それを如実に表すのが、今の彼の僕に対する態度である。

 

一時的とは言え、彼は間違いなく今回の件を仕組んだ僕に対して、圧倒的に怒りを募らせていたはずだ。

態々スケジュール表という分かり易い形で表した今後の予定まで送ったのだから、それは間違いない。

…だが、彼の此処に来てからの僕に対する態度はどうだ?

 

まるで何時も通りである。

怒りなど、無いかの様だ。

一瞬声を荒げたので残滓くらいはあるのだろうが、それでもあまりにも沈静化が早すぎる。

 

まるで、吹き出た感情が片っ端から何かによって“除去”されているかのようだ。

 

 

 

……では、と此処で僕は考える。

 

その除去された感情は何処へといったのか?

 

 

 

 

(……やっぱり、何度考えても面白いな)

 

去っていくアムロの後ろ姿を見ながら僕はそう思う。

あの日突然目の前に現れたラット(実験動物)は、気づいた時には既に檻から飛び出していた。

 

実に面白い事だ。

 

 

……何?何を言いたいかさっぱり分からないって?

何を言っているんだ読者の諸君。

 

これは僕の取り留めなんか無い“独り言”だよ?

 

意味なんてあるわけ無いじゃないか。

…え?もしかして大真面目に今迄の全部読んだの?

あ~……メンゴ。

 

 

 

 

「――――――――よりにもよって読者を敵に回すような事するなァァァァァ!!!!!!!!!!!」

 

「フハハハハハハハハハハ!!!!!!100m先から全力ダッシュで僕にツッコミを入れてこようとするとは!!!しかもドロップキックで!!!!本当に成長したな君は!!??」

 

「ドヤかまっしゃァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!これで読んでくれる人居なくなったらどうするつもりだァァァァァ!!!???」

 

ああ、もう!!!なんか師匠が立ち止まって小さい声でブツブツ言ってると思ったら案の定コレだよ!!!

勘弁してくれよ、マジで!!!!

 

「だが断る」

 

「それが言いたかっただけかァァァァァァァァ!!!!!?????」

 

「無論!!」

 

ええい!!ドヤ顔で言いやがるのが更に腹立つ!!

つーか俺だってヨハンが死んだ事悲しんでバッチリ号泣したわい!!具体的には帰りのOガンダムの中で!

 

何?なんでその場面見せないかだと?

嫌だよカッコ悪いし恥ずかしいから!!

ガキ臭い?やかましいわ!!俺ガキだもん!!まだ16だぞ!?

 

 

 

 

 

「……さて。取り敢えず前回に引き続き不謹慎仕出かした暴走師匠は、先程リジェネ兄さん達の協力で天誅を下せたので放っておくとして…」

 

…え?どうやったかって?

いや、どうやら前回の葬式云々の時に衣装とかはどうも全て師匠が決めてたらしくてね?

その鬱憤を晴らせるぞと皆煽ったら、本当に皆師匠に飛び掛って押さえ込んでくれたので、その隙に師匠の鼻腔に練山葵5本分詰め込んだだけぞ。

超悶絶してた。

笑った笑った。

 

まあ、全体的に師匠の自業自得なのでこの話題はこれで御終いとする。

 

 

で。

 

 

「…ミハエル。どうだ?行けるか?」

 

「ったりめぇだぁ!!!」

 

「……取り敢えずその顔の汗拭って来い。話はそれからだ」

 

ぶっちゃけまだ体力が回復しているようには見えない。

のに気合を無理矢理入れているのは、復讐という目標への執念がなせる技か。

…だが、その結果として勝手に潰れてしまったら本末転倒なのだ、という事を解っているのかいないのか…

 

とはいえ、である。

 

鉄は熱い内に叩けという言葉もあるように、やる気がある状態では何事も伸び易いものだ。

休憩も十分とは言えないが取ったし、何よりこの位の消耗ならば俺の時と比べれば遥かにマシといっても良いだろう。

ならば……

 

 

 

 

「おう!序でにシャワーも浴びてきたぜ!!「あ、じゃあそのまま今日はもう終わりな。続きは明日からで」何故!?」

 

「うるせぇ♪」

 

人の考えをダメにしてくれた礼も込めてそう言ってやると、顔を青くしてから敬礼された。

 

 

 

 

そして時間は少し過ぎて3日後。

事態は急激に動く事となった。

 

 

 

 

「実働部隊の連中が国連の艦隊を補足したって?」

 

そんな事を言いながら師匠達に通信を入れる。

と、言うのも今俺はちょっとした野暮用で宇宙へ上がる為の軌道エレベータの中に居るのだ。

お忘れかもしれないが、俺の表向きの肩書きはCBの末端エージェントである。

とはいえ、その仕事内容は具体的には雑用といっても良いかも知れない。

今だってやってきた仕事といえば、他のエージェント達の今後について関係者各所と打ち合わせをしてきた程度である。

 

瓦解し始めているとは言え、CBという組織は異常なまでに幅広いネットワーク、巨大なバック、そして数多くの協力者を未だに保有している。

その協力者の中には、政治家、実業家、科学者などなど……ヘタをすれば、一国の王族なんていうのも居たりするのだから恐ろしい。

 

また、その中にはエージェントやその他様々な役職に就いて、援助という間接的なものではなく、直接組織へと協力をしてくれる人間もいる。

王留美はその代表格だろう。

 

まあ、そういう方々は最悪自分の持っている地位などをフル活用すれば基本問題はない。

問題があるのは、一般市民としての地位しか持たないエージェントたちだ。

 

一般的に彼らは普段市居の小市民として生活しているのが殆どで、必要な時のみ呼び出しを受け、その上でエージェントとして活動を行うのが基本である。

まあ、基本的に暗殺等のヤバイ案件は師匠が裏から手を回してイノベイドに行わせているが。彼らの仕事は情報収集などのそこまで危険度の高くなかったりする物でしかない。

 

それでも、機密情報の持ち出しやそれ以外にも中々グレーゾーンな事をしているのは事実だ。

そんな彼らがCB崩壊後どの様にして生活していくのか…少なくともエージェントだった事がバレればロクな目には合わないということは理解できる。

 

さっき言っていた打ち合わせとは、それを未然に防ぐ為の対策についてだ。

幸い一般エージェントの勤務する企業はその殆どがCBの関係者だったりする。当たり前だが。

それでも全てではない。普通の中小企業に勤務する者も居れば、自営業で生計を立てている者も居る。

後者は本人がボロを出さない限りは安全なので、少しの間監視が付く程度で済んだが、前者はかなり議論が白熱した。

 

何せ、下手な中小企業に勤める者は、『その企業しか持っていない技術』を習得しているか可能性があるのだ。

下手にヘッドハンティングしようとすれば面倒事が待っている。

しかし放置すれば変な所から情報が漏れる可能性だってある。

 

かと言って始末するのは愚か過ぎるし、拉致軟禁で監視下に置くのは足のつく可能性がある。

 

結局あーでもないこーでもないと話し合いに話し合いを重ねた結果、取り敢えずは協力者の企業から中小企業の方に仕事を依頼して、簡単にではあるが監視できるような状況下においておくという案でこの件は一応の決着を見た。

 

が、それでも膨大な金の動きがあるのは間違いなく、これを一般の民間人に気取られないように進めるというのは、相当に骨の折れる作業だ。

特に現代の超が付くほどネットワークが発達した世の中では、本当に些細な事から情報が筒抜けになりかねない。

それも無名の一般人相手にだ。

趣味で荒らしてたら変な情報を見っけました―――なんて、有り得そうで笑えない。

 

そこら辺はもう自分達の手の出せるような世界ではないので完全に相手方の企業任せになってしまうが、本当に協力者の方々には頭を何度下げても気が済まない思いである。

 

 

閑話休題

 

 

取り敢えずそれらが何とか終わって一息吐きつつエレベータ乗ったら一般に紛れ込んだイノベイドからの前述の情報である。

時間の問題だったと理解していた為、比較的冷静に反応できているが不安要素がない訳ではない。むしろてんこ盛りである。

 

具体的にはミハエルとかミハエルとかミハエルとか。

暴走して機体持ち出して飛び出してったとかシャレにならん。

一応あの後一昨日までは面倒見てたが、以降は完全に姉さん達にブン投げてしまう形だったのだ。師匠?ミハエルが死にそうだったので関わらないように念を押してたけど何か?

 

『お蔭様でこの2日間は異様に暇だったよ……!』

 

「メタ発言禁止ー。取り敢えずさっき俺言ったことはホントか?」

 

『君も存外酷いな……まあいいだろう。その情報はホントだよ。既に君の機体も調整を終わらせてある。ただ、ちょっと新しい武装を作成したからそのテストもやって貰う為にPF装備は取り外しておいたよ。詳細はこちらに来てからでどうかな?』

 

「げ」

 

サラリと言われた一言に唖然となる。

いつもの事なので別に何か言うわけでは無いがそれでもいきなり不安要素が大きくなったのは明らかだ。

大丈夫なのだろうか?師匠の事だから半端な事はしないと解っているがそれでもなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あとミハエル・トリニティの機体も仕上がったから君と一緒に出撃させるからね』

 

「オイちょっと待て!」

 

 

それは流石にマズイ!主に俺の精神衛生的にも肉体的負担にも!

思わず声を荒げたが、直ぐに切られてしまった。ド畜生!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、今現在俺はオービタルリング内にあるCBのアジトに居るわけだが…………

 

 

「……当然貴様も居る訳か」

 

「何でそんなに不満そうなんだよ?」

 

「……足を引っ張るなよ」

 

「んだと!?」

 

先程までの気を遣う仕事による疲労やらなんやらで疲れきっていた俺は若干不機嫌である。

その結果半ば諦め切ったような口調でそんな言葉を吐き捨ててしまった。

無論、これを聞いてミハエルが我慢できる訳もなく飛びかかってきたが、空かさず巴投げでぶん投げる。

無重力空間では打撃よりもこういった動きの方が有効なのは意外と知られていない事だ。

まあ、MS等の格闘戦はもっぱら打撃戦が多いから仕方ないのだが。

ミサイルや実弾もかなりアレな話になるが、ある面から見れば打撃攻撃ともとれるし。

 

まあ、それはどうでも良いとして。

 

半ばもう諦めながら振り返れば、そこには桃色のパイロットスーツに身を包んだ赤い髪の少女―――――ネーナが不安そうに佇んでいた。

思わず目が細くなる。

睨むとまではいかないが、それでも更に不機嫌になったという事は解ったのだろう。

 

「…で、ネーナ。なぜ貴様まで此処に居る?」

 

口調まで刺し々しいのを自覚した。

いかんなと思って少し落ち着こうと深呼吸。…うん。大分落ち着いたか。

 

『それは僕に説明させてもらおうかぁ!!!!』

 

あ、ごめん嘘。一気に落ち着かなくなったわ。

 

顔を上げればいつの間に出てきたのか天井に大型スクリーン。床からは映写機。

オイなんてアナログなもん使ってるとは言わない。突っ込むのにも疲れた。

 

『……反応がないね?』

 

「疲れてんの!!昨日降りて休み無しで移動してまた上がってきたんだぞ!?」

 

『気張れや』

 

「じゃかぁしい!!!」

 

ぜェぜェと息を切らしながら吠える。

どうやら自分でも知覚できていた以上に疲れが溜まっているらしい。おかしいな…?まあ、打ち合わせ中は四六時中神経を使っていたのだ。慣れていなかった分疲れているのだろう。

そう自己完結した辺りで頬に何かが押し付けられる。

なんぞと思ってそちらを向けば――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――可愛イ女ノ子カト思ッタ?残念!!ハロデシタ!!」

 

「変な事言ってねえでその手のモン寄越せガラクタ!!」

 

 

 

―――相棒が俺の頬に栄養ドリンクを押し付けていた。

反対側の手に何本も持っていることから全部飲めということらしい。

 

……逆に体壊すんじゃないの?コレ…

 

 

 

 

 

 

栄養ドリンクも飲み終わったので早速師匠に説明を求めると、彼が言うにはこういう事らしい。

 

 

『新しい装備ってビット兵器なんだよね。ファングじゃなくて。しかも複数。で、君脳量子波使えないじゃん?で、ハロに任せても良いけどちょっと使える奴を増やして纏めたらどんな結果になるか知りたいから、君彼女とランデブーしてくれない?』

 

「アホか」

 

思わずそう言ってしまった俺は悪かない。

だってぶっちゃけそんな事したらビットの制御系がノイズだらけになる。つまりマトモに制御できなくなるのだ。

一応相棒にビット制御を任せるの止めて、全部ネーナに任せても良いのだが、如何せん俺は彼女が本当にビットを使えるのかを知らない。

使えるとしても“何処まで使えるのか”が分からないのだ。

鍛えてあるとは言え、元々サポートメインのドライを担当していただけに基本能力はミハエルや俺と比べて低いはずの彼女が、そもそも俺の滅茶苦茶な操縦に着いてこられるのかという懸念もある。

万が一にも着いて来られなければアウトだ。

結局相棒に全てを任せる事になれば、ぶっちゃけその場合の彼女は(言い方は悪いが)デッドウエイト以外の何者でもない。

師匠の選定故にそういう事はないとは思うが……

 

ちら、と、彼女の顔を伺う。

…不安そうだ。乗るのが怖いのか、それとも別の何かか……できれば、前者が良いが。下ろす理由になるし。

 

「…………」

 

「……」

 

「……?オイ、どした?」

 

「ん?…ああ、ちょっと、な……先に機体チェックしておけ。土壇場で故障はキツいぞ。折角の晴れ舞台なるかもしれんのに」

 

そう言うとミハエルは少し顔を顰めた。

「お前に言われたくない」とか思ってるのだろうか?……もしそうだったら後で〆たる。

 

「…あんたの機体はどうすんだよ?新装備が付いてる上、ネーナを乗せんだろ?」

 

「あ、そっち?」「あ?」「いや、何でもない」

 

やべぇ普通に妹に対する気遣いだった。

どうやら本格的に俺の精神は不味いらしい。疲れて何時も通りの思考ができなくなってるっぽいぞ?

……と、するとさっきのネーナに対する思考もいつもと違ったりするのか?

 

再度彼女を正面から見た。

偏見とか何もなしに、ただ、見る。

 

…やはり不安そうだった。

…でも、乗るのが怖い、とか、自分の身を案じる心配ではない。

では、何か―――と考えた所で、この不安そうな表情は自分がよく知る表情だとやっと気づく。

 

―――気付くことが、出来た。

 

 

 

 

これは、“誰かを気遣う時の不安”だ。考えてみれば、顔をメットで覆っていたとは言え、自分も最近しょっちゅうしていた表情だ。

 

気付けなかったのは、おそらくそれに追加して『自分が置いていかれるのではないか』という不安が混ざっていたからだ。

それは基本誰かに着いていくということがなかった俺にとっては馴染みのない物だ。

…だから気付けなかったというのは……ちょっと、どころか、かなり言い訳臭いかな?

 

 

 

「………」

 

「……」

 

 

…そうなると彼女自身はもう覚悟が出来ているんだろう。

そうなれば、俺も腹を括らないと情けないというもんである。

……いい加減、顔を合わせ続けているのも気まずいし。

 

 

「……」

 

「………」

 

「…………サブシート引き出せ。後3分で支度は終わらせろ。…情けない姿を晒すなよ」

 

「っ!!……ラジャ!」

 

そう言ってから彼女はOガンダムのコクピットへ飛んでいく。

途端に元気になったのを見れば、思わず苦笑が溢れる。

…だが、それを悪い物と思ったりはしない。

 

(…俺も相当難儀な性格だなぁ、オイ)

 

そう自嘲しながら俺はネーナの後を追った。

目の前に立つもう一体の相棒は、いつものGNABCマント姿だ。ヘッドギアも何も付いていない、マントとシールドが装備されている以外は“素”の状態である。

…いつもの、とは言ったが、そういえばもう長い事この姿を見てなかった。

そう思えば感慨深い物がある。

最初に戻って来たと言うべきか、それとも戻らされたというべきか。

 

「…」

 

思わずコックピットを通り越して顔の近くまで寄る。

今思えば、こうやってここまで近付いた事はなかった。

そうすると、いつも見慣れていたあの顔が妙に新鮮味のある物に見える。

 

 

 

「……改めて宜しく、相棒」

 

丁度デコの角の根元にある赤いクリスタル状の部分に手を当ててそう呟いた。

実におセンチな真似である。

自分で自分が滑稽だ。

 

―――でも、偶然だと思うが、ガンダムはそれに少しだけ唸りを上げる事で返してくれた。

 

…返してくれたんだと、思いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『がんばろう』

 

 

 

 

 

 

 

耳元にそんな声が聞こえたような気がしたが、聞き覚えのない声だったので確実に疲れからくる幻聴だろう。

取り敢えずコクピットに入り次第さらに栄養ドリンクをがぶ飲みしようと思う。

精力剤?ヤバイ事になりそうだから遠慮する。というか俺16やぞ。

 




如何でしたでしょうか?

どうも雑炊です。

というわけで次回からあの回に入っていきます。
投稿は遅れるかもしれませんが、お許し下さい。

というわけで解説へ入ります。


ザフキエル強化
→あんだけ活躍の場がなかった原因はこれです。まあ、ラストぐらいドデカイ花火を打ち上げぃということで……

師匠の独り言
→実はバシバシ伏線が仕込んであったり。
なお、彼の思考はあくまでも『師匠』の思考なので普通の人間とは物の見方や考え方が違うということをご理解頂ければ嬉しいです。……私の力量不足で解りにくいかもしれませんが……


アムロの仕事
→そういえば今まであまり描写したことないなと思いサラっと描写。
大体あんな感じで色んな人と人との間を取り持ったりしてました。回数はかなり少なかったですけど。


最後の声
→さあ、だれでしょうかねー(棒


というわけで今回はここまで!
何かあれば感想等にどうぞ!
では、また次回!!
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