何か新たなトラブルの香りがする北マリアナの海で起きたお話
私 岬明乃
今は当直。艦橋でりんちゃんとお留守番みたいな…そんな感じの事をしています。ちょっと眠いなぁ…
「艦長、入電です。」 そう思っていたら同じく当直の電信員のつぐちゃんが伝声管を使って呼びかけてきた。
「つぐちゃん 入電ってどこからー?」
「えーと…ロシア ウラジオストク校所属 掃海艦MT265 からです。昨日の掃海現場について聞きたいとのと、炊事係の子がノロウイルスとみられる症状だそうで…本艦から今日の分だけでもいいから炊事委員を派遣して何かつくってもらえないか。と言ってきているですが… どうしますか?」
困ってしまった。今は深夜2時、晴風だって多くの乗員は寝ているし、機雷原でみんな緊張した後で疲れている。できれば当直の子以外は寝かせておいてあげたいところだった。
でも…海の仲間は家族だから… 私はシロちゃんに後で怒られるかもしれないと思いつつ、
「主計課の当直の子と私でスキッパーでMT265に行ってきます。以降の本艦の指揮は当直の航海長に一任します。あと学校とテニアンのブルーマーメイドに連絡お願い。」
「りょーかいしましたー。」
つぐちゃん ちょっと眠そうだけどごめんね。りんちゃんに艦橋を任せて私はスキッパーに向かって駆け出しました。
ぶー・ぶー・ぶー 私杵﨑あかねは艦内電話の呼び出し音でうたた寝から起きました。
あ いや 当直だから本当は寝ちゃいけないんだけどね?ちょっとは仕方ないよ…だってさ 今深夜2時だよ?ほっちゃんなんて横で爆睡しちゃってるもん。
「はい 主計課杵﨑です」眠い声で電話に出ると同じく眠そうな声でつぐちゃんが艦長からの指示を手早く伝えてくれた。今からロシアの学生艦に行って朝ごはんとお昼ご飯の支度をしてくるように だって。ちょっとドキドキするけど頑張ろっ。ほっちゃんをたたき起こして私たち主計課二人は艦長が待つスキッパーヘ向かって駆け出しました。
時速100キロを超えるペースで夜の海をスキッパーで3人で駆け抜けていきます。艦長の操縦は上手だけど寝てたのをたたき起こされた感じの私 ほまれにはちょっとつらいかな。
5分くらい走ったかな 艦長が声をかけてくれました。
「あれかな MT265って」艦長が指さしつつ示してくれたその艦はちょっと様子がおかしくて…
「艦長 あの艦ちょっと様子がおかしくないですか…?」
「私もそう思う… 艦長 ちょっと様子を窺ってみましょうよ」
私たち二人は艦長にちょっと待ったをかけました。
艦長も
「うん 確かに様子ちょっと変だね… なんでだろ…」
「艦長‼ あれ 旗が違います!」
あっちゃんがタブレット端末の画面とMT265を見比べて叫んだ。
よく見ると掲げられている旗がウラジオストク校の旗ではない…
どこからどう見たって欧州動乱のときのロシア共産政府の旗なのです。
こういう時に社会の勉強って役に立つんだね。私は大の苦手です… じゃあなんでわかったかって? 実は入試の時の社会科の大門2の歴史分野でこの問題出たんです…。
あの頃は大変だったなぁ ってそんなこと言ってられません。
どうすればいいかなぁ 迷っていたその瞬間、晴風から通信が入った。
「スキッパー直ちに引き返せ‼ その艦から直ちに離れろ‼」
副長が叫んでいる。艦長もただ事ではないと察してすぐにスキッパーを反転させた。
「副長どうしたんですか?」私は副長に尋ねた。あっちゃんも艦長もきょとんとしている。
「MT265からの救援及び支援要請があった旨テニアンのブルーマーメイドに報告したところMT265は3日前に担当教員をボートで海に追い出したのち反乱中との連絡を受けた。
どうも艦内の一部の人間が革命運動に身を投じてしまってそれが艦内に広がっているようで…とにかく何があるかわからない。その救援要請とかだってウソかもしれない。とにかく急いで戻ってくれ。」
「了解 スキッパー引き返しますっ」
そんな感じで私たちは晴風に引き返すことになりました…。
晴風に戻るともうみんな起きてて…というか慌ただしそうに配置についていくところ。
私たち主計課はとりあえず朝ごはんの支度をしなきゃなんだけど…ウソかもしれない救援要請だったとはいえ、ほんとにおなかをすかせてたんじゃないかなぁとか思うとMT265の皆さんの事がどうしても心配で…。そんなことを思っていたら全艦に向けて緊急放送がかかりました。「全艦対水上警戒を厳とせよ 繰り返す 対水上警戒を厳とせよ。特に左舷側のMT265の動向に注意せよ‼」
なんかやばそうな感じがしてきました…
「この調子じゃ 朝ごはんはおにぎりにしないとだね」
非番なのに起こされてたいへんなはずの美甘ちゃんが私たち二人に向かって笑顔で話しかけてきました。ごめんね…当直の私たちがやってなくて…ほっちゃんと二人申し訳なく思いつつ、杵﨑あかね 頑張ってみんなの分のおにぎり作りますっ。
お読みいただきありがとうございました。
本作品は晴風が機雷原をくぐり抜け南進する途中の一コマを書きました。MT265は実際はロシア太平洋艦隊 カムチャツカに配置されている掃海艦大隊の1艦です。もしかしたら 続くかもしれません…