個性:心を読む程度の能力   作:波土よるり

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[注意]
今回は緑谷君の三人称一元視点です。

[前回のあらすじ]
黒霧に雪崩エリアに飛ばされたけど、さとりん華麗にヴィランを撃退。さとりん大勝利。


No.12 私の友人

「カリキュラムが割れてた…… 轟君が言ったように、虎視眈々(こしたんたん)と準備を進めていたんだ…」

 

 緑谷、峰田、蛙吹は黒い霧の個性でUSJの『水難』エリアまで飛ばされた。

 

 蛙吹の個性が水に強い個性であったため、ヴィランの攻撃から何とか逃れることが出来た。今は水難エリアに浮かぶ船に乗って三人で会議中。

 

「でもよでもよ!

 オールマイトを殺すなんて出来っこねえさ! あんな奴らケチョンケチョンだぜ!」

 

「……倒せる算段が整ってるから、連中こんな無茶してるんじゃないの?」

 

 オールマイトの強さを信じて疑わない峰田は、楽観的に話すが、蛙吹はそれを冷静に一蹴(いっしゅう)する。

 

水難エリア(ここ)にワープさせられる前に、古明地ちゃんが霧の男と話してたでしょう? 詳しくは言ってなかったけど、随分と余裕そうな表情してたわ

 オールマイトが助けに来るまで、そんな連中相手に私たちが無事で済むのかしら?」

 

 緑谷は考える。

 

 蛙吹の言う通り、ヴィランたちにはオールマイトを倒す算段があるのだろう。

 さとりが黒い霧の男と話していた内容から推察してもたぶん、その通りだ。それ以外に考えられない。

 

 なぜ、オールマイトを殺したいのか。

 

 平和の象徴だからか?

 ヴィランへの抑止力となった男だからか?

 

 いや、理由なんて――

 

 考えを巡らせるが、今は理由なんて考える必要はない。

 

「奴らにオールマイトを倒す(すべ)があるんなら… 僕らが今すべきことは戦って阻止すること!!」

 

 

***

 

 

 緑谷は蛙吹、峰田と共にヴィランを退け、水難エリアから何とか脱出することが出来た。

 

 緑谷の個性で水面の一点に強い衝撃を与え、広がった水が収束することを利用してヴィランを一か所に集める。そして、峰田の個性である『もぎもぎ』で拘束。最後に蛙吹の力を借り脱出。

 

 かなり賭けの要素が大きかったが、三人とも無事だ。

 

 

 とりあえずは助けを呼ぶのが最優先。

 このまま水辺に沿って、広場を警戒しつつ出口に向かうのが最善だろう。

 

 今、広場では相澤が敵を引き付けているおかげでそれが出来る。

 

 本来、相澤が得意とする戦法は、敵の個性を封じての短期決戦。多数を相手にするのは苦手なはずだ。

 やはり自分たちを守るために相当な無理をしているに違いない。

 

 隙をみて、少しでも相澤の負担を減らせないだろうか。

 

 初戦闘にして初勝利。

 水難エリアで証明された通り、自分たちの力は十分にヴィランに通じる。

 

 

 ――そう(おご)ったのが間違いだった。

 

 自分は何も見えていなかった。

 

 これがプロの世界。

 

対、平和の象徴。改人“脳無(のうむ)

 

 手を体中につけた男が薄気味悪く笑い、そう告げる。

 

 脳無というのはおそらく、脳ミソむき出しのあのヴィランの事だろう。

 その脳無が相澤を力づくで押さえつけ、地面に何度も打ち付ける。

 

 腕を折り、頭を地面に打ち付ける。

 何度も、何度も。

 

 相澤は血を流し、誰が見ても重症だと分かる。

 

「緑谷ダメだ…… さすがに考え改めただろ……?」

 

 緑谷と隣でその一部始終を見ていた峰田が声を震わせ、涙ながらに訴えかける。

 

 声が出なかった。

 

 怖い。

 その感情で心が埋め尽くされていく。

 

死柄木(しがらき) (とむら)

 

黒霧(くろぎり)、13号はやったのか?」

 

 突如として黒い霧が現れたと思ったら、自分たちを水難エリアにワープさせたあのヴィランが現れた。

 

「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして…… 一名逃げられました」

 

「……は?

 はぁーー… お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…… 今回はもうゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

 今彼はなんと言った?

 帰る?

 

 これは不幸中の幸いだ。

 

 ヴィランたちが帰ったら、すぐに相澤を保健室に運ばなければ。

 リカバリーガールならば相澤の重症も何とかなるだろう。

 

 

 ……本当に帰るのか?

 

 これだけの事をしたんだ。目的を遂げずにあっさりと引き返したら、雄英高校の危機意識が上がるだけだ。このヴィランたちは何を考えているのだ?

 

「けども、その前に。

 平和の象徴としての矜持(きょうじ)を少しでもへし折ってやろう!」

 

 手が身体中についたヴィランの手が蛙吹の顔に伸びる。

 

 この男の個性は、おそらく触れたものを崩壊させるもの。相澤との戦闘で相澤の肘に触れ、皮膚をボロボロにしていた。

 

 そんな恐ろしい個性が蛙吹に迫る。

 

 

 

「……本当、かっこいいぜ、イレイザーヘッド」

 

 

 男の手が蛙吹に触れるが何も起きない。

 

 見た者の個性を消すことのできるイレイザーヘッド―― 相澤が満身創痍(まんしんそうい)でありながら個性を使い、蛙吹を守ったのだ。

 

 しかし相澤は直ぐさま脳無によって地面に打ち付けられ、気を失う。

 

(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ! さっきのヴィランたちとは明らかに違う! 蛙吹さんを助けて逃げなきゃ……!)

 

「手っ… 放せぇ!!」

 

 緑谷は男めがけて個性を使った。

 

 ワン・フォー・オール、自分に個性を授けてくれたオールマイトの個性。

 使うたびにいつも怪我をしてしまうくらい、まだあまりコントロール出来ていない。人に向けて使うなど、もっての(ほか)だ。

 

 しかし、今はなりふり構っていられない。蛙吹を助けるには使うしかない。

 

SMASH(スマッシュ)!!!

 

 オールマイトのそれと比べかなり威力が劣るが、その破壊力は(あなど)れない。

 

 いつもは衝撃で自分の腕が折れてしまうか、ひびが入ってしまうかだが、この土壇場で上手く調整できたらしい。若干のしびれはあるものの、右腕は健在だ。

 

(やった! とにかく急いで蛙吹さんを…… え……?)

 

 緑谷は言葉を失った。

 

 相澤を圧倒的な力でねじ伏せたヴィラン―― 連中が“脳無”と呼ぶヴィランが手だらけの男の盾になったのだ。

 

 脳無が一瞬のうちに男と緑谷の間に入り、盾になったのは百歩譲って別に良い。

 しかし、脳無は緑谷の一撃を受けて吹き飛ばされるどころか、痛がるそぶりも見せない。一ミリたりとも効いていないのだ。

 

「良い動きするなあ… まあいいや君、そこで見ててよ。こいつが痛みに泣き叫びながら、ゆっくりと崩壊していく様をオールマイトに伝えてもらおう」

 

 死柄木の手が再び蛙吹に伸びる。

 もう一度、ワン・フォー・オールを―― だめだ。脳無に阻まれて意味がない。

 

 どうする?

 どうすればいい?

 

 考えを巡らせる間にも刻一刻と蛙吹に手が伸びる。

 緑谷にはその様子がコマ送りの映像のようにハッキリと見えた。

 

 あと数センチ。

 

 何か打開策は?!

 何か切り抜ける方法は?!

 

 

 あと数ミリ。

 

 もう猶予がない。

 

 

 

 そして――

 

 

 蛙吹の顔に死柄木の手が触れた――

 

 

 

 

 しかし、どういうことだろうか。

 数秒、数十秒経っても何も起こらないではないか。

 

「あぁ? 何で個性が発動しない? イレイザーヘッドはあそこでくたばってるし……」

 

 どうやら死柄木 本人も理解できていないらしい。

 

 しかし、自分たちが危険な状態にある状況は依然として変わらない。

 

 

 緑谷が何とかこの状況を覆せる打開策を思案していると、急に視界が動いた(・・・・・・)

 

 気が付けば脳無や死柄木たちがいる場所から離れ、広場の端の方にいた。

 そしてふと、自分の周りを見れば蛙吹、峰田、そして傷だらけの相澤がいる。

 

 何が起きたのか分からなかったが、おそらくはその答えであろう人物が目の前にいた。

 

「え…… いつの間に……?」

 

 その後ろ姿には覚えがあった。

 

 やや癖のある紫ともピンク色ともとれる髪色のボブに、あまり高くない身長。

 フリルの多くついたゆったりとした水色の服装で、下は膝くらいまでのピンクのセミロングスカート。

 

「私の友人に傷をつけようだなんて、許しませんよ?」

 

 相手の心を読み、相手の心の中にある個性をコピーすることが出来る。

 個性の名前は『心を読む程度の能力』。

 

 ――緑谷のクラスメイト、古明地さとりだ。

 

 

 




え、前回の投稿から10日以上経ったってマジ…?
時が経つの早スギィ!!

話が進んでない…?
大丈夫だ、問題ない。
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