Steins;Gate/輪廻転生のカオティック   作:ながとし

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結果と言う物全てには過程が存在する。

幾多の因果を重ね、第二のシュタインズ・ゲートに至るという事象にもそれはある。

人の身で神のごとき所業を行ったがために世界は歪みを生んだ。

これは重ねられた因果の果てに、無かったことにされた物語の一つに過ぎない。


注意、この話の舞台は本編終了直後です


Steins;Gate/輪廻転生のハイド

 

 引きつるような感覚が痛覚のない筈の脳を襲う。

 平衡感覚が大いに崩れるが、すぐにその症状も収まった。目に入るのは紅莉栖と橋田至、そして岡部倫太郎だ。ラボの談話室を中心にのんびりと過ごしている。

 これがいつもの通りの、俺達が望んだ日常なのだろうか。

 未来の橋田至、バレルタイターから聞いた話だと俺は消えていなくなってしまうと言っていたが、未来の俺の考えが間違っていたのか、それとも奇跡と言う物が起きたのか。

 

 しかしなぜだろう。岡部倫太郎はさっき起こった大幅な世界線移動にまったく苦しむ様子がない。

 それどころか此方を心配そうに見つめている。

 

「どうした、瀧原。眩暈でも起こしたのか?」

 

「え、あ、大丈夫です。気にしないでください」

 

 そうか、というと岡部倫太郎はソファーに戻る。

 リーディングシュタイナーの効果が俺だけにしか現れていない?

 そんなことがあり得るというのだろうか、この能力とも言い難いものは自分の力で制御できると言う物ではない。世界線が変動すれば否が応でも記憶が他世界線の自分に移る。という事は世界線は変動していない? 

 いや、そんなことはもっとあり得ない。世界線移動の酷い感覚は確かに感じたし、何よりも追い出した筈の紅莉栖と橋田至が此処に、俺にとっては瞬間移動したかの如く存在している。

 

「それで結局リフターに替わるものってなんなわけ?」

 

「話は以前にもした筈だぞ、橋田。替わるものは電子レンジ内には存在せず、正体は不明。ある時間帯に実験すれば送れたのだから一応の再現性は十分。あまり気にすることは無いだろう」

 

「そうなんだけどさ。判らないものがあると何だかモヤモヤするじゃん」

 

「橋田の意見はとてもよくわかるわ。私も早く解明して論文として公表したいもの」

 

「余計な真似はするべきではないぞ、紅莉栖。SERNに目を付けられでもしたらお前の両親が危険な目に合う可能性がある」

 

 俺からすると、過去にもうその話は終わったはずだ。やはりおかしい。岡部倫太郎が紅莉栖の事を助手だとかクリスティーナだとか呼ばないのもそうだし、橋田至の呼び方も変だ。いつもはヨレヨレの白衣とズボンそれにスリッパという何とも言えないファッションであったというのに、今はセンスの良さが感じられる少し大人な感じのコーディネイトで、俺が知っている岡部倫太郎とは一瞬、別人のようにすら感じるまでだ。

 

 それに、いつもいるはずのまゆりがいない。

 

 ある、いやな予感が俺の頭を駆け巡る。

 会話がひと段落するのを待ち、話しかける。

 

「あの、まゆりちゃんはどうしたんですか?」

 

「どういう意味だ?」

 

 気のせいかもしれないが俺の事を少し睨んだ様に感じる。

 

「いつもここに居ましたよね?」

 

「岡部から話は聞いたことあるけどここには来たことがない筈よ」

 

「この暑さに頭をやられてしまったのか? まゆりはずっと入院中だろう」

 

 それから俺はこの世界線についての情報をそれとなく聞き出したが、やはりここはγ世界線、もしくはそれに近い世界線なのだろうという結論が出た。

 第二のSteins;Gate世界線を決死の覚悟で目指したというのに、結局はディストピアに向かう世界で、ほとんど先が見えない。

 しかも、此処での岡部倫太郎はラウンダーだ。

 

 という事は、未来ガジェット研究所内で怪しまれるような行動をすれば、鉛玉、監禁、ゼリーマン、この内どれかをこの身で体験するというわけだ。

 

 当然この世界線の俺は全てのルートの記憶があるとは伝えていないだろうし、記憶に基づいた指示をラボメンにしたとしても前の世界線のようにすんなりとは事が運ばないだろう。

 そして何よりも問題なのが、やり直しが利かないことだ。

 

 この世界線の電話レンジにはタイムリープ機能は搭載されていない。タイムリープ機能は俺の良く知る岡部倫太郎の気ままなアイデアから生まれたものだからだ。俺一人で作れないこともないが、タイムマシンの在るこの部屋に監視がない筈がない。岡部倫太郎に見つかり、結果的には襲撃までの時間が早まってしまうことは目に見えている。

 

 なら、Dメールで世界線移動すれば、とも思ったがそもそもγ世界線になってしまった原因であろう2000年クラッシュをメール一通でどう防げばいいのだ。それにもうDメールを送るのは遠慮したい。俺はそのせいでわけが分からない世界線に跳ばされどうしようもなくなったのだ。送るとすれば最後の最後と決めている。

 

 後は他の世界線の岡部倫太郎がこの世界線に来てくれればまだ望みはあるが、もし来たとしてもこの瀧原浩二を知っている岡部倫太郎なのだろうか? もし違うのであればすなわち俺の存在しない世界線に跳ぶことになり俺の消滅は確実だろう。

 

 何と素晴らしき世界線であろうか。感動のあまり泣けてきそうだ。

 

 

 翌日、岡部倫太郎がユーロポールの捜査官を殺したところを見たと、紅莉栖が逃げ帰ってきた後、岡部倫太郎が姿を現すこともなかった。

 つまり他の世界線から岡部倫太郎が跳んで来ていないという事。

 気付くのが遅れたが、阿万音鈴羽もこの世界線のこの時間には存在していないらしく、ドラマCDのγ世界線というわけでは無い様だ。

 此処で、一人で逃げてしまえばいいという案も浮かんだが直ぐに否定する。

 

 少しの時間とはいえ共に過ごして、ラボメンは覚えていないだろうが、思い出があるのだ。俺はそこまで薄情になれなかった。

 

 

 襲撃される筈の日、俺は最後の賭けとしてのDメールを用意した後、俺はその時を待っていた。

 そして、あの日のようにドアは強引に開けられて外国人の屈強な男たちが入ってきた。

 

「動くな!! 大人しく手を挙げろ!!」

 

「ヒッ、う、動かないから、撃たないで―」

 

 違うことはただ一つ、その後ろから岡部倫太郎も桐生萌香と共に登場したことだ。

 襲撃者という割には何だか顔色が悪そうに感じたが、今気にしている暇はない。

 

「岡部ッ! あんた何で!」

 

「黙って。あなただって死にたくないでしょう?」

 

 モアッド・スネークはこの世界では発明されていないが視界を遮るまでもなく俺は電話レンジの前に立っている。

 後はいつものようにジャンクリモコンの電源ボタンを……

 

 ―――無い?

 

 そうだ、ここは今までの世界線ではない。ジャンクリモコンを買ってきたという事象さえもなかったことにされている。

 迂闊にもほどがある。今ここで自分を呪い殺したい衝動に駆られる。

 

 俺は何もできないまま、死を宣告する号令が桐生萌香の口から放たれた。

 

「使わせるな! 撃て!」

 

「待て!!」

 

 容赦なく降り注ぐ銃弾。しかしそれは俺にではなく射線上に飛び入った岡部倫太郎に全て命中していた。

 彼の体を突き抜けた弾は全てあらぬ方向へと飛び出した。素人目から見ても致命傷だ。紅莉栖も橋田至も叫びをあげている。

 

 まず、感じたのは疑問。そして驚愕。

 

 倒れた岡部倫太郎に駆け寄る。ラウンダーなんて構わない。

 

「岡部! なぜ俺なんかを庇った! お前はラウンダーなんだろう!? 何故だ!」

 

「……これで……借り…は返した…」

 

 その一言で俺は理解した。今ここに居るのは俺と共に世界と戦った岡部倫太郎だと。しかし、なぜ今になって?

 ……デジャヴのせいなのか?

 

「岡部ッ! 死ぬな!」

 

「……済まな……かった」

 

 岡部倫太郎から離れない俺をラウンダーの一人が銃で殴り、強制的に大人しくされた。

 桐生萌香の方も魂が抜けたようにへたり込んでいる。

 

 外国人の男の指示でこの場にいたラボメン全てが抵抗も許されず拘束され車に無理矢理乗せられた。岡部倫太郎の死体は処理班を呼んで始末させるそうだ。

 

 荒い運転に揺れる車内で俺は考える。

 

 死んでしまったのか? ……岡部倫太郎が、何故?

 

 この物語の主人公である彼が死んでしまえば誰も救えなくなってしまうと言うのにだ。

 そして世界線が変わってもおかしくない事象が発生したというのにリーディングシュタイナーが発動する気配すらない。つまりこの世界線でこの時間に岡部倫太郎が死んでしまうことは確定しているという事か?

 仮に未来の俺がこの世界線も計算に入れてメールを送らせたとすれば、どんな意味があるというのだ。

 

 もし意味なんて何もなければ―――

 

 いや、意味なら必ずある筈だ。無いわけがない。よく考えろ……

 

 未来の俺はムービーメールで因果を重ね望む世界を手繰り寄せるとか言っていたか?

 頭の中で何かが弾ける感覚がした。

 

「フフ、フハハハッ―――」

 

 そういう事か……。全く未来の俺は何とも無茶な役目を押し付けてくれる。

 

 この世界で重ねられるべき因果は何か? それはディストピアが存在し、三百人委員会に鳳凰院凶真がその名を連ね、阿万音鈴羽がこの時代にタイムトラベルをしてくること。

 しかし、岡部倫太郎はもういない。つまりだ。

 

 ―――俺が岡部倫太郎、鳳凰院凶真としてディストピアを形成する事が未来の俺が望んだ事。

 

 ならば、頭の中に詰まったタイムリープに関する基礎技術、思い出を武器に、全身全霊をもってこんな世界を否定しよう。

 

 いつかラボメンと楽しく過ごす日々を夢見て。

 

 たとえそれが、間違っていたとしても俺はもう止まることなんてできやしない。

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