艦娘という存在   作:ベトナム帽子

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07_朝食

 10月13日木曜日の朝。

 磯波と浦波は八丈島基地の士官食堂で朝食を食べていた。

 朝食の献立は白ご飯、ジャガイモの味噌汁、目玉焼きにウインナー、ひじきと鶏肉の煮物、牛乳という6品で、双子島基地の献立と大差ない。違うのはせいぜい、味噌の味が濃いだとか、味に関すること。

 あと1つ違いを言えば、周りからの視線だ。周りの士官達が磯波達の方をちらちら見てくるのだ。

 物珍しいと言えば、物珍しいのだろう。航空隊に艦娘は当然のことながらいないし、触れ合う機会もほとんどない。八重根港には哨戒部隊がいるが、配備されているのは無人監視艇で艦娘はいない。日本海軍が擁する艦娘の数は諸外国に比べても少ないわけではないが、辺鄙な場所で遊ばせておく余裕もないのだ。それを考えれば、双子島に艦娘が配備されていたのは異例かもしれない。

 磯波は自分達に向けられる視線を少し嫌に感じていたが、浦波は特にそんなことを気にせず食べている。いや、そもそも気付いていないようだ。

「24時間ぶりの食事は空きっ腹に染みますね、磯波姉さん」

 空腹は最高のスパイスと言うが、食べている浦波の顔は本当に幸せそうだ。

「う、うん。そうだね」

 磯波はぎこちなく返事をした。磯波自身は夜中の2時くらいに夜警兵の食事を分けてもらっているので、少々後ろめたい。浦波は基地に到着した後は、すぐに足の手術となり、朝まで何も食べていなかったのだ。

「ウインナーあげる」

 後ろめたさの埋め合わせに、磯波は自分のウインナーすべてを浦波の皿に移した。

「ありがとうございます。頂きます」

 浦波は嬉しそうにウインナーを食べていると、「隣、良いだろうか?」とお盆を載せた30代ほどの男性が話しかけてきた。袖章は細線が三本。少佐だ。

「はい、かまいません」

 少佐は浦波の隣に座ってから、自分は玉田直継で哨戒機の機長をしていると自己紹介した。

「君達は双子島にいたんだよね」

「はい、そうですが……」

 事情は知っているらしい。しかし、考えてみれば、当然といえるだろう。磯波達が八丈島に着いたとき、最初は陸軍に深海棲艦として攻撃をされたのだ。陸軍が戦闘態勢を取ったならば、海軍も戦闘の準備くらいするし、付近に敵本隊がいないか捜索もするだろう。そして、その敵の正体が自軍の艦娘というがわかったならば、戦闘準備や警戒態勢を取っていた部隊には解除の際に、その事実を知ることにもなるだろう。

「実は今日、双子島に偵察で飛ぶのだけれども、双子島から攻撃があるかもしれない。配備されている対空火器について教えてくれないだろうか?」

「対空火器ですか?」

「双子島基地は空軍の所轄だから、配備火器とかわからないんだ」

 玉田少佐は苦笑いしながら、言う。海軍の基地は海軍、空軍の基地は空軍が管理運営するというのは当たり前の話で、基地が隣接しているならともかく、別の軍の基地のことなど、知らないのは当然といえる。

 双子島基地の対空砲や対艦砲の多くは海軍が提供したものなので、海軍省のどこかにある関連書類を見れば一目瞭然だが、海軍省に問い合わせるよりか、双子島にいた磯波達に聞いた方が早い。

「高角砲よりも迎撃機に気をつけた方が良いと思いますが……」

 浦波が不思議そうな顔をして尋ね、味噌汁をすする。

「大丈夫、哨戒機は800キロ出せるから」

 深海棲艦航空機の球型タイプでも最高速度は700km/hくらいで、双子島に配備されていた三式戦闘機二型の最大速度が600km/hを超える程度だから、800km/hもあれば、逃げるには十分と言えるだろう。

「そうですね……」

 磯波自身もそれほど詳しいわけではない。できるだけ思い出して、話してみる。

 高角砲は一般的な八九式12.7cm高角砲で性能はそこそこ。機銃はこれまた一般的な九六式25mm機銃とロシアから輸入された37mm61-K機銃が配備。これらが島の全周をカバーしている。

「対艦用の20センチ砲や46センチ砲も対空演習で使っていませんでしたか?」

 浦波が、双子島近海まで近づいてきた深海棲艦を撃破するために配備されている三年式20cm砲や九四式46cm砲も三式弾や通常弾で対空射撃する、と捕捉をする。

「ミサイルとかはないの? 高射砲ばっかり?」

 玉田少佐が尋ねるが、磯波と浦波は首を横に振る。

「配備するって話はあったそうですが、予算不足で調達できなかったとかなんとか」

「とりあえず、なかったと思います」

 ふーむ。玉田少佐は納得したような、納得していないような中途半端なうなり声をあげた。

「まあ、単純な偵察だし、何とかなるだろう。ありがとう。お礼にウインナーあげる」

 玉田少佐は磯波と浦波の皿にウインナーを移した。

 浦波の皿には磯波と少佐のと、自分のウインナーで小山ができ、浦波は顔をほころばせた。

 

 浦波がウインナーをもりもりと食べている頃、双子島に向かう6機のヘリコプターがいた。暗めのグレーで彩られたヘリには日の丸マーク。日本空軍のヘリコプターだ。6機のうち2機は大型の輸送ヘリで、もう4機はスタブウィング(小翼)が左右に取り付けられた中型汎用ヘリと望遠センサーなどを搭載した観測だ。汎用ヘリのスタブウィングにはロケット弾ポッドと機関砲ポッドが吊り下げられている。

 4機は低空飛行で双子島へと向かっていく。輸送ヘリの腹の中にはヘルメットとボディースーツを纏い、小銃などを抱えた屈強な男達が28人詰まっている。

『双子島まで、あと10分』

 スピーカーからの声がヘリのランプ内に響き渡る。

「各員装備チェック」

 分隊長が叫ぶ。他の隊員はそれぞれの得物の弾倉や状態をチェックする。小銃、ショットガン、短機関銃、グレネードランチャー、通信機等々。

「我々の目的は基地部隊の安否確認である。軽はずみな発砲はしないように!」

 分隊長はしっかりと注意を促した。




 陸上の深海棲艦は基本的に人間よりも打たれ強く表皮も硬いので、小銃などの弾薬はフルメタル・ジャケット弾ではなく、徹甲弾です。
 そういえば、「アサルトカービン」って単語はものすごいかっこよいと思うのだけれど、アサルトライフル自体がカービンからの発展だから、単語自体はなんだかな、と思います。意味はアサルトライフルの短小型ってすぐに分かるんですけどね。
 日本語訳すると、いったい何になるんだろう? 無難に「短小銃」かな? 「騎兵銃」は騎兵自体が死滅した現在ではありえないし。
 それにしても、日本陸軍がアサルトライフル用独自規格弾薬を作るとしたら、6mm代になるのか、5mm代になるのかが気になるところ。中国大陸で使う事を考えると、射程距離が長くなるから、6mm代になりそうだけれど、アフガンでの5.56mm×45弾の威力不足問題の真相は「当たってない」だし。うーむ。
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