ガンダム00  マイスター始めてみました   作:雑炊

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とりあえず今回は戦闘シーン無しの日常パートです。
あまり本編とは関わりが無い……筈、です。
なのでスルーして頂いても大丈夫…かもしれません。
あと、今回はちょっと一部キャラ崩壊がありますので、そういうのはちょっとと言う人は、完全にスルーしてください。

それでは本編をどうぞ。



五話――――同居人が増えました(不本意)

アストレアとの戦闘後、散々姉さんにケーキやゼリーやアイスやタルトetc.etc……

そう言った、所謂スイーツを奢らされ、俺の財布が凄く軽くなった頃…大体午後の6時くらいだろうか?

やっとこさ俺はアジトへと帰ってこれた。

 

「って、何でついて来てるんだよ姉さん」

 

「ん~……かわいい弟の生活調査とか?」

 

「マジ帰れ今すぐに」

 

何故か一緒に姉さんもついて来たが。

とりあえず姉さんに、同居人である刹那とユリを刺激するなと言っておいたが、口元に浮かんでいる笑みから察するに、ほぼ確実にちょっかいを出す気だろう。

別にちょっかいを出す事自体はそこまで悪い事ではないのだが、この人の場合はそれが行き過ぎた物になる可能性がある。

その結果大乱闘になったという事になったら目も当てられない。

幸いにも、今この家には姉さんも大好きなあのゲームがあるので、万が一の場合はあれで決着をつけさせる事も可能だろう。

そう思いながら、俺はアジトのドアを開ける。

 

「ただいま~」

 

「ん?ああ、アムロか。お帰り」

 

「ああ、戻ったのか。アムロ、すまないがこのR-1という機体のコンボを教えてくれないか。どうやってもコンボの〆技がT-linkソードかナックルにしかならないんだ」

 

「あ……えっ…と……お、お帰りなさい」

 

「うー……い?」

 

……………………ん?

あれ?おっかしいなぁ?今なんか声が三人分聞こえたような気がするぞ?

 

よし。とりあえずまずは整理しよう。

 

最初に聞こえた声は、多分ユリだ。一番無難だったからな。うん。

 

次に聞こえた声はほぼ確実に刹那だろう。

つーか刹那。何勝手にゲーム起動させとるか。あと、R-1は合体技以外ではコンボの〆はソードかナックルしかないぞ?

 

(…で、問題は…)

 

返事もそこそこに、俺は早足でリビングへと向かう。そこには―――――

 

黄色を主体とした特徴的なスーツとピンクの髪の少女がオドオドしながら佇んでいた。

 

 

チュドーン!!

 

「ああ!またやられた!?」

 

「甘い、甘いぞユリ。その程度ではガンダムである私のR-1に勝つことは出来ない」

 

「喧しいわこのガンダム馬鹿!もう一度、もう一度だけ勝負だ!今度こそそのトリコロールの可変機を私のビルトビルガーのコールドメタルソードの錆にしてくれる!!!」

 

「フッ、上等だ。何度でもかかって来るが良い。私が、私こそがガンダムだ!!!」

 

「駆けろビルトビルガー!!奴のR-1よりも早く!!」

 

 

……とりあえずその後ろでゲームに夢中な馬鹿二名。少し自重しろ。

 

まあ、とにかく、なんだ。一応これだけは言わせてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんかいきなり同居人増えとるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!???????」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ん?

今何か聞こえたような気が……空耳かな?

まあ、空耳だったら別に気にしなくてもいいか。そう考えた僕はそのまま目の前の部屋に入った。

 

「アレハンドロ様。お待たせしました」

 

「ン、ありがとう。良いタイミングだ」

 

そう言いながら今僕がしている小姓のようなものの雇い主の“アレハンドロ・コーナー”は手に持っていた書類からこちらに顔を向けた。

僕はそのまま、彼の座っていた椅子のすぐ隣のテーブルに、頼まれていた飲み物と共に、とあるケースとチップを置いた。

程無くして、彼はそれに気付き怪訝そうな顔をした。

 

「ん?これは?」

 

それに対し、僕は自然に顔に笑みを浮かべながら受け答えする。

 

「栄養補給の為のビタミンカプセルとリストを入れたチップです。前者は最近少々栄養バランスの偏った御食事しか取られていなかった上、睡眠時間も少なかった事から。後者は先程のご商談について、力になってくれる人物を思い出したのでリスト化しておきました。良かったらお使いください」

 

それを聞いたアレハンドロは少し唖然とした顔をする。そして直ぐに眩しい物を見るかのような表情になり、こう呟いた。

 

「…リボンズ………本当に君は……何時でも私の欲しい物を与えてくれる…」

 

「ええ、勿論です」

 

「…君に会えたことは、私にとってまさに僥倖…いや、神の思し召しといっても良い程だよ……君こそ、彼らが私に遣わした天使だ…」

 

そう言いながら、彼は僕の右手を取った。

……しかし…天使、か。

以前までの僕なら其処まで何も思わなかったかもしれないけど、最近では普段からアムロに“鬼”だの“悪魔”だの“人間台風もどき”だの……果てには“ハチャメチャスパロボマニア(特定条件下でのみ劇画チックスパロボマニア)”と呼ばれていたから、この呼ばれ方は新鮮な気分になるな。

あ、勿論呼ばれる度に彼を酷い目に合わせるのは忘れないよ?当たり前じゃないか。

 

…まあ、確かに常人であれば、こういった事は中々出来ないだろう。しかしこの僕のような存在―――――ヴェーダとリンクできるイノベイドならば、これくらいの事は造作も無い事だ。1分掛からない内にできる。…まあ、ビタミンカプセルは市販品だけどね。

……アムロなら僕が「やらないと酷い目にあわせるぞ」、と言えば10分…じゃ終わらないか。

となると大体1時間ほどか。それくらいでこんな仕事は終わらせてしまうんだろうけど。

……ああしまった。ちょっと彼が慌てながら泣く泣く作業している所を想像して顔がにやけてしまった。これは直さないとな。

……しかし彼をからかうのは面白いから止められない。

 

そういえば、フェルト・グレイスは彼の家に辿り着けたのだろうか?

彼女があのカオスな状況のアジトに放り込まれれば、おそらくアムロは彼女のフォローでてんてこ舞いになるだろう。

……ああ、想像しただけでも実に面白そうだ。

いっそもうこの際だから、この前言ったようにヒリングも彼と一緒に生活させてしまおうか…?

 

それはそれでもっと愉快な事になりそうだ。

 

「…フフッ」

 

「? どうかしたのかね?リボンズ?」

 

「いえ……ちょっと楽しい事を思い出しまして」

 

「…フム、まあいい。所でリボンズ。“あの件”はどうなっているのかな?」

 

「おおまかなポイントの割り出しは終了しました。しかし、そのポイントの何処に在るのかまではもう少し掛かりそうです」

 

「分かった。いつもすまないな、リボンズ。苦労をかける」

 

「いえ、僕も楽しんでおりますので……それでは作業に戻ります」

 

そう言いながら、僕は踵を返して与えられた自室へと戻る。

それにしても、アレハンドロもアムロ程ではないにしろ要所要所の反応が面白いな……基本上っ面以外は間抜けで、何だか小物臭がオーラになって出ているような人間なのに。

……まあいいや。実際彼の下で働くのは其処まで嫌じゃない。暇潰し程度にはなるし、まだ当分は泳いでもらって、楽しませてもらう事にしよう。

 

「さて、と、スパジェネでもやるかな。今度こそジンライと大雷凰を使いこなさなければ……」

 

作業?そんな物後回しに決まっているじゃないか。

こっちの方が今の僕にとっては最優先事項だからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ハッ!?

今一瞬…じゃないな。

時計を確認すると、もう午後7時を指しているから……どうやら1時間くらい飛んでたみたいだな。

何がだって?そんなことは言わなくても分かるだろう。

 

「それにしてももう7時か……今から夕飯を作るにしても、このままだと出来上がるのは8時から9時くらいか?」

 

思わずそんな台詞が口からこぼれる。

いつもは6時から30分(はん)の間に調理し始めるのだが、今回は色々とショッキングな事があったのでいつもよりも30分ほど遅い。

まあ、それ自体は問題ではない。

むしろ問題なのは姉さんと刹那だ。

おそらく姉さんは、このまま夕飯を食ってから帰る気なのだろう。

ついて来た事から鑑みるにこれは確実だ。

もしもこれで、『気絶してたから夕飯できるの遅くなる』等と言ったら間違いなく暴れだす。

刹那も刹那で厄介だ。

あいつは基本的には何もしないのだが、ある程度遅くなると何をする訳でもないのに台所まで来てジッと料理中の俺を見てくるのだ。

しかも何を言っても無言で返すときやがる。

ハッキリ言って最初の頃は鬱陶しい事この上なかった。

最近は慣れたが、それでも少し視界の中にチラチラ映るので鬱陶しいとまでは行かないものの結構気になる。

 

で、今回の場合、この二人+あまり面識の無い子―――要するにどんな反応を示すのか分からない子が一人居るのである。

おそらくある程度ならば常識人にカテゴリされるユリが止めてくれるだろうが、それでも不安は残る。

 

(…とにかく今すぐにに調理を始めなければ!)

 

そう考えた俺は、若干駆け足で台所へ向かう。

………リビングから物凄く楽しそうな声と音が聞こえるが、無視だ!無視!!

そのまま台所へと入った俺は、冷蔵庫を開けた。

が、次の瞬間――――――――――――

 

(……!!??……なん…だと…?)

 

俺は視覚的なショックを受けて、再び意識が飛びそうになった。

今回は何とか耐えれたが、このままではマズイと考えた俺は、そのままこの事態に対する打開策を考える。

そして考え始めてから約30秒後。

 

(…ああもうこうなったら“あの手”しかないか………)

 

考えは、出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっと……どんな状況なんだろう?

私達の目の前には、今日始めて会った、このアジトに元から潜入していた刹那によく似た人――――アムロ・レイが物凄い無表情で仁王立ちしている。

刹那とユリ、そして彼と一緒に帰って来た人―――ヒリングって人も、さっきまでやってたゲームを一時中断して彼に顔を向けている。

ややあって、彼が口を開いた。

 

「緊急事態だ」

 

…え?

 

「…どういう事だ?」

 

ユリが彼に問いかける。

彼は表情を一切変えずに答えた。

 

「なんと冷蔵庫の中に食材が全くといっていいほど無かった」

 

「買ってきなさいよ」

 

今度はヒリングさんが問いかける。

 

「残念ながら、只今俺の財布の中には、ちょっと前のスイーツ祭りの所為でたった500円しか入っていないのだが……」

 

そう言って、アムロはヒリングさんを見た。

目を向けられたヒリングさんは何か思い当たる事があるらしく、居た堪れなくなった様子で目を逸らす。

 

「アムロ。おなかが空いたんだが」

 

いや、刹那…このタイミングでそれは…

 

「おーい刹那ー?マイペースもいい加減にしろー?そんな綺麗な目で小首傾げて不思議そうな顔しても駄目だぞー?小動物みたいで可愛いけどって姉さん?なんで刹那と同じ動きをする?」

 

「いや、こいつがやって可愛く見えるんだったら、あたしはどんな感じかなーって」

 

「どっちかっていうと小動物って言うか小学生っぽい「オーイそれはどういう意味かなクソガキ?」あンだとドラム缶?」

 

そのまま不穏な空気が二人の間に流れ始める。

ユリが慌てて二人を止めに入るけど、あんまり効果が無さそう…って。

 

「あれ?刹那。そのお菓子どうしたの?」

 

何時の間にか、この状況が出来上がる原因を作った刹那が、お菓子を食べているのに気付いて、私は彼女に質問した。

すると刹那は自分の足元に居る物を指差す。

それは……

 

「…ハロ?」

 

そう、黄緑色のハロだった。

よく見ると、その手にはお菓子の袋が握られている。

 

「もしかして…くれるの」

 

「ホシイカ?ホシイカ?」

 

「えっと…まあ、ちょっとだけ…」

 

あまりにも刹那がおいしそうに食べるから、思わず本音がポロリとこぼれてしまった。すると……

 

「アゲル!アゲル!」

 

ハロがそう言ってから、おもむろに自分の身体を開けた(・・・)。驚いて思わず後ろへと後ずさってしまったが、今度は其処にあった物に驚いた。

其処にあったのはお菓子の山、山、山。

もう何処に一体入っていたのだか分からないくらい入っている。

ハロはおもむろにそれの中の一つを掴むと私に差し出してきた。

これは…つまり…

 

「…くれるの?」

 

「アゲル!アゲル!」

 

「……ありがとう」

 

この子のそんな行為が何だか嬉しくて、感謝の言葉と一緒にハロの頭を撫でる。

ハロはそんな私に文句を言うでもなく、ずっと静かに撫でられていた。

 

 

 

 

「……よーし、そこでハロと戯れているえーと……「フェルトだ。フェルト・グレイス(ボソッ」そうだフェルトだ。フェルトと、その隣で黙々とお菓子食ってるガンダム馬鹿女。しょうがないから、今日は外食するぞ。後5分で出るから仕度しな!」

 

 

 

さっきまですぐ隣でヒリングさんと険悪な空気だったアムロがそんな事を私達に言ってきたのは、それからすぐの事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、宣言通りに5分で支度をして、戸締りをしっかり確認して俺が4人を連れてきたのは、近くの定食屋だった。

此処はちょっと佇まいが古くて、中もけっして広いとは言えないが、店をやっている老夫婦はとてもいい人達だし、値段も中々リーズナブル……と言うか、下手するとお金が無くてもちょっと店の手伝いをするだけでご飯を奢ってくれたり、メニューも常連になったらその人に合わせた物を作ってくれたりと、中々良心的である。

因みに俺は此方へ始めてきた頃にしょっちゅうお世話になったのでおやっさんとおばちゃんとは顔見知りになっている。

 

「という訳で、おやっさん、バイトすっからいつもの奢って」

 

「あいよ、ちょっと待ってな!すぐに出来上がっからよ!」

 

まあ、そんなこんなで只今俺たちはもう既に店の中に入って席に着いております。

え?お金が無かったんじゃないのかって?

前述の通り、俺が全員分の食事代を働いて返す事で話がつきました。ハハハ、アレ?メカラアセガ…

 

「……なぁアムロ」

 

「うん?どうしたユリ?」

 

「……本当に、私達は何もしなくて良いのか?せめて皿洗いくらいはした方が良いのでは…?」

 

そう言いながら此方を申し訳無さそうな目で見てくるユリとフェルト。

その向こうでは、刹那と姉さんがもう既にラーメンやらチャーハンやらを勝手に頼んでがつがつと食い始めている。

……ってうわっ!?刹那の目がこれ異常無いほどに輝いている!?

そんなに美味かったのかここの料理!?

確かに此処の料理って結構美味いけど、そこまで!?

……って、涙まで流してる!?ああ、鼻汁!鼻汁でてるから!?っていうかそろそろ誰か彼女の様子に気付いてあげて!?何で誰も気付かないのって、早っ!?もう完食しやがった!?

 

「お゛か゛わ゛り゛ー!!!」

 

おかわり頼みやがったあの女郎(めろう)!?

っていうかおばちゃんもじゃんじゃか持ってきてるし!?

何だかどんどん皿の山が築かれていくよ!?

 

「あ、おばちゃーん!あたしこの胡麻団子100個お持ち帰りでー!」

 

「あいよー!!」

 

そして姉さんは一体何個胡麻団子お土産として頼んでんだ!?

此処まで来てちょっと怖くなってきた俺はコッソリとおばちゃんに今どれくらいお金が掛かっているか訊ねてみた。

 

「んー…ちゃんと計算してないけど、大体15万くらいじゃない?」

 

『:あむろは めのまえが まっくらに なった:』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お~いアムロ~……大丈夫か~?」

 

……ムゥ。流石にこれはちょっとマズイな……あ、いや、料理の味が、というわけじゃないぞ。

むしろそっちは物凄く美味しい。

むしろ問題は、今彼が払わなければならない代金を聞いた事によるショックによって口を開けて上を見ながらピクリとも動かなくなってしまった事だろう。よく見ると瞳孔も開きっぱなしになっている。

とりあえず、先程からフェルトと一緒になって彼に声を掛けたり身体を揺らしたりしているのだが一向に動き出す気配が無い。

 

(……さて、如何したものか……)

 

見ればフェルトは、あまりの事態に自分の器量では対処出来ないと判断したのか目に涙を溜めている。

刹那に至っては、未だに涙を流しながら頼んだ物を貪っている。

…そろそろ止めた方がいいかな?

とりあえずフェルトに彼女を止める様に言っておいてから、私はその向こうのヒリングという中性的な人物(アムロが“姉さん”と呼んでいた事から、おそらく女性だと思うが)に目を向ける。

彼女も、流石に彼の状態(惨状ともいう)に気付いたのか頬を引きつらせながら先程頼んだ杏仁豆腐を食べている。

どうやら彼女はあれで打ち止め(ラストオーダー)らしい。

 

…というか、この惨状に気付いても食べ続けているのか…

 

「……あのー……ウチの弟、大丈夫?何か様子がおかしいんだけど…」

 

あ、心配だけはしてたのか。

なら、少し皮肉を混ぜて返しても良いだろう。

 

「…一応彼がこうなった原因には、貴女も入っていますからね?」

 

「いや、それは…その、分かっちゃいるけど……ハハハハハ……」

 

「目を逸らして乾いた笑い声を上げないで下さい」

 

まったく……

 

「刹那、刹那」

 

ズゾゾゾゾゾゾゾゾ……ゴクン「ん?フェルトか。どうかしたのか?」

 

刹那の方も、先程から声を掛けていたフェルトにやっと気付いたらしい。

とは言っても、先程まで自身が頼んだ物を全て食べ終わってからだったが……そんなに此処の料理は美味かったのか?刹那?

意外な一面だな。こういう形で見れても嬉しくも何とも無いが。

 

「あの、どうしたって言うか……その……えっと……」

 

そう言いながら、彼女は動かないままのアムロを指差す。

そんな彼を見た刹那は、少し目を丸くして、こう言った。

 

「……フェルト。彼は一体如何したんだ?」

 

「あ、やっぱり気付いてなかったんだ……」

 

そう言いながらフェルトは肩を落とした。

まあ、あれだけ集中して食事していれば気が付かなくても仕方が無い、か?

その集中力を、実戦でも発揮してくれれば良いのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フム。大体分かった。つまり私があまりにも多く注文してしまったお蔭で、合計金額が物凄い事になり、結果としてアムロはあそこで真っ白になっている訳だな。よく分かった」

 

「ああ、うん…分かってくれて嬉しいよ…」

 

あの後、結局フェルトでは埒が明かない、という事で、代わりにユリに何故彼がああなっているのか教えてもらったが、それほどに酷かったのだろうか?

確かについ先程、私が事情の説明を受けている最中にヒリング・ケアが伝票を見て盛大に口に含んでいた水を噴出しているのは見えたが…………

 

「ユリ」

 

「如何した?」

 

「すまないが、少しその伝票を見せてくれないか?」

 

「いや、別に構わんが……見て驚くなよ……」

 

そう言いながら、彼女が手渡してきた伝票を見る。

そこには『198,000』という数字がでかでかと書かれていた。

 

(……うん?)

 

「何だ、このくらいか」

 

思わず口から言葉を漏らしてしまった。

本当はもっといってるかと思っていたのだが……どうやら値段が安い、というのは伊達ではないらしい。

ふと周囲を見渡してみると、ユリやフェルト、そしてヒリング・ケアの顔が驚愕に染まっているのが見えた。……何故だ?

因みにアムロは未だに固まったままだ。

 

「…刹那、一つだけ聞かせろ」

 

私が頭を傾げていると、ユリが質問してきた。

どうしたのか?

 

「? 如何した?」

 

「お前今、その金額を『このくらいか』、と言ったか」

 

ああ、何だそんな事か。

 

「ああ。此方へ来る前に、スメラギ・李・ノリエガから、資金として日本円で40万ほど貰っているからな」

 

「……は?!」

 

? 何だ?

私が此処に来る前にスメラギ・李・ノリエガから「何かあったときの為に使いなさい」と言って持たされたお金の事を話したら、その場に居た“おやっさん”と呼ばれる男性と“おばちゃん”と呼ばれる女性以外の人物が一斉に動きを止めた。

……あ、いや、もう一人だけ止まっていない人間が居た。

 

アムロだ。

 

彼は私がこのお金の事について喋った瞬間、耳をピクリと動かしてから、まるで『ギ・ギ・ギ・ギ・・・』という音が聞こえてくるくらい、油を注していないブリキのロボットの様に、顔をゆっくりと此方に向けた。

その様子を見てフェルトとヒリングが「ヒィッ!?」っといってお互いに抱き合う。確かに目は虚ろだし口は半開きなので、そんな動きをされたら怖いだろうと思う。

私は平気だが。

暫らく彼は、そのまま死人のように虚ろな目で此方を見つめていたが、そのうちゆっくりと口を開いた。

 

「オイ…刹那……」

 

「どうした?」

 

「今お前……40万…持ってる…つったか?」

 

「ああ。言ったな」

 

「……じゃあ……なにか…?……お前さん……今この伝票に書かれている金額…全部払えんのか……?」

 

「……まあ、そうだな」

 

虚ろな目のまま私に質問を繰り返すアムロ。

私もそれに淡々と答える以外に道は無いので、正面から彼の求める答えを返す。

……というか、流石にこの目で見つめられ続けると、少し悪寒を感じるな……

 

「そう…か………なーんだ、そっか……」

 

って、ん?いつの間にか、アムロがカウンターの方を向いている?

そしてその手に何かの瓶を持っている?

一体何を……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…余談だが、私はこのとき以前ロックオンが教えてくれた、“どんな事があっても我を忘れてはいけない”という言葉の意味を、実をもって知った。

 

彼がその手に掴んだ瓶の正体は、大量の紅生姜が入った容器。

彼はその容器に(おもむろ)に手を突っ込んで、中から大量の紅生姜を掴み出したかと思うと…

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おぉぉお驚かせてんじゃねえこのすっとこどっこいがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!怒りの紅生姜フィンガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

そんな気合の入った咆哮と共に、ポカンと開けていた私の口の中へとそれ(・・)を全て突っ込んだ。

 

 

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

私は突っ込まれた衝撃と、次の瞬間に口の中に広がった何とも言えない刺激に悶絶し、そのまま床に転がった。

 

(……今度から、なるべくアムロは怒らせないようにしよう。)

 

紅生姜特有の辛さと酸っぱさに悶絶しながら床を転がっている私の頭には、その内そんな言葉が思い浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ~ビックリした……本当に1年くらいタダ働きしなきゃいけないかと思った.

流石にバイトする、とは言っても、そこまでやるわけにはいかねぇよ……

 

そんな感じで安堵する俺の目の前では、紅生姜を大量に口に突っ込まれた衝撃の所為か、刹那が床で転げまわっている。

しかし、同情はしない。

だってそうだろう?

予め金が無い、と言っていたのに突如暴走して物を頼みまくった上、大量におかわりまでしやがるんだから。

……まあ、とはいえよくよく考えたら、あの行動もちゃんとお金が足りると分かっていたからこそだったのだろう。

でなきゃ、あの大人しめな刹那が意味も無く暴走する筈無いか。

…暴走、しないよな?そうだよな?

 

(……そう考えたら、ちょっと申し訳なく思えてきたな……(汗 )

 

そんな訳だから、お詫びに後で何か甘い物でも作ってやるか……材料があれば。

クッキーくらいは……無理か。んじゃカルメ焼きだな。成功する確率70%の難物だが。

 

「おう、坊主。出来上がったぜ!」

 

そんな事を考えていると、おやっさんが何時の間にか料理を終えて、その手に俺がいつも頼む物を持っていた。

って言うかこの人、あの刹那と姉さんの怒涛の注文ラッシュを受けておいて、まだ余裕があるように見える。

…確か、もう80過ぎの御高齢の筈なんだけどなぁ……?

そんな凄く些細な疑問を無視するかのように、彼は俺の前にその手に持った丼を置いた。

 

「へい!餡ころ丼(・・・・)一丁、お待ちどう!」

 

まあ、今はそんな疑問などどうでもいいか。

腹も減ったし、お金の心配も消えたし、さっさと食って、帰ってスパジェネすんべ。……っと、カルメ焼きも忘れないようにしないと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…なに?これ?)

 

今あたしの目の前には、はっきり言ってイノベイドのあたしでも理解できない光景が広がっている。

原因は、今あたしの弟が食っている茶色い何か(・・・・・)だ。

その茶色い物は、辛うじて“餡子”だと言う事は分かるが、問題なのはその量。

どう見ても、丼の端から端までぎっしりと詰まっているようにしか思えない。

アムロはそんな事意に介さず、黙々と箸で食べ続けているが……胸焼けを起こさないのかしら?

よく見ると、名前の通り、ちゃんと丼のようで、あんこの下にはちゃんとご飯がある事が見えたけど…

 

(いや、それでも限度っつー物があるでしょ?)

 

思わず口から出そうになったそのセリフを呑み込みながら、代わりに心の中で呟く。

と、あいつは何か気に入らなかったのか、突然少し眉間に皺を寄せ、次の瞬間、

 

「……やっぱ混ざってないとこれ少ーし食い難いな……(ボソッ」

 

そう、あたしがギリギリ聞き取れるか聞き取れないかと言う声量でこう呟き、何を思ったのか丼の中のあんことその下のご飯をかき混ぜ始めた……って、ええ!?な、何やってんのコイツ!?

止めようとも思ったが、覗き込んだアムロの目が、あまりにもキラキラしていて、思わず怯んでしまう。

その間にも、アムロは丼の中の餡子とご飯をかき混ぜており、もう丼の中は茶色と白のごちゃ混ぜ状態となっている。

その後、あらかた混ぜ終わったのか、アムロは再びそれに箸を付け始める。

……しっかし本当に、見るだけで胸焼け起こしそうね。

それを本当に美味そうに食べるコイツもコイツだけど…

 

と、何時の間にか先程まで床で転げまわっていた、ガンダムマイスターの一人である刹那・F・セイエイがアムロの横に立って、ジッと彼の食べている物を凝視していた。

……何をやってるんだろうかあの子は?

もしかして、あの丼というのもおこがましい餡子と白米の集合体を食べたいとか思ってるんだろうか?

私が内心『まさか』と思っていると、今まで目の前の丼に集中していたアムロが彼女に気付いて、声を掛けた。

 

 

「ん?どうした刹那?もしかして、また何か頼みたいとか言うんじゃないだろうな?」

 

「…いや、違う」

 

「んじゃなんだ?」

 

「……」

 

「………」

 

「…………」

 

「………いや、黙りこくられても困るぞ?」

 

そのまま黙りこくる刹那に対して、アムロも首を傾げる。

が、その内彼女の視線の先にある物に気付いたのか、ハッとした様な表情になってこう言った。

 

「あ、もしかして、餡ころ丼(コレ)食べたいのか?」

 

「…!!(無言で首を縦に振る」

 

「いや、それならそうと早く言えばいいだろう。何で黙りこくったまんまでいるんだ……言っておくが、俺はエスパーじゃないんだぞ?誰だってキチンと言葉にして、声に出してくれなければ、早々そんな事理解は出来ん……って、コラ。目を逸らすな」

 

そう言いながら腕を組んで彼女の方へとアムロは身体を向けた。

そんなあいつに対して、刹那はまたしても無言のまま視線を逸らす。

…何だかその姿が主人に怒られている子犬か何かの様で、一瞬…ホントに一瞬だけ『カワイイ…』と思ってしまったのは、あたしだけじゃない筈だ。絶対に。

そのまま、また少しの間、二人の間に沈黙が訪れる。

そのまま20秒くらい経った頃だろうか。

そろそろ助け舟でも出してやろうかな、と思った所で、刹那・F・セイエイがこう口を開いた。

 

「…………だって……」

 

「あい?」

 

「…だって……さっきの事で…まだ怒ってるかと………思った、から…」

 

 

…………え?

何?何なのこのカワイイ生物!?

若干の涙目で、ちょっとしゃくり上げつつ伏せ目がちにそんなこと言ってくるとか、何この萌えのポイントを抑えているような物の言い方!?

って言うか、言われたアムロも一瞬だけボソッとだけど、「何このカワイイ生物…」言ってたし!

つーか良く見りゃ、周囲の人(この店の店主とおばちゃん以外)もフェルトとかユリ含めて、全員口元を手で押さえている。

……あ、客の一人の手の隙間から、ちょっと赤い物が見えた……

 

 

 

「……いや、あのね……流石にもう怒ってないから…仕返しさっきやったげたでしょ…」

 

気が付くと、何時の間にやら先程の衝撃からいち早く立ち直っていたのかアムロが頭に手を当てて溜息を吐いていた。

…いや、でもさっきのあんな怒り方を見れば、まだ怒ってると思われてもしょうがないわよ、アムロ?

そんなあたしの心の中での突っ込みを知ってか知らずか、アムロは丼の中の茶色いあんこと白いお米の集合体を箸で少し掬うと、

 

「ん」

 

と言って、刹那の目の前へと差し出した。

差し出された方は何故差し出されたのかが分からず、目を白黒させているが。

 

「どうした?食べたいんだろ?ほれ」

 

そう言われてやっと何故差し出されているのか分かったようで、少しの間箸の上に乗っているものを凝視していたが、その内ゆっくりとそれを口の中に入れた。

と、次の瞬間、彼女の目が再びこれ異常ないほどに輝く……て、それそこまで美味しかったの?

とりあえず、どんな味なのかくらいは訊いておこうと思ったあたしは、彼女に質問してみた。

 

「……ねえ、刹那…だっけ?それってそんなに美味しかったの?何か物凄く目が輝いてるけど」

 

そんなあたしの質問を聞いた彼女は、口の中の物を飲み込んでから、大きな声でこう言った。

 

「おはぎみたいで美味しい!!」

 

と。

……つーか、おはぎ知ってるんだ……

あたしも、以前アムロがリボンズに頼まれて買って来たお土産であったから、それがどんな物で、どんな味かは知っている。

確かに美味しいと言う事も知っている。

…でも、これの味がそれみたいって言われても………ねぇ?

 

ただ、そう言われると、本当に味が似ているのか確かめたくなるのよねぇ…

そう考えた私は、とりあえずアムロに向かってこう言ってみる事にした。

 

「ねえ、アムロ」

 

(ムグムグムグムグ…ゴクン)「んぅ?姉さん、どした?」

 

「いや、別にどうってワケじゃないけど…それ、ちょっと気になったから、一口頂戴?」

 

それを聞いたアムロは、少しキョトンとした後、少し目を細めてこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……姉さん。昼間あんだけスイーツ食っといて、さっきもあんだけ食ったのに、またコレ食ったら流石に太るぞ?」

 

「上等だクソガキコラァ」

 

イノベイドだけどねぇ、最近流石にそこらへんは気にしてんのよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、その後あたしとアムロの間で、再び一触即発な雰囲気が勃発。

とりあえず此処で暴れては周りに迷惑がかかると言う判断から、家に帰ってからスパジェネによるタイマンで決着(ケリ)を付けることになったのは、言うまでも無い。

 

……結局、ゲシュテルベルンの『十字架でスタンかけられてからそのままハメコンボ』でボッコボコにされたけどな!!ボックスレールガン2丁連打とかワケわからんわ!!

 

あ、ちゃんと代金は、刹那が持っていたお金と、アムロの約1時間のバイトによってちゃんと全額払えてたらしいよ?

 




如何でしたでしょうか?
どうも雑炊です。

今回は一応アムロの受難と、二期でやろうと思っているとあるネタ話の伏線をメインにさせて頂きました。
次回からはちゃんと原作に戻ろうと思っています。

で、次回くらいで再びオリキャラを一人入れようと思っています。
因みに敵側です。
結構歪んでいます。色々と。



それではまた次回
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