◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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禁書目録、最終回です!


エピローグ

 真っ白な空間にやってきた珱嗄を待っていたのは、当然のように神様だった。

 珱嗄が来ることが分かっていたように彼は待っていて、その表情は珍しく真剣な様子。彼もまた、珱嗄の転生生活に付き合ってきた人物だ。珱嗄よりも長い時を生き、珱嗄と同じ時間を共に過ごしてきた。

 

 故に、彼もまた珱嗄の考えていることを理解しているのだろう。

 

 転生生活において、珱嗄は神様の想像を超えて、娯楽主義者という人外に成長した。それを傍観しているのは楽しかったし、彼自身も一つのエンターテイメントを見ているような気分でいられたので退屈しなかった。

 けれど、珱嗄自身はそうではない。

 強大な力を手に入れてしまった末に到達したのは、自分が全力で遊んでしまうと、周囲が耐えられないという現実。

 

 全力で遊ぶことができない。

 全力で戦うことができない。

 難解な場面に直面しても、特典のせいでさして問題なく突破することが出来てしまう。

 現に、リリカルなのはの世界ではその特典を駆使して死者蘇生すら成し遂げてしまったのだから、最早出来ないことなどなくなってしまっていたのだ。

 

 それはつまらない。

 安心院なじみではないが、探すまでもなく『出来ない』を失ってしまい、そもそもこの世界が全て原作のある漫画の世界だと知っている珱嗄は、退屈とストレスを感じているのだ。

 あまりにも強くなりすぎると、最終的には見ているくらいしか楽しむことが出来なくなってくる。それでは意味が無い。

 

「やぁ珱嗄、そろそろ来ると思ってたよ」

「ああ、まぁ理由は分かってるよな?」

「うん、流石のチート無双も、行き過ぎればそれも出来なくなるんだね……僕も学ばせてもらったよ」

「だから、そろそろ潮時だと思ってな」

「うん、それでいいと思うよ」

 

 珱嗄の言葉が意味するのは、この転生生活の終わり。

 神様もそれを察しており、そしてそれを受け入れている。長い転生生活の旅は、いよいよもって終結が見えてきたのだ。

 

「でも、こんな終わり方は流石に面白くない」

「そうだね、僕もそう思う」

 

 だが、珱嗄と神様は鏡写しのように笑う。

 

「あと一回――転生しようと思う」

「正真正銘ラストライフだね、君の希望は分かっているよ」

「ああ、俺が最初に望んだ特典の全てを返却するよ」

「人類の全技術、強靭な肉体、そしてその世界に合った能力をランダムに一つ、それら全てを回収する、だね」

 

 神様がそう言った瞬間、珱嗄の身体から魂だけが飛び出て、肉体が光となって神様に吸収された。全ての特典や珱嗄が培ってきた身体能力が全て消えたのだ。

 そして神様が次に出したのは、先ほどの珱嗄の肉体と同じ姿形をした肉体だった。

 

 珱嗄の魂はそこへ吸い込まれるように入っていき、そして動き出す。

 

「ん……おお、身体めっちゃ重い」

「以前の様な特殊な肉体じゃないからね、君の要望に合わせて人間と変わらない性能だから、超高速で動くとか超絶パワーとかはないよ。まぁ、すぐに慣れるようしっかり鍛えてある身体にはしてあるけど、常識の範疇に収まってるから」

「それに全技術も失ってるから変な知識もなくなってる」

「まぁ一度使ったことのある技術や知識は、記憶として残っちゃってるから消せないけど、大した問題じゃないよ」

「うん、それは大丈夫」

 

 珱嗄は身体の調子を確かめるように色々動いてみるが、やはり以前の肉体とは雲泥の差で、拳も蹴りもキレはあるが超絶パワーとは程遠い。

 

「まぁ魂の強度が尋常じゃないから、多少そこに引っ張られて肉体強度も上がるだろうけど、刃物を通さないとかそんなレベルにはいかないから安心していいよ」

「さんきゅー、神様」

「で、どうする? 禁書目録の世界はお終いにして次の世界に行くかい?」

「ああ、そうだったね」

 

 神様が指差したのは、珱嗄が開いた空間の裂け目。

 そこからは先程まで珱嗄が居たとある魔術の禁書目録の世界が広がっていた。確かに、珱嗄としてはこの世界から次の世界に行きたいところではあるが、自分のフラストレーションを発散するように無茶苦茶にしてしまった世界である以上、どうにか帳尻は合わせておきたいところである。

 

 珱嗄は少し考えた所で、神様に言う。

 

「この世界は俺が転生した地点まで巻き戻して、俺がいなかったことにしてくれ」

「いいのかい? この世界で関わった全員が君のことを忘れて原作通りに生きることになるわけだけど」

「いいよ、原作通りに生きるってことは、全員がちゃんと自分の人生を歩くってことだ。俺が居た場合の方が死ななかったり、悲劇が起こらなかったとしても、それは本来あの子達が乗り越えるべきことだったんだから、いつかどこかでしっぺ返しが来る」

「あの子達は望んでないかもしれないよ?」

「多分そうだろうね」

「はぁ、分かった……じゃあそうするよ」

 

 神様は次元の裂け目を閉じると、すいっと指を一振りした。

 おそらくは珱嗄の要望通りに世界を修正したのだろうが、神様は少しだけ含みのあるような笑みを浮かべた。

 

「どうした?」

「いいや、なんでもないよ」

「ふーん……じゃ、そろそろ最後の世界に行こうかな」

「ああ、当然行先はランダムだよ。まぁ、原作に干渉できる程度の加護的な力を付けておくから、安心して楽しんできてよ」

「加護?」

「一般人では感知出来ない領域とか、空間とかで繰り広げられている戦いとかだったら、困るでしょ? そういうのに関わらず、君は原作に干渉できる存在にしておくってことさ。チート能力とかではないから安心していいよ」

 

 神様の言葉に、珱嗄はなるほどと頷く。

 すると神様がパチンと指を鳴らし、珱嗄の目の前には白い扉が現れた。どうやら此処を通れば次の世界に行くことが出来るらしい。

 

 珱嗄は早速とばかりに扉のノブに手を掛けて次の世界へと行こうとする。

 すると、神様が不意に声を掛けた。

 

「そうそう、これが最後だからね……次の世界で死んだら君は輪廻の輪の中に取り込まれて、普通の魂と同じように輪廻転生することになる。此処に来ることはもうないから、これでお別れだね」

「……そうか、じゃあ長い間世話になったね。神様のおかげで凄く楽しい人生を送ることが出来た、ありがとな」

「こちらこそ、最後まで楽しませてもらうよ。娯楽主義者の最後の人生を」

 

 珱嗄は笑い、神様も笑った。

 そして扉は開かれ、珱嗄がその奥へと姿を消す。

 扉が閉まった後に残されたのは、神様ただ一人―――

 

 だが、

 

「さて珱嗄、今まで好き勝手やってきた君が、僕の特典も培ってきた力も手放した。君は言ったね、全てを返却する(・・・・・・・・)って」

 

 残された神様は楽しそうに笑う。

 

「実は言ってなかったけど、面倒にならないように君には色々と加護を授けていたんだよ」

 

 愉快そうに、心底楽しそうに、笑う。

 

「それに、禁書目録の世界でも一人だけ、君の記憶を消してないんだ」

 

 珱嗄が予想していなかったこと、それは珱嗄自身が言ったことだ。

 今まで好き勝手に生きてきた珱嗄の人生、そのしっぺ返しはいずれ珱嗄自身にも襲い掛かる。神様はそれを分かっていて、珱嗄に与えた全てを回収したのだ。

 そしてそれは、禁書目録の世界でも同じこと。

 

「君は色んな世界に転生してきたね、ハンターハンター、リリカルなのは、めだかボックス、問題児、禁書目録……色んな種族、色んな人間と絆を紡いできた君だからこそ、起こり得る面倒ごとを防ぐのは大変だったんだから」

 

 神様は珱嗄の出ていった扉を開くと、ふいっと指先を揺らした。

 

「可哀想だから、これくらいのサポートはしてあげよう」

 

 改めて扉を閉め、指を鳴らして扉を消す。

 

 

「さて珱嗄――君が出会ってきた子達が、君を放っておくとは思わないことだよ」

 

 

 神様は、今までで一番楽しそうにケラケラと笑った。

 

 

 




 以上で、『◇5とある魔術の禁書目録にお気楽転生者が転生』完結です!
ご愛読ありがとうございました!

 というわけで、次作が珱嗄シリーズの最後の世界となります。
 次にどこへ行くかはまだ決めていませんが、皆様からいただいた意見の中から、アニメ化しているものを中心に選びたいと思います!
 また、今までの珱嗄シリーズの集大成となる予定なので、神様と同じ目線で珱嗄さんの行く末を見守っていただければと思います! タグの生き方チートが、ようやくアップを始めてくれました!笑

 そして神様が何かしたみたいなので、それについても楽しんで頂ければと思います!
 次の世界が決まるまでは、残るリリカルなのはを完結まで持っていきたいと思いますので、どうぞ最後まで応援よろしくお願いいたします!

 それでは、本作を読んで頂きありがとうございました! 感想お待ちしております!


 ◇


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 皆様の応援もあってのことだと思います!本当にありがとうございます。

 今後の書籍情報など、Twitterの方で随時伝達させていただいていますので、よろしければ是非フォローお願いいたします!

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