ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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これにて終了!


彼はラスボスの器では有りませんでした

「貴方と出会ってからリゼヴィム様は変わってしまわれた。あの方にお使えする事だけが私の使命でしたのに。……だから、あの方が死んだのは貴方のせいです」

 

「いや、話が全く飲み込めません。ですが、その神器は私の友人の物ですよね? ……なる程、これは戦う理由が私にもありますね」

 

 ユークリットは虚ろな目で黄昏の聖槍を撫でながら、柳は眉を顰めながら銃を取り出して互いに構える。ゲオルクはそれを見物する気なのか少し離れた場所に用意した椅子に座りワインを注いだグラスを傾けた。

 

「さて、始めましょう。といっても私の実力は魔王クラス。せいぜい上級悪魔クラスの貴方では勝てません。……そして」

 

 ユークリットが指差した先には周囲を囲む趣味の悪い石像。しかしその趣味の悪い見た目とは裏腹に強力な力が発せられていた。

 

「……禁手封じですか。遭遇早々に使おうと思っていたのですが……」

 

「えげつないですね。ほら、こういう時ってまずは互いの実力を確かめ合ってから」

 

「馬鹿ですか? 勝てる時に勝たないと意味がないでしょうに……」

 

 柳は馬鹿にしたようぬ大袈裟に肩を竦めると溜息を吐く。それを見たユークリットの額に青筋が浮かび、柳が構え直す前に飛び掛った。

 

「人間如きがぁぁっ!!」

 

「待てっ! 殺すなっ!!」

 

 柳へ槍の矛先が迫り、その並々ならぬ殺意に焦ったゲオルクは立ち上がる。そして柳は避けようともせずに銃口を向けた。

 

「コキュートス」

 

 銃口から放たれた膨大な冷気はユークリットを包み込み、其れだけに留まらず真正面の空間全てを凍り付かせた。

 

 

 

「……あっ。あっちには羽衣さんと言彦さんが居る方向でした。……まあ、あの二人なら大丈夫でしょう」

 

 その言葉の割には冷や汗ダラダラである。ゲオルクは口を半開きにした間抜け顔で固まっていた。

 

「馬鹿なっ!? 彼の実力は魔王級だぞっ!?」

 

「ええ、確かにそうでしたね。でも、今の私はそれ以上というだけです。……八坂さんは何処ですか?」

 

 柳は服に付いた霜を払うと笑みを浮かべてゲオルクに銃口を向ける。ゲオルクの目には銃口の中に冷気が集まっているのがはっきりと見えていた。

 

「……こんな所で! こんな所で死んでたまるか! 私が究極の存在になるのにどれだけの年月を過ごしたと思っているんだっ! 子孫の体を奪い続け、後は七十二柱の内、グレモリーとバアルの魂、そしてオーフィスとグレートレッドの魂を取り込めば最強にして最高の魔術師になれたんだっ!」

 

 命の危機を前にしてゲオルクの余裕は剥がれ落ち、怒りに任せて叫ぶ。その背後に拘束された八坂が出現し、

 

「そうだっ! 此奴を殺されたくなければ……」

 

 其れが致命的な失敗となった。

 

 

 

 

 

「げっげっげっげっげっ! 新しい! ……とは言えんやり方だな」

 

「確かに古典的な小物じゃのぅ。まあ、いくら大物ぶって力を得ても、性根は変わらぬという事か」

 

 ゲオルクの背後から八坂の姿が消え、代わりに柳の背後に八坂を抱き抱えた言彦と羽衣の姿が現れる。そして、更に二つの柩が出現した。

 

「八坂さんの居場所が分かるまでは下手な事が出来ませんでしたが、もう安心ですね。……そうそう、発動してから十年少しの間に私の神器は進化していましてね。……どれほど離れていても召喚した従者を傍に呼び出せるのですよっ!」

 

 柩の蓋が内部より吹き飛び、中からゼノンとミラが現れた。

 

「全部っ! 全部芝居だったという事かっ!?」

 

 ゲオルクは咄嗟に停止結界の邪眼を発動する。だが、目の前の誰も止められていない。続いて聖剣創造と魔剣創造を同時に発動して六人に放つも虫でも払うように振り払われる。長い間掛けて身に付けたあらゆる魔術もゼノンが指先で払いのけ、言彦の拳圧で弾き返される。もう、ゲオルクには対抗する手段が残っていなかった。

 

「……柳さん。私、小腹が減りました。あれ食べて良いですか?」

 

「ちゃんと髪の毛一本魂の一欠片も残さないんですよ?」

 

 ミラの影がミラを包み込んで膨れ上がっていく。やがて其処には漆黒の体を持つ龍が現れた。

 

『……頂きます』

 

「ひっ!」

 

 ゲオルクは咄嗟に飛んで逃げるもミラはそれを追っていく。ミラが何度歯を噛み合わせるもゲオルクにはわずかに届かないが、それはゲオルクが早いからではない。わざとギリギリ逃げられるように弄んでいるのだ。どちらかが些細なミスをしたら即終了の命を掛けた鬼ごっこ。だが、最後の最後で運はゲオルクに味方した。

 

「……もう良いや。頂きます!」

 

 ミラの口が完全にゲオルクを捉えたかに思われたその瞬間、ゲオルクの全ての魔力を使った移動する場所も分からない死に物狂いの転移が成功し姿を消した。

 

 

 

「……逃げられました?」

 

「……ああ、間抜けが。だが、奴も運が悪い。この世界で唯一我より強い者の居場所に転移したようだ。……さて、仕事は終わった。戻るぞ」

 

 ゼノンは柳を抱き寄せ、ミラと羽衣、そして八坂を腕に抱いた言彦を自分の体に掴まらせ、京妖怪の城へと転移していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……此処は何処だ?」

 

 ゲオルクが転移したのは何処かのお店。どうやら蕎麦屋のようだ。命の危機を脱したゲオルクは落ち着いた事で段々怒りを感じ始めた。それは彼の驕りというべき誇り高さによるもの。そして、それが彼が最後に感じた怒りであった。

 

「……誰だぁ?」

 

「ッ!」

 

 後ろから聞こえて来た声に反応したゲオルクは咄嗟に近くにあった包丁で斬りかかる。だが、それは声の主の指で挟まれてとめられてしまった。

 

「強盗かぁ? いや、お前はまっとうな生き方の人間ではないなぁ」

 

 声の主が挟んだ包丁はビクともせず、筋肉が異常に膨れ上がっていく。それと同時に異常なオーラが発せられだした。

 

「ば、化物がっ!」

 

 

 

 

 

 

「化物? 違う、俺は悪魔だぁ」

 

 次の日、駒王町の蕎麦屋の屋根に大穴が空き、其処の入婿の主人が奥さんに怒られていた……。

 

 

 

 

 

 そして数年後、柳達が別の世界の移住する日がやって来た。この日までに色々有り、それに対処する為の同盟に参加する代わりにアナスタシアやアーサー達の罪は免除され、ゼノンの力によってグレートレッドを倒しても次元の狭間は安定するようになってオーフィスは再び静寂を得た。

 

 

 

 

「……ねぇ、見送りに行かないくて良いの? 私は別に親しい訳じゃないから行かないけど」

 

 他の者が見送りに行く中、アーシアはグリゴリの本部の自室に居た。アナスタシアの問いに対し、アーシアは浮かんだ涙を拭って笑みを作る。

 

「……良いんです。私、振られましたから。だから、今度会うまでにもっと女を磨いて私を振った事を後悔させてあげますよっ!」

 

「あら、良いわね。なら、私に任せときなさい」

 

 

 

 更に数年後、各陣営の若手達も親になっていた。

 

 

 

 悪魔陣営

 

 

 

「お父様~! お母様が虐めるの~!」

 

 此処はグレモリー家の屋敷の一つ。婿入りしたライザーとリアスが住む屋敷だ。其処では一人娘のアリスがライザーに抱き着いていた。

 

「ちょっとライザー! アリスを甘やかし過ぎって何時も言ってるでしょ! 今日だって家庭教師から逃げ出したのよ」

 

「そう煩く言うなよ、リアス。ほら、あっちでお父様と勉強しようぜ。ちゃ~んと勉強したら遊んでやるからよ」

 

「は~い!」

 

「……もう」

 

 ライザーはリアスの小言を聞き流しつつ愛娘を抱きしめて歩いていく。リアスも多少不満そうだが本気で怒っておらず、どこか楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

「イリナッ!」

 

 一誠は慌てて病室に飛び込む。すると其処にはベットで寝ているイリナ、そして生まれたばかりの双子の姿があった。

 

「ふふ、貴方に似て元気な男の子達よダーリン」

 

 イリナは一誠に愛おしそうな笑みを向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 堕天使陣営

 

 

「パパー!」

 

「止めろ、ヴァリナ」

 

 青い髪をした少女が自分を肩車するヴァーリの口の両側に指を引っ掛けて引っ張る。足元では白い髪の幼女がヴァーリの袖を引っ張った。

 

「お父さん。レイヴァルがおしっこだって……」

 

「……そうか。なら、オムツを取って来てくれ白恋(はくれん)

 

 今日は妻三人(小猫・ゼノヴィア・レイヴェル)は出掛けており、娘達は使用人よりもヴァーリの言う事を優先するので暇なヴァーリは娘の世話にてんてこ舞いだった……。

 

 

 

「じいじ~!」

 

「遊んで~」

 

「遊ぼ~」

 

「へいへい。……ったくアナの奴、生まれたばかりの曾孫をコカビエルに会わせに行くからって全員押し付けやがって」

 

 アザゼルは文句を言いながらもやんちゃ盛りな三つ子の曾孫達の世話を喜々として焼いていた。なお、仕事は溜まる一方である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、とある魔界。魔王神を名乗る女悪魔が支配する其の世界では今盛大な兄弟喧嘩が行われていた。

 

「行っくぞ~!」

 

「行きますよ~!」

 

 龍の翼を生やした男の子と狐の尻尾を生やした女の子が白髪の少年に向かって襲いかかる。男の子は空中から蹴りを、女の子は地を這うように高速で移動しながら少年へと大槌を使って攻撃を仕掛けるも少年はそれをそれぞれ片手で受け止めた。

 

「……いい加減にしろ、愚弟に愚妹」

 

「え~! だってゼオン兄ちゃんがプリン一個多く食べたのが悪いんじゃん! なぁ、玉藻」

 

「そうですよ! 私とミラルが最後の一個狙ってたんですから。絶対許さねーですよ」

 

「……悪かった。二個ずつ買ってやるから許せ」

 

「「やったー!」」

 

 ゼオンと呼ばれた少年は弟と妹の喜ぶ姿を見て笑みを浮かべると手を繋いで歩いていく。その姿を遠くから眺める者達が居た。

 

 

 

「うんうん、あの子にも兄としての自覚が出て来ましたね」

 

 少年から青年へと成長した柳は満足げに頷く。その背後には腹部が膨らんだ三人の姿があった。

 

「まったく、ミラルは何時まで経っても腕白で困りますよ。……羽衣さん、玉藻ちゃんも問題ですが……子育ての経験あるの貴女だけですよね?」

 

「ふむ、誰かさんが甘やかしたからな……。まったく、寝所では甘え、娘は甘やかすとは困ったものじゃな」

 

 羽衣は柳をじっと見るがその目は怒っていない。どちらかと言うと惚気の類だろう。その横では安楽椅子に座ったゼノンが優雅に紅茶を飲んでいた。

 

「……我が子の成長とは良い物だな。やはり戦いなど捨てて良かった。色々あったが、我は今幸せだ」

 

 ゼノンは紅茶を口に含むと魔王神ではなく、ただの母親としての柔らかな笑みを浮かべる。それはこの世界に来て母になった時から浮かべだした笑顔だった。

 

 

 

 

 

 様々な世界で様々な出来事が今も起きている。其処では物語における主人公と呼べる者も居れば、悪役と呼ばれる者達も居る。その中には雑魚と呼ばれるような者も居ればラスボスと呼ばれるような者達も居る。

 

 

 

 

 これはそんなラスボス達を喚びだした少年の話。そして、此処から先の物語はその子供達が紡いでいくが、それはまた別の話である。

 

 

                     完




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新作は予定を変更してアンノウンを投稿してまだ余裕が有る休日に他の投稿と同時進行していきます
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