個性:心を読む程度の能力   作:波土よるり

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[前回のあらすじ]
個性把握テストが無事に終わって、除籍者はなし。次は戦闘訓練。コスチューム楽しみ。

2017/04/15 0時頃 日間ランキングに載ってました…! 皆々様のおかげです…!


No.4 屋内対人戦闘訓練

 雄英高校には被服控除という制度が存在する。生徒の学習支援のためのシステムで、『個性届』や『身体情報』を提出すると、学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれる素敵なシステム。『要望』を送れば、自分の望むコスチュームを可能な限り叶えてくれる。

 

 そして、私が要望したコスチュームはもちろん『古明地さとり』の衣装そのもの。上はフリルの多くついたゆったりとした水色の服で、下は膝までのピンクのセミロングスカート。機能性を考えたら動きにくいことこの上ないコスチュームだが、ここはやはり譲れなかった。

 ただ、衣装の素材は耐久性に優れたものにしてもらった。戦闘で破れたりしたら格好がつかないからね。

 

「さあ、始めようか。有精卵共!!! 戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

 コスチュームに着替えて、入試の時に使用したグラウンド・βに集合する。みんな個性的な良いコスチュームだ。ただちょっと言わせてもらおう。そこの美人な人! なんだそのコスチュームは?! アレか、自分のナイスバディをそんなに強調したいのか?! 胸の小さな私への当てつけか?!

 名前なんだったっけ、今朝の自己紹介の時間で言ってたんだけど…… ああ、えっと、八百万(やおよろず)さんだっけ? 胸元からおへそまで肌を露出させたレオタードとか、全くけしからんコスチュームですよ。

 

「あら、古明地ちゃん、動きにくそうだけど可愛いコスチュームね」

「ありがとうございます、蛙吹さん。見た目を重視で要望しましたので。弱点は運用でカバーしていくつもりです。蛙吹さんもなかなか個性的なコスチュームですね。個性の『蛙』とマッチしてとてもよく似合っています。」

 

 心の中で八百万さんのコスチュームに私怨(しえん)たっぷりで文句をつけていると、蛙吹さんが話しかけてきた。蛙吹さんのコスチュームは緑色を基調としたボディスーツ。それに大きめのグローブに、特徴的なゴーグル。蛙を意識して要望を送ったのだろう。彼女とは割とよく話すので、個性の事も詳しく聞いているが、蛙っぽいことが大体できるらしい。

 そういえば、蛙吹さんも結構胸大きいのね。……あれ? A組の中で貧乳キャラって私だけ? あ、耳郎(じろう)さんも貧乳枠だ、よかった1人じゃなくて。

 

「ありがとう、私の事は梅雨ちゃんと呼んで」

「了解です。戦闘訓練楽しみですね、蛙吹さん」

 

 戦闘訓練は何をやるのだろうか。また試験の時のように機械相手の市街地戦闘だろうか。んー、でもそんなにロボットを用意するお金あるのかな。

 

「先生! ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

 全身メカメカしいコスチュームの子、というか言動からして飯田君だろうなあれは。飯田君が元気よく手を上げて質問する。なんていうか一周回って一挙手一投足全てが面白い子だ。

 

「いいや、もう二歩先に踏み込む! 屋内での対人戦闘訓練さ!! 君らにはこれから『ヴィラン組』と『ヒーロー組』に分かれて2対2の屋内戦闘訓練を行ってもらう!!」

 

 ん? 2対2? 今年はA組のクラス人数は確か私を含めて21人。例年は20名らしいけど、先生もしかして知らない? 質問しておくか。

 

「オールマイト先生、A組は21名で人数が奇数です。2対2はできないのではないですか?」

「その点は大丈夫だ、古明地少女! 一組だけ3名でチームを組んでもらう。もちろん人数が相手チームよりも多くなるからハンデはつけるぞ!」

 

 ふむふむ、忘れてるわけじゃないのね。それなら良かった。二人組を作るという行為にあまりいい思い出はないからなぁ。特に中学二年の時の体育の教師だよ。何が“はーい、二人組作ってー”だ、あぶれた者がみんなに浴びせられる視線や悲しみ知ってるんですかね。

 おっと、思考が脱線してしまった。

 

「よし、じゃあ詳しい説明をするぞ! 状況設定は『ヴィラン』がアジトに『核兵器』を隠していて『ヒーロー』はそれを処理しようとしている! 

 『ヒーロー』は制限時間内に『ヴィラン』を捕まえるか『核兵器』を回収すること。『ヴィラン』は制限時間まで『核兵器』を守るか『ヒーロー』を捕まえること。配布する確保テープを相手に巻き付けた時点で捕らえた証明とする! チーム及び対戦相手は『くじ』だ!!」

 

「適当なのですか!?」

 

 ナイスツッコミ、飯田君。くじ引きでチームの決定か…… 緑谷君あたりとチーム組めたらだったら、個性強いし楽できそう。

 

A:緑谷・麗日

B:障子(しょうじ)・古明地

C:峰田(みねた)・八百万

D:爆豪・飯田

E:芦戸(あしど)青山(あおやま)

F:口田(こうだ)・切島

G:上鳴・耳郎

H:常闇(とこやみ)・蛙吹

I:尾白(おじろ)瀬呂(せろ)

J:葉隠(はがくれ)・砂藤・(とどろき)

 

 くじの結果、私とチームを組むのは障子君、6本の腕が特徴の彼だ。ずっと腕が複数のままだし、常時発現の『異形型』の個性なのだろう。握力測定の時に相当な記録を出していた覚えがあるからかなりパワーがあると思う。対戦相手にもよるだろうけど、有用そうな個性だ。

 

「続いて、最初の対戦相手は…… こいつらだ!! Bチームが『ヴィラン』!! Jチームが『ヒーロー』だ!!」

 

 『VILLAIN』、『HERO』のボックスから出されたボールにかかれていたのは『B』と『J』の文字。つまりは、『ヴィラン』が私と障子君、そして『ヒーロー』が葉隠さん、砂藤君、轟君だ。

 

 うわぁ、マジですか…… 相手は三人チーム。ハンデを設けてくれるって話だけど、なかなか大変そうな戦いになりそうだなぁ。加えて相手チームに轟君がいるのが痛い。聞いた話だからアレだけど、彼はNo.2ヒーローのエンデヴァーの息子で、かなり強力な個性持ちらしい。はぁ…… これはハンデに期待しよう。

 

「オールマイト先生、私たちは3人チームと戦うわけですが、先ほど言っていた3人チームに課されるハンデはどういったものなのですか?」

 

「いい質問だ、古明地少女! 本来ならば、互いに連絡が取れる小型インカムを渡すのだが、3人チームである『ヒーロー』には連絡手段を渡さない。

 もっとも、私が指示をしたり、モニタールームで観戦する皆にも音声が伝わったりするように、味方同士連絡が取れないよう細工をしたインカムを渡す。

 さらに、ヒーローの開始地点は3人それぞれがランダムの場所だ。私が後で開始場所にまで案内するぞ」

 

 ふむ、ヒーロー側の開始地点は3人違うし、互いに連絡が取れないデメリットはかなりでかいだろう。それに対してこちらは連絡も取ることが出来る、と。大丈夫かなぁ……

 正直、砂藤君はあまり問題ではないが、問題は葉隠さんと轟君だ。葉隠さんは単純に見えなくて補足できないし、轟君は実力が桁違い。うまく立ち回らなくては。

 

「ヴィランチームは先に建物に入ってセッティングを! 10分後にスタートだ! 他の皆はモニターで観察するぞ!

 障子少年、古明地少女はヴィランの思考をよく学ぶように! 度が過ぎたら中断するが、怪我を恐れず思いっきりな!」

 

「私たちはヴィランになりきれば良いという事ですね」

「そういうことだ、古明地少女!」

 

 

 

 ところ変わって、建物の中。現在障子君と一緒に5階で作戦会議中だ。

 

「障子君、お互いの個性を詳しく把握して作戦を立てておきましょう」

「そうだな」

 

「私の個性は『心を読む程度の能力』です。文字通り、相手の心を読むことが出来るので、相手の思考を読んで戦闘できます。範囲攻撃でなければあまり負けることはないと思います。

 あと能力の応用で、相手のトラウマやとても印象に残っている個性を読んで、その個性を再現することが出来るので、相手の弱点を効果的に突くことが出来ます。ただし、どんな能力を再現できるのかは読むまで分からないので、博打(ばくち)要素もあります」

 

「俺の個性は見てのとおり、この『複製腕』だ。今喋っているように、左右2本ずつある触手から口や耳などの器官を複製できる。複製した器官は能力が高くて、例えば耳を複製して敵を探知したりもできる」

 

 ほう、なかなか面白い個性だ。探知できるのはかなり大きい。相手の位置を把握して効果的に攻略できそうだ。あとは葉隠さんの補足にも有効そう。

 

「その複製した耳を使って、戦闘しながらでも敵の位置を捕捉できますか?」

「無理ではないが、集中力が削がれてかなり精度が落ちる。あと、『音』を利用しての索敵だから近くで戦闘されるのも都合が悪い」

 

「では、葉隠さんは透明なだけで戦闘能力はあまり無いと思いますが、葉隠さんが来た場合に、複製した耳で彼女の位置を把握して『核兵器』を守れそうですか?」

「そうだな…… おそらく大丈夫だろう。大まかな位置しか探れないだろうが、この部屋に葉隠が来ても『核兵器』に触れられるのを防ぐことくらいはできるだろう。戦闘能力があまり無いなら俺が倒される可能性も低いだろうな」

 

 よし、取りあえず知らないうちに葉隠さんに『核兵器』を回収されてしまう可能性は低くなった。ある意味一番対処が難しい葉隠さん問題はひとまずオッケーだ。たぶん、透明人間の思考もサードアイで読めるだろうし、読んだ思考からおおよその位置は分かるかもしれないが、私が確実に『核兵器』を守れるかは微妙だ。透明人間に使ったことはないし、不確定要素はなるべく避けたい。

 

「なるほど、取りあえず葉隠さんの対処は障子君に頼ることになると思います。ところで、私の個性はトラウマに限らず、強く印象に残っている個性ならば再現できますが、障子君は何か強く心に残っている個性はありませんか?」

「印象に残っている個性か…… 一昨年くらい前だったか、ヴィランが使っている個性を見たときは、俺では対処が難しいと思ったな」

 

「では、その個性を強く思い浮かべてください。読みますので」

「ああ」

 

 サードアイを障子君に向け、読み始める。しばらくすると朧気(おぼろげ)な情景が鮮明になって伝わってくる。ここは商店街だろうか、ヒーローとヴィランが戦っている。

 ……なるほど、この個性は凶悪だ。手のひらや足の裏から刃を出せる個性らしい。対峙しているヒーローもかなり苦戦している。障子君は下校途中でこの戦闘を目撃したらしい。

 

 よし、読み取り完了。出せる刃の長さは2,3メートルくらいかな。デメリットは……使いすぎたらフラフラになりそう? 鉄分が不足して貧血にでもなるのかな。

 

 少し試してみよう。壁に向かって手のひらを向け、個性を使う。

 

「――想起『刃の個性』」

 

 個性の発動と同時に手のひらから勢いよく日本刀の刀身の部分のような刃が飛び出す。3メートルほどある刃が少し壁にめり込むように突き刺さり、反作用で少し押し返された。

 ふむ、射出速度も十分にあるし、私自身の身体を押し返せるほどの力もある。場合によっては地面や壁に手を当てて使えば反作用で咄嗟(とっさ)の回避にも使えそうだ。

 

 ただ、出した刃は戻せないようで、個性の発動をやめると手のひらから刃が分離された。

 

「ありがとうございます、終わりました。結構使えそうな個性です」

「本当に再現できるんだな。それはそうと、スタートまで時間もあまり無いがどうする? 向こうはデメリットがあるとはいえ、3人だ」

 

「そうですね…… 勝利条件は倒すか守り切るかですが、時間いっぱいまで守るのはたぶん困難ですし、初めから倒す気概でいきましょう。相手にはエンデヴァーの息子さんもいますしね。

 何はともあれ、3人というアドバンテージを消すことが先決でしょう。幸い向こうのスタート地点はバラバラで、探知系の能力もいないと思います。

 なので、まず砂藤君からご退場いただきます。私の個性と砂藤君の個性は相性がいいです。速攻で捕縛します。そのあとは残り2人の出方にもよりますが、障子君を主体として葉隠さんの捕縛です。最後に轟君は2人で迎え撃ちましょう」

 

「分かった。俺は最初、3人の動向を把握して古明地にインカムで伝えれば良いのだな」

「そういうことです。お願いします。 あと1分ほどなので相手チームはスタート地点にいると思いますが、位置は分かりますか?」

 

「調べてみる」

 

 そう言うと障子君は触手の先端に耳を複製し、索敵を始めた。集中しているのか目を閉じている。

 

「……分かったぞ。貰った見取り図で言うと、ここの1階の北の入り口に1人、妙に落ち着いているしこれはたぶん轟だな。あと南の入り口に1人、たぶん裸足だから葉隠だな。残りは2階の、この小部屋にいる。消去法で砂藤だ」

 

「かなり正確にわかるんですね、正直驚きました」

 

 貰った見取り図を指で指しながら詳細に教えてくれた。障子君マジ有能。一緒に組めてよかったよ。それにおあつらえ向きに砂藤君がここから一番近い。3人が合流したら困るし、その前に速攻で叩こう。

 

 さて、時間的にもそろそろだ。全力でヒーローを倒しに行こう。

 

「全力を出し切りましょう、障子君」

「ああ」

 

 

 

《あー、あー、聞こえるかな? さあ、少年少女! いよいよだぞ、屋内対人戦闘訓練、スタートだ!!》

 




Q.なんで無線や開始地点のデメリット課したの?
A.単純にハンデという側面もありますが、轟君にいきなり建物を凍結させないためです。味方がどこにいるのか分からない状態で、味方まで凍らせるのは減点の対象になると思って使わないです。多少強引な理由ですが、主人公に活躍の場を与えたかったので… 

2017/04/13 脱字の修正。
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