ガンダム00  マイスター始めてみました   作:雑炊

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という事で前後編の内の前編に今回は当たります。
…いや、調子に乗ってたら15000字超えてまして。
取り敢えず区切りが良いので前編という形を取らせて頂きます。


それでは、本編をどうぞ。


二十二話―――復讐の果て : 前編

一つの閃光がソラを駆けていく。

その手に槍を。腰には牙を。そしてその背には剣を携えて。

その目は赤く血走り、獲物を探し忙しなく動く。

ある時、閃光は獲物をその目に捉えた。

 

……だが、違う。

本当に狩りたい物ではない。

 

しかし何かの足しにはなるだろうと、閃光はそれらを狩る事にした。

槍から尖った血の色の光を数発放ち、獲物を全て絶命させる。

仲間を失った事に気付いた獲物の同類達が此方へと寄ってくるが、その動き全てが緩慢で、閃光にとってはイライラするような動きであった。

 

―――ウゼェ。

 

心の中でポツリと呟いてから閃光は牙を放つ。

腰から放たれた牙達は、自らの主の命に従い、獲物達に自慢の剣を突き刺し、蹂躙し、破壊していく。

ものの一瞬とも言える時間で、獲物達は閃光の目の前から消え去った。

 

だが、閃光は満足できない。

本当に狩りたいものはこれじゃない。

 

―――ウゼェ。

 

更に閃光はソラを駆ける。

しかし見つかるのは先程狩ったのに良く似た者や、それよりも重厚でずんぐりした者。

そして――――――あの日、自分をコケにした、銀色のバツの字型の突起物を身に付けた、赤い光を出す物。

 

 

その全てが――――――彼の狩りたいものでは、無かった。

 

 

「――――――ウッゼェェェェェェェェェェェんだよ!!お前らはァァァァァ!!!!!!!!」

 

咆哮と共に、全身の武器から光が放たれる。

牙から、大砲から、剣から、槍から――――――その全ての光が、獲物の命を皆刈り取っていく。

 

それでも彼は満足できない。

更に更に歩を進めながら、彼は再度咆吼した。

 

 

 

 

 

「どォォォこだァァァァァァァ!!!!!!アァァァリィィアル・サーシェスゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

閃光は――――――ミハエル・トリニティは、今、正に復讐に狂える狂気の閃光と化して、己を邪魔する者達の命を片手間序でに刈り取る、まさに死神と形容しても良い存在だった。

その彼の駆る機体は―――皮肉な事に、ヒーロ然としたトリコロールの天使だった。

 

 

 

 

 

 

「……いや、相棒。変なモノローグ流している所悪いけど、マジで姉さん達あいつに何したの?キャラ崩壊ってレベルじゃねーぞ」

 

「ミハにい…怖いよぉ………」

 

「ああ、もう泣くんじゃない。幼児退行してまで泣くんなら着いてこなければ良かっただろう」

 

「だって……だってぇ………」

 

「そこでまた泣くんじゃないよ全く…」

 

だが、怖い、という意見には全面的に同意する。

今のミハエルは以前よりも明らかに荒々しく、同時に鬼気迫る物を纏っていた。

復讐の機会が巡ってきたと同時に、今まで研鑽してきた物を披露する最高の舞台ということでテンションが異様に上がっているのだとしても、彼処まで凶暴化はしまい。

……まさか師匠か?機体に何か仕掛けているというのならば納得だ。あの師匠ならば俺や乗る本人は愚か、相棒の目だって欺いてそういう事をしかねない。

……もし、素でああなってるというのであれば、俺はこれからあいつとの付き合い方を考えようと思う。

主に接し方をもうちょっとソフトな物にしようと思う。

 

…と。

 

「はいはい邪魔邪魔」

 

いつの間にか寄ってきていた宇宙型ティエレンとイナクトの一団を正確にビームガンとガンビットで打ち抜いていく。

なお、ガンビットは現在進行形で相棒が操作している。

理由は簡単で、さっきのネーナの様子を見れば解ると思うが、すっかり怯えてしまっているのだ。

まあ、あんな兄の狂気に飲み込まれたかのような様子は、確実に彼女ほどの年頃の娘さんにとって毒でしかなく、また、恐怖を覚えさせるには十分であるものというのはよくわかる。

如何せん、人間というものは敵の狂気にかられた姿よりも、味方、或いは親しい人達の狂気にかられた姿の方が精神的ショックがデカイ。

故に、このように怯えるのも無理は無かろう。

 

だからこそ、俺は必要以上に咎めない。

 

……咎めない、のだが……

 

「うううぅぅぅぅぅぅぅぅ………」

 

「……いい加減抱きついてくるのは勘弁してくれ。操縦しにくいんだが」

 

「だってぇ……怖い、んだもん……しょうがない、じゃぁん…」

 

「泣くな。泣くんじゃない」

 

泣きたいのはこっちだバカヤロー。

 

 

因みにミハエルはいまだに大暴れしていた。

…あんだけバカスカ使っているのは………大丈夫なんだろうか?

エネルギーがサーシェス戦まで持つのか、とても不安である。

 

……結局俺が戦う、とかなったらあのバカは異次元まで飛んで行くくらいの勢いでぶん殴ってやる。

 

というか、何げにもう戦端は開かれてるのか……さて、俺はどうするべきかねぇ…?

 

 

 

 

 

 

約40分前  アムロ達からは別の宙域のデブリベルト

 

プトレマイオス ロックオン自室

 

ドンッ

 

「…くっそまじかよアイツら…そりゃあねえだろう」

 

自室のドアを叩いて、俺はそう独り言ちた。

今現在地上から此方へと向かっているエクシアを除いて、現時点でトレミーの戦力は俺のデュナメスとアレルヤのキュリオス、ティエリアのヴァーチェ、そしてユリのサキエルしかない。

対する敵機の数は不明………だとしても、確実に擬似太陽炉搭載機は全機近く出てくるだろう。

そして間違いなく、あの戦争狂も出てくるはずだ。

間違いなく、奪ったガンダムで。

 

しかし、そんな厳しい状況下で俺に言い渡されたのは自室での待機だった。

 

思わず、ノーマルスーツに着替えた状態のまま呆然とし、次いで抗議の声を上げた時には、俺は自室に隔離されている状況だった。

 

…ガンダムが全機いたとしても切り抜けられるかは判らないのに、その半分の2、3機でなど圧倒的に不利だというのは皆解っているはずだ。

それでも俺を待機させるというのは、俺が右目を負傷しているからだと………詰まる所は要らない気遣いなんだということが、ありありと解る。

 

(……大方ティエリア辺りが仕組んだんだろうが……あの野郎、帰ったらシッカリと拳骨食らわさにゃあ…)

 

確かに先の戦いで効き目を負傷している故に、確かに狙撃はかなり難しい。

右側からの攻撃に対する反応も鈍いだろう。

が、それだけだ。

ぶっちゃけた話として、現在のデュナメスには『GNアームズTypeD』がある。

あれは基本艦隊のような一箇所に固まっている多数の敵を殲滅するのに有効な武装を多々搭載している。

 

また、GNアームズの例に漏れず、ドッキング後の機動性はガンダム単体よりも遥かに上だ。

故に、よっぽどの事がなければ片目をヤられていたとしても、戦闘は可能なのだ。

 

(…いや、それを分かっているから、この仕打ち、か)

 

成程、怪我人を隔離する、という手は確かに有効だろう。

特に勝手に脱走するようなタイプには。

その気遣いには涙が出てくるほど感激する。

…が、その結果として母艦が落ちた、ではシャレにならないだろうがよ!

 

(っクソ!電子ロックはハッキング不可!部屋自体は元から抜け道無し!八方手詰まりもいいとこか!?)

 

焦る。焦る。焦る。

よく創作物とかの主人公とかは、仲間からのいらん気遣いで戦えるというのに戦いから遠ざけられ、『皆が戦っている中俺は何故こんな所に居るんだ!?』と苦悩するような場面がよくあるが、今の俺は正しくその状況だ。

唯一の違う部分は、この状況は俺の頑張り次第ではどうにでもなり、尚且つ神とかいうのが気紛れによっては他の皆諸共俺も死ぬ、という事ぐらいか。

 

「クソッタレが!マジでどうする!?考えろ、冷静になって考えるんだよロックオン・ストラトス!」

 

思わず独り言を漏らす。

結果として何も状況は変わらないが、少し冷静になる。

何故ならば、焦っても意味はないからだ。

急いではいるものの、焦っても何も良い事はない、というのは、この二十数年間の人生で良く解っているのだ。

なら、頭を冷やして冷静に考えるべきなんだ。

 

深呼吸を一つしてから、俺は自室のドアの前に座り込む。

ここで俺が取るべき脱出の方法は3つ。

 

1.天井板を開けて天井裏から外へと出る。

 

2.ドアを破壊する

 

3.助けを待つ

 

…なんとしても3だけは勘弁して欲しい。まず有り得ないのだから。

詰まる所残るのは1と2だが、これも結構難しい。

何せこの自室は腐っても戦艦の一部なのだ。

壁などに使われている素材におけるある程度の威力を持った攻撃に対する強度は折り紙付きとも言って良い。

しかも天井は一枚板で、ライトは壁に据え付けてあるタイプ。

どう頑張っても天井板を持ち上げられそうな雰囲気ではない。

 

…要するに、どう足掻いても残るのは3だけなのだ。消去法で行けば。

 

「……ハァ……」

 

溜息を再度ついて首をガックリと落とす。

文字通りの八方手詰まりだ。

どうすりゃ良いんだと言っても、どうにもならないし、どうもできない。

唯一希望に成りそうなのは居るが……多分、無理だろう。

そもそも今部屋の外に居るのかが分からない。

居ても無視してくる可能性が高いのだ。

 

「……」

 

…ふと、あの不審者の相方を思い浮かべた。

機械のクセに人間臭く、欲望に忠実で、主人にも平然と逆らう、あのスイカ柄の球体。

だが、あんなのでも一応俺の相棒と大本は一緒の筈なのだ。

 

…ならば、試してみる価値というものは…あるのだろうか?

 

 

「………」

 

ドアを見据える。

 

居るかどうかも分からないのに。

 

口を開く。

 

聞こえるかどうかも分からないのに。

 

言葉を紡ぐ。

 

聞いてくれるかも分からないのに。

 

 

「         」

 

 

我ながら、情けない言葉を吐いたと思う。

 

…それでも、そんな物を気にしてはいけないのだ。

 

 

 

 

何故なら、この行動の是非によって、今外で戦っている仲間たちの運命が左右するかもしれないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

プトレマイオスより離れた宙域

 

国連軍輸送艦隊付近

 

 

 

あの時クルジスのガキのガンダムに武装を全損させられ、尚且つ機体にもダメージを追っていたスローネツヴァイは、大将のおもちゃ――――――アレハンドロ・コーナーの旦那の手配で完璧といって良い程のレベルまで復元されていた。

武装、コンディション、そしてデータリンク。

何から何まで致せりつくせりの見事なものだった。

結果として殆どロールアウト直後と見受けられてもおかしくない程にピッカピカだ。

唯一残っているのは背面のラッチの根元に刻み込まれたビームサーベルの傷だが―――これはこれで、悪くないと思う。

頭の馬鹿な連中に対しては泊が付くし、傷の分重量が軽くなってると思えば不快な物ではない。

無論のこと、戦闘にも一切支障はない。

 

正にパーフェクトだ。

早くこれで戦争がしたいというもんだぜ。

 

 

だが、今回俺が割り当てられたポジションは今話題のGN-Xとかいう新型MS部隊の後方支援―――と言うよかは、アレだな。後始末?ケツ拭い?…まあ、そんな仕事を任されちまったというわけだ。

 

 

まあったく不満もタラタラ口から漏れ出るってもんよ。

…………ま、ハディーのアホから色んな意味で逃げられたのにはホッとしたが。

 

何せアイツは只今俺と自分自身を国連のお上に売り込む為、日夜努力しているのだから。

無論バッリバリでハニートラップその他諸々を使用しながら。

 

……ああいう面でのみ、アイツを拾っちまったことだけは幸いと思えるな。あくまで“こういう面でのみ”、だが。

 

ともかくだ。

 

「…おーおー皆さんお元気なこって……精々叩き落とされて、俺の獲物を横取りしないでくれると嬉しいんだがねぇ…」

 

前を行く連中のケツを見ながらそう呟く。

普通なら怒鳴られてもおかしか無いんだが、どうも奴さん方の耳には届いちゃいないらしい。

スピーカーから聞こえてくるのは色んな連中の生の感情って奴だ。

 

武勲を建てようとする奴。只々己に課せられた任務を全うしようとする奴。殺された仲間の復讐に燃える奴に、これから自分が死ぬんじゃないかという恐怖を押しつぶすために何かブツブツ言ってる奴……兎に角、人それぞれで表情が違うのはおもしれぇ。

 

だが、結局それだけだ。

そんなに異常に興奮して一体何になるってんだ?

 

結局の所、戦いは戦いでしかねぇ。戦争も同じよ。それ以上でもなければそれ以下でもねぇ。

 

死ぬか、死なせるか。

 

或いは殺すか、殺されるか。

 

たったそれだけだ。

 

実にシンプル、且つ分かり易い真理ってやつだ。

 

俺が戦争を好いてるのも、それが理由よ。

 

単純だからこそ俺の心はそこに酔うし、明快だからこそ燃えるってもんだ。

 

だからこそ、俺はこういう場に身を浸しているのよ。

 

此処に居る方が本当の意味で呼吸をしているように感じるし、他人の命が死ぬのを見ることで、自分が生きているのだということを実感できる。

 

 

結局、俺はそういう類いの人間だ。

とはいえ、俺以外にもそう言う奴はこの世界ごまんと居る。

探せばPMC意外にも居るだろうよ。

案外、ガンダムに乗っている連中にも、そういうのは居るかもしれねえ。

 

だからこそ、そういう連中にとってCBという組織は目の上のたんこぶ且つ、最大級のご馳走でもあるってわけだ。

一方で、国連軍は目の上のたんこぶであると同時にウザったらしい首輪でもある。

近い将来連中の手によって世界は平定されるのだろうことは馬鹿でも解る。

そうなれば世界は退屈になる。

 

俺たちが好きに戦争はできなくなる。

 

その前に少しでも面白そうな戦争には参加しておきたいっていうのが俺の魂胆なんだが……これじゃあ、なぁ。

 

 

 

 

なーんて思ってるまっさなかよ。

 

 

 

 

 

『…出てきたぞ。羽つきと…デカ物か。たった2機だけとは…嘗めているのか、それとも別か…何にせよ、獲物が少ないのは軍人としては嬉しい話だ。各機、倥るなよ』

 

 

そんな声が耳に届く。おそらくは出撃前に話したあの『ロシアの荒熊』だ。

獲物が少ないのが嬉しい…とは……本音かどうかは知らないが、やはり俺とは相容れない、かねぇ。

 

 

「…まあ、何にせよ始まり、か……」

 

視界の隅には2機のガンダムが出てきている。

それに若干物足りなさを感じるのは、仕方がないというもんだろう。

 

 

 

 

戦闘の開始はやけにアッサリとしていた。

国連側のGN-Xが威嚇でビームライフルを撃ったのが切っ掛けとなって、全ての機体が戦闘体制に入った。

 

最初に犠牲者が出たのは当然の様に国連側だ。

キュリオスのテールブースターにあるビームキャノンの一撃が、離脱し損ねたGN-Xを一体汚い花火に変える。

一方の国連軍も負けてはいない。

25機となったGN-Xのほぼ全ての機体が粒子ビームでキュリオスとヴァーチェを狙う。

怒涛の猛攻だった。

アレルヤとティエリアの目には、まるで自分達が血の色をした光の川に飛び込んだように見えていただろう。

 

それでもGN-Xと比べ、性能特価型とも言えるガンダムにとってはこの程度を掻い潜るのは造作もない事だった。

特にキュリオスはブースターで機動性が上がっている。

そこへアレルヤの技量も相まって、迫り来るビームの狭い間隙を縫うように飛び、隙を見て再度GNキャノンによる砲撃を見舞った。

 

無論GN-Xのパイロット達は皆、各陣営のエースパイロットと賞賛されている人物たちだ。

その程度は予想内だったのか、射線上にいた者達は全員がその砲撃を回避する事に成功した。

 

……が、ここまでもアレルヤの予想範囲内だったということを、彼らは知る由もない。

 

突如回避したGN-Xに、頭上からヴァーチェのGNバズーカによる砲撃が襲いかかった。

それに反応する事もできず、2体のGN-Xが破壊される。

それに目もくれずにヴァーチェは両手に持った2門のGNバズーカを別の敵へと向けていた。

 

流石に今度は避けられたがそれに対してティエリアは特に何も思わない。

全て計画通りだった。

 

 

 

 

元々、4機で何とかできるとは彼らも思ってはいなかった。

いくら性能差があるとはいえ、結局の所現状において、戦いとは質より量なのだ。

空想のように現実は甘くはない。

無双なんぞ、いかなガンダムでも不可能だ。

以前の合同演習の時を見れば、その事は良く解る。

 

 

そこで今回の作戦の鍵となるのが、現在緊急で此方へと向かっているエクシア。

そして、宛になるかはわからないが、これまで幾度と無くこちらの危機にタイミング良く現れていた、『O-01』という協力者。

それが保有している『Oガンダム』である。

 

 

作戦はこうだ。

まず、正面からの敵部隊をキュリオスとヴァーチェで引き付ける。

 

後は2機で時間を稼ぎながら、可能であれば敵擬似太陽炉搭載機を撃破。無理ならば眼界まで逃げ回る。

 

その間に敵艦隊の後方からエクシアがGNアームズを装備した状態で突っ込み、GN-X部隊の帰る場所を無くしてしまう。

 

無論、母艦が潰されるわけには行かないので、トレミーは逃げ回る役に徹する。

同時に、不測の事態…例えば、敵の伏兵等も居る事を考え、サキエルがその護衛を行う。

オールラウンドな対処が可能なサキエルは、他4機と比べて器用貧乏な部分が目立つことが多いが、逆を言えばそれはどんな状況下においても不利になる事が少ないのと同義だ。

だからこその護衛担当である。

既にサキエル用のコンテナは、今回キュリオスやヴァーチェ同様に間に合わなかったGNアームズに代わり、大量の武器が詰め込まれた所謂武器庫とも言うべき専用の強襲用コンテナに換装されている。

その為、例えそこそこな数の敵が来ても十二分に対処は可能なのだ。

本人の技量と相まって、その信頼度はかなり高い。

 

 

なお、チラッと出たO-01は言うなればオマケの攪乱役だ。

最悪敵がまだ隠し球を保有している可能性もあるので、その場合は容赦無くそれを担当して貰うつもりだが。

 

 

なんともシンプル且つ難易度の高い作戦かと呆れる人も居るかも知れないが、その分成功時の影響は計り知れない。

既に、エクシアが敵艦隊に到達するまでの時間は作戦開始から45分後。

O-01直属の上司という人物からの報告によって、O-01と『オマケと称される機体』が作戦宙域に到達するまで30分前後という結果は出ている。

 

故に、作戦に変更は、ない。

 

そう言う意味では最初の接近で数機潰せていたのは僥倖とも言えた。

後に続く負担は例え一、二三機だとしてもかなり軽くなるものだ。

 

また、制限時間があるとは言え、此方の手札には『トランザムシステム』という『切り札(ジョーカー)』がある

おいそれとは使えないが、その分発動後の彼我の戦力バランスは圧倒的に此方が上となる。

使いどころを間違えなければ、此処ぞと言う時に苦戦する、などという事にはならないだろう。

 

だが、いずれ使わなければならぬ時は必ず来る。

なれば、その前にできるだけ数を減らしておく。

 

無論、囮として撃墜されぬよう、基本は逃げ回るというスタンスを取る。

が、ヴァーチェの火力ならば例え片手間の反撃であろうと敵機を撃墜する事など余裕だ。

 

ティエリアはGNフィールドを展開しながら、後方から追撃してくるGN-XにGNバズーカによる反撃を行う。

敵のライフルから放たれる粒子ビームは、前回の戦いの時とは違い、既に解析が終了している。

故にそのデータをもとにして粒子圧縮率を調整されたフィールド表面は、襲い掛かるビーム粒子の軌道を逸らし、あらぬ方向へと飛ばしていく。

無論、装甲に到達していなければ、フィールドの粒子も然程減衰してはいない。

 

当然の事ながら、敵の攻撃から身を守る際の行動において、受けるよりも逸らす方が武器や防具への負担が軽いという事は、古来から証明されている。

ただし、それはビームの様な粒子兵器ではなく、マテリアルな実体兵器での話、という認識が、一般には強く浸透している。

 

故に、当たり前の事ながら技術を手にしたとは言え未だCBと比べれば粒子兵器の理解に遅れている国連所属のGN-Xパイロットにとっては今のヴァーチェのフィールドが成した事柄は、一瞬とはいえ隙を作り出すほどの驚愕に満ちた、所謂“神業”として映った。

その隙を逃すティエリアではない。

当然の様にGNバズーカ、並びにGNキャノンの一斉射によって、ケツに付いていた5機のGN-Xが血の様な光を放ちながら虚空へと消えた。

コチラに引っ付いてきていた機体の数を、ティエリアはキチンと把握してはいない。

が、今ので5分の1の敵機を一辺に片付けた事になる。

普通ならば賞賛物の働きだろう。

だが、気は抜けない。残りの敵が何処に居るのか分からないのだ。常に警戒し続ける必要がある。

 

心配してはいないが、念の為アレルヤに通信を繋げるべきかと彼は考えた。

と、いうのも、有り得ないとは思うが、万が一にも残りの敵機が全て向こうへといっているのだとすれば、流石にキュリオス単機では無理にも程があると考えたからだ。

 

―――と、次の瞬間、脳裏に閃く冷たい物に従って、ティエリアは機体を動かし、ほぼ反射的にGNキャノンを発射した。

 

何かに直撃するような手応えと同時に、先程まで自分の機体があった空間を赤い光が駆けていく。

 

何だと思う暇無く、それは爆散した資源衛生の影から現れた。

 

緋色の大剣を構えた、見覚えのある機体―――ガンダム!

 

「スローネか!!」

 

先刻地上でトリニティの救出任務にあたっていた刹那からの通信で伝えられた、鹵獲された機体――――――ガンダムスローネツヴァイ。

鹵獲したのはアリ・アル・サーシェスという名の傭兵。

刹那・F・セイエイに戦い方を教えた教官にしてテロ組織内での嘗ての上官。ロックオン・ストラトスの家族の仇。マイスターでもないのにガンダムに乗り、今またその手中に堕ちたガンダムを駆って戦場へと出てきた戦争狂!

 

―――ロックオン・ストラトスと刹那・F・セイエイには申し訳ないが、未来への禍根を断つ意味でも奴はここで消さねばならない!!

 

「今此処で消滅させる!!」

 

左腕に設置されたGNハンドガンから粒子ビームを放ちつつ此方へと突っ込んでくるスローネツヴァイに向かって、ティエリアはGNフィールドを展開しつつ、二つのGNバズーカから粒子ビームを迸らせた。

MSを1機丸ごと飲み込める程の、圧倒的な熱戦がスローネツヴァイに襲い掛かる。

が、流石にマイスターでもないのにガンダムを操れているサーシェスの技量は並ではなかった。

 

機体を翻させながらそれを躱すと、両腰の特徴的な板状のスカートから6つの閃光を放つ。

GNファングだ。

 

無軌道に迫ってくる六つの牙に対し、ティエリアは舌を巻く。

本当に殆どをCP制御で動かされているのか疑わしいほどの滑らかさだった。

それは相手がこういう武器に対しての技量も高いのだということを証明しているという事に他ならない。

 

タイミング良く回避と反撃を繰り返し、何とか4つを破壊する事には成功したものの残り二つの撃ち漏らした牙がヴァーチェに襲い掛かる。

 

「ちぃっ!」

 

回避する暇のないその攻撃に、ティエリアは舌打ちを一つ漏らす。

元々重装甲なヴァーチェは、既存の機体やMAと比べれば確かに機動力は勝るこそすれ劣らないものの、やはりGN-Xや他のガンダムと比べれば若干低い事は否めない。

これがFA装備やPF装備のOガンダムの様に、やったらめったらスラスター等を取り付けて機動力を確保しているならば良いものの、肝心のヴァーチェの装甲――――パーティクルと呼ばれるそれには、アレの様に過剰なスラスター類の装備はない。

それが、この一瞬の勝負を分けた。

 

元々、ファングの格闘攻撃用ビームサーベルは、他の機体に標準搭載されている物と同様に、斬撃よりも刺突に優れている。

その貫通力はビームライフルなどの粒子兵器と比べて、高い。

故に、それに対応できるよう調整されていないヴァーチェのGNフィールドでは、如何に元の強度が高かったのだとしても、易易と貫かれる事は明らかであった。

圧縮粒子の壁を突き破ったファングが、ヴァーチェの左脚部装甲と右肩部GNキャノンを抉った。よりにもよってフィールド展開中であったが故に少々の小爆発の後、損傷部は粒子放出部分を中心に破裂した。

 

「ぐぁっ!」

 

その衝撃は、コクピットを揺らし、ティエリアに攻撃の隙を作らせるには十分な物。

同時に、その振動で右手のGNバズーカを取り落とす。

 

しまった、という暇はない。

体制を立て直さねば、取り落としたバズーカを回収する前にやられるのは明白だ。

だが、不思議な事に緋色の機体は役目は終わったと言わんばかりに離れていく。

代わりに、周囲の衛星から多数の白い影―――GN-Xが姿を現した。

その数、ざっと見積もって12機。

 

「付け入られたか……!」

 

熱くなり過ぎてしまった自分を叱咤する暇も無く、GN-Xが赤い粒子ビームを放ってくる。

直ぐ様ティエリアは破損部をバランスが崩れるのを承知でパージし、回避行動をとる。

序でにGNフィールドも展開して逃げ回るのに専念するが、4つの粒子放出箇所のうち2つを失った現状で張れるのは、精々他の4機のガンダムが張れる物よりもマシというレベルであり、尚且つ局所的な物でしかない。

その隙間を縫って、敵のビームが装甲に当たる。

ジワジワという表現がシックリくるかの様に、ヴァーチェの装甲は削られつつあった。

 

 

そのヴァーチェの危機を、アレルヤも察知していた。

テールブースタのキャノンで追っかけてきていた集団の内2機目を撃墜した直後であった。

 

「ティエリア!」

 

直ぐに援護へと回ろうと機首を向けるが、その前に機体が酷く揺動する。

何事かと目をモニターへと向ければ、今の一瞬の隙をついてテールブースタに粒子ビームが直撃した事を知らせてくれていた。

 

「しまっ……ッゥ!?」

 

そのビームの出処は何処かと彼が探そうと顔を動かした瞬間、頭の中に火花が散った。

頭部に何か重い物がぶつかった時の様に、目がチカチカする。

 

それは直ぐに治まったものの、次の感覚がアレルヤを襲った。

脳を直接針で刺されているかの様な鋭い痛み。

呻き声を上げながら、彼はヘルメット越しに頭を抑え、その感覚が何かを思い出す。

 

「この、不快な感覚は…!」

 

―――脳量子波による干渉!!

 

「うわっ!?」

 

更なる粒子ビームが、テールブースタに直撃する。

堪らず体を仰け反らせるも、しっかりとブースタをパージして爆発から逃れる事は忘れない。

同時に此方へと向かってくる存在の正体も、彼はハッキリと理解していた。

頭の痛みが教えてくれていた。

 

此方へと向かってくる敵の、その中でも突出して前に出ている機体―――彼と同類の、超兵機関の遺児!!

 

初弾こそ別の誰かの物の様だが、その隙に此方に肉薄してきたのだろう。

 

その事を、アレルヤも予想済みだった。

同時に、超兵を投入してくるのだろう事も予想済みだった。

これまでの戦いで、“ソレ”と交戦時に自分の動きが鈍るのは、既に知られているのだから。

 

即時アレルヤはそこから離れようとするが、それよりも早く、GN-Xがサーベルを振り下ろしてくる。

やむを得ずキュリオスをMS形態に変形させ、ビームサーベルで対応する。

二つの光の剣が交錯し、スパークが迸った。

 

 

―――被検体E-57!!

 

「っ!…ソーマ・ピーリスか…!」

 

声が伝わってきたような感覚と共に、やはりと思う。

直ぐに相手を蹴り飛ばして距離を取りつつ、周囲からビームの雨を降らせてくるGN-Xから逃げ回る。

これでキュリオスにデュナメスのGNスナイパーライフル程の威力の武装があれば反撃で敵機を落とす事も可能だったのだろう。

が、肝心のキュリオスは高機動戦特価型。唯一の高威力な武装は、超近距離専用のシールドクロー程度だ。

どう足掻いても、敵に肉迫することはこの状況下では不可能―――更に搭乗者であるアレルヤ自身も、超兵同士の脳量子波干渉によって、酷い頭痛に悩まされているという最悪に近いバッドコンディション。

辛うじて重度の被弾は避けているも、それがいつまで続けられるのかはわからない。

正に今のキュリオスは、ヴァーチェ共々袋の鼠と表現されてもおかしくはない状況だった。

 

 

その状況を聞いているプトレマイオスでも、小規模とは言え戦闘が行われていた。

キュリオス、ヴァーチェの2体に引っ付かなかった残りのGN-Xが向かって来ていたのだ。

数は3機。

それでも、十二分に殆ど兵装がないプトレマイオスにとっては脅威と成りうる。

現在サキエルが必死に応戦してはいるものの、それでも母艦が近くにあるという手前、あまり派手にする事ができないということが、かなりの枷になっていた。

 

『ええい、クソ!!また外した!?』

 

サキエルがGNミサイルランチャーとGNサブマシンガンを斉射する。

既に襲いかかってきていた内の2機は落とす事ができたが、残る1機が中々に手強いのだ。

ビーム粒子の嵐を巧みに交わし、時にはミサイルを切り払う。

その技量の高さにユリは舌を巻く。

エースは伊達ではないようだ。

 

……別にここで報せるべきではないのだが、ここで読者の諸君にはのこったGN-Xのパイロットが誰かを教えておこうと思う。

…ただし、セリフだけで誰かわかると思うので、何処でどういった事を言ったのかだけセリフの横に書き込ませて頂く。

 

 

 

 

 

 

「はっはー!甘いなぁ!」←マシンガンの嵐を避けつつ。

 

 

 

「この、俺はァ!」←襲いかかってきたミサイルを切り払いながら。

 

 

 

「スペッシャルで!!」←サキエルに対しビームライフルを発射。

 

 

「2千回でェェ!!!」←避けたところに突っ込んで蹴り飛ばす。

 

 

「エース様なんだよォォォォ!!!!!」←追撃でビーム弾発射。よけられる。

 

 

 

 

 

 

以上。というわけで閑話休題。

 

 

(…拙いわね…!)

 

スメラギはこの状況を見て、心の中で唸った。

本来であればもう少し敵戦力を削りたい……欲を言えばエクシアやO-01が来るまでは粘りたかったのだが、流石に前線に2機、護衛に1機では無理があったようだ。

しかし、最低誤差範囲内でミッションプランの達成は成されている。

見た所敵増援として現れたスローネツヴァイによってヴァーチェは足止めをくらい、投入された超兵によって、キュリオスはブースタをパージして逃げ回らねばならない状況に陥ったのだろう。

敵が鹵獲したガンダムによって不利に追い込まれたというのは、何とも皮肉めいている。

 

同時に、そのパイロットの実力がどれほどの物か分からないという不確定要素の大きさも、今の現状の原因となっているのは間違いない。

 

アリー・アル・サーシェス。

 

一介の傭兵としてはマイスターに迫るどころか、ヘタをすれば追い抜いているほどの能力を持つ男。

刹那からの報告でその名を聞いた途端、ロックオンの表情が歪んだのをスメラギは見逃してはいない。

 

因縁めいている。

 

そう、感じた。

 

しかしこの状況においてそんな思考は何の役にも立たない。

兎に角、今は前線のガンダム2機を呼び戻すことが先決だ。体勢はその上で立て直せばいい。

 

「クリス。ガンダム2機に撤退命令を。サキエルにも適当にあしらった後で戻ってくるように…『ブリッジ、聞こえるか!?』っ!?」

 

そう、指示を出そうとした時だった。

突如として、ブリッジにおやっさん―――イアン・ヴァスティの声が響いてそれを遮った。

その声は、酷く切迫している。

どうしたの?、と声をかける間もなかった。

彼が『デュナメスが…』と言った瞬間、もう一人の声がブリッジに響き渡ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「デュナメス、出撃する。GNアーマーで奇襲及び対艦攻撃を仕掛けるぞ」

 

起動チェックをしながら、俺はそう言った。

無論、コクピットには相棒のハロも一緒だ。

本当に、コイツには頭の下がる思いである。最高の相棒だよ、全く…

 

『ロックオン!?でも、その体で……』

 

ブリッジからミス・スメラギの驚愕と懸念に満ちた声が聞こえるが、構っている暇は無い。

 

「あんたの立てたプラン通りにやる。それに、俺が出れば、あのバカ2人の逃げる時間も稼げる」

 

言ってから有無を言わさずに通信を切る。

ハッチがこれで開かなければ無理やりにでも出るつもりだったが、どうやらこちらの意を汲んでくれたらしい。

嬉しい限りだ。

…まあ、許可しなきゃ更に現状が悪くなる、と判断したせいかもしれないが…どっちにしろ好都合だ。

 

ハッチから出て早々に、サキエルと交戦中のGN-Xの上半身をGNスナイパーライフルで吹き飛ばす。

こっちに気を取られていなかったためか、狙い打つ必要がないのが幸いだった。

 

『ロックオン!?』

 

「ようお転婆娘1号め。後で向こうにいるバカ2名共々お説教してやるからな」

 

言いながらGNアームズとドッキング。

加速を付けながら前線へと突入していく。

無数のMSの中に、赤く光る2体を見つける。

キュリオスとヴァーチェだ。

トランザムを発動させている。

それでも、中々キツそうだ。

そこで左のミサイルコンテナからそこそこな数のミサイルを発射。

周囲の敵機を攪乱しながら、俺はバカ2名に通信を開いた。

 

『っ!?ロックオン!?』『ロックオン・ストラトス!?』

 

「よお!くそったれたバカどもめ!!よくも俺を閉じ込めてくれたな?後で帰ったらお説教だ!!」

 

ニヤリと笑いながら俺は機体を進める。

どうやら敵さんは俺の狙いに気付いたらしく、ほぼ全部が俺の後についてきた。

それをヴァーチェがバズーカで。キュリオスがサブマシンガンで1、2機ほど落としたのを尻目に俺は更に愛機を加速させる。

 

『しかし、そんな体で…!』

 

「ガキに心配されるほど落ちぶれちゃいねぇよ!俺よりもボロボロだろがてめぇら!さっさと戻れ!!」

 

言いながらミサイルでケツのGN-Xを牽制する。

5機落とせたのを確認した。

その仕返しと言わんばかりに粒子ビームが向かってくるが、GNフィールドを張っている分向こうからの攻撃は屁とも感じない。

ざまあみろ。

 

そう思っているうちに、やがて正面に敵艦隊が見えてきた。

自分でもわかるほど、凶暴な表情が表に浮かんだのを感じる。

 

こっからが本番だと言わんばかりに、俺はGNアームズの全武装を展開した。

 

 

「悪いが、今は狙い撃てないんでね……圧倒させてもらう!!」

 

「砲撃開始!砲撃開始!」

 

右側の大型ライフルから光が迸る。

放たれた粒子ビームは見事敵艦隊の内の1隻を沈める事に成功していた。

幸先が良い。

 

 

「さあ、行くぜ相棒!暴れられなかった分を返してやる」

 

「ヤッチャルゼ!ヤッチャルゼ!」

 

「おう!やってやるぜ!」

 

 

言いながら、次の標的に銃口を向けた。

また1隻落した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっひゃあ~…派手だねぇ」

 

それを見ながら俺はOガンダムを飛ばしつつ周囲の敵を気付かれぬようガンビットで正確に撃ち抜いていた。

その殆ど全てがイナクトやオービットフラッグ、ティエレン宇宙型だったが、まあ、所詮そんなもんだろうと思う。

元々、ここまで入り込まれるとは微塵も思っていなかったんだろう。護衛がここまでしかないというのが如実に表している。

 

…まあ、仕事が楽に済みそうなので文句はないが。

……っと…

 

「ミハエル、聞こえるか?一旦こっちに来い。充電してやる。“はぐれ”を追い掛け回すのは一旦止めにしろ」

 

『ああ!?』

 

「落ち着け。残量を見ろ」

 

モニタに映る顔はまさに悪鬼か何かだ。修羅とか言われてもしっくり来る。

…が、悲しい事にそれに反して機体のエネルギーは……

 

『……げぇ!?もう30%かよ!?』

 

「暴れ過ぎなんだよ。ほら、早く来い」

 

そう言ってやると、ミハエルは舌打ちを一つしながらも此方へと静かに寄ってくる。

それを見ながら、俺は傍らのネーナに指示を出した。

 

「ネーナ。ECガンセット。バッテリ残量いくらだ?」

 

「え、えっと……残り94%…」

 

「十分だな」

 

言いながらECガン……所謂、電力補充用の工具を取り出して、俺はザフキエルの背面にあるコネクターにその銃口を突っ込んでからトリガーを押した。

こいつは擬似太陽炉搭載機に対する電力補充の一つの手段として考案されている試作品を、師匠がかっぱらってきた物だ。

意外と使い勝手が良い事に、俺は大変驚愕している。

何せ、これさえあれば擬似太陽炉搭載機でも長い間全力で戦えるのだ。

特に今のザフキエルの様に、大出力な機体にとっては嬉しい装備である。

…唯一の問題点は、バッテリの交換ができないという点か。師匠曰く「試作品を“まんま”ぎってきた」らしいし……何してんだか……

 

 

そんな事を考えている内に充電が終了する。

残りの残量は…24%、か。100%でMS1機分の電力量とか、意外とこのバッテリ凄いな…

 

「よし、暴れて来い」

 

『おしゃああああああああ!!!!!』

 

「だから興奮しすぎだって…」

 

おしゃああてなんだおしゃああて。

『っ』をキチンと発音しろよ。本当に大丈夫なのかよ全く……

 

(……ま、それはいいとして、だ……)

 

視線を自分の左腕に下ろす。

ネーナが何かを言いたそうな顔でその腕を引っ張っていた。

顔に浮かぶのは不安と驚愕。

まあ、それはそうだろうなと思う。

 

 

 

「…待っていてくれてありがとう……そういった方が良いですかね?」

 

 

誰に言うわけでもなく、そう呟いた。

一体どうしたと思う人がいるかもしれないが、ほっといてくれると嬉しい。なにせ――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――ほう?何時から気付いていたのかな?』

 

「ん、まあ結構最初から。あのバカは一切気付いていませんでしたけどね」

 

『…フム。彼は中々ユニークな人間なのだな』

 

「それほどでもないと思いますよ?」

 

 

言いながら、機体を後ろへと向けた。

正面にはちょうど青い星―――地球が綺麗に見えている。

そして、その丁度ど真ん中少し上の所に――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――貴方と比べれば、ね?」

 

『……褒め言葉として、受け取っておこう』

 

 

 

 

――――――黒い細身のボディーにオレンジ色のバイザーに包まれた顔面。

見慣れた翼こそ無いが、それは俺もよく見知ったMS――――――フラッグに、瓜二つ。

そして、このパーソナルマークは、以前にも見た事がある。2回、ほど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――初めまして、と言うべきですか?“グラハム・エーカー上級大尉”?」

 

 

『―――出来ればそう言いたい所だが―――生憎、そうではないだろう?少年』

 

 

 

その人物こそは世界に名立たるフラッグファイターの中でも最強と目される人物。

GN-Xパイロットに選ばれながら、その愛機への拘りから、あえてその名誉を蹴った人物。

 

 

名を――――――グラハム・エーカー。

 

俺が今回の作戦で唯一――――――出て来たらやだなぁ、と思う程のエースパイロットである。

 




如何でしたでしょうか?

どうも雑炊です。

というわけで次回は後編に当たるのですが、もしかしたら今回よりもかなり短くなる可能性が大きいです。というのも、後はVSサーシェスとその後の話くらいしか書く事無いので…

気を取り直して解説に参ります。


どうしたミハエル
→むしろアムロがどうしてこうならなかったのか作者も師匠も不思議に思っています(笑)

みんなの相棒『ハロ』
→そのシーンを書き込まなかったのは『あえて』です。

スペシャルな2千回
→特に意味はありませんが、まあエースなのだから少しは活躍しろ、と。

花火はー?
→残念ながら次回に持ち越しです……!

ECガン
→オリジナル設定武装です。でも、こういうのあってもあまり不思議じゃないんですよね、個人的には…

ハム
→カオス空間はもうちょっと待っててね。


というわけで今回はここまで!
では、また次回。


*なお、執筆状況については(前に記したかも知れませんが)ちょくちょく活動報告に書いております。趣味の話や詰まった下書きとともに……なお、紹介文にもあるとおり私はTwitterにも出没しておりますが、そっちではあまりこっちの情報は書いてませんのでご了承下さい…

あと、ちょっとこの後の展開について少し皆様にアンケを取りたいので、出来れば活動報告の方を見ていただけると幸いです。
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