俺ガイルクロスプロローグ&設定集   作:まーぼう

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やはり我が家の万能文化なお猫様はまちがっている

 

 身体が重い。というか何かにのし掛かられてる感覚。

 圧迫感に目を覚ますと、案の定、俺の上でそいつが眠りこけていた。

 

「またか……」

 

 嘆息すると同時、ドダダダダ、バタンッ!と騒がしい音を立てて小町が飛び込んできた。

 

「お兄ちゃん、かーくんいる!?って、ああ!やっぱり!」

 

 朝から迷惑だぞ、と注意する間もなく、小町は俺の上で丸くなっているカマクラを引っ張る。弛緩仕切っていたカマクラは、ろくに抵抗も出来ずにベッドの下へと転がり落ちて「むぎゅっ」っと悲鳴を上げた。

 カマクラは身を起こして小町に恨みがましい目を向ける。しかし小町はそんなカマクラを無視して俺に非難の視線をよこした。

 

「……お兄ちゃん、かーくんにヘンなことしてないよね!?」

「するか。お前は兄を何だと思ってる」

 

 小町は俺の返事には応えず、カマクラにお説教モードになった。あの、うさぎって寂しいと死んじゃうらしいよ?もっとお兄ちゃんを構って?

 

「かーくん、昨日は小町のところにいたじゃない!なんでお兄ちゃんとこにいるの!?」

「きのうはこっちの気分だったのだ。そう怒るなご主人」

 

 カマクラはくあっ、とあくびしつつ、寝乱れた髪をボリボリ掻いてそう答える。

 まあ猫の気紛れに理由を求める方が無謀というものだろう。しかし小町は納得しなかったらしい。

 

「ダメーッ!かーくんは今後お兄ちゃんと寝るのは禁止です!」

「別にかまわぬではないか。今までもしょっちゅう寝ていただろう?我輩、こちらのご主人の匂いはわりと好きなのだ」

「ダメなものはダメ!一緒に寝るとか中学上がってからは小町だってしてないのに!かーくんだけズルい!」

「しかし腹が減ったな。寝てる間は気にならんのだが、一度起きてしまうとこれはたまらん。食事にするか」

「かーくん!人の話はちゃんと聞きなさい!」

 

 説教の途中で飯の話を始めたカマクラに小町が目くじらを立てる。て言うか小町、お前今妙な事口走らなかったか?

 カマクラはやはり小町を相手にしない。というかこいつは、基本的に自分の気が向いた時以外は他人の事を気にしない。まあ人間のDQNと違って、それで人に迷惑かけるわけでもないから、構わんっちゃ構わんのだが。

 カマクラはわめく小町を無視し、俺によく似た死んだような眼をこちらに向けると、にんまりと笑顔を浮かべた。

 

「ではご主人、飯としようか」

 

 やっべー……。あんまそういう顔すんなよ。俺じゃなかったら勘違いしてるとこだぞ?

 ったく、気ぃつけろよな。

 

 

 お前は今、美少女なんだから。

 

 

 

 あー、話が見えない奴もいるだろうから、簡単に説明しようか。

 

 金曜の夜に、見知らぬおっさんが美少女を連れて我が家にやってきた。おっさんが言うには、その眼の腐った美少女はカマクラなのだという。

 カマクラは朝に散歩に出たきり帰ってないらしく、お袋と小町があちこちに電話をかけているところだったのだが、おっさんの話では、今朝がた車に轢かれて死にかけてたところをおっさんの息子さんが拾ってきたらしい。

 おっさんは発明家だか科学者だかで、カマクラを助ける事は出来なかった。しかし、おっさんが開発していた医療用のアンドロイド使う事を思い着いたそうだ。

 このアンドロイドというは要するに、治る見込みの無い病気を抱えた人間の為の全身義体なのだそうだ。機械の身体に脳を移植する事で、完全以上の健康体として生活出来るようにするのが目的だとか。

 通常生活を目標にしてるだけあって外見なんかの力の入りようも凄まじく、はっきり言って人間の美少女にしか見えない。目の前で腕の取り外しとか見せられなかったら絶対信じなかった。

 これを個人で作ったというのだから、天才を通り越してもはや変態である。が、ここまで完璧に思えた世紀の発明品には、唯一かつ致命的な欠陥があった。

 必要な機能を人間サイズの機体に押し込んだ為、肝心の人間の脳が入るスペースが無かったということだ。

 ちなみにおっさん曰く、作っちゃってから気が付いたそうな。それでどうしようかと途方に暮れているところに息子さんが飛び込んできて、猫の脳ならどうにか入りそうだ、ということになったらしい。

 

 そんなわけで、我が家のお猫様は美少女ロボにクラスチェンジしました。それなんてエロゲ?

 相当に高価なシロモノだと思うのだが、おっさんはモニターとしてデータを採らせてくれるだけで良いと言ってくれた。が、怪しんだ親父がそれを拒否。交渉の末、メンテの費用だけ支払う事に落ち着いた。

 

 まあその辺りの話は置いといて。

 

 美少女の姿をしていても所詮は猫。機体のサポートで会話したりは出来るのだが、色んなところで常識が欠如してるというか。

 服着るのは嫌がるし、人が寝てると上に乗ってくるし、なんつうかまあ、色々と困る。おら、ぱんつはけ。

 小町は小町でなんか様子おかしいし、これからどうなんだ、これ?

 

 

「うむ、此度も美味であった。では……寝るか」

 

 

 さすが猫、自由っすね。

 ……良いなぁ。

 




 万能文化猫娘とのクロスです。
 かなり古い作品なので、知らない人の為に原作説明をば。いや、俺自身もうろ覚えですが。
 原作の流れも似たような感じです。主人公が拾った猫が死にかけて、失敗作のアンドロイドに脳を移植。猫の脳を持つ美少女アンドロイド「ヌクヌク」爆誕。
 ただ、主人公が小学生なのでラブコメにはなりません。どっちかと言うと、アットホームなハートフルコメディ?
 今回はヌクヌクの代わりにカマクラに事故ってもらいました。
 こっちも元が猫な上にオスなんで、ヒッキーに恋愛感情持ってたりはしません。単純に飼い主としてなついてるだけです。少なくとも最初は。
 でも、ゆきのん辺りと会話させて

「あなた、比企谷くんの何?」
「我輩か?我輩はご主人の所有物だ」
「!?」

 みたいな展開はやりたいな。もしくは逆パターン。

「ん?ご主人は我輩の飼い主だが?」

 ちなみにカマクラのセリフ回しがタマモキャットにそっくりですが、それは純然たる偶然です。いやマジで。俺がビックリしてる。

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