個性:心を読む程度の能力   作:波土よるり

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|壁|д・) ソォーッ…

久々の投稿です。
ごめんなさい、最近何かと忙しくて;; 

許してください何でもしますから!(何でもするとは言ってない)

[前回のあらすじ]
砂藤君をフルボッコ。勝ったッ!第3部完!と思った矢先、障子君からの無線で、轟君がこちらに向かってきているとの情報が・・・


No.6 屋内対人戦闘訓練 vs.轟

 キィーと甲高い音を立てて開く扉の方を向くと、そこには白のカッターシャツに白のズボンのとてもシンプルな戦闘服を着たヒーローがいた。

 

 

 …! マズッ!!!

 

 咄嗟に想起を使い、「刃の個性」を足の裏から発動、反作用を用いて部屋の床から離れる

 

 轟君は部屋に入ってくるや否や、直ぐに個性を使い、私の方へ向けて床を氷漬けにしてきた。サードアイを轟君に向けていたので攻撃が来るのが事前に分かったが、非常に危なかった。

 現に、想起して足の裏から出している刃が半分くらい氷漬けにされている。今の攻撃をよけられなかったら足を氷漬けにされてチェックメイトだっただろう。

 

 一旦、刃の個性の発動をやめ、刃を足の裏から切り離し、床に降りる。そのまま降りると氷で滑ってかわいそうなことになるので、足の裏から少しだけ刃を出して、スパイク靴のような役割をしてもらう。

 

 あーあ、靴に穴が開いてしまった。仕方がないとはいえ、残念だ。

 

「良く避けられたな」

「非常に危なかったですよ。いきなり攻撃なんてビックリするじゃないですか」

 

 轟君は少なからず驚いている様子。一応、轟君的には今の攻撃で私を行動不能にして、『核爆弾』に触れて早々に終わるつもりだったらしい。

 

 よかった、轟君は私の評価を『なかなかできる奴』に引き上げてくれたみたいで警戒して、そのまま連続で追撃をしてこなかった。もし仮に連続で攻撃してこられたら、たぶん避けきれない。危ない、危ない。

 

「古明地の個性はコピーする能力だって聞いているが、八百万(やおよろず)あたりの個性でもコピーしたのか?」

「さあ、どうでしょうか? 種明かしの前に、先ほどのお返しをしましょう。 ――想起「テリヴルスーヴニール」」

 

 砂藤君の時と同じようにテリヴルスーヴニールで光の玉を周りに展開し、強烈な光で轟君を動揺させる。

 さあ、轟君。あなたを倒せなくても一矢(いっし)報いることくらいはしますよ?

 

………………

…………

……

 

焦凍(しょうと)の…… あの子の左側が時折とても醜く思えてしまうの》

《立て。こんなもので倒れていてはオールマイトはおろか、雑魚敵にすら……》

 

 ……これは?

 

 これは、何の記憶だ? 轟君の幼いころの記憶だ。

 

 ああ、そういうことか。轟君の親、すなわちエンデヴァーは親として最低の人ようだ。

 

 どうやら、長らくNo.2ヒーローに甘んじてきたエンデヴァーは、自分の子どもにオールマイトを超えさせるため「都合の良い個性を持っていること」だけを理由に女性を選び結婚したらしい。いわゆる個性婚だ。なんともまあ、優生学的な考えだ。

 

 そして轟君はエンデヴァーが言うところの『最高傑作』として生まれ、幼い頃から虐待のようにも思える稽古をつけられていた。それを止めようとした轟君のお母さんはエンデヴァーに暴力をふるわれ、ついにお母さんは精神を病んでしまうようになる、か。

 

 これはかなりきつい記憶だな……

 

 本来ならばこの記憶を使って精神的に追い詰めるなんてことはしたくないが、今の私はヴィラン…… ヴィランならばどうするか。もちろん、使えるものは使う。幸いにもエンデヴァーの個性『ヘルフレイム』は私が想起して使ってもさほど問題がないようだ。

 

「なんだ、ただの目くらましか? 拍子抜けだな」

 

「ふふ、違いますよ。そういえば、轟君が個性を使ったせいでこの部屋は随分と気温が下がってしまいましたね。氷も邪魔ですし、少し温めましょう」

 

 本当は心に余裕なんてないが、平静を装ってエンデヴァーの個性を想起する。

 

 右手や左手など、身体に炎を(まと)う。

 テレビでエンデヴァーを見るときに「あの炎、熱くないのかな?」と常々疑問に思っていたが、実際に使ってみると全然熱くない。なんというか、熱いんだけど温かい。

 

 『ヘルフレイム』を使い、あたりの氷を一掃する。素晴らしい、なんて使い勝手のいい個性なんだ。さすがNo.2ヒーローの個性なだけある。

 

「……チッ」

 

 轟君は『ヘルフレイム』の炎を見るや否や露骨に舌打ちをする。

 

 あれ、思ったよりも精神的ダメージがない。と思って心の中を覗いてみると、どうやら轟君は自分の個性をコピーされたと思っているらしい。記憶を視た感じ、轟君は炎と氷の両方を使える個性みたいだからそう思ったのだろう。

 

 まあ、この場にいない人の能力をコピーして使っているとは思わないのは普通といえば普通だ。

 

「よりにもよって炎の方をコピーしやがったのか。胸糞悪いな……」

「ふふ、残念、不正解です。正解はあなたのお父様の『ヘルフレイム』ですよ」

 

「なっ……!」

 

 ふふふと笑いながら答えてあげると案の定、轟君は動揺している。それを契機として轟君の思い出したくもない記憶が心の表層にまで浮かび上がって来た。

 

 よし、これでいい。これだけ動揺していれば人は注意力が散漫になって、隙も多くなる。私に勝機があるとすればそこしかない。

 

「そのクソみてぇな個性を俺の前で使うんじゃねえ……!」

 

 冷静さを欠いて轟君は私に向かって、考えなしに氷の個性を使ってくる。もちろん、サードアイでその行動は予測済み。私に到達する前に『ヘルフレイム』の圧倒的火力で氷を消す。

 

 いい感じだ。このままもっと煽って隙を大きくしよう。

 

「あらあら、どうしたんですか轟君。(まが)い物の『ヘルフレイム』にすら火力で負けてしまうだなんて、そんなのでよく『クソ親父を否定する!』なんて思えますね。

 せっかく『最高傑作』を作られたのに、お父様は可愛そうですねぇ。『最高傑作』がこんなにも不甲斐ないなんて」

 

「……!」

 

「『テメェ、何で…』ですか。ふふ、もうほとんどお気づきの様ですが、その通りですよ。私はあなたの心の中を覗くことが出来ます。行動を文字通り読む(・・)こともできます。

 そこでご提案です。どうでしょう、『母さんの力だけで一番のヒーローになって、親父を完全否定する』なんて片腹痛い意地を張らずに全力を出してみては? そうすれば私もすぐに倒せるかもしれませんよ?」

 

「それ以上喋るんじゃねぇ……!」

 

 あ、ヤバッ

 

 轟君が全力に近い威力で個性を使おうとしている。

 

 今まで徐々に出力を上げようとして『ヘルフレイム』をある程度セーブして使っていたが、そんな悠長なことは言ってられない。全力の『ヘルフレイム』を使うしかない!

 

 

 轟君から、それまでとはまるで比にならないような大きな氷の波が押し寄せてくる!

 

「そ、想起「全力ヘルフレイム」!!!」

 

 大きな氷の波に、大きな炎の波をぶつける。

 瞬間的に熱せられた氷の水分が水蒸気爆発の要領で爆発、大きな衝撃波を生み出す

 

 

 だめだ……!

 

 腕を顔の前で交差させ、何とか爆風に耐えようとするが、そんな抵抗もむなしく、体重の軽い私の身体は壁にたたきつけられた。

 

 ぐっ…… いったぁ…

 

 

 何とか立ち上がりあたりを見渡してみると、部屋の窓ガラスは割れ、天井の一部もどこかに吹っ飛んでしまっている。

 これはまずい。このまま長期戦が続けば私が文字通り死んでしまう。

 

 そうだ、轟君は?!

 

「チィッ……!」

 

 轟君はあんまりダメージを受けていない様子。どうやら氷の個性を使い、自分の後ろに氷の壁を作って飛ばされるのを防いだ見たい。

 

 まじですか、あの一瞬でよくそこまで的確な判断が出来ますね……

 

 マズイ、どうする?

 

 なんだか勝ち目薄くない? このまま降参したほうがいい……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、いや。そんなことは無いみたい。

 

 勝ちだ。

 

「今度こそ仕留めてやる……!」

「ケホッ、ケホッ。 残念、ですが、その必要は無いですよ。ケホッ、私の、いえ、私たちの勝ちです」

 

「なんd―― ガハッ……!!!」

 

 

 瞬間、轟君は大きな衝撃を受けて吹き飛ばされる。

 胴に受けたその衝撃はかなり大きく、轟君はそのまま地面を転がる。

 

 部屋の入り口へ視線を向けると、複数の腕を持つ彼がいる。もちろん、彼の仕業だ。

 

「ケホッ、ナイスタイミングです、障子君。やっぱりヒーローは遅れてくるんですね」

「すまない、遅れた。それと、今の俺たちはヴィランだ。残念ながらな」

 

 肩をすくめて冗談を言う障子君。こんな時でもジョークをかます余裕があるなんてさすがだ。満身創痍(まんしんそうい)でフラフラの私とは大違い。

 

 障子君はそのまま素早く意識を失いかけている轟君のもとへ向かい、捕獲テープで拘束する。

 

《ヴィランチーム…… WIIIIIN(ウィーーーン)!!》

 

「お疲れ様です、障子君。勝ちましたね」

「ああ、なんとか勝ったな」

 

 この後は皆がいるモニタールームまで向かって講評の時間となるが、その前に轟君に対して少しフォローをしなくては。このままだと私は悪役のままである。

 

 フラフラな足取りで轟君のもとへ向かう。

 

「轟君、意識はありますか?」

「……親父の力、しかも紛い物の力に負けた。古明地の言うとおりだ。煽られて集中切れて、周りが見えずに無様に負ける。こんなんで親父を否定するとか笑っちまうよな」

 

「……轟君。私はあなたの心を強く束縛しているトラウマを勝手に覗いて、それを使って失礼なことをしました。まずはそれを謝ります」

 

 轟君は涙を見せないためか、腕で顔を隠して半ば自暴自棄のように話す。やはり、心を覗いた通り、彼のこのトラウマはかなり大きなものだ。私はそれを利用した。全力でヴィランを演じるためとは言え、謝らなくてはいけない。

 

 そして、彼にこの言葉を渡そうと思う。

 心を束縛するイバラを少しだけ(ほど)くことが出来るかもしれない言葉。

 

「轟君が戦闘中なぜ左側を使わないのか、過去にどんなことがあったのか、私は視ました。正直、轟君がお父様に対して抱いている復讐心が正しいのか間違っているのか、私には分かりません。なので、否定もしません。

 

 ――でも、轟君の個性は轟君のもの。エンデヴァーのものでも、お母様のものでもない、あなたのもの。私はそう思います」

 

「……!」

 

 個性婚に対する批判的意見に、よくオールマイトの言葉が引用される。

 

 〝個性というものは親から子へと引き継がれるが、本当に大事なのはそのつながりでなく、個性は自分の血肉、自分自身であるということを認識すること〟

 

 優生学の考え方が嫌いということもあって、私はオールマイトのこの考え方が好きだ。

 

 轟君も何か思い当たる節があるのか、大きく目を見開いている。私の言葉がどれほど轟君の心に影響を与えたのかは敢えて覗かないが、少しでも彼の中で何かが変わるきっかけになったのなら幸いだ。

 

「……出過ぎたことを言いました。さあ、講評がありますし戻りましょう。立てますか?」

「あ、ああ……」

 

 轟君は多少ふらつきながらもなんとか歩ける様子。け、結構タフだね……

 

 葉隠さんは障子君に捕獲されてすぐに建物から出ていったので、三人でモニタールームまで向かう。

 

 ちなみに私は意外と限界が早く来て、障子君におんぶして運んでもらいました。

 障子君マジイケメン。




ご都合主義?
(゚д゚)知らんな!←

2017/06/11 誤字修正(誤字報告ありがとうございます!)
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