何かのパーティの後だろうか。
カウチソファーに横になる男の元に、女が行く。

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全てを虜にする唇

 

 

 

 

 

鏡の前、美しい女が微笑む。唇を彩るのは赤とも紫ともつかないセクシーなカラー。ふらりと立ち上がった女を追う。

ベルベットのカウチソファーに横になり、ぼんやりと宙を見つめる男の元に先ほどの女が現れる。

自分の上に乗り上げてきた女に抵抗するでもなく優しく受け止める。

男の脇腹から胸元にかけて撫で上げる女の指先は何とも扇情的だ。それでも男は子猫の戯れを眺めるかのように微動だにしない。

不満そうに腰をくねらせた女がシャツから覗く男の鎖骨に指を這わせる。ねだるように数回撫でるも男は一瞬反応を見せるだけで変わらず。

最後の手段とばかりに女があのセクシーな唇を男のそれへと近づけて何事かを囁く。その瞬間、男の雰囲気がガラリと変わるのがわかった。次の瞬間には女の細いうなじを抱き寄せ、ふたりの影が重なった。女の長い黒髪がふたりを覆い、ふたりの正確な状況は読み取れない。それでも、キスを連想させるには十分なシチュエーション。

数秒の間重なっていた影が離れる。女の顔は相変わらず髪で隠されており表情が見えないが、男は先ほどまでの平然とした顔が嘘のようにとろけるほどの甘さを滲ませていた。

 

 

 

ふたりが絡み合っていたカウチソファーの上に今度は女が横たわっている。宙を見つめていた男とは違い、女は目を閉じ眠っていた。無垢な寝顔は女をうら若い少女に見せる。先ほどまで男を煽り魅了していた女と同一人物とは思えない幼気な容姿の中でも変わらず唇は、あのセクシーな色を纏っている。そのミスマッチさがより一層、情欲をそそった。

 

今度は、男が現れた。眠る女の元まで足を進めると傍に跪く。天使かあるいは神の様に美しい男を跪かせながらも女は眠り続ける。愛おしい愛おしい。この女が心底愛おしいと瞳で語る男は、ゆるりと女の脇に手をつくと薄く開いた唇に自身の唇を寄せた。

ぱちり──とでも聞こえそうだった。男が顔を寄せると固く閉じられていた瞼が持ち上がり女の大きな瞳が男を映したのだ。罠に掛かった獲物の到来を喜ぶ様に喜色を滲ませた女は、男の白い首筋を華奢な手で引き寄せる。再びふたりの影が重なった。

 

 

 

 

勝ち誇った様に見下ろす女、その後ろに天井が見える。にんまりと口元に笑みを浮かべた女はベッドに横たわる男に乗り上げ、これから食らってやろうとでも言わんばかりの表情だ。

一瞬の隙をつくように男が体勢を入れ替えた。男の上で笑っていた女はシーツに縫いとめられいる。それでも、変わらずその口元に笑みをたたえていた。真白なシーツに長い黒髪が散らばる。白と黒のコントラストが美しい。

ほら、私を食べてと女が誘う。セクシーな唇、白い首、細い腰、全てで男を誘惑する。

ああ、もうたまらない。男が女に唇を寄せる。

 

鏡越しに映るベッドで眠る男、女は鏡の前で唇にあの色をのせる。にっこりと笑って見せた女は立ち上がると、未だ深く眠る男に歩み寄る。

眠る男の鎖骨にキスを送って微笑んだ。

 


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