ガンダム00  マイスター始めてみました   作:雑炊

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大変遅れてしまい申し訳ありませんでした。
結局いろいろと混ざった番外編になってしまいましたが、取り敢えず何とか書き上がりました。

「え?何でこいつらが居んの?」と思った方は、嘗ての活動報告からラフを探して頂ければ大体解るかと。




要するに、彼らは2期編の外伝でレギュラー確定です。




というわけで本編をどうぞ。



正月とか節分とかバレンタインとかごっちゃになった結果何故か鬼ごっこをやる事になった話

それは唐突に始まった。

 

 

 

『『ガン・マイ』』

 

『『番外編』』

 

『新春大遅刻&節分もくっそ忌々しいバレンタインも一緒に来ちゃったぞ特別企画!!ガンマイ本編外伝まだ未登場組含めて“ドキドキ!地獄の鬼ごっこ(仮)”大会~~~~!!!!!』

 

『師匠。大多数がわけわかめって顔してるから自重』

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都江東区青海1-○-○:要するにお台場、○イ○ー○テ。○。○。。○。

 

 

 

 

突如外壁に取り付けられたオーロラビジョンから聞こえてきたそんな声に本当にその場に居た者達は訳が解らないという顔をしていた。

 

 

 

 

 

………というか、マジで意味が解らなかったのだ。

 

何せ此処に居る一部の者はヴェーダからの緊急ミッションだという事で、指示された場所へと行ったら何時の間にやら全員眠らされ、気づけばこんな状況だったし、一部の者は自分の1日の仕事を終えてさあ休もうと寝床に入り気が付いたら此処に居たのだから。

 

 

しかしそんな彼らの混乱など何処吹く北風小僧の寒太郎。

声の主達は我関せずの眼中無し。

思うがままに我が儘に、コタツの中に入ったままさっさと話を進めていく。

 

 

 

 

『さて、予想通り混乱しているだろうから、アムロ説明』

 

『ハイハイ……え~、皆さんお忙しい中このような茶番に巻き込んでしまい、申し訳ございませんでした。(特に前回の特別編に出てきたお姉さん)

 

 

 

まず、今回の趣旨を説明いたしますと、まあ、要するに皆様に鬼ごっこをして頂きます。捕まったら即時罰ゲーム。キツーいお仕置きを受けてもらいます。

 

制限時間は………その、誠に申し上げにくいのですが、自分の隣にいる、この緑髪の鬼畜大魔王ラスボス師匠の“気が済むまで”となります。

 

 

……え~………それでは、趣旨の説明を終わります。何か質問等などございま「「「「「「いや、ありすぎるから!!!!」」」」」」……ですよね~…』

 

そう言いながら画面の中の少年―――――アムロが頭を軽く抱えて机に突っ伏す。

 

同時に頭の中でこう思った。

 

 

どうしてこうなった、と。

 

 

 

 

 

 

事の始まりは前回の大晦日特別編終了後まで遡る。

あの後作者への暴挙を成し遂げようとしていた特別ゲストをユリと共に何とか落ち着かせ、やっとこさ終わったと息をつこうとするも、間を置かずに師匠が乱入。

そのまま三人纏めて小脇に抱えられた後Iガンダムに乗せられて、アムロ以外の二人はこの建物の前に置いてかれ、そのまま彼自身は師匠と一緒にちょっとしたドキドキワクワクぱるぱるぱるぱるぱるぱるな冒険に連れて行かれ――――――

 

 

(……帰って早々こんなトコまで連れてこられて、薯蕷ご飯と七草粥を作れとか言われるとは思わなかった…)

 

 

―――――やっと戻ってきたらこれである。

流石に長い事師匠の弟子としてやって来た分超展開には慣れきっていたが、流石に今回は予想外だった。

 

 

 

(―――とはいえ、去年の年越しと比べたら遥かにマシか)

 

そう思いながら脳裏に浮かべるのは―――あの意味不明な初夢である。

あの後段々と薄れてきたんだか逆に鮮明になっていったんだか分からない“夢”。

の割には妙にリアル且つ明快な夢は、明晰夢と切って捨てるには違和感が残る物であった。

今でも、あの時の奇妙な会話を忘れる事は、出来ていない。

 

(……ま、今は関係無い、か)

 

そう思いながらモニターに目を戻す。

映し出されているのはオーロラビューのモニターを睨む、幾つもの双眸。

力強い、意志を感じさせるそれら。

この状況下に置かれていても、怯えを感じないのは流石であろう。

思わずアムロは「敬意を表するッ!」と叫んで直立したい気分になったが、それを必死に抑えつつ、彼らの抱く問いを聞き出そうと話を促す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…え~……では、質問タイム。制限時間10秒。よーいドン』

 

「お前もキャベツ太郎に負けず劣らずフリーダムだなオイ!?とりあえず終わったら帰れるんだろうな!?」

 

「つーか俺前回くらいで結局どうなったんだよ!?早くしねぇと読者にどやされんぞ!?」

 

「ミハにい何ワケわかんない事言ってるの?取り敢えずアムロ、お店のスイーツって、買って食べても良いの?」

 

「アムロ!この目の前の建物はショッピングモールか!?つまり鬼ごっこが終わったら中で買い物していいんだな!?」

 

「刹那・F・セイエイ。ヨダレを拭け」

 

「あ、そっち冷静に突っ込むのかティエリア。……とりあえず、私は出番があれば良いかなぁ……作者からも影薄いって言われてる分、あると良いなぁ…」

 

「ユリ。僕は君のその切実過ぎる願望に哀れみを覚えるんだけど……とりあえず、今回の参加者って僕達マイスターズとこの人達だけ?」

 

「指を指すな指を!!というか大尉!?あなた一体何をなさってるんですか!?昨日の事に関しての説明もしてくれるのですよね!?」

 

「落ち着け唯依!!あと昨日の話ってなんだ!?後でkwsk!」

 

「いや、そーじゃねーだろユウヤ!ってか、ここどこだよ!?」

 

「落ち着きなさいタリサ。慌てても何にもならないわよ」

 

「そーそー。アレだ。もう色々諦めて状況を楽しんだ方が楽だぜ。きっと」

 

「お前らは落ち着き過ぎだろ!?アレか!?混乱し過ぎて一周回って冷静になったんですかコノヤロー!!あとユウヤは後で中尉から聞いた話をこっちにもkwsk!」

 

「クリスカ、見て見て!鳥が飛んでる!!あれが鳩っていうんだよね?」

 

「うん、そうだよ。他にも色々いるみたいだから、後でゆっくり見ようね」

 

 

 

『オイコラ明らかに質問という単語に関係無い事喋ってる奴が居るんだけど何だコレは。あと本当にこれ10秒で収まってるって凄くねぇか地味に』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――え~……うん取り敢えず質問に対する答えがはっきりしたから順を追って説明するぞ。あと女子は数名はちょっと自重しる』

 

 

そういう返しに対する反応は様々だ。

不満げに黙る者も居れば我関せずで別の物に興味を向けている者も居るし、ただただ状況について行けずにぼーっとしている者もいる。

一方のモニターに映るアムロは……何故か七草粥を作り、鏡餅を叩き割っていた。

理由?察してください。

 

『……何もないみたいだから始めて行くな。まず、帰れるかどうかだが、普通に終わったら返してくれるみたいだ。まあ、当然だわな』

 

その事に皆明らかにホッとしていた。

そりゃそうだろう。

ワケ解らない所に行き成り連れてきて帰れませんではシャレにならない。

 

『で、次。なんか知らんが買い物の時間は後でキッチリ取るみたいだから心配すんな』

 

これにあからさまに反応したのは3人の少女。

1人は目を輝かせつつ涎をすすり、1人はショッピングへの期待に興奮し、最後の1人はまだ見ぬ興味深い物に対する期待で目を輝かせた。

 

 

『…………無論、“時間が取れれば”、の話だがな』

 

一転、先の三人からブーイングが上がる。

無論、解答者はそんな物に心動かされることはない。

アッサリ『ハイハイ次行くよー』と流して話を進める。

 

 

 

 

『で、ミハエル。お前はもうちょっと待て』

 

次に出てきた回答はそんな物だった。

無論質問をした者からは「は!?」という声が挙がる。

それに追い打ちを掛けるように、アムロは至って淡々と、且つ何処か呆れたような表情をしながらカンペを取り出す。

それを見ながら喋り出したので、どうも回答者自身がそれに対する詳しい情報を持っていなかったようだ。

 

『どうも作者がオマケの方に困窮しているようだ。つい先日血迷って其処でTRPGやらかそうとしたらしい』

 

だからもうちょっと待て、とのことだ。

そう続けたアムロの目には呆れたような感情が浮かんでいた。

まあ当の質問者はその事に気付くわけもなく、ペタッとその場に座り込んだのだが。

 

 

「で、肝心の出番についてだが………」

 

一瞬でその場にいた数名が(何気に意外な人物まで)眼の色を変えた。

表情はそれこそ皆違うが、やはり気になるのだろう。

まあ、そりゃそうかとアムロは思う。

誰が出番このオープニング以外無しとか嬉しいというのだろうか。

じゃあ呼ぶなやと言うもんであろう。

フッと師匠の方に目を向ければ、きな粉餅にがっついていた。

今でこそこんな間抜け面を晒したり、普段からフザケまくっているとは言え、無駄なことは基本しないのがリボンズ・アルマークという人間だ。

たぶん連れて来たからにはきっと見せ場を作ってあげ――――――

 

 

 

「……あ、アムロ。今日の夕飯はアレにしようよ。カニ雑炊」

 

 

 

――――――てくれるのだろうか?

 

考えてみれば万年SAN値0みたいなこの鬼畜師匠の事なのだから、何と無く連れてきた、なんて事言い出すかもしれない。

その場合責任は………何処にも無いのでどうにもならない。

 

 

 

 

「……お察しください」

 

 

取り敢えずアムロはブーイング覚悟でそう言うしかなかった。

まあ、多分鬼に捕まったら確実に見せ場になるだろうと思ったが、言ったら今度は鬼ごっこのルールが破綻するような事態が起きるかもしれないという懸念があったので、口に出せなかったというのが正解か。

 

案の定聞こえてくる一部からのブーイング。

それを聞きながら、思わず腹部を抱えて机に突っ伏したのは、誰にも咎められないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

『あー……もういいですか?』

 

「「「「もういいよーだ!!」」」」

 

『…はい。んじゃ次の質問ねー…』

 

誰かは本人の名誉の為に言わないが、アホかと思いながらユウヤは頭を抱えた。

だが、この訳の解らない状況下で段々と冷静になれて来ている自分も自分だとも思う。

確実にユーコンに来る前の自分ならばさっき叫んだ連中の様にカッカしていただろう。

そう考えれば……あの、事ある毎に尻をブッ叩かれたりタイキック食らわせられたりした地獄の日々は無駄ではなかったのだと思う。

 

……無駄ではなかったはずなのだ……!!!

 

「…?ブリッジス少尉?何故泣いている…?」

 

「欠伸です。生欠伸です。噛み殺しました」

 

「…そ、そう、か…?」

 

「そうなんです」

 

そう言ってからユウヤはオーロラビューに視線を戻した。

無論、涙は拭ってある。

まさか唯依のやつに見られてるとは思わなかったので少し動揺したが…上手く隠せられただろうか?

そうだと良いが……いや、別に解ってくれてもこっちにはなんのデメリットもないのだが。

 

『―――で、参加者はな――――――お前達だけだそうだ』

 

と、少し意識を外している内に話は進んでいたようだ。

次の質問―――言葉から察するに参加者の人数だ―――の答えをカンペを見ながら呟く様に言っているあのチビ大尉の姿が見えた。

 

(と、言うことは……10人ちょいか。参加者)

 

周囲を見渡して顔ぶれを確認する。

大半は自分とは既知の仲だが、残る半分は全く知らない。男二人に唯依と同じくらいの女が一人。ついでにアムロにそっくりな少女が一人と、女だか男だか判別付き難いのが一人。

どうも全員アムロとは顔見知りのようだが……

 

(……何だ?この違和感?)

 

そんな感覚を、彼はヒシヒシと感じていた。

というか、オーロラビューのアムロ自体も何かおかしい。

何と言うかかんというか……自分の知るアムロと比べると……こう………

 

『あ。アムロ。甘酒プリーズ』

 

『いや、人が説明してるタイミングでそんな事言ってくんなや師匠。鼻に詰めんぞ?』

 

「……」

 

(……ガキっぽい、よなぁ……)

 

…そうなのだ。

どうもガキっぽい。

見た目とかもそうだが、どうも自分の知るあの『アムロ』と比べると、雰囲気が圧倒的に若く、青臭さがあるのだ。

それこそ、年齢で言えばイーニァを抜けば一番若いはずのクリスカや唯依のレベルで。

…否、下手をすればそれ以上か。

 

(とはいえ、演技でしたー…なんて言い出したらそれまでなんだけどよ)

 

そうポツリと心の中で呟く。

ただ、そうではないのだろうなと何処か理解している自分が居た事も確かだった。

 

「…」

 

ポッケからシガレット(砂糖菓子の方)のココア味を1本取り出して噛み砕く。

そうして空を見上げれば、丁度鳩が頭上を通り過ぎた所だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それじゃルールの説明しますよー。まずは右手の大階段をご覧下さーい』

 

そう、画面の中のアムロに言われ、空を見上げて黄昏ているのと初めて見る鳩に大興奮のお子様とその保護者以外は大階段の方を見やった。

 

 

……直ぐに目を逸らした。

 

 

 

何せ真っ黒な下地にドクロマーク。中央に観音開きと思われる扉のような物が見受けられ、その真上にご丁寧にも『鬼さん控え室』とか書いて有りやがるのだ。

……余計な事にハートマークで縁どられて。

しかも何故か紫色の髪をした少年っぽい何かが蓑虫のごとく荒縄でグルグル巻きにされた上に、口に大量の餅、鼻に3本の茄子、耳に数の子、そして丁度ケツの辺りに富士山と鷹の置物(しかも後者は2つ)ブッ刺さった状態でブラブラして絶賛放置プレイ中であった。

 

故の顔逸らしであった。直後に何人かは吹き出したようで肩が震えている。

 

が、アムロはそんな彼らの様子に気を配る事など一切無く、淡々とカンペの内容を告げていく。

(余談だがここでオーロラビューを見れば解ったかも知れないが、不運にも全員見ていなかったのでルールを告げていくアムロの目が死んでいる事に気付く者は誰も居なかった。)

 

『えー、その箱の中に“鬼”がいまーす。鬼に捕まると強制的に鬼の体に書いてある罰ゲームが執行されますので注意して下さいねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなかんじに』

 

 

 

 

直後にブシューという音と共に炭酸ガスが箱の上部から吹き上がった。

同時に扉が開き、中から全身黒タイツの人物が現れる。

胴体に書かれた文字は『タイキック』。

 

 

 

 

 

直後、参加者の数人が全力で駆け出した。

駆け出したのは刹那を始めとしたマイスターズ。流石は特殊な訓練を受けてるだけあって、色々一瞬で察したようだ。

次にユウヤ。流石に訓練で毎度の事ながらボコボコにされていた経験は伊達ではなかった。

……まあ、約7割程トラウマを刺激された事もあるのだろうが。

事実、タイキックという言葉が聞こえた時点で彼の顔面は死人の様に血の気が引いていた。

きっと、本人にはザァァという血の気が引く音が聞こえた事だろう。

 

 

で、その他の面々だが……残念な事に、まだこの事態をキチンと理解できていないのか、向かってくる鬼を数秒ではあるが凝視するという最悪の選択をしてしまった。

 

そして案の定、一番手近な所に居たお――――――タリサ・マナンダルがアッサリと捕獲された。

 

「え?え?」

 

そう、狼狽える事しかできなかった。

そんな彼女にユウヤは離れた所から合掌した。

 

鬼が構える。その構えは実に様になっていたので、どうやら心得があるようだ。

……ユウヤはその場で更に念仏を唱え始めた。

 

そんな彼の様子を咎める者など誰一人居ない。

 

やがて準備が終わったのか、鬼はタリサを自分の方へとケツを向けるように立たせ、そして――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんじゃ、その罰ゲームが終わった瞬間に鬼ごっこ再開ねー』

 

 

 

 

 

―――――そんな声がオーロラビューから聞こえると同時に、雲の少ない晴れ渡った冬空に、一人の背の低い女性の断末魔に近い悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後

 

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!』

 

「おー…頑張っとる頑張っとる」

 

モニターから聞こえる声に対し、アムロはそんな感想を漏らしつつ餅を口に運んだ。

砂糖醤油の塩っぱさと甘味の独特なハーモニーが後を引く。

続けてもう一つを付けて口に運んだ。

 

此処だけ見れば、のんびりとした正月の光景ではあるのだが、モニターに映る物はそんな物とは無縁の阿鼻叫喚の地獄であった。

 

ある者はアッツアツのおでんを無理やり食わされ、ある者はスナップを効かせた綺麗な往復ビンタを受け、ある者は猿轡を噛まされ、手足を縛られ定期的に微弱な低周波の電圧を体中に掛けられている―――者の前で優雅に昼食を取らされていた。

なお、その昼食には何気に師匠も混ざっている。

が、あまり料理に手をつけず、ニヤニヤ笑いながら縛られて悲鳴を上げている者を見ているだけなので、確実にこのドSには堪らない光景を間近で見に行っただけである。

流石はガンマイ世界の愉悦部部長といった所か。

 

 

 

 

 

『待たんかミハエルゥゥゥ!!!!!!』

 

『アイエェェェェェ!?兄貴!?兄貴ナンデ!?』

 

『今回の番外編において鬼役として限定だが蘇ったのだ!!!!という訳で逝くぞ弟よ!!これが私の!!!天!翔!蒼!破!斬!』

 

『ヌギゴガァァアァァァァ!!!!!!!??????』

 

『み、ミハ兄ぃぃぃ!!!!』

 

 

 

 

「イーニァちゃーん。お餅新しく焼くけど食べるー?」

 

「食べるー!」

 

アムロは今一瞬自身の目に映った物を無視する事にした。

知らない知らない。中の人ネタと書かれた黒タイツの浅黒い肌の青年が、青い髪の青年を両手の木刀でぶっ飛ばした光景なんぞ知らない知らない。

 

 

 

「ただいまー……あれ?何故に此処にイーニァ・シェスチナが居るのかね?」

 

「あ、おかえりー。餅焼くけど何かある?」

 

「リボンズおかー」

 

「あ、うん、できればきな粉を……じゃなくて何で此処にこの娘が居るのさ。此処僕らと仕掛け人以外は立ち入り禁止でしょ?」

 

「初手で『ロリコン』食らってTKO寸前になった挙句、ジョイポリス上の中華街まで迷い込んでったから保護した。あとチョットほっといたら虹橋入ってたかも知れん」

 

「? 入ったらダメだったの?」

 

「一応ね……ん?どした?」

 

「……おかしいな?いつから僕はツッコミを入れる側に回ったっけか?」

 

 

モニターの向こうの地獄絵図に反して、モニタールームの中は至極平和だったというのは、もうお約束である。

 

 

 

「お、そうだイーニァちゃん。お年玉をくれてやろう。3千円とちょっと少ないけど。この後の自由時間で使いなさい」

 

「ホント!?貰っても良いの!?」

 

「よかよか。好きに使いなさい……って、師匠どうした?」

 

「……いや、ホントに何でも無いよ…」

 

「「?」」

 

(ヒント:アムロは外見含めて『16歳』。イーニァは『外見年齢10~14歳』)

 

 

 

 

 

「チッ…あの鬼ども意外と早いな……コイツは挟まれたら不味いかな?」

 

そうボヤきながら、ロックオンは建物の4階付近をウロウロしていた。

追いかけられた当初は必死こいて走っていたものの、今は周囲にそんな影も見えず、兎に角平和だ。

階下の何処かから変な叫び声が聞こえるが、聞き覚えのあまり無い声だったので無視してみれば、自分の足音以外、周囲に人の気配を示すような物はない。

 

(……ん?)

 

あ、いや、前言撤回。

正面からノンビリと……という訳ではないが、適度に周囲を警戒しながらこちらへと歩いてくる人影が二つあった。

それぞれ白人特有の肌に、片方は綺麗な金髪で、片方は黒髪。どちらもそこそこに髪は長い。

着ている物から、確実に鬼ではないということが解る。

同時に、マイスター関係ではない人間であるということも。

 

(確か……ヴァレリオとヴィンセント、だったか?)

 

記憶の片隅から、確かそんな名前だったという事を思い出す。

向こうもこっちに気付いたようで、気さくに「よう」と控えめながら手を挙げてくれた。

こちらからも軽く挨拶する。

 

「お疲れさん……確か、そっちのロン毛がヴァレリオで、もう一人はヴィンセント……だったっけか?間違ってたらスマン」

 

「サンキュ。名前は間違ってないな…ってか、自己紹介なんぞしたっけか?一応言っとくと、俺はヴィンセント・ローウェル」

 

「俺はヴァレリオ・ジアコーザだ。VGって呼んでくれ」

 

「これはご丁寧に…ロックオン・ストラトスだ。偽名ですまんが、こっちにも事情があってなぁ……あ、名前の方は、さっきあんたらのツレが呼んでたのを又聞きしてたんでな」

 

「「うへぇ、趣味悪ィ」」

 

「仕事柄、職業病みたいなもんさ…アンタ達にもあるだろ?」

 

まあね、VGが返したのを皮切りに他愛のない話が続く。

元々、社交性の高い3人だ。打ち解けるのは早かった。

無論周囲への警戒は忘れていないが。

 

と言っても、そういった訓練を受けていないヴィンセントは精々目視が良いトコである。

VGは戦術機に搭乗して戦場に出る手前彼よりかはマシであるが、やはりそういう方面のキチンとした訓練を受けたロックオンと比べれば少々生身の索敵能力は劣る。

特にロックオンはスナイパーだ。それはCBに入る前からもそうだった。

その経験から目、耳といった周囲の状況を確認する為の部分のスペックはただでさえ高いマイスターの中でも随一である。

 

 

故にこういった事に気付くのも、彼の方が一番だった。

 

 

 

(…ん?)

 

耳に届く微かな音。

どうも足音の様だ。

複数人かどうかは不明だが、テンポからして走っている事は辛うじて解る。

 

鬼か?

 

そうではないにしろ、追われているという事を仮定しておく。

 

目配せで二人に合図。

とたんに此方に怪訝な表情を向けつつ談笑していた二人が黙る。

それを見て満足げに頷くと、ロックオンは周囲を見やる。無論、音の出処を調べる為にゆっくりと首を回しながら。

足音はいまだ一定のリズムで続いている。

周囲の人影は無し。

耳を澄ませ、方向を調べる。

 

VGとヴィンセントも背中合わせになって警戒し始める。

自分達が今居るのは幸運な事に駐車場へと続く道のあるT字路から少し離れた場所。警戒するのは前後だけでいい。

とはいえ、左右には雑貨屋等があるので、そこから出てくる可能性もあるにはあるのだが。

階下の状況も知りたい所だが、吹き抜けまでは距離があるので、諦めるしかなさそうだ。

 

「ムッ…」

 

「おっ、どうした?」

 

「足音が変わった。硬い物を踏んでいる感じだ……金属だな」

 

「オイオイ良く分かるな…どっちのエスカレータからも確実に10m以上は離れてるのによ」

 

言いながらヴィンセントが茶化すが、ロックオンはそれに返さない。

変化した足音が本当にエスカレータなのか解らなかったからだ。

階段にだって、金属の部分はあるのだから。

 

(さて…どっちだ?)

 

息を潜めながら敢えて足音の主を待つ。

見た感じ、まだ人影は見えないが、果たして…

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな感じにシリアス入ってる3人が居た丁度真下。

いい感じに鯛焼き等を頬張りながら、全力疾走している少女が一人。

 

「…………!!」

 

意外な事にアムロ……ではなく、概ねの予想通りに刹那であった。

若干呼吸が苦しいのか、鼻息が何時もよりも荒い。

じゃあ食うなよ、と言ってやりたい所だが、言っても彼女は聞かないだろう。

 

そんな彼女の後ろからはこれまた案の定黒いタイツの集団が全力で走ってきていた。

 

 

もう一度言おう。『集団で(・・・)』走ってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

あろう事かこの娘。どうやら追っかけられている内にドンドン引っ掛けてきてしまったようである。

 

 

 

 

 

しかも書いてある罰ゲームも様々なバリエーションに富んでいた。

原子力アンマにゴムパッチン(×5)。

デコピンウメボシ当たり前。

カンチョー猪木胴上げ祭り○○○マシーン昼食延髄切りetcetc……

ともかく色々居た。

 

という訳でおそらく捕まったら色んな意味で一貫の最後。

確実に再起不能リタイアは免れない。

正しくDEAD or ALIVE 。

自由時間過ぎても起き上がれないであろう自信が刹那にはあった。

 

(冗談ではない!!)

 

自由時間中の食べ歩きを楽しみにしていた彼女にとって、それは色んな意味で拷問にほかならない。

既に食ってるじゃねーかというツッコミは聞かない事にするが、兎も角そうなのだ。

 

しかし、ケツの一団はどう足掻いても彼女から離れない。ピッタリくっついてくる。

こうなればこの状況を打破する一つの方法として、他人にこの鬼共を擦り付ける必要がある。

しかし、さっきから何処をどう探しても擦り付ける生贄が見つからないのはどういう事だろう?

何か作為的なものでもあるんじゃないのかと疑う心すら出てくる。

 

 

 

 

「イーニァ!こんな所に……ッ!?大尉!?」

 

「あ、保護者さんチーっす。因みに大尉じゃないからね。そして良く分かったね。丁度お雑煮が出来た所よ」

 

「「O・Z・N!!O・Z・N!!」」

 

「ハイハイちょっと待ちなさい……あ、食べます?」

 

「……い、頂きます……」

 

 

 

 

 

「何だ今のハラ立つ光景は!!!!」

 

一瞬脳裏に映ったそれに刹那は咆吼した。

こっちがこんな死にそうな目に遭ってるのに何故アイツ等はあんなにノホホンとしているのだ!?

そんな恨み辛みの込められた咆哮である。

 

なお、今の一瞬で上の階にいた3人の内二人が、「あ、追われてるなコレ」と判断。直ぐ様離脱を開始した事など彼女は知りもしない。

知る必要もない。

 

 

「うおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

そんな雄叫びを上げつつ階段を駆け上がる。

既に買い食いしていた商品達は全て腹の中に収まったので、呼吸も出来るようになっていた。

リバースが心配になる状況だったが、彼女はお構い無しに駆け上がっていく。

 

一方の鬼達も綺麗に1列に並んで駆け上がって来ていた。

途中一瞬紫の眼鏡が黒の津波に飲み込まれたような気もしたが、鬼達の勢いが弱っていないので気のせいだろうと彼女は判断していた。

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

……無論、間違いではなかった。

偶々エレベータを使って降りてきたティエリアは、約5mあったであろう距離を一瞬で詰められて鬼に捕まり、しっかりと罰ゲームを受けていた。

 

なお、彼に下された罰ゲームは以下のようになっている。

 

『往復ビンタ・ケツバット・肋骨ギロ・耳掃除・目薬・足つぼマッサージ・┌(┌^o^)┐・ジャイアントスイング他3種』

 

所要時間は約30秒である。

 

「……ばんし…………」

 

そうか細い声で呟いて、ティエリア・アーデ。再起不能(リタイア)である。

この後救護班が来るまで彼はその場に完全放置(偶に暇になった鬼が片手間に罰ゲームしていく事を除けば、だが)。ゲームが終わってからも2時間ほどはピクリともしなかったそうな。

 

 

出番終了である。

 

 

 

 

そんな悲劇をほっておいてコチラは刹那サイドである。

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」」」

 

……何故か逃走者が増えていた。

鬼の数も増えていた。

 

 

まあ、簡単に言えばこうである。

 

声を上げるから他の逃走者が逃げるのだと思い至った刹那。黙って走り始める。

エスカレータの下から上がってきたユウヤと唯依にバッタリ。

仲良く逃走開始←イマココ

 

 

以上。説明終了。

 

 

 

「つかなんでお前はあんな量に追われてんだよ!?理不尽過ぎるだろ!?」

 

「やかましい!!私が知りたいわ!!!」

 

「黙って走れ貴様らァ!!」

 

三者三様にギャースカ喚きつつ施設の中を走り回る3人。

なお、此処に至るまでに既に数名を地獄に叩き落としているのだが、そんな事彼らが知る由もない。

 

 

 

 

地獄に叩き落とされた被害者達。

 

 

[ユリの場合]

 

「……ッ!…ッ!!………ッ!」

 

全身くすぐられた上に(以下検閲

 

 

 

 

 

 

[タリサの場合]

 

「グ……ゲ………ゴェ………」

 

低周波終了後発信機を取り付けられ、回転椅子をMAXスピードで大回転の刑。

 

 

 

 

 

 

 

[ヴィンセントの場合]

 

「うぅぉぉぉ……ちょ、ちょ、ちょちょちょちょ」

 

ロックオンとVGと逸れ、タリサと合流後、とばっちりで回転椅子とジャイアントスイング。

 

 

 

 

 

[アレルヤの場合]

 

「……世界の………悪意が………僕には見えるぞハレルヤァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

(いや、ちょ、キャラ変わってんぞ!?)

 

クリーム(悪霊)の刑でキャラ崩壊中。SAN-6で一時的狂気突入。

 

 

 

 

 

[ステラの場合]

 

「えっと……これはこっち?あ、違うの?ありがとう。それから……」

 

昼食準備と書かれた鬼複数に捕まり、現在彼らの昼食(恵方巻き)準備中。

 

 

 

比較的被害者が少ないと見るべきか、それとも多いと見るべきなのかは読者の皆様に任せるとして、これ以上ただ単に追いかけるのはダメだと判断したのか、鬼の一団の約半分が別方向へと駆け出した。

挟み撃ちにするつもりなのだろう。或いは別の獲物を狩りに行ったか。

どちらにせよ不吉である事には変わりなかった。

 

(チッ…)

 

それを見た唯依は舌打ちをしかけて飲み込む。

走っているのは2階のフードコート前の通路だ。挟み撃ちには最適の場所だろう。

 

拙い。

 

明確に理解できる。

これで正面から誰か走ってきているというのならばそれはそれで嬉しいのだが、そういう訳ではないのがキツイ。

後ろの一団は人数が少なくなった分、走り易くなったのか速度を段々と上げてきていた。

 

「クソッ!」

 

ユウヤもその事には気付いていた。

ジリ貧。その言葉がここまで似合う状況もないだろう。

かと言って諦めて捕まれば、間違いなく度を超えた地獄に叩き込まれるのは明確である。

タリサとヴィンセントが飲み込まれた光景を思い出して身震いする。

 

「―――ムッ!!」

 

と、ここでほぼ先頭を走っていた刹那が何かに気付いた。

そういえば、と二人は思い直す。

この少女、自分達よりも長く走っているはずなのに一向に疲れた様子を見せないのはどういう事なのだろう、と。

今はそれどころではないので直ぐにその疑問は何処かへと吹き飛んだが。

 

「クレープ発見」

 

「「オイ!!!」」

 

本当に疑問が全て吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイオイ……」

 

モニタールームでそれを見ていたアムロは思わず溜息吐きつつ頭を抑えた。

何でそんな事を気にしたのだ。そんな感情を乗せて。

相変わらずと言ってはアレだが、流石の刹那さんです。

 

「思わず尊敬しちまうわ…」

 

「同感」

 

そう言いながら、雑煮を食べる彼らは実にだらけていた。

心なしか、その隣にいるイーニァもだらけている様に見える。

 

まあ無理もない。

ついこの間まで二人はあっちに行ったりこっちに行ったりと濃密な時間を過ごしていたのだ。

その後にこんな平和な時間が来るのだから、だらけても仕方はないだろう。

 

「……」

 

…約1名、腑に落ちてない顔をしている方がいるが。

 

 

 

~数分後~

 

 

「…あ、まだ逃げ回ってる。よく体力続くな」

 

「あ、ホントだね。今度はロックオン・ストラトスも増えているね」

 

「にゅ~…?」

 

「あ、起こしちゃったか?ごめんごめん……じゃねえよ。ほら、こんな所でそんな体制で寝るんじゃない。寝違えちゃうぞ?」

 

「た、大尉。出来れば優しくしてあげてください」

 

「うん、別に何もしてないからね?ただ単に体勢変えるの手伝ってるだけだからね?」

 

「…今の遣り取りに不健全な物を感じた僕達は心が汚れているんだなぁ…」

 

「え?師匠と同類扱いとか地味に嫌なんだけど?」「それは一体どういう事かな?」

 

モニターの向こうガン無視で一触即発の空気が辺りに立ち込める。

その冷たさたるや、傍に居たクリスカの背筋を凍らせるには十分だった。

思わず彼女は襲ってきた寒気に身を震わせる。

 

…のだが、アムロの隣にいるイーニァは特にそんな空気を感じる事もなく、気持ち良さそうにお昼寝タイムを続行していた。

どうやらこの馬鹿師弟。上手く彼女にプレッシャー等が当たらぬ様に配慮しているらしい。

器用な物だが尊敬は確実にできない。

(そこ、ロリコンとか言うな。子供に甘いだけだから。片方まだ16歳だから)

 

そのまま数秒の時間が過ぎる。

が、二人共相手から一切目を離さない。

微動だにせず、ただただ相手を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、飽きた。茶番終了。出番の準備しまーす」

 

「うーい」

 

「だああっ!?」

 

かと思いきや、行き成り再度ダラけきり一触即発な雰囲気は霧散。

そのままアムロはダラダラとプラカードと煎豆を手に持ってのそのそモニタールームから出ていく。

リボンズはそのままコタツの天板に顎を載せながら蜜柑を剥く作業を再開。

残るイーニァは気持ち良さそうに寝続け、クリスカは今の一瞬で緊張が一気に解けたのか、思わずその場に突っ伏した。

彼女が心の中で「もうヤダこの二人組…」と呟いていたかどうかは定かではない。

 

 

 

さて、一方こちらは未だ逃走中の主人公組。

 

(流石にいい加減不味いか!)

 

そう考えているのは先程合流した巻き込まれたロックオン。

理由は刹那の顔が限界寸前のリレーランナーの如き状態になっているからだ。

他の2人も差異はあるがそんな感じだ。

この調子を見るに、きっと今まで休憩など取れていなかったのだろう。

 

チラと後方を確認する。

鬼の数は………先程よりも減っていた。

人数は、6。

思わず顔が苦々しく歪む。

間違い無くおかしい。

何せ自分とVGが合流したときはゆうに10を越える数は確実にいたのだ。

…と、いう事は…

 

(考えられる事としては罠か、ただ単に追い掛けるのを諦めたか!)

 

後者ならば良い。後は逃げ切るだけだからだ。

だが前者は拙い。更に警戒しながら逃げ回りつつ、ルートを確保し、向こうの仕掛けたトラップに引っかからないように行動せねばならないからだ。

 

――――――クソッ!

 

思わず悪態が出そうになる。

が、今はそんな事をしている場合ではない。

 

何故ならば出そうになった瞬間、刹那の足が縺れたからだ。

 

 

「…!!!ちィィ!!!!」

 

「んなっ…?」

 

確認した瞬間のロックオンの行動は早かった。

まず彼女の襟首を引っつかむと、そのまま手元まで引っ張る。

後は膝下と背中に手を回して横抱きで抱えるだけだ。

 

所謂、お姫様抱っこである。

 

「ロ、ロロロロックオン!?」

 

「叫ぶな黙れ動くなとまれ!!こっちだって苦肉の策でやってんだ!!回復したらすぐ言えよ!?下ろすから!!」

 

言いながらもペースを乱さず走れているのは流石にマイスターズの兄貴分の面目躍如といった所か。

全力疾走するその背中には男気が溢れている。

流石は皆の兄貴ロックオン。

 

 

思わずその背に見惚れてしまった後ろの3人の内、VGが天井から降ってきた人影に福豆をショットガンで脳天にぶち込まれて再起不能になったのも仕方ないと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」「え?」「お?」「は?」「ウェイ?」

 

 

 

 

その場に居た全員が固まる。

くるっと回れ右して後ろを振り向くと、そこに鬼の姿はない。

しかしおかしい。

 

一切逃げ切ったような気がしない。

 

 

 

 

 

 

 

というか、何か視界の隅に『節分』と書かれたプラカードと、明らかにプラスチック製とは判るものの、明らかに物騒なショットガンを手にしている背の比較的小さな少年が、自分達と一緒に後ろを向いているというのが、これ以上無い程に恐怖である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後そいつはくるっと回れ右。自分達の方を見る。

成程、格好は何処にでも居そうな普通の少年だ。違和感はない。そこには。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし超が付く程にキューっと口角を吊り上げた三日月型の笑みを浮かべるその顔は、正に邪悪其の物であり、同時に刹那とロックオンとユウヤと唯依に最悪の結果を思い浮かべさせる。

 

 

 

 

 

 

 

そして次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ第2ステージ、始めまーす♪」

 

 

そんな言葉と同時に、ショットガンから日本の風習である『節分』の際に使われる煎られた豆、『福豆』が放たれ、情け容赦なく一番手近な所に居たユウヤと唯依を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヒャッハー!!!!鬼は外~、福は内~、夷大黒豆上がれ~ってなぁ!!!ギャーハハハハハハ!!!!!!!!』

 

「う~ん何と言うクレイジーっぷり。溜まってたのかなぁ?」

 

「……」

 

その時、クリスカ・ビャーチェノワは今初めてさっきまで自分達の隣にいた少年に対する恐怖を思い知った。

本当にイーニァが寝てくれていて良かった、と心の底から安堵していた。

 

何せ画面の向こうに居るのは正しく『夜叉(確か日本の妖怪だったはず)』。

おとぎ話や創作物の中にしか居ないはずの『ソレ』は、正しく今自分達の良く知る人間の若い頃の見た目であろう肉体を寄り代にして顕現していた。

 

読める色は『百々目色』。赤黒青紫緑――――――兎に角様々な色が入り混じり合い、もう何と形容すれば正解なのかが解らない色だった。

つまり、感情を彼女が推し量れるか否かといえば―――答えはNOだった。

当然である。

 

 

『ホラホラホラホラ後5分逃げ切ればOK何だからさぁ~タ~~~~~~~ップリ逃げ回ってくれよぉ~?』

 

『アンタ鬼か!?いや、言わなくていい言わなくても解るこの外道!!!ストレス発散に俺らを巻き込んでんじゃねぇよ…って危なァァァ!!!!ごめんなさい調子乗りましたこの3人生贄にするので許してくださいィィィィ!!!!!!』

 

『あ、テメ何俺ら売ってんだ!?ここまで来たらもう一蓮托生だろ!?諦めて逃げまくれ!!!VGの様になんぞ!?』

 

『ロックオン、バカは放っておけ!!というか下ろしてくれ頼む!!もう回復したから!もう回復したからってうがァァァァ!!!????』

 

『だ、大丈夫か…って、ま、豆が!?豆が足に減り込んで!?というか威力おかし過ぎるだろう!?アレ本当に豆か!?その中の物は本当に豆なのですか大尉!?』

 

『無論、手製の福豆ですが?後で皆で食べれるように丹精込めて作りましたが何かあります?…あ、そういえばそろそろ豆の中に幾つかチョコでコーティングしたのが入りますから当たった人はラッキーと思ってくださいね?』

 

『真顔でそんな事を言わないで下さい!?というか何でチョコ!?』

 

『ヒント。バレンタインデー』

 

『それもう答えだろ!?』

 

 

 

 

 

 

「………さて、僕らもそろそろ豆まきしようか。僕が鬼役やるから、君、僕に豆ぶつけなさい。あ、この子をその前に起こさないとね。頼めるかい?」

 

「…え!?あ、え………はい………」

 

本当にモニタールームは平和其の物であった。

なお、起きた後で初めて豆まきを体験したイーニァと、戸惑いつつもおっかなびっくり豆をまいていたクリスカの顔には、初めて体験する豆まきに対する楽しさから、終始笑顔が浮かんでいた事を此処に記しておく。

 

「コノ差ヨ」

 

部屋の隅で存在を半ば忘れられている球体がそう呟いたが、気にする者は居なかった。

 

 

 

 

 

ピピピという音が鳴る。

それを聞いたアムロは表情を元に戻し、一息吐いてからいつも通りの口調でこう言った。

 

「はーいしゅーりょー。おつかれさまでしたー」

 

言いながらもショットガンに豆とチョコを詰めるのを忘れていない辺り、この男、結構外道である。

とは言っても、目の前にあるのは疲労困憊になってブッ倒れている屍が4体あるだけだ。

その体の至る所に豆が減り込んでいたり、潰れたチョコが張り付いている事から、本当に限界のようだった。

おそらく後ちょっと終了が遅ければ、全員纏めて再起不能にさせられていただろう。

……豆とチョコでコーティングされた豆で。

 

「……お、終わった……」

 

「うん。終わったねー」

 

「…も、もう、逃げなくていい、のか?」

 

「うん。もう逃げなくて良いねー」

 

「……つ、疲れ、た……」

 

「この後休憩しながら昼食だから安心しろー」

 

「……オイ。俺は良いんだが刹那とこのお嬢ちゃん大丈夫か?若干痙攣してるんだが「あ、自分が運びますねー」…お、おう」

 

言いながら目の前でショットガン片手に人二人抱えるアムロを見たロックオンの胸中如何ばかりか。

少なくとも、唖然としているのは確かである。

とはいえ、同時にお姫様抱っこなんて器用な真似出来る訳もなく、頭の上に刹那。左肩の上に唯依を乗っけているのでぶっちゃけとてもバランスが悪そうにしか見えない。

 

((……落とさないよな…?))

 

奇しくもユウヤとロックオンは素直にそう思った。

というか刹那の腹にアムロの頭が減り込んでいる様に見えるのは錯覚だろうか?

 

「ほら、行きますよー」

 

そんな彼らの心配などを余所に、アムロはスタスタ歩き始める。

意外とゆっくり目なので、どうやらこっちにも気を使ってくれているらしい。

それを受けて残された二人は何とか力を振り絞って立ち上がり、肩を組み合ってフラフラしながらも彼の後を追う。

 

時刻はそろそろ11時で、稀ながら一般客の姿も見え始めていた。

 

……皆、通りすがりにアムロや自分達の事を二度見していくのは、些か複雑な物だった。

 

 

 

「……? あ、コラ、写真は撮らないで下さいね。見世物じゃありませんから。純粋な救命活動ですからコレ………ちょ、警察呼ぼうとするな」

 

「「「「……」」」」

 

 

……前言撤回。複雑通り越して凄く嫌だった。

 

 

 

「というわけで昼食ですよ」

 

「恵方巻きを作ってみた。因みに今年は東北東だよ」

 

「あっちだな」

 

「ゴメンちょっと待って。なんで刹那いきなり復活してるの」

 

アレルヤのツッコミはこの場にいる全員の心を代弁していた。

 

「私だからな」

 

「「「「「「「ああ、納得…」」」」」」」

 

「「「「「ファッ!?」」」」」

 

が、その一言でマイスター及び主催の馬鹿師弟は全員納得(ただしマイスターの内1名は今だに気絶中)。

一方で彼らをよく知らないTE組(イーニァ、ステラ、クリスカ除く)は驚きの声を上げて彼らを見る。

 

が、その何かを悟った様な目を見て直ぐに思考を放棄した。

 

『とりあえず、そういう事なのだ。』

 

そう理解した。

 

 

「更に今回はデザートとしてチョコフォンデュも作ってみたぞ!!」

 

「みたぞー!!」

 

そんな彼らの困惑っぽいものを余所にして、アムロ(と、何故かイーニァが)更に出してくるのは茶色い液体がなみなみと溜められたボールだ。

甘い匂いが周囲に充満している。

という事は、これがフォンデュ用のチョコなのだろう。

何故固まらないのかは不思議だが、これもそういう物なのだ、と考える事にしようと一同は思った。

雄叫びを上げながら何かしている球体なんて、彼らは目にしていないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なお、こちらのチョコ。バレンタインということで、本日の番外編企画の開催地日本ということで、このチョコは監修:俺、製作:イーニァちゃんとなっております」

 

「がんんばったぞー!」

 

「女ノ子ノ手製チョコトカナニソレ裏山フォォォォォ!!!!!!」

 

 

何も目にしていないし、何も聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで昼食終了後の自由時間。

また、これもかなり大変な物になったが、今回は割愛させて頂く。

ぶっちゃけ迷子が多くなり過ぎてえらい騒ぎとなった事だけを此処に記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、全てが終わった後は、キチンと師匠が全責任を持って『お土産ごと』『次元掘削ドリル』で向こうの世界へと送り届けてあげた様です。

 

 

 

「結構こうやってみると師匠って鬼畜よね」

 

「いや、君も結構負けず劣らずだからね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつかどこかの未来

 

 

 

平行宇宙

 

西暦2000年○月×日朝8時

 

 

「で、なんだこの状況」

 

目が覚めた“彼”は真横を見てこう呟いた。

確か自分は昨日の夜、粗方仕事を終わらせ今日の朝食の仕込みも終わらせた後、相棒を抱き枕がわりにたった一人で布団に潜ったはずである。

 

 

それが今はどうだろう?

 

アルゴス小隊の衛士3人に始まり、暫定婚約者の少女にアルゴス小隊及び米軍より預かっている馬鹿2名。

更には自分が師匠の謀略によって面倒を見ることになった銀髪姉妹も一緒になって自分の布団に潜っていた。

 

げに恐ろしきは自身の手製の布団。

自分含めて9人の体をスッポリと覆えてしまっているとはどういう事だ。

確かに完成直後にデカ過ぎると反省はしたが、まさか此処までのモノとは。

 

そう思いながらも時計を見た直後、「あ、やべ」と呟いて彼は布団から離脱し、テキパキといつもの服に着替える。

白地の三色で彩られた専用のBDU寝巻きの代わりに着込むと、即座に何処かへと電話をかけ、同時にまだ寝ている残りの8人から布団をひっぺがす。

その下から現れた彼らの服装に、“彼”はおや?と首を傾げる。

 

寝巻きのままかと思いきや、8人とも何故か普段着のままだ。

酒でも飲んでたかと思ったが、その割には匂いもしない。

ただ、よほど楽しい夢でも見てるのか、全員の口元には(あの堅物の唯依やクリスカまで!!)柔らかな笑みが浮かんでいた。

 

それを見た“彼”はフッと笑う。

しょうがないなぁ、と呆れるように。

幸せそうだなぁ、と羨む様に。

 

「……起こしたら可愛そうかな?」

 

そう呟いて、彼は――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、相棒。REC」「モウヤッテルゾ」「流石は相棒」

 

――――――実に邪悪な笑みを浮かべながら、そう宣った。

相棒の球体も、やるべき事をやっている、と言わんばかりに堂々としている。

 

「んじゃ、あと頼む」

 

そう言ってから、彼は今日の仕事に取り掛かるべく、部屋を出ていった。

 

 

部屋に残された8人が「いい加減に起きろ」、と早朝(?)バズーカを実行されて目を白黒させながら飛び起きるまで、残り1時間。

 




如何でしたでしょうか?
どうも雑炊です。

「主人公のアムロです」

「ラスボスのリボンズです」

さて、結局作者のリアルの影響もあり、こんな時期にこんな内容になった番外編なわけですが。

「正月要素が細々としかない件について」

「そもそも七草粥とか解る人居るのだろうかね?」

さあ?そこは私も分かりかねますね。

「「投げやがったよコイツ……」」

うっさい。



まあ、そんなこんなで番外編なわけですが。

「なあ、これ、どっちかといえばこっちじゃなくて『外伝』の方に上げた方が良かったんじゃねぇの?ほら、あっちの皆さん大量に出てきてるし」

「……という意見があるのだが、ソノ心は」

ぶっちゃけマイスターズ出てるので……

「「理由ショボっ」」

うっさいよ。






「で、ラストのアレは……」

「あ~………なんというか、ねぇ?」

少なくとも彼は着々と師匠と同レベルの何かになってきております。
…当の師匠は更に上を行くけどな!!

「………………俺は今、泣いていいと思う」

「ドン( ゚∀゚)bマイ」

「うっさいわい!!」





というわけで如何でしたでしょうか?
ちょっと期間も空きすぎ、私もも若干スランプ入っていたので徹底的に番外編のノリで突っ走ってしまいましたが……

「個人的には向こうの連中VSアムロとか見てみたかった件について」

「やめて師匠!!俺の胃袋死んじゃう!!!」


あ、それは外伝で普通にやるからいいかなと思ったので今回は省きました。

「だって?」(ニッコリ

「嫌だァァァァァ!!!!!!」


そんなこんなで今回は此処まで!!
次回からは再度本編へと戻っていきます!!

「いよいよクライマックスだね……どうなるのか、僕も楽しみだ」

「……お願いですから、後生ですからこれ以上俺に迷惑事を持ってこないで下さい……!!」

そこら辺は受諾しかねまっす。
頑張らない奴など、主人公じゃないしね!!

「もう俺十分頑張ってると思うんだ!!」

「いやいや、まだまだでしょう」

その通り!!!!
というわけで皆様、あらためまして、新年今年も宜しくお願い致します!!!


「「というわけで、次回をお楽しみに!!」」


















「と、最後に一つだけ。

今回、僕の弟子が福豆をエライ勢いで人にぶつけていたけど、アレはあくまで“小説内のネタとして”行っているのであって、実際にやると場合によっては危険な行為となります。

豆まきは常識の範囲内で、みんなで楽しく、家族や友達、自分を取り巻く様々な人達の今年一年の健康や幸せを祈りながら行いましょう。

師匠とのお約束だ!!」


「あと、鬼のやっていた罰ゲームも結構危険なものが入ってるからな。遊びで安易に真似をしないように。

軽くても、本当に危ないのは簡単に怪我ができるんだからな。絶対に安易な気持ちでやるんじゃないぞ?」
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