大変に遅くなり申し訳ありませんっしたァァァァ!!!!!!!!
いや、真面目に。
とりあえず、今回は最終決戦の直前から、開始直後までになります。
前回のあとがきで書いた戦闘シーンはありませんが(オイ)、久々にOガンダムが仕事をしてますのでそれでどうか……!
それでは本編をどうぞ。
「……結局何であいつ来たんだ?」
最終的にあの後、刹那とは二言三言(しかもほとんどネタ)交わしただけで終わった。
ネタの内容も会話と言えるほどの物じゃなかったし、もうわけわからんちん。
『まあ、今後に期待というところかな………死ねぇ!!』
「なんの回避ィィィィィ!!」
などと叫びつつゲシュテルベンにバレルロールをさせて斬艦刀を紙一重で躱す。
え?何をやってるかって?
相棒をモニター替わりにして師匠とスパジェネオンライン対戦ですがなにか?
「オオゥ……ダイナミック…」
「うっさいよ相棒」
なお、今回に限り相棒も参加できるというのには驚いた。
なんでもいつも自分の頭の中だけでゲームプレイをしているあれの応用らしい。
聞くところによると前回ユリの前であんなことをしたのは、これのテストのためでもあったらしい。
……いや、終始お前しかプレイしてねぇじゃねえかというツッコミは封殺されたが…
『今だ隙アリィィィィ!!!!』
「ところがどっこいいいいいい!!!」
見え見えのダイナミックナックルからのゼネラルブラスターを避けつつレールガンで応戦………うん、効いたように見えねえ。
さすがのDZG1号機だよダイゼンガー。現実だったらこんなのとは絶対に戦いたくない。
なお、このスパジェネにおいては最新作でまさかの斬艦刀使用時と非使用時(要は内臓武器だけで戦う状態)をコマンドでスイッチングできるという仕様になったため、手の内が読みにくい機体となっているダイゼンガー。
無論、強機体の一体に名を連ねていた本機ではあるが、今作以降は下手をすると公式大会禁止令が出てもおかしくない程に性能が上がっていらっしゃる。
……何があったのだろうか、
まあ、それはどうでも良い。
既にあれから3日ほどの時間が過ぎていた。
その間にあったことで特筆するようなことはない。
精々ネーナが何度か一緒に寝たいと言い出したり、プトレマイオスのブリッジクルーの何人かが話をしに来たり、或いはOガンダムのことで監視付きで呼び出されたりしたくらいだ。
ホントにそれくらいのことしか起きてないので、気味が悪いくらいなのだ。
(………うーん…)
嵐の前の静けさ、という言葉が何度も脳裏に過ぎる。
前回の戦闘で、国連軍は決して浅くはないダメージを負っているのは、端から見ても明白だ。
戦艦数隻に虎の子のGN-Xが数機。
そして多数の否太陽炉搭載機。
疑似太陽炉の量産がうまく出来ない筈の今、対ガンダム戦の要であるGN-Xの喪失は、それだけで戦略の瓦解を引き起こしかねない。
前回何機墜ちたかは把握していないが、少なくともミハエルが3機は落としていたはずだ。
国連に渡されたGN-Xの総数は30機なので、以前に俺やマイスター達が落としていることを鑑みるに、少なくとも5機以上、多くても15機以下撃墜していることになる。
とはいえ、肝心の疑似太陽炉が残っていれば予備パーツは在るはずだから修復は出来るので、完全に動けない、と言う機体の数は想定よりもっと少ないだろう。
パイロットだって、惜しくも初期メンバーからは漏れた、と言うような良い腕の人はいるだろうし。
…………いや。今後の主力を疑似太陽炉搭載機にするのであれば、リスクは大きいが、慣れさせる、という名目でそこそこな腕でも乗せてこれるか。
となるとやっぱり敵はまだ20は少なくても出てくると考えておこう。
と、なると、だ。
こっちの兵力は俺を除くとデュナメス無しで、計4機。
敵がGN-Xしか出してこなかったとして、単純に計算すれば戦力比1:5。
俺を出してくれたとしても1:4。
更にそこに敵の隠し玉やら、ロックオンさんが遭遇したという謎のガンダムタイプ(おそらく師匠の差し金)にそれから____
『Eセンサーに反応。敵部隊を捕捉しました』
そんな声が警報と共に耳に入る。
あ、と声を出す暇なくドアが開き、そこに立つ人影が見えた。
「………っんとうにお前ら自由だな……」
人影ーーーユリがガクッと肩を落とすのを見て、俺は苦笑を漏らす。
それから画面の向こうの師匠に顔を向けて、
「んじゃ、ケリは帰ってからってことで」
『オケ。早よ潰してきなさい』
そうお互いに言葉を交わしてからゲームの電源を切った。
それから立ち上がり、再度ユリの顔を見て問いかける。
「………で?俺は何をすればいいんだ?」
◇
そのまま俺はユリに連れられて格納庫まで相棒と共に向かった。
到着と同時に周囲を見渡す。
ネーナの姿は……ない。
思わずその疑問を口に出す。
「ネーナは?」
「……さっき、破損したデュナメス、それから馬鹿な大怪我人と一緒に武装コンテナで離脱した。……生きて帰れる保証なんか、無いしな」
そういったユリを見やる。
いつもよりも、影のある表情だった。
不安なんだろう。それでもどこか達観したような、諦めたようなイメージを感じた。
「……そんな事言ってると、ほんとに死んじゃうぜ?もっと、こう、ポジティブに行かんと」
雰囲気が気に入らず、そんな言葉が口から飛び出す。
怒るかな?とは思ったが、弱気になってる奴にむしろもっと不安にさせる様な言葉は言ってはいけない、というのが師匠の教えである。
言い様があるかとも思ったが、思わず出た言葉なのであまり気にしない。
「…そうだな。確かにそう、か」
どうやら今回は成功したようだ。
ユリのそんな言葉に同意しつつ、内心ホッとする。
なにせ、作戦前に喧嘩別れ的なそういうのは遠慮したいからだ。後で遺恨が残るととても厄介だし。
(……っと、俺もちょっとネガティブ思考っと。戻せ戻せ)
一瞬だけどっちかがいなくなるような事が頭を過ぎる。
ただ、今回ばかりは可能性はなくはないのだ。事実、これまでのミッションにおいてもお互いに死にかけたことは何度かある。
………ある?
(…あれ?そういうの、俺だけ?)
考えてみれば実行部隊のマイスター達でそういう大怪我をしたのは今回既に離脱しているロックオンぐらいしか思いつかない。
電流ビリビリでブッ倒れたりとかは刹那だが、あれはあくまでそういうショック的なものなので、外傷における命の危険から生還したのは……あれ?ほぼ俺だけ?
………俺の人生は一体どんだけハードモードなのか。
16歳でここまで濃厚な人生送ってる奴など、早々居るものではない。
遥か未来でCBが笑い話の中だけで済むような存在になったら、いっそ自伝的なものを出版してみるのもありかも知れない。師匠あたりに止められそうだ……が?
あれ?その師匠自身かなりアレな人生じゃね?巻き込めば乗ってくれんじゃね?
「………俄然やる気が出てきたな」
そういうのも面白そうだ。あとやるんだったら姉さん兄さん全員巻き込もう。
きっと笑って参加してくれるはずだ。
……と、そんな事を考えながらフッとタラップの上を見たときに、それが目に入った。
グラサンと金髪に白衣という、ちょっと憶え易い見た目の男が、そこにいた。
手には何かのメモリ型記憶媒体。数は2本。
ユリが、あ、と声を出す。
それとほぼ同時に、向こうも気付いたのだろう。
片手を上げて、やあ、と挨拶してくれた。
「…何やってんすか、先生」
「いや何、野暮用……というより保険かな?ああ、ユリも一緒にこっち来なさい。大事な話があるからね」
JB・モレノ――――――またの名をジョイス・モレノという男が、そこにはいた。
◇
「さて来て貰って早々だが、コイツを受け取ってほしい」
そう言ってモレノさんは3本のメモリスティックを、俺に2本。ユリに1本渡してくる。
「これは?」
俺が同じような疑問を言おうとする前にユリが代弁してくれた。
というか、何故俺には2本?
取り敢えず両方共相棒にブッ刺して、データ解析を行わせる。
相棒も珍しく空気を読んだのか一気に解析を終わらせてくれた。
口を開いた相棒の中のコンソールに映るのは……何かのデータ?
数値の値とかからして、医療データのようだ。
中身はどちらも全く同じものらしい。
ならば、片方はいらないだろうと俺は一本だけ引っこ抜いてノーマルスーツの簡易ポケットに突っ込む。
で、この調子だとおそらくユリに渡されたものも同じ物だろうとアタリをつけて、モレノ先生を見た。
正解、とでも言うかのように彼は微笑を口元に浮かべている。
ややあってユリが俺と同様に簡易ポケットにメモリを入れるのを見計らうように、彼は口を開く。
「なに、単純な保険だよ。どうなるかわからない以上、こういう風にするのは何も間違えちゃいないだろう?」
そう言っておどけた様に手を動かす。
その様子と今の発言から、俺はなんとなく今のデータが何なのかわかった気がした。
とはいえ、確証があるわけではない。
口に出して一応聞いておく。
「…ロックオンさんに対する治療のデータですか?」
「それもあるが、無論他にも色々と入れておいたよ。いざと言う時は役に立つはずだ」
“色々”。
引っかかる物言いである。
つまりは、彼が持っていた医療データ全てとでも言うか?
……何かが、琴線に引っかかる。
何か良くない事を感じているというか……そんな感じだ。
違和感ではない……こう………何かが心に引っかかる。
しきりに首を傾げる俺に対して、ユリが「どうした」、と声をかけてくれるが、こっちとしては感じている物がなんなのか解らない為、曖昧な答えしか返せない。
なんなのだろう、この感じ。
知ってはいるのだが、こう、出てこない。
その内、変な唸り声を無意識に出してしまう。
…そんな俺を見かねたのか、モレノ先生の口元に苦笑が浮かぶ。
「何、そこまで気にかけるほどの事でもないさ。これは保険だよ。万が一、億が一と言う事もあるからね」
「…なんですか、それ」
ユリが疑問の声を出す。しかしそれに対しても彼は苦笑のまま表情を変えることはない。
「そのまんまの意味さ。何も含むこともないただの保険……まあ、さっきも言った通り、万が一っていう事があるからね。それに次の戦いは確実に一大決戦って奴になるだろうし。…まあ、そうじゃなければロックオンを逃がす、なんて事しないしねぇ」
……まあ、納得はできる。
人生……というよりこの世の中というものは、未来で何があるかわからない。
言ってしまえばどんな事も起こりうるということだ。
絶対にそうだろう、というものはない。全て可能性の話になる。
そうなれば、彼も絶対に生き残れる、という保証はないのだから、そういう保険を少しでも後に繋げられるよう、そんな対策をするということもわかる。
…わかる、が……
(……何なんだ?本当に)
何かが引っかかるのだ。ひどく、何かが。
まるで、そう。
「ああ、じゃあ、私はこれで。時間取って貰って済まなかったね」
「あ、いえ、別にこれぐらいは」
「そうですよ。いつもお世話になってますし」
「ハハ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。それじゃ、二人共怪我なんかしないで帰ってきてくれよ。そうしたら、ご褒美にコーヒーでも奢るからね」
そう言って、モレノ先生は離れていく。
違和感の正体は、掴みきれなかった。
◇
「……さて、気づかれなかったかな?」
ある程度離れた場所で私は呟いた。
万が一、とは言ったが、おそらく私の死は逃れられないだろう。
そういう物だと解る。
昔、それこそ太陽光発電紛争時代、CBにスカウトされる前に中東で国境無き医師団として、弟子とも生徒とも言えるテリシラ君と共に患者の治療を必死こいてやってる内に、私はとある能力を獲得するに至った。
……なんて、格好良く言えれば良かったんだろうけど、そんなふざけたファンタジーみたいな事ある訳がない。
実際の所は、なんとなくだが『人の死期』という物が薄らと解る様になった、という感じだ。
まあ、あれだけ散々人が死ぬ所を見てきたし、その治療、最悪の場合は介錯も行った。
何となく解る様になっても、まあ、不思議じゃない。
問題は、最近それがいろんな人間から感じられるということだ。
しかも、仲間――――――トレミーのクルー達からゴロゴロと。
特に――――――ロックオンからは。
だが、彼は今生還している。
彼がO-01―――アムロ・レイの駆るガンダム――――――Oガンダムの手の平に乗せられて戻ってきた時は、私も頗る驚いたものだ。
生還してきたどころか――――――あれほど濃厚だった死期の気配が、遠のいている。
思わずその時、私はOガンダムを見上げた。
かなり昔に見て以来、久々に見るその機体――――――色こそ変わってはいるが紛れもなくあの時のままだったそれは、その時の私には救世主の様に見えた。
(―――救世主、か)
言い得て妙だ。
考えてみればあのプルトーネの事件の時、シャルを助けてくれたのもOガンダムだった。
そして、先に仲間であるロックオンを助けてくれたのもまた、あのガンダムだ。
「――――――だからこそ、期待してしまうのかもしれないな」
はっきり言って、先程渡した保険は十中八九確実に必要になるだろう。
私が死んだ場合の話、という条件付きだが――――――まあ、間違いなく私は死ぬのだろうと感じる。
なんとなくだが。
だが――――――だとしても――――――
「……まあ、私も人間だ。偶には救世主に願ってもいいだろう」
そう呟いてから、私は私の
どうか、祈りが届くようにと願いながら。
……流石に、おセンチが過ぎるかな?
◇
――――――そうして、数分の時が流れる。
その頃には、アムロはOガンダムにガンビットを含めたいつもの装備に加え、GNスナイパーライフルを持った状態で、プトレマイオスと国連軍のから見て、丁度真横の暗礁宙域に隠れていた。
とはいえ、スナイパーライフルで国連軍の方を常に監視した状態。
射程からはギリギリ外れているとはいえ、あと少しでも国連側が近づけば、十分奇襲するのは容易な距離だった。
すぐ近くには、裏を読まれてそちらを奇襲されてもいいように、サキエルが護衛に当たっている。
……つまり、CB実行部隊側は実質3機で敵と当たらねばならない。
これは例えガンダムであったとしても、相当キツイ戦力差となる。
……それを補う為の先手を打つために、アムロ達がここに居るわけなのだが。
「………」
しかし、『ソレ』を目に入れてから、アムロは終始難しい顔で黙りこくっていた。
同様に、ユリもまた黙っている。
その原因は、スナイパーライフルを通した視線の先にいる――――――総数13機のGN-Xの中に、たった1機のみ存在しているデカ物――――――趣味の悪い、全身金ピカの手足がないカニのような存在だった。
後方から多量の擬似太陽炉特有の赤黒いGN粒子を大量にばらまいていることから、おそらく使われているドライブの量は1個や2個ではないのが伺える上に、明らかに胴体上部にMSの頭部のようなものが覗いている。
「……とうとう合体ロボまで出てきたのか…?節操がないぜ…」
思わずそうボヤくが、相棒のハロからの茶化す言葉はない。
どうやら同意見のようだった。
しかし、だとすると相当に拙い物がある。
あれだけの巨体となると、おそらく大出力の兵装を備えていても不思議ではない。
GNアームズなんかが良い例である。
あれだって、基本装備に大口径のGNキャノンが2門存在しているのだ。
ましてや相手はそれに直接動力が乗ったような存在――――――むしろ無い方が不自然というレベルである。
アムロは即座にハロとユリに指示を出し、プトレマイオスにデータを送った。
とはいえ、迅速に対応してくれるかは賭けだ。
何せ、ラッセやイアンといった一部のメンバーはともかく、それ以外の面々は元々民間人且つ、実戦経験も少なめ。
そもそも、プトレマイオス自体が『輸送船』メインの設計であり、武装も武装コンテナがなければ最低限しかない。
武器になるのはその足の速さ程度だ。
故に、取れる対策は避けるか逃げる。この二択となる。
――――――さて、どう出るか……
直後、アムロは頭の中でいくつかシミュレートを行う。
一つはあのデカ物の相手を自分が努めること。
一つは周りのGN-Xを引き受け、デカ物にはマイスター達を当てること。
一つは3人のマイスターに任せつつ、自分は援護に徹すること。
また、一つは――――――と、そこまで考えきったところで、
デカ物の、髑髏ジミた口が、開いた。
◇
スメラギは―――否。
その時、トレミーのブリッジにいた面々は、その光景を忘れないだろう。
正面の黄金のMAが口を開いた瞬間、その隣にいたGN-Xに飛来する光弾。
それがスナイパーライフルの弾丸だと気付いた時にはもう遅く。撃たれたGN-Xがバランスを崩してそのままMAの口にぶつかる。
直後、その口から光が溢れるか否かのタイミング。
「っ!こなくそ!」
リヒティが一気に操縦桿を右に押し込んでトレミーを傾ける。
直後、
ゴウッ!
とでも音が付きそうなほどの勢いを持って、血の色の大出力ビームが船体の左側を掠めた。
ブリッジを激震が奔る。
だが、それに負けじとスメラギは腹から声を出し、吠えるように指示を出した。
「~~~~~~っリヒティ!!第2波に警戒!!!動きを止めないで!!!」
「アイアイ!!」
言われるまでもない、と言いたげにリヒティは操舵を続ける。手を休める暇はない。
そしてその指示が正しかったとでも言わんばかりに、2度目の赤い奔流が虚空を駆けた。
再度奔る衝撃。
それに歯を食いしばりながら、スメラギはダメージをチェックする。
損傷は――――――無し。
(上手い援護に感謝ね!)
そう心の中で呟いてから、彼女は次の指示を出す。
戦端はまだ開かれたばかりだ。
ダメージはこちらに無く、向こうは1機を失った。
――――――ここからが、勝負。
奇しくもブリッジクルーは、一様にそんな思いを抱いていた。
◇
「チッ…」
一方国連側――――――黄金のMA、アルヴァトーレの中で、特注のノーマルスーツに身を包んだアレハンドロ・コーナーは今起きた事態に対して複雑な思いを抱いていた。
そう簡単に墜ちて貰っても楽しめないので困るのだが、かと言って必要以上に抵抗されるのも嫌という身勝手な思いを持ってこの場に臨んだ彼だったが、素人にしては思った以上の戦術を見せた彼らに対して感心するとともに、記念すべきアルヴァトーレの第1射を邪魔されたのには苛立ちを感じたのだ。
かといって、それでがなり立てたり、八つ当たりするようなチャチな男ではないと彼は自負している。
それは嘗てユニオンでエースパイロットとして名を馳せた誇りから来るものであったし、監視者として、ひいてはコーナー家の党首としての誇りから来るものでもあったのかもしれない。
ともあれ、今はそれに拘っている場合ではない。
いきなり仲間が一人撃たれ、なおかつそれを利用して自分達の切り札である存在の攻撃を逸らされた事で広がりかけた動揺。それの対処をしなければならない。
それは、かのロシアの荒熊が率いる人革連の連中よりも、ユニオンやAEUの連中に目に見える程度に現れていた。
その点では、アレハンドロは人革連の荒熊を高く評価している。
ああいう風に部下を即時に冷静に戻せる人間は現場では重宝されからだ。きっと、信頼も高いのだろう。
そう思いながら、彼も残る連中に通信を入れる。
「落ち着き給え。こちらの二分の一以下の数しかいないとて、相手はガンダムだ。残酷かもしれないがこの程度は想定内だったと割り切らねば、また、別の誰かが仕留められる。各自、氷の様に冷静な心を取り戻して欲しい。……マネキン大佐。済まないがそちらから何機か狙撃手が隠れていると思われるだろう暗礁中域の索敵に回して欲しい。大事をとって2機以上が出来れば望ましい………ああ、そうだ。最悪囮は私が引き受けよう。……ああ、頼むよ」
そう言って締めてから、彼はアルヴァトーレを前へと出す。
言ったからには有言実行。それは、人を引っ張っていく上で重要なファクターの一つだ。
国連大使、CBの監視者。そしてコーナー家としての事業の代表者。
どれも人の上に立つ仕事だ。
長年の経験で、彼は自然と人の上に立つにはどうすればいいのか。また、人から信頼を勝ち取るにはどうすればいいのかという術を身に付け、自分の物にしていた。
それは、こういった最前線でも応用が効くものだ。
「さあ、蹂躙を始めよう!こちらが一歩出遅れているとはいえ、十分にひっくり返せる範囲だ。それが諸君の腕ならば十二分に可能であると私は確信している!恐る事はない!!
性能がいい機体を持っているだけの
宇宙に、GN-X乗り達の雄叫びが、響いた。
◇
それを尻目にアムロ達はスラスターを一切吹かす事なく、AMBACとデブリを足場にした時の反動を使いながら位置を変えていた。
理由としては簡単で、さっきの狙撃が原因である。
もしも敵がそれなりなテロリストや小国の防衛隊とかならまだ良かったのだが、相手は仮にも三大勢力が集まった国連軍である。
もしかしたら、ではなく確実に位置は割られている。
と、なると索敵も来ているだろう。
スラスターを吹かすとその推進光で視覚的にバレる可能性が高くなる。
それを考慮した上での、AMBACだよりのこの動きである。
何気に他のガンダムよりも柔軟な関節を持っている(といってもエクシアとどっこいどっこいだが)サキエルと、無茶な操縦に定評のあるアムロに合わせてチューンされたOガンダムだからこそ出来る移動方法。無論、GN-Xが真似をしても上手いこと次の足場に飛び移るとかは至難の業である。
「……さて、撒けたかな?」
ユリはそんな中、少しだけ後ろを向いてそう呟く。
遠くに赤黒い光が見えたということは、索敵の機体が来た事を示していたが、動き方からしてこちらを見つけた様子はない。
そちらに目をやらず、アムロは淡々と言い放つ。
「どうかな?」
言葉はそれだけだったが、その裏にあるものを察してユリは再び緊張を感じ、唾を飲み込んだ。
つまりアムロはこう言いたいのである。
――――――ロックオンを狙った敵が、隠れていないとは思えないだろう?
と。
一方のアムロだが―――実は、襲った存在については既に目星が付いていたりする。
まあ、確実ではないが高確率で師匠の差し金か何かだろう、と。
(実際には黄金大使―――もとい、アレハンドロ・コーナーの差金なのだが)
面白半分か何かで差し向けたんだろーなーなどと考えられているあたり、この男の(仮にも一応育ての親に対する)信頼の度合いが伺えるというものである。
……どういったベクトルの物なのかは、明言しないが。
まあ、そんな予想が出来ている上にそっちに絶対の自信があるからこそある程度余裕を持って彼は動けていた。
事実、彼はスラスターを使わないまま移動を行うという、相当難しい動作を行っているにも関わらず、若干鼻歌が出てしまっている。
相棒のハロに至っては、周辺警戒の傍ら、動画鑑賞だ。
ピクニックかドライブじゃないんだぞ、と気付かれたら怒鳴られそうなことをしているのに同行しているユリに一切バレていない辺り、相変わらず無駄に技術と余裕を持つコンビだった。
と、そんな時である。
不意に動くものを視界の隅に捉え、アムロは即座にOガンダムをデブリの側面にぴったりとくっつけた。
さらにGNABCマントを深く被り、そのままステルスシステムも起動させる。
今までの軽やかな動きからは一転した、慎重かつ素早い動きに、ユリもその傍にピッタリ張り付き、GN粒子の調整を行ってステルスの範囲を自分も隠れられるギリギリまで伸ばす。
ただ、完全にはいかなかったのか、少し手の先などが隠れきれていない。
それに気づいたアムロがマントを少し広げ、サキエルを半分隠すように動く。
マントが広がったことで一瞬だけステルスが途切れたが、直後に再び周囲に溶け込む。
これで、ギリギリまで近付かなければ分からない程度に隠蔽が完了した。
直後、アムロはスナイパーのスコープを。
ユリはサキエルのライフルのスコープを銃身から取り外して伸ばし、光の反射に気を付けながら今さっき見えた物へと向け、その姿を視認する。
まだ距離があるのか、ある程度の精密射撃ができるはずのサキエルのライフルではぼんやりとしか映らなかったが――――――GNスナイパーライフルという超超高度射撃も可能な代物のスコープを介していたOガンダムには、その姿がバッチリと捉えられた。
白と赤とクリーム色のトリコロール。
四肢からは黄金の羽の様な物を伸ばし、背中からも似たような物を2本生やしている。
目を引くのは国連軍の流線が多めなデザインであるGN-X達とは違い、ガンダムの様に角張ったデザイン。
そして――――――額から生える2本の角。意志を感じさせる目。後頭部に生えた、まるでジャパンの中世にいたサムライの頭の様な突起物。口元にある、まるで獣の牙の様な物が生え揃った“クラッシャー”。
(……いや、早くね?)
その存在を認識した瞬間、アムロは思わずそうボヤきそうになった。
戦場は、まだその先端を開いたばかりで、派手な音も、眩い光もさほど見えてはいなかった。
いかがでしたでしょうか?
どうも雑炊です。
相変わらず文法とかがおシャカになっているような気がしないでもありませんが、ともかくエタらないよう頑張ります……!
ともあれ今回の解説を。
感知センサーっぽい感覚
→これは現場の人から実際に聞いた話なのですが、実際に何となく分かる人は分かるらしいです。
霊感とかとはまた違う感じらしく、かなりボンヤリとしていて、少し経ったら気にならなくなる程度なんだとか。
ともあれ、興味深かったのと、もしかしたらモレノ先生も昔の経歴からしてそんなものあるんじゃないかなーという浅知恵からこんな形に。
とうのモレノ先生は盛大な死亡フラグを立てやがりましたが。
ほんと勝手に動かれると困るんすよ先生ェェェェ……!!
データ
→これはその内紆余曲折を得てテリシラあたりに届くと思います。
まあ、そこらへんは書く予定ありませんが(オイ
蟹のゲロビ
→今回はここら辺ちょっと変えさせて頂きました。
原作ではこれで少しトレミーが損傷するんですが、そこら辺無しに。
……まあ、そこまで重要な差異ではありませんが。
Oガンダムにスナイパー
→アーム保持はできませんが持たせられないわけでもないし使えないわけでもないので装備。威力はGNコンデンサの有無の関係でデュナメスより下がってます。
今回はちょい役でしたが、次回辺りからきっと活躍してくれるでしょう。
狙撃銃だからといって格闘ができないわけではありませんしね!!
というわけで今回はここまで。
では、また次回。