外伝クトゥロニカ神話『4つの愛』 作:カロライナ
敵の配分、間違えた。
なんということでしょう。
ご覧のありさまだったよ。
「ぬいぬい母様、飛鳥母様。邪魔者は排除しました。お二人はそこの屑肉に振り回されていただけなのでしょう? ええ、分かっています。分かっていますとも。全ては、あのイレギュラーと屑肉のせい。お二人は何も悪くない、そうですよね?」
『希望』は最も疎く思っていた存在を半壊に出来たのが、よほど精神安定剤の代わりになったのか非常に落ち着いたような口調で、テレパシーで穏やかに語りかける。その一語一句に対して飛鳥とぬいぬいは嫌悪感を抱きつつも、周囲に目配せをする。
赤大人形に叩き潰された纏は、その赤大人形に髪を掴まれ引き摺られるような姿で飛鳥とぬいぬいの元まで全身し、だるまの状況下にあるロジーナはゾンビの一体が纏の対応と同様に髪を掴みながら引き摺り2人との距離を狭めつつあった。その更に奥、『希望』の力によって宙吊り状態にある死体は4人が先頭を始めた時よりも更にその規模を広げ、突破することは不可能である。ワイヤーリールを屋根部分に引っ掛け離脱する方法も考えるが、それで移動するよりも先に『希望』が何かを仕掛けてくるのは明白であり、第一ワイヤーリールで離脱する方法では負傷している2人を見捨てることにもなる。
それだけは避けねばならない事態であった。
「おや? 役立たなくなった屑肉共を奪取し逃走を図る算段ですか? それもこのクソガキが浅知恵で企てた愚策ですか? 私を最後まで守ってくださった飛鳥母様のワイヤーリールで逃走するにしても、それは1人を連れるだけで精いっぱいでしょう? そもそも心優しいぬいぬい母様や、戦闘面に関してはポンコツですが慈悲深い飛鳥母様が、ここまでともに行動してきた仲間を見捨てられるのですか?」
「「・・・・・・っ。」」
まるでぬいぬいと飛鳥の思考を読み取っているかのように『希望』はヘラヘラとした口調で脳内に直接語りかけてくる。思わずその身体を震わせ振り向いた。『希望』は目と鼻の先と言っても過言ではないに浮遊していた。
ぬいぬいか形振り構わず抜刀術で斬り掛かれば優に届く距離。しかし、ぬいぬいには『希望』を切り捨てることができるほどの決意は、前の戦闘により残されていなかった。目の前の圧倒的な存在に身体を震わせざる負えない。飛鳥も同様であった。全身が細かく振動し表情は強張り両目を見開いている。
今、彼女達に出来ることは、ぬいぬいは『たからもの』である名刀以外の武装を解除し得物を『希望』の目の前に投げ捨て、飛鳥は内々に充電した電撃を放電し自分の足諸とも数匹のグールを刻んできた『単分子繊維』を指先から振り落とした。
「・・・・・・よろしい。互いの絆も更に固めたところで、それでは早速 母様達を少女のまま孕むことができるように改良を施しましょうか。いやぁ、それにしても複数いるとどれを母体にするか迷いますね。全員の子宮に場所を作って、定期的に移しながら平等に母にしてあげるのも―――――うふふふふふ。」
「・・・・ぁの・・・・。」
「うふふふふ・・・なんでしょうか飛鳥母様。もしや自らの胎の中へ私を招待してくれるのですか!? ああ!貴女は本当に聖母のようなお方ですね。戦闘面ではポンコツですが。しかし、その願いは聞き入れられませんよ。貴女一人だけ特別扱いしてはぬいぬい母様の立場はどうなるのです? 私はもう決めたのです。平等にお二人を母にすると!!」
『希望』踊るかのように2人を中央にして周囲を楽しそうに浮遊する。
6周ほど周回したところで、飛鳥が正面に『希望』を蚊の鳴くかのような振り絞る声で呼び止めた。『希望』は卑しく笑いながら飛鳥が要件を伝える前に喋りだし勝手に自己完結し、陶酔した様子で歓喜の声をあげる。
「・・・ぃぇ・・・・・そうではなく・・・・・。」
「は?」
「ぁぁぁぁ! そそそののの他にに、ににそ、その他にににって意味みみみでです・・・!」
「ああ、そういうことでしたか。なんですか?」
「ロ・・・・。」
「ロ?」
機嫌が最高潮に良さげな様子を見せる『希望』に飛鳥は否定から入ってしまう。突き刺すような冷たく鋭い槍に貫かれたように背筋は凍え顔色も見る見るうちに青ざめる。すぐに慌てた様子で言い直し、“機嫌が良い”とは言い切れないものの普通のテンションへ戻った『希望』へ震えながら語りかける。その様子をぬいぬいは緊張した赴きで見守る。
飛鳥は小さく息を吐きだし、何かを言いかける。そして、少しの深呼吸を行ったのち生唾を飲み込むかのように咽頭を震わせると、勢いに任せたかのような声で言葉を発す。
「ロ・・・・ロロロロジーナさんと纏さんを許してくださいっ!!! お願いします!!!」
「あ゙?」
「まっ、ま、ま・・・まままままままといささささんんは、は、あああああかだいささんが人形にににになっててててて驚いてててかかかんんんしゃででででじゃじゃじゃじゃれつつつつつつつつつつつ―――」
先ほどとは比べ物にならない殺意をまとった威圧が『希望』から放たれた。覚悟を決めたかのように言葉を大声で発した飛鳥ではあったが、その威圧に屈服するかのように非常に恐怖と困惑が入り混じった様子で壊れたスピーカーから、流れだす音声のように言葉を発していた。
床に何も広がる液体は存在しなかったが、飛鳥は下腹部の股から液体が広がるような感覚に更にパニック症状に陥る。
「わ・・・わ、わたしからもお願いします・・・。ロジーナさんや纏さ、さんを壊さないでくださ、さい・・・」
「はぁ? ぬいぬい母様まで何を仰っているのですか?」
「ロっ、ロジーナさ、さんも、本気で、でっ、『希望』を嫌っている訳・・・じゃ、な、なくて。ド、ドッキリ、サ、サプライズ? しようとしたら手元が狂って。ふ、ふりょの、じこ、ふりょりょの、事故! なんでっ、すっ! さ、さいしょに、見つけたときっ、つれて、行こうとして、ましたし・・・!」
明らかに真面な返事ができなくなった飛鳥を見つめていたぬいぬいも加わり、土下座をしている姿勢で己の頭を垂れ、震える声で許しを請う。『希望』の声は、明らかに不快そうで不機嫌ではあったものの、飛鳥に向けていた殺意程に凶悪な物ではなかった。全身の毛が恐怖で逆立ちながらも、途切れ途切れの日本語を繋ぎ額を打ちつけるように頭を下げ続ける。
行動判定-2
ぬいぬい→?-2【??】
飛鳥→?-2【??】
【後書き】
戦闘に関しては一度、書き直したのですが書き直したデータをコピペして、修正してハーメルン投稿予定日に登録した時にWindowsのアップデートが唐突に始まってしまいまして・・・。
はい。6時間かけて書き直した収録データが全て爆裂四散し、悲しくなりながら心が折れたので、飽きるというのとはまた別ですが、あの惨敗データで行くことにしました。
いつか書き直します。絶対に『希望』はこの手で叩き潰すののです。