拙い想いを元に、少しずつ紡がれる物語。
10話いかない予定ですが、どうかお付き合いいただけたら幸いです。
注意事項としては、
・作者はアニメ版を見ていない。
・原作版を読みきった人推奨。
・作者の文才は拙い。
・父親についての言及が無かった(はず)なので、母子家庭という設定で。
・原作の記述取りこぼし。
・筆者はヘタレ。
などがございます。
ごらんの際はそれらにご注意し、暖かい目でお願いいたします。
南雲恵一:平賀家の家を紹介した不動産屋の息子。旧家の出らしい。
オリキャラ(?)
平賀優花:平賀才人の母親。シングルマザー。
まばゆい光の中、俺は腕の中に抱いたルイズを手放すまいとしっかり抱きしめていた。
「……才人?」
光が薄れてきたと感じたあと、目をゆっくりと開くと、そこには見慣れた光景が。
平賀の表札に、変わらない家の姿。
そして、驚いた母さんの顔。
「母さん、……ただいま」
俺がそういうと、母さんの手から持っていた箒が滑り落ち、涙をほろほろと流し始めた。
「才人……。才人なのよね……?」
俺はルイズに目配せしたあと、母さんに駆け寄った。
「そうだよ。母さん。……ただいま」
俺がそういうと、母さんは俺を抱きしめた。
「あんたがどこで何をしてたかさっぱり分からないけど、コレだけは言わせて。――元気そうで良かったわ」
何度か死に掛けたけど、と思わず言いかけて俺はその言葉を飲み込んだ。
「あ、ああ。元気だったよ。あと紹介したい人がいるんだ」
俺はそういって母さんからの抱擁からそっとはなれ、俺の
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。サイトとはふ、夫婦になりました」
優雅に挨拶するルイズの挨拶に硬直する母。
その母を代弁するかのようにルイズの背後から声がした。
「へぇ。これまた美少女引っ掛けてきたもんだな」
「!?」
ルイズはあわてて後ろを振り返る。
が、俺ははっとして声を上げた。
「恵一兄さん!!」
独特な男の色気を持つその人は俺を見てニッ、と笑った。
「おう、才人。元気そうで何よりだな」
黒髪の二枚目ともいえるこのお兄さんの名前は南雲恵一。
近くの山とこの町一帯の多くの土地を管理する旧家の跡取りで、父親は不動産屋、母親は考古学の研究者、叔母(?)が占い師というまったく法則性の無い職業一家である。
たしか俺が召喚される2年ほど前にイギリスのロンドンの時計塔というところに留学しており、俺が召喚されたころには戻ってくる予定だったはずだ。
たしか、俺の家もこの人のお父さんの紹介だった気がする。
「……まあ、こんなところで話もアレだ。中に入ろうぜ。奥さんもな」
「え、ええ……」
いろいろなことが一杯ありすぎて混乱してる母を恵一兄さんが先導する形で俺たちは家に入った。
――*――*――*――
俺はそのあと、ダイニングで紅茶とクッキーを片手にハルゲニアでのことを思いつく限り話した。
ところどころでルイズの突っ込み(物理)が入って母さんが慌てたが恵一兄さんは母をなだめてくれたおかげで大慌てにならず済んだ。
ただ、話すにつれて母さんの顔が険しくなり、一通り話し終えた後には頭が痛そうな表情を浮かべていた。
「つまり、貴方はそのハルゲニアってところでそっちの子と一緒だったと?」
母さんの問いかけに俺は頷いた。
「やべえ、俺だけブラックコーヒーにしたはずなのに、いつの間にかマックスコーヒーにすりかわってた。何を言ってるか俺にもぜんぜんわからないけど」
いつもは飄々としてる恵一兄さんがご馳走様ですといわんばかりの顔でそういうと、まじめな顔になった。
「甘酸っぱい青春はさておき、ここからはちょ~っとめんどくさい話をしないと駄目だな」
「えっと、ケイイチ……さん。それは一体どういうこと?」
ルイズの問いかけに、兄さんはからからと笑う。
「別に俺のことはさん付けしなくていいからな。あ、でもお兄さんのほうが良いかもな。才人の兄さんみたいなもんだし……っと、話しそれた」
はっとしたあと、兄さんはめんどくさそうに続ける。
「2年近く行方不明だった才人が見つかった。コレは場合によってはニュースになるけどまあ問題ないだろう。問題はルイズちゃんのこと。――国籍、戸籍とか住民票とかどうするよ。ルイズちゃん外国人といえば外国人だけど、外国籍持ってないし。下手すれば不法入国とかになるぞ、これ」
「……あ」
俺は兄さんの言葉に開いた口がふさがらなかった。
「……戸籍? 才人、それって何か不味いの?」
首をかしげるルイズに俺はどう答えようか困っていると、助け舟が出た。
「戸籍というのは、国に住む一人ひとりを出生関係によって登録する制度のこと。まあ、日本くらいしか今は無い制度だね。住民票はどこの地域に誰が住んでるかを記録する公文書。国籍はその国の人間であることの証明だ。ちなみにルイズちゃんは今どれも持ち合わせていないので、日本の法律上では入籍……結婚できないし、怪我しても病院……君のところの水魔法とかの治療が受けられる施設に入れない」
「それって、かなり不味いってことだよね?」
俺が顔を青くしながら問いかけると、兄さんは静かに頷く。
それを見たあと、俺はうなだれ、母は困った顔をし、ルイズは困惑を見せるが……。
「まあ、今の日本には不法入国して働いてるやつも少なからずいるから、ばれなきゃ問題ないってのはあるけど……。まあそれは極論だ。何とか出来るなら、何とかしたいよな?」
兄さんは頭をかきながら問いかけてきた。
「え、兄さん何とかできるの?」
俺ははっとして問いかけると、少し悩むそぶりを見せた後、ルイズのほうを見て問いかけた。
「ルイズちゃんが、ウチの養子ってことで南雲姓を名乗るならな。それなら何とかしよう」
「……お願い、出来ますか」
ルイズがまじめな顔でそういうと、兄さんはニッと笑った。
「よし、合格。今のルイズちゃんは貴族じゃないんだ。そこを忘れずちゃんとお願いできなかったら、断るところだったよ」
そういうと、兄さんは立ち上がった。
「じゃあ、しばらくは2人とも家から出ないでね。色々めんどくさいことになるから。あと奥さんは2人のこと内緒にしてあげて。それと部屋は才人君の部屋に2人で寝かせてあげるといい。――あ、2人とも、いくら燃え上がっても近所迷惑になるようなことはしないでね」
ニヤッと最後に付け足したあと、兄さんは何食わぬ顔で去っていった。
「えっと……そろそろ夕食の支度しないと。2人はくつろいでいればいいわ」
母さんは窓の外を見た後、はっとしてキッチンのほうへ向かった。
「「……」」
兄さんはも母さんもいなくなると、沈黙が俺とルイズの間に流れたが……。
「……サイト」
ルイズが俺の服の袖を掴んでいた。
そしてその掴んでいる手が震えていることに、俺は気がついた。
おそらく、戻れないハルゲニアへの郷愁の念と、自分のまったく知らない世界で生きていくことへの恐怖心が、彼女の手を震わせているのだろう。
「部屋に行くか?」
俺はそっとルイズの手をとって、問いかけた。
彼女はこくりと頷いたので、俺はルイズの手をとり、二階にある俺の部屋へと案内した。
――*――*――*――
部屋は母さんがこまめに掃除してるらしく、ほとんどほこりは無い。
そう思いながら俺がベッドに腰掛けると、ルイズもそれに習い、そしてどちらとも無く甘い口付けを交わした。
お互いの存在を、そしてそれを通して自分の存在を確かめるように。
ルイズのそれは甘く、同時に不安の裏返しのようにも見えて、俺は彼女がより愛しく、そして切なく感じた。
しかし息は長続きしないので、途中でたがいの唇は離れてしまう。
だが、俺たちはそんなこと気にしない。
それならば何度も重ねるだけなのだから。
ルイズもそう考えているか、再び俺たちの顔が近づいた。
近づいては離れ、離れては近づく。
さながら波の満ち引きのように。
何度と無く繰り返したあと、俺が彼女の肩に触れると、彼女は一瞬目を見開く。
が、俺の手だと分かるとまたゆっくりと目を閉じる。
それと同時に俺の体にゆっくりと手を回してきたので、俺もルイズをそっと抱きしめる。
俺の抱擁に安心したのか、後ろに倒れこんでしまい、俺がルイズの上にのしかかりかける形になり、同時に唇は離れてしまった。
しかしそんなことが吹っ飛ぶように、ルイズは俺の頬を両手でそっと挟みながらささやく。
「来て……」
俺は思わず喉を鳴らしたが……。
「もしもーし、きこえてますかー?」
「「!?」」
背後からの声にびっくりして俺はベッドから転げ落ち、ルイズははっと夢から覚めた様子で入り口を見た。
そこには兄さんが呆れた顔で立っていた。
「燃え上がるのは理解できるけど、せめて飯食べてからにしてくれないか? 食器洗うのめんどくさいし」
「「あ、はい……」」
俺たちの返事を聞くと、兄さんはやれやれと言いたげな顔で部屋を後にした。
――*――*――*――
「ってか、なんでしれっと兄さん混じってるの!?」
俺たち4人で食事を始めて少ししたあと、はっとして突っ込みを入れた。
「いいだろ、別に」
「そうよ、恵一さんには色々お世話になったし……」
兄さんの言葉に、母さんがそれとなく色っぽい目で兄さんを見ながら弁護した。
何があったんだろうか。
聞くべきか悩んだが、今それをやったら何かとんでもないことが起こりそうだったので、先送りにした。
「これが、才人の言ってたハンバーグなのね。おいしいです。お母様」
おいしそうにナイフとフォークで食べるルイズ。
「ルイズちゃんの口に合ったのなら何よりだわ。……お母様か。こんな可愛い子が才人のお嫁さんにねぇ……」
うれしそうな顔をしたあと、母さんは不思議でしょうがないといわんばかりにこちらを見た。
「まあ、双方の希望ならそれを尊重してあげるのも親心ってものですよ。……やっぱり優花さんの料理はおいしいな」
兄さんは俺にフォローを入れつつ母さんを口説いてる。
兄さん、人の母親に何してるんだ!?
「ほんとう、地球ってすごいわね。あのてれび……だっけ? 魔法もなしに遠くの風景を映してるんだし、料理はどれもおいしいし……」
ルイズがそういうと、兄さんは幼子を見るような目をして反応した。
「まあ、魔法のように一部の人しか使えないものにたよらず、また誰でも使えるようにあらゆる力を技術によって普遍化した結果だから。君たちの話に出てたコルベールさんみたいな人が技術革新を起こしていくと、いつか地球を超える技術力を持つかもしれないね……」
――*――*――*――
夕食後、既にお風呂が沸いていたから、入ることになったのだが……。
「えっと、何で一緒に入ってるんだっけ?」
湯船に体を預ける俺は、俺に体を預けるルイズに問いかけた。
「……駄目?」
構って欲しい猫のようなルイズの態度に俺はドキッとした。
『風呂汚すなよー。排水溝詰まるし大変なんだからさー』
「いちいちうるさいっ、兄さん!!」
脱衣所から聞こえてきた声に俺は怒鳴り返す。
『あと、服はうちの母さんのお古だけど、持って来たからな。今日はそれで我慢してくれ』
「いいからさっさとあっち行ってくれ!!」
『へいへい。お邪魔虫は退散しますよ~っと』
兄さんのおかげですさまじく気まずい雰囲気になった俺たちは、とりあえず体を洗ったあと、そのまま風呂を上がった……。
――*――*――*――
「おやすみなさい」
「おやすみ」
風呂上りの俺たちは2人にそういったあと、そのまま俺の部屋のベッドに向かった。
そしていつもどおり二人並んでベッドに入った。
「……」
「どうしたの」
だんまりなルイズを不思議に思っていると、彼女は起き上がって杖を入り口に向けた。
「???」
疑問符ばかりが浮かぶが、杖を下ろしたルイズは満足げな顔でこっちに向いた。
「サイレントの魔法を使ったから、近所迷惑になることは無いわ。だから……ね?」
そっと兄さんが持ってきたというパジャマのボタンをはずしながら、ルイズは妖艶な笑みを浮かべた……。