今回は緑谷君の三人称一元視点です。
[前回のあらすじ]
黒霧に雪崩エリアに飛ばされたけど、さとりん華麗にヴィランを撃退。さとりん大勝利。
「カリキュラムが割れてた…… 轟君が言ったように、
緑谷、峰田、蛙吹は黒い霧の個性でUSJの『水難』エリアまで飛ばされた。
蛙吹の個性が水に強い個性であったため、ヴィランの攻撃から何とか逃れることが出来た。今は水難エリアに浮かぶ船に乗って三人で会議中。
「でもよでもよ!
オールマイトを殺すなんて出来っこねえさ! あんな奴らケチョンケチョンだぜ!」
「……倒せる算段が整ってるから、連中こんな無茶してるんじゃないの?」
オールマイトの強さを信じて疑わない峰田は、楽観的に話すが、蛙吹はそれを冷静に
「
オールマイトが助けに来るまで、そんな連中相手に私たちが無事で済むのかしら?」
緑谷は考える。
蛙吹の言う通り、ヴィランたちにはオールマイトを倒す算段があるのだろう。
さとりが黒い霧の男と話していた内容から推察してもたぶん、その通りだ。それ以外に考えられない。
なぜ、オールマイトを殺したいのか。
平和の象徴だからか?
ヴィランへの抑止力となった男だからか?
いや、理由なんて――
考えを巡らせるが、今は理由なんて考える必要はない。
「奴らにオールマイトを倒す
***
緑谷は蛙吹、峰田と共にヴィランを退け、水難エリアから何とか脱出することが出来た。
緑谷の個性で水面の一点に強い衝撃を与え、広がった水が収束することを利用してヴィランを一か所に集める。そして、峰田の個性である『もぎもぎ』で拘束。最後に蛙吹の力を借り脱出。
かなり賭けの要素が大きかったが、三人とも無事だ。
とりあえずは助けを呼ぶのが最優先。
このまま水辺に沿って、広場を警戒しつつ出口に向かうのが最善だろう。
今、広場では相澤が敵を引き付けているおかげでそれが出来る。
本来、相澤が得意とする戦法は、敵の個性を封じての短期決戦。多数を相手にするのは苦手なはずだ。
やはり自分たちを守るために相当な無理をしているに違いない。
隙をみて、少しでも相澤の負担を減らせないだろうか。
初戦闘にして初勝利。
水難エリアで証明された通り、自分たちの力は十分にヴィランに通じる。
――そう
自分は何も見えていなかった。
これがプロの世界。
「対、平和の象徴。改人“
手を体中につけた男が薄気味悪く笑い、そう告げる。
脳無というのはおそらく、脳ミソむき出しのあのヴィランの事だろう。
その脳無が相澤を力づくで押さえつけ、地面に何度も打ち付ける。
腕を折り、頭を地面に打ち付ける。
何度も、何度も。
相澤は血を流し、誰が見ても重症だと分かる。
「緑谷ダメだ…… さすがに考え改めただろ……?」
緑谷と隣でその一部始終を見ていた峰田が声を震わせ、涙ながらに訴えかける。
声が出なかった。
怖い。
その感情で心が埋め尽くされていく。
「
「
突如として黒い霧が現れたと思ったら、自分たちを水難エリアにワープさせたあのヴィランが現れた。
「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして…… 一名逃げられました」
「……は?
はぁーー… お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…… 今回はもうゲームオーバーだ。帰ろっか」
今彼はなんと言った?
帰る?
これは不幸中の幸いだ。
ヴィランたちが帰ったら、すぐに相澤を保健室に運ばなければ。
リカバリーガールならば相澤の重症も何とかなるだろう。
……本当に帰るのか?
これだけの事をしたんだ。目的を遂げずにあっさりと引き返したら、雄英高校の危機意識が上がるだけだ。このヴィランたちは何を考えているのだ?
「けども、その前に。
平和の象徴としての
手が身体中についたヴィランの手が蛙吹の顔に伸びる。
この男の個性は、おそらく触れたものを崩壊させるもの。相澤との戦闘で相澤の肘に触れ、皮膚をボロボロにしていた。
そんな恐ろしい個性が蛙吹に迫る。
「……本当、かっこいいぜ、イレイザーヘッド」
男の手が蛙吹に触れるが何も起きない。
見た者の個性を消すことのできるイレイザーヘッド―― 相澤が
しかし相澤は直ぐさま脳無によって地面に打ち付けられ、気を失う。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ! さっきのヴィランたちとは明らかに違う! 蛙吹さんを助けて逃げなきゃ……!)
「手っ… 放せぇ!!」
緑谷は男めがけて個性を使った。
ワン・フォー・オール、自分に個性を授けてくれたオールマイトの個性。
使うたびにいつも怪我をしてしまうくらい、まだあまりコントロール出来ていない。人に向けて使うなど、もっての
しかし、今はなりふり構っていられない。蛙吹を助けるには使うしかない。
「
オールマイトのそれと比べかなり威力が劣るが、その破壊力は
いつもは衝撃で自分の腕が折れてしまうか、ひびが入ってしまうかだが、この土壇場で上手く調整できたらしい。若干のしびれはあるものの、右腕は健在だ。
(やった! とにかく急いで蛙吹さんを…… え……?)
緑谷は言葉を失った。
相澤を圧倒的な力でねじ伏せたヴィラン―― 連中が“脳無”と呼ぶヴィランが手だらけの男の盾になったのだ。
脳無が一瞬のうちに男と緑谷の間に入り、盾になったのは百歩譲って別に良い。
しかし、脳無は緑谷の一撃を受けて吹き飛ばされるどころか、痛がるそぶりも見せない。一ミリたりとも効いていないのだ。
「良い動きするなあ… まあいいや君、そこで見ててよ。こいつが痛みに泣き叫びながら、ゆっくりと崩壊していく様をオールマイトに伝えてもらおう」
死柄木の手が再び蛙吹に伸びる。
もう一度、ワン・フォー・オールを―― だめだ。脳無に阻まれて意味がない。
どうする?
どうすればいい?
考えを巡らせる間にも刻一刻と蛙吹に手が伸びる。
緑谷にはその様子がコマ送りの映像のようにハッキリと見えた。
あと数センチ。
何か打開策は?!
何か切り抜ける方法は?!
あと数ミリ。
もう猶予がない。
そして――
蛙吹の顔に死柄木の手が触れた――
しかし、どういうことだろうか。
数秒、数十秒経っても何も起こらないではないか。
「あぁ? 何で個性が発動しない? イレイザーヘッドはあそこでくたばってるし……」
どうやら死柄木 本人も理解できていないらしい。
しかし、自分たちが危険な状態にある状況は依然として変わらない。
緑谷が何とかこの状況を覆せる打開策を思案していると、急に
気が付けば脳無や死柄木たちがいる場所から離れ、広場の端の方にいた。
そしてふと、自分の周りを見れば蛙吹、峰田、そして傷だらけの相澤がいる。
何が起きたのか分からなかったが、おそらくはその答えであろう人物が目の前にいた。
「え…… いつの間に……?」
その後ろ姿には覚えがあった。
やや癖のある紫ともピンク色ともとれる髪色のボブに、あまり高くない身長。
フリルの多くついたゆったりとした水色の服装で、下は膝くらいまでのピンクのセミロングスカート。
「私の友人に傷をつけようだなんて、許しませんよ?」
相手の心を読み、相手の心の中にある個性をコピーすることが出来る。
個性の名前は『心を読む程度の能力』。
――緑谷のクラスメイト、古明地さとりだ。
え、前回の投稿から10日以上経ったってマジ…?
時が経つの早スギィ!!
話が進んでない…?
大丈夫だ、問題ない。