それは愛にも似た、   作:pezo

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R指定をつけるまでもない、ゆるい表現?かもしれませんが、ご注意ください!

お泊まりしているので、苦手な方は回れ右してください!


いや、ウェルカムだぜって方、すみません!ゆるくて大したことありません!!




第十一章 アーレント 三

 

 

 

窓の外はすっかり日が暮れて、夜の帳が下りていた。

 

風のない夜だが、しんしんと降る雪は、一向に止む気配がない。部屋の明るさを写した地面は、もう真っ白になっていた。

 

 

降り出した雪を見て、「無理に兵舎へ帰るのは危ない」とひそやかに言ったのは女の方だ。

 

 

その雪の夜を、リヴァイはおそらく、一生忘れないだろう。

 

 

それは、彼らにとってたった一度きりの、何の役割も持たないただの男女として過ごした夜だった。

 

 

「綺麗にしてるな」

 

 

数ヶ月身を隠していたというその小さな家は、キッチンとリビングが一緒になっている部屋のほか、小さな寝室があるだけの慎ましいものだった。

 

兵舎の研究室同様、物が多い部屋だったが、掃除は行き渡っているらしく、清潔で暖かな雰囲気があった。

 

 

「リヴァイにそう言ってもらえるとは、私も掃除の腕が上がったのかな」

 

 

女が笑いながら暖炉の火鉢に金属製のポットを置いて、湯を沸かす。

 

 

暖炉の前の絨毯は、質素ながらふかふかで肌触りもよく、そこにリヴァイは腰を下ろした。

 

 

物が多いのは変わらないが、研究室とは大きく雰囲気が異なる。その一番の理由は、研究室にはびっちりと置かれていた本が、ここには一冊もなかったことだろう。

 

 

聞けば、憲兵が来た時、本などあれば疑われるから、とのことだった。

 

 

「訓練もせず、本も読まず。そんなお前の姿は想像できねえな」

 

 

率直に言えば、女は食事の用意をしながら、「冬の野菜を育てたり、編み物をしたり、掃除をしたりしてたんだ」と笑った。

 

 

「こんなに穏やかに過ごしたのは生まれて初めてだと思う。貴重な時間だったよ」

 

 

「壁の中に来る前もか?」

 

 

「たぶん。記憶にある限り、本を読んだり調査に出たり、文章を書いたり。そんなことばかりしてた気がするよ。あまり兵団にいた時と変わらないね」

 

 

 

女は振り返って、「嫌いなものはある?好きな食べ物は?」とやけに嬉しそうな顔で尋ねた。

 

 

 

二人が食事を終えた時には、外の雪は止み、静かな静寂だけが満ちていた。暖炉の火の前で、二人は紅茶をすすりながら、何ともない話をしていた。

 

 

女は、育てた野菜や、作った料理のこと。器用な類の人間だと過信していたが、編み物はどうにも才能が壊滅的だということを。

 

 

男は、最近ミケが拾って来た三毛猫のこと。モブリットのハンジへの愚痴のこと。紅茶の上手い店のこと。そして、地下街の話や子供の頃のことを。

 

 

 

どれだけ話したのか。くわ、と小さく欠伸をした女に、リヴァイが「寝るか」と声をかければ、女は「もったいない」と首を横にふった。

 

 

尋ね人のない生活はどうやらつまらないらしい。ここに人が訪ねて来たのは、数回、エルヴィンが様子を見に来たくらいで、あとは行商人がまれに通りかかって野菜と商売品を交換に来たくらいだという。

 

 

「まだ兵団に戻るまでしばらくある。それまでまたひとりだ。あなたとこうしてゆっくり話す時間もそう取れないだろうしね」

 

 

 

「エルヴィンはここに泊まらなかったのか」

 

 

 

リヴァイがどうしても気になっていたことを聞けば、「さすがに泊めないわ」とくすくすと笑った。寒いから、と毛布にくるまった彼女の目尻が、少しまどろんでいる。眠たいからか、それとも気が緩んでいるからか、シシィとして働いていたときのような、女性らしい口調になっていた。

 

 

どうやら、素はこちららしい。

 

 

「リヴァイは私とエルヴィンのこと誤解してるわ」

 

 

「でも特別なんだろう」

 

 

「そうだけど……なんだろう。あなたも特別よ。でも、ちょっと違うな。なんだろう。リヴァイは泊めてもいいけど、エルヴィンはちょっと嫌だなあ」

 

 

そう言って、彼女は悪戯っ子のように笑った。

 

 

ぱちりと暖炉の薪がはぜた。炎の揺らめきが、彼女の白い肌を暖かく照らしている。

 

 

「以前、シシィとして接客してもらった時に、お前は俺に「見つけてくれ」と言ってたな」

 

 

長く伸びた彼女の黒髪を、耳にかけてやりながらリヴァイは言った。

 

 

 

「なあ、どうだ。俺はお前を見つけられてるか?」

 

 

 

一瞬、子どものように目を丸めた女は、しかし次の瞬間、ゆったりと、見すかすように微笑んだ。

 

 

 

「どう、かな……?見つけてくれるの?」

 

 

 

それは、男を誘う女の、娼婦シシィのそれだった。

 

 

ただ、甘いだけではない。

 

 

炎のきらめきを抱いた黒い瞳の奥には、リヴァイに対する狡猾で好奇心に満ちた、シグリを彷彿とさせる輝きが見え隠れしている。

 

 

 

その女の表情に、リヴァイは血がざわめくのを感じた。直裁に言えば、欲情した。

 

 

 

娼婦と兵士、性格の異なる役を器用に演じるものだと思っていたが、それは存外、この女のなかにあるもので、どちらも演技ではなかったのかもしれない。

 

 

リヴァイはそんな女の多面性に、にやりと笑って、彼女の腰に手を回した。細く薄い体を引き寄せて、躊躇いなく、その小さな、手入れの行き届いた唇に口付けた。

 

 

 

艶やかに手慣れた風に誘うくせに、口付けにはいつも体を少女のように強張らせる。そんな女の背中をなだめるように撫でてやりながら、ついばむように何度も角度を変えてその唇を堪能した。

 

 

 

何度も繰り返して、ようやく強張りが溶けてきた頃を見計らって、舌で唇を撫でてやれば、そっと口をあけて彼女はリヴァイの侵入を許した。逃げる舌を追いかけるように深く口付けしながら耳をさすれば、ぴくりと身体が震えた。

 

 

夢中になって思う存分貪った後、唇を離せば、名残惜しそうに眉根を寄せた表情が目に入った。食い散らかしそうになるのをぐっと抑えて、先ほどさすった耳に口付けて舐め上げれば、驚き混じりの甘い声が上がる。

 

 

やはり、と気を良くして敏感なその部分を攻め立てれば、彼女は縋るように男の服を握りしめてきた。

 

 

これがあの副官か。

 

 

常に冷静を装って、すました笑顔をたたえているあの女が、今手の中でただの女に成り果てている。

 

 

首筋に舌を這わせ、吸い付けば、おののくようにそのしなやかな身体を震わせて鳴き声を上げる。

 

 

ひとつひとつの動作に敏感に反応する身体に、思わず舌舐めずりをした。

 

 

 

ーーなんていい女だ。

 

 

 

ふと彼女の光を抱きしめる瞳を見たくなって顔をはなせば、彼女は顔を真っ赤に染め上げて、息も絶え絶えになっている。

 

 

ただのキスごときでどれだけ余裕をなくしているのか、と男は笑ったが、そんな彼もすっかり息は乱れていた。

 

 

 

誘われるように、どちらからともなく再び口付けあえば、ゆったりと女を下に、二人の影が絨毯の上に倒れていく。

 

 

深いエンジ色の絨毯に、黒髪が散る。黒曜石の瞳は、暖炉の炎に揺れている。

 

 

 

ああ、綺麗だ、とリヴァイは思った。

 

 

 

 

「……いいのか」

 

 

 

 

ここにきて問うたのは、彼の弱さだろうか。それとも実直さ故だろうか。女は少し笑って、黙ったまま頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が目を覚ましたのは、夜明けごろ。うっすらと窓の外から陽光が差し込む時間帯だった。

 

 

兵舎ではきっともう、兵士たちが朝の訓練のために動きだしている頃だ。

 

 

 

暖かな温度にまどろみながら横を見れば、昨日家に泊めた男が深く布団に身体を埋めて眠っていた。

 

 

同じ研究室で寝食を共にしていたが、こうして彼が眠る姿を見るのは初めて見た。眉間のシワがなくなれば、彼が実は童顔なのだと知れて、彼女は思わず微笑んだ。

 

 

不意に、男にしては白い裸の肌に気付き、男も自分も一糸まとわぬ姿であることを思い出して、急に気恥ずかしくなって顔を背けた。

 

 

 

彼には言わなかったが、彼女は記憶の限りでは、男と寝たことはなかった。否、昨夜の感覚からして、おそらくそれなりにあるのだろうが、壁内に来てからは全くなかった。

 

 

シシィとして店で働いていたときも、アリスは彼女のことを思って客はとらせなかった。その身持ちの固さが、彼女の店での人気に繋がったのだが、とにかくこの二年ほど。壁外にいた頃のことははっきり覚えていないが、下手をするともっと長い時間、男日照りであった。

 

 

彼女自身、あまりそのことに興味をそそられなかったから気にしていなかったが、そのツケは今まさに来ていた。

 

 

腰も重く、身体はバカみたいに全身だるい。下腹部にも、まだ受け入れたものの感覚が残っていて、もういっそ息をすることも恥ずかしい。

 

 

その気だるさの一番の要因は、思春期のように何度も彼女を貪り倒したリヴァイにあるのだが、彼女はそこまで考えは至らない。

 

 

意識があればまざまざと昨夜のことを思い出しそうになる甘ったれた思考に、彼女は羞恥に一人もだえた。

 

 

「……何してる」

 

 

 

低い不機嫌な声がすぐ耳元でして、彼女は飛び起きそうになった。だが、男の両腕にとらえらて、引き寄せられてそれは叶わず終わった。

 

 

「朝から百面相……賑やかだなテメェは」

 

 

後ろから抱きすくめられて、密着した身体。尻に違和感を覚えて、彼女は顔を青くして震える声で抗議した。

 

 

「ちょ、あの、お尻。さっきから、あの、」

 

 

「?……ああ、これか。生理現象だ。気にするな」

 

 

男の朝の生理現象など、尻に突きつけられても困る、と彼女は再度抗議しようとしたが、くるりと仰向けにひっくり返されて言葉を飲み込む。

 

 

見上げた先に、昨日の優しい男はどこへやら。ゴロツキらしい、凶悪な顔の男が口角をあげていやらしく笑っていた。

 

 

「勃ったついでに、もう一回ヤルか」

 

 

 

ひい、と息を引きつらせた彼女が解放されたのは、結局、太陽もだいぶ高い位置に来るころだった。

 

 

 

 

 

 

リヴァイが出立の準備をするのを眺めながら、彼女はきっちりとシャツを着込んでその姿を見ていた。

 

 

 

男は別に外着に着替えなくても、と言ったが、昼間は昼間らしく!と女は顔をしかめて抗議した。どうやら、明るい時間の行為に不服を唱えているつもりらしい。

 

 

リヴァイは、己が年甲斐もなくがっついたことは認めていたが、特に悪びれることもなく、いつもの無表情でひらりと馬に乗った。

 

 

 

「また来る」

 

 

「もうここでは会えないよ」

 

 

彼女が神妙な顔で言った。男は、そうか、とだけ答える。

 

 

 

「次会うときは、お互い兵士だ」

 

 

「……そうか。ならもう一回くらいしとくべきだったか」

 

 

「リヴァイ!!」

 

 

女が顔を赤らめて怒鳴ったので、さすがに男も「冗談だ」とその本音を霧にまいた。

 

 

「……まあ、次も別にないわけじゃない」

 

 

男の言葉に、女は顔を赤らめて悔しそうにするだけだったので、彼は拒否されなかったと受け止めて上機嫌に頷いた。

 

 

 

「死ぬなよ。お前の帰還を心待ちにしてる奴は大勢いる」

 

 

「……ああ。待っててくれ。必ず調査兵団に戻るから」

 

 

 

その言葉をしかと耳におさめて、リヴァイは馬を走らせた。

 

 

みるみるうちに、彼女の家は小さく背後に流れ、マリアの壁が眼前に広がっていく。

 

 

 

雪は昼間の太陽でだいぶん溶けており、走るに支障はない。この調子でいけば、太陽が傾く前に本部に着くだろう。

 

 

エルヴィンの指示とは言え、無断外泊と今日一日の無断欠勤は何らかの処罰になるのだろうか、とリヴァイは思う。

 

 

 

しかし雪のせいだと言えばその通りだ。それに嘘はない。

 

 

 

それよりも。

 

 

 

早く、あのスカした金髪に会いたいものだと思った。ついでにミケが一緒だと尚更良い。

 

 

 

あいつのことだ。手の中で守り通してきた女が他の男にとられようとも、特に表情も変えないだろう。

 

 

だから、これは、己のつまらない馬鹿馬鹿しい所有欲の顕示に他ならない。

 

 

 

 

そう思いながらも、リヴァイは兵舎への帰路を急いで駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エロはダメだ!

ラブもダメだ!


砂吐く!!精一杯がこれとは…!!
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