超常の力それが普通となった社会。
日本のどこかの学校で学芸会の幕が上がる。
ヒロアカの世界ではこんな事もあるんじゃないか?というネタSSです。
原作キャラは未登場。

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『個性』ある世界の学芸会

 人類の内に眠る超常の力が目覚めた時、それまであった社会の常識は崩れ去った。

 コミックブックの中に居たスーパーヴィランが現実世界に蠢き、それに対抗するスーパーヒーローたちが町を闊歩するようになったのである。

 フィクションが現実になった世界で、人々は崩れた常識の上に新たな常識を作ろうともがいていた。

 

 

『鶴の恩返し』

 進行する教師が演目が書かれたメクリをめくると誰もが知る物語のタイトルが書かれていた。

 ステージの幕が上がり可愛らしい小学生たちの劇が始まる。

 

 物語は、まず鶴だの狐だのといった動物役の子供たちの他愛のない会話から始まった。

「ケーンケーンいい天気ケーン」

「木の実が生ってるコン。僕たち皆で平等に分けるコン」

「ヒャッハー! この森の動物も食料も全て俺たちのもんだぁーっ!」

 そこへ突然現れたのは発泡スチロールの釘バットや金棒を担ぎ、モヒカンのカツラに肩パッドといういかにも悪役という格好をした子供たちだ。

「オラァ! お前らは俺たちのコートとかマフラーとか食糧になるんだオラァ!」

 悪役たち乱暴な言葉遣いで手にした棒を振り回し、動物役の子供たちに攻撃を加え始めた。中には炎や放電といった『個性』を使って威嚇する子供もいる。

「ガハハハハハ! 今は強い『個性』を持つ人間が微笑む時代なのだ!」

「待てい!」

「誰だ!?」

「私たちが来たぁーっ!」

 そう言って勢いよく現れたのは派手なコスチュームに身を包んだヒーロー役の子供たちだ。

 動物たちを庇うように一列に並び、ヴィラン役に向かって口上を述べる。

「愛と基本的人権そして社会正義を守る、トリプルスターズ参上!」

「一つ、公共の場で許可なく『個性』を使用するのは違法!」

「一つ、無資格で鳥獣の駆除及び狩猟に『個性』を使用するのも違法!」

「一つ、アキラくん、シャツが出てるよ」

「あっ」

 慌ててモヒカンがズボンにシャツを入れるとクスクスと観客席から笑いが漏れる。

「衣服の乱れは心の乱れ!」

「う、うるせェーッ! てめえらやっちまえーッ!」

 ヴィランのリーダー役の掛け声とともに、ヒーローとヴィランの戦いが始まった。最初はヴィラン達が優勢に進めていたが、最後はお約束のようにヒーローたちが力を合せヴィランたちを撃退する。

 戦いが終わると動物たちを代表して鶴の衣装……というか鶴そのものの姿の子供が前に進み出て、ヒーロー役の子供たちにお礼を述べる。

「ケーンケーンありがとうございますケーン。このご恩は忘れませんケーン」

 

 

 そこで一時中断し、場面は三人組ヒーロー、トリプルスターズの自宅へと移り変わる。

 どうやら季節も変わっているようで、それを示すようにステージの上からはハラハラと白い粉雪が舞っていた。

 よく見ると天井に空気中の温度を下げる『個性』を持つ子供がいて、本当に雪を降らせているようだ。

 

 ヒーローたちが家で寛いでいるとピンポンというインターホンが鳴った。

 トリプルスターズは「これ時代設定いつだよ」「昭和か明治ころだよ」などとメタな会話をしつつ玄関へ向かう。

 するとそこには可愛いらしい少女が立っていた。

「どうしたのですが?」

 ヒーローの一人が尋ねると少女は涙ながらに語る。

「両親と死に別れ、これから会った事もない親戚の所へ行くのですが、大雪で今日はこれ以上進めません。どうか一晩泊めてくれませんか?」

「お安い御用」

 ヒーローが快く請け負うと、場面はその晩に飛んだ。

 行燈に照らされた障子戸に鶴のシルエットが映り、ギィギィと機織りの軋む音と「ウフフフフ」という不気味な笑い声が響く。

 

 朝になり少女は泊めてくれた礼だと言って、ヒーローの一人、イエロースターに夜なべして織ったという新コスチュームを渡した。

「なんと着心地のいいコスチューム!」といってイエロースターは『個性』で全身をピカピカと発光させる。

「しかし、今日も雪が止みません。どうかもう一晩泊めてくれませんか」

「勿論いいですよ」

「ありがとうございます……それともう一つお願いがあります。今晩もコスチュームを織りますが、どうか中を覗かないで下さい。めっちゃ集中してるから。マジで」

「それはいいけど夜更かしは良くないから無理しないでね」

 

 再び場面は変わってその晩。

 また障子戸に鶴のシルエットが映り、機織りの音に混じってハァハァという色っぽい息遣いが聞こえた。

「ブルースター様……ウフフフフフフ」

 

 朝、少女はブルースターの為に織ったというコスチュームを渡た。

 ブルースターは感激し、フワフワとスタージの上を飛んでみせる。

「しかし、今日も雪が止みません。どうかもう一晩泊めてくれませんか?」

「……車で送っていこうか?」

「そう言わずに泊めてよ!」

 観客席からまたクスクスという笑いが起きた。

 

 三度場面は変わりその晩。

「レッドスター様がこれを身につける……ウフフフフフ」

 またまた障子戸に鶴のシルエットが映り、少女の笑い声が聞こえてきた。

 前夜までと違うのは、今回はシルエットの映る障子戸の前にヒーローたちがいることである。

「気になるね」

「うん……なんだこの声……ちょっとだけ見てみる?」

「駄目だ、ヒーローとしてプライバシーは断固守らねばならない! あと僕だけまだコス貰ってないし!」

「いや俺たちは貰ったから」

「なぁ」

「自分が良ければいいのか!? そんなのはヒーローじゃない!」

 トリプルスターズが言い争いをしていると、障子戸の向こうで「あっ痛っ」という声がした。

 ピタリとヒーローたちは言い争いを止めて耳をすませる。

「いたたたた……ササクレが刺さって指切っちゃったよ。絆創膏どこかな絆創膏……」

 ガラリと障子戸が開き、その中から鶴が現れた。

「あっ」

「あっ」

 鶴とヒーローたちはしばらく見つめ合い、やがて鶴が片膝をつくと語り始めた。

「ケンケン。この姿を見られては全てをお話しするしかないケーン。私はあの時助けられた鶴ケーン。私の『個性』は羽毛を織って生地を作ることケーン。それで皆さんのコスチュームを作っていたケーン」

「なるほど……」

 既に新コスチュームを身に着けていたイエロースターとブルースターは、鶴がヤンデレっぽくてちょっと引きました。

「しかし、この姿を見られてはもうここには居られないケーン。さようならケーン」

「いやいや、なんで?」

「こんな姿の私じゃ一緒に居られないからケーン」

「そんなことはないよ!」

「いろんな個性がある!」

「そしていろんな姿がある!」

「姿かたちで差別されることがあってはいけない!」

 三人のヒーローたちが口を揃えて言うと、それを合図にしてステージに動物役やヴィラン役の子供たちがわっと集まり、合唱曲『みんな違ってみんな良い』を熱唱する。

 

 子供たちが歌い終えると、ナレーターが締めの言葉で物語は幕を閉じた。

『こうして鶴はヒーローの仕立て屋として迎え入れられ、四人はいつまでも仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし』


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