強気な先輩からパンツを召し上げる話 作:まさきたま(サンキューカッス)
初めまして、かな。
まずは先輩たる私から自己紹介をしようか。私の名前は・・・あぁ、なんだ。
君は私のことを既に知っていてくれたのか? なら、今は自己紹介を省こう。名前以外の私について知りたいことは部活の最中にでも好きなだけ聞いてくれ給え。
ただ申し訳ない、君の名前をどうか教えてくれないだろうか?
君は1度、新入生歓迎会における各部活動の紹介において活動内容の発表時、熱弁を振るう私の姿を見たかもしれない。だが、発表者たる私からしたら君はその時、傍聴していた生徒達の1人でしか無く、従って私が君の顔を覚えて無くとも当然、君は寛大な心を持って許して然るべきだ。
うん、そうか。それが君の名前か。実に良い名前では無いか!
君は良い両親を持ったのだろう。名前と言うのは、親が子にどのような期待を寄せ、どのように育てるかの誓いであり、ソコに更に画数だの読みだの風水の要素まで絡めて文字通り心血注ぎ考えるモノなのだ。
君は恐らく、とてもとても親に愛され産まれてきたのだろう。素晴らしい事だ!
では改めて、ようこそ。我が〇〇高校心理研究会へ。
今年の入部届は君のたった1枚だけ。我が部活に届けられたこれは、君が如何に優秀で、見る目が有るかと言う証左に他ならない。だからそのような“ああ、しまった。俺は入る部活を間違えてしまった!”みたいな顔をしないでくれ給え。
落ち着いたかね? では、好きな席に着いてくれ給え。いよいよ記念すべき第1回目の部活を始めようじゃないか!
ではまずは、我が部の今年唯一の部員である君に、簡単な問いを1つ投げかけよう。
一体全体、パンツとは何なのか?
ああ、真面目な問いさ。ふざけてなんか居ないよ。この部活の名前を思い出してくれ給え。そう、 心理研究会と言っただろう?
そうとも。これも部活の内容さ。女性で、更に先輩である私にこのような問いをされて照れてしまうのは分かっている。だが、部活の初めのウチだけなのだ。いちいち議題に照れてしまうなんて言うのは。
君が暫くこの部活に顔を出してくれたなら、すぐにどのような議題で有ろうと私と熱弁を交わし、理性的で客観的なエビデンスに基づく有意義なディスカッションを行えるようになるだろう。
そしてこれは社会においても通用する重要なスキルだ。君は入る部活を間違えたどころか、これ以上無い有意義な学生生活を過ごせるだろう。
では、改めて問おう。
君は、パンツとはどういった存在であると考えるんだい?
ふむ。それは柔らかい布製であり、衣服の中の分類としては下着であり、部位としては股間に装着すべきモノであり、様々な色と種類があり、男子諸君は躍起になって女子のパンツを覗こうとし、女子は気持ち悪いと父親のパンツを籠から投げ捨てるモノで有る。
その通り。だいたい出尽くしたかね? 私もパンツについての考察は大体似たようなものさ。
つまりこれらが示すことは、相対的にパンツというモノは女子のモノの方が価値が圧倒的に高いと言う事だ。これは、決して私や君だけの主観では無く、普遍的で客観的な事実で有ろう。
ここまでは理解できたかい?
それでは、次の問題を出そう。
価値の高いパンツとは、どう言ったパンツだい?
ふふ、少し考えている様子だね。この問いは簡単な様で難しい。
成る程? 単純に、販売価格が高価なモノで有る、と言う意見も悪くは無い。
だが聞いて欲しい。巷では女子高生の写真と共に中古のパンツを有り得ない値で売っていたりもする。元値が安くとも販売価格は幾らでも高騰する。私が1番聞きたいのは、なぜ高騰するのか? と言うことだ。
熱いモノとは何かと聞いて、温度が高いモノと答えても当然正解だろう。だが、ソレは言葉を言い換えたに過ぎない。私が聞きたいのは、火であるとか、太陽であるとか、真夏のアスファルトであるとかそう言った事なのだ。
ヒントを少し出そうか? 君は私のパンツと水着、どちらをみたいと感じるかね?
ふむ、そうだろうね。ははは、照れるな照れるな!
議論に戻ろう。なぜ君は今、パンツを選択したのか。そこにヒントが有ると考えている。
水着を隠す女性は少なく、下着を見せ付ける女性もまた少ない。当然、そこに明確な差が産まれる。
夏の、水場でしか拝めない水着。だが、隠そうとしない水着姿は、女優やアイドルと言ったとびきりの美人のモノを少年誌等で気軽に眼福できる。
一方、風が吹いたり・・・、そうだな、私がバランスを崩して転けたりすれば、君だって次の瞬間にも拝めるかもしれないパンツ。ただし、即座に見たいとなれば君も持っているかもしれないエッチな本まで手を伸ばさねば拝むことは出来ない。
ならば目にする事が少ないパンツの方をみたいというのは、性欲云々では無く好奇心の生物である人類にとって当たり前の感情なのだ。別に恥ずかしい事では無いぞ後輩!
さて、今までの事を踏まえて更に問おう。そしてコレを、今日の部活今日の最後の問いとしようではないか。
“私の今履いているパンツの価値を、この部室から出ず今より更に高める方法とは何か?”
ふふふ、何だか慣れてきたな? さっきより照れが少なくなってきた様に見えるぞ。良いことだ、議論と言うのは感情を抜きにして行うモノなのだから。
では、意見を述べてくれ給え。男性たる君の方が、有意義な答えを出せるかもしれんな。
ほほう。それは、面白いかもしれない。早速に、非常に良い意見が出た。
確かに、君の言うとおり。世の中において、ジーンズを履いている女性とスカートを履いている女性とでは、確かにスカートを履いている女性のパンツの描写の方が魅力的なモノだと扱われているかもしれない。
ジーンズは基本的に鉄壁、さらに見えたとしても範囲は微々たるモノだ。一方スカートはあわよくばと言う期待を持たせる。そこに差があると君は言うのだね。素晴らしい、意見の述べ方も板に付いているな。
ふむ。チラリズムと言った言葉も有る。
即ち、男性にあわよくばパンツが見れると期待させつつ、その期待をいなし決して見せない。そう言った行動を私が行うことにより、私のパンツの持つ価値は高まると、そう言いたいのか。
成る程、納得させられた! 素晴らしい1年が入ってきたものだ! 向こう3年間は我が部は安泰だな!
では、先程言った通り、本日の部活はここまで! まさかの1発で納得させられてしまったので、思ったより議論が早く終わってしまったな。下校までまだ少しだけ時間は有るな・・・。
いや、そうだ。良いことを思いついたぞ。
おいこら逃げ帰ろうとするな。別に君にとっても損をする話では無い。むしろ逆さ! だから帰るな! 聞き給え!
君、今から私を、何かしらの議論で論破してくれ給え。
もしも論破出来たら・・・ふふふ、今履いている私のパンツを進呈しようでは無いか。新入生歓迎の意を表して、今日だけの特別さ。
ははは、その通り! 君の先程述べた、この部室内にて出来る、私のパンツの価値を高める行動と言う奴だ。
どうだい? あと僅かでは有るが下校まで時間は有る。何かしらディスカッションしようじゃ無いか。
くくく、そうさ。これでも私は2年間も君より長くこの部活で議論してきたのだ。あわよくばと、今、君は期待しているのだろう? 顔に書いてあるぞ。残念だが、どのような議題を出してきても私に口で勝つ等というのはまだまだ君では不可能なのさ。
今日の部活においても、喋っていたのは殆どが私だ。口の回転速度が違うのだよ。おっと、貴重な議論時間を奪ってしまった。さあ、何でも良いぞ? チャイムが鳴るまでに私を言い負かせて見たまえよ。ふふふ、どうしたんだい黙ってしまって。
ん、何だい──────
空が茜色に染まる頃。
少しだけ哀愁の漂うメロディーが校庭に響き、部活をしていた生徒達が並んで帰り始める。
少しだけ活気づく〇〇高校の通学路。
そこには歩きながらポケットに手を突っ込み歩く男子生徒と、それを若干涙目で睨みつけ、手でスカートを抑えて歩く女子生徒が居たそうな。
男子生徒のポケットの中にはホカホカの希望が詰まってます。
本日の戦利品
白の簡素なパンツ。セール品に思えるが、その手触りからソコソコ使い込まれている事が分かる。