蒼穹のファフナー ~The Bequeath Of Memory~   作:鳳慧罵亜
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2週間振りの投稿、じわじわとお気に入りが増えていくのを見て嬉しく思う反面、上手くかけているか不安になる日々が続いていく。

それはそうとカノンも良いけど真矢も可愛いなあと思う今日この頃。
松本まりかさんの地声が真矢とあまり変わらないことを知って驚いたのは1年前の話である。

それでは、どうぞ。


共闘

着水した人類軍緒方輸送機―――C300から発進した人類軍機は、真っ直ぐに彦島へと向かっている。

「1番機は上空、2番機はトーチ型を支援!」

其々形状が異なる青いファフナー。その先頭にいるファフナーのパイロットが、他の機体へ指示を飛ばす。

「俺はソードを振り回してるヤツとやる!」

「了解!」

「やっと戦えるね」

先頭の指示を受け、女性と男性が受け答えをする。そして、海岸線近くで3機は分れ、各々指定された竜宮島ファフナーのもとへ向かう。それぞれ1機は沖、マークジーベンの居る方向へ、1機はマークノインが居る方へ、1機はマークツヴォルフがいる方向へと、単機でフェストゥムと戦っているファフナーの方面へ移動、合流する。

これにより、分断されずにいたマークフュンフとマークツェーン以外のエリアも2対1という構図でフェストゥムと戦闘する形となる。

最も早く竜宮島のファフナーと合流したのは、重装甲の空戦型機である。

上空から下降し沖の海面近くを滑空するフェストゥムを追うマークジーベン。両者の速度はほぼ拮抗しており、距離はなかなか知縮まらない。

そこへ、上空から青いファフナーがマークジーベンを追い越し、海面近くを飛ぶフェストゥムへと迫る。

「速い……!」

それを見た真矢も思わずそうつぶやくほどの速度で、青いファフナーは敵へ迫り、両手に保持したアサルトライフルの引き金を引く。

が、フェストゥムもまた速度を上げ大きく、不規則に体を左右に振る。それにより、青いファフナーの発射するアサルトライフルの弾丸はことごとく回避されていき、やがて敵を撒くように速度を落として急反転、今までとは真逆のマークジーベンの方へと飛んでいく。

「ッ!」

まんまとフェストゥムに躱された重装型機体の搭乗者は悔しそうに振り返り、機体を反転させる。機体の速度が速すぎて、急に速度を落としたフェストゥムを追い越す形になってしまったのだ。

実は、真矢のファフナーもフェストゥムを追っていた時のあれが全速力と言うわけではなく、もう少し速度を上げる事も出来た。が、フェストゥムを追う際に一瞬でも速度を上げなかった理由がここにある。彼女は、直前の訓練の時、溝口恭介の意地悪により彼を機体速度の出し過ぎで彼を追い越してしまっていた。

その際溝口に「ダメだぜぇ?速く飛べるからって、敵を追い越しちゃあ」としゃあしゃあと言われていたのだ。つまり、彼女は敵に追いつこうとするのではなく、追いついた後追い越してしまうことで隙を晒す事のないよう、ある程度の距離を保ちながら敵の隙を探すように注意していたのである。

逃げおおせたフェストゥムは小さく体を左右に振りながらマークジーベンへと突進するように迫る。

そして、真矢も先程から速度を落とすことなくフェストゥムに接近する。互いに接近し合うことでその相対速度は極めて速い。万が一衝突することになった場合、機体の大破は免れないだろう。再生能力を持つフェストゥムと持たないファフナーでは、決定的なアドバンテージの差が存在している。

だが、その危険性さえ今の真矢の表情を崩すことは叶わず、彼女は機体の速度を維持し続ける。

「……」

左右に体を振るフェストゥムに合わせるようにこちらも機体を左右に振る。そうして敵が体を揺らすことで定まらない射線のブレを調整していくのだ。

そして、互の揺れが重なり射軸が定まった瞬間を狙い、引き金を引いた。

マズルフラッシュと共に発射された徹甲弾は、まるでそれが当然であるかのようにフェストゥムの頭部、やや中央から外れた箇所に着弾。その衝撃でフェストゥムは体を大きく揺らし、体勢を崩して飛行速度も一気に低下する。その隙を狙ってマークジーベンはフェストゥムの脇をすり抜ける。

この間、僅か数秒の出来事である。

互いに接近し合っている状況では10秒と立たないうちに激突するであろう。その事実は本能的な焦りを生み出し、衝突のダメージを無意識にイメージすると共に自らの動きを恐怖で縛ってしまう。

にもかかわらず、彼女は当然のようにほんの数秒足らずで射線を調整し、見事に命中させたのだ。

正しく驚異的な技量であり、その光景をみた人類軍のパイロットも思わず一瞬、驚愕に顔を染めることとなる。

「あの速度で当てた!?なんて腕なの―――」

驚くと同時に、ある種戦慄してしまう。極めて高い相対速度が出ている状態で、初撃1発で敵に痛手を叩き込む。これほどの狙撃技術を持った人物は今まで、人類軍全体でも聞いたことが無かったのだから。

そして、今の1発でかなりのダメージが入ったに違いなく、後1発確実な一撃を撃ち込めばこの影は倒せる。真矢は経験則からそう判断した。

あとは、もう1発を確実に当てる状況に持ち込むのみである。

――――

マークノインは苦戦を強いられていた。火炎放射器『サラマンダー』。フェストゥムの体組織を崩壊させる気化燃料を放射する武装だが、現在交戦中のフェストゥム、スフィンクスB型に有効なダメージを与えられていないからだ。

最高温度2,000℃にも及ぶ火炎放射だが、フェストゥムは両腕をクロスするように防御しており、一向にダメージを与えられている様子は見受けられない。

最も、これは『サラマンダー』自体が全く効いていないのではなく、両腕にフェストゥム特有のバリアを集中展開しており、それにより直撃を避けている為と言ったほうが正しい。もし火炎放射が直撃していれば、10秒と経たないうちにフェストゥムの体は崩壊し消滅しているだろう。

だが、如何に強力な武装も直撃をさせなければ有効打とはならない。本来、彼女の武装は味方と連携してこそ、その高い威力を発揮できるものだ。

そして逆に言えば防御に集中している分、フェストゥムも攻撃に移ることは出来ないでいる。

フェストゥムも攻撃をする為に何度も移動しているが、その移動に合わせて『サラマンダー』も制圧射撃のように追従して放射されており、防御に徹するしかないのである。

苦戦をしているといってもマークノイン、里奈は決して不利には置かれてはいない。いわば膠着状態を呈している。

が、このままでは『サラマンダー』の燃料が切れ彼女は膠着状態から一転、一気に振りに追い込まれる。だが、彼女に膠着を破る手段はなく、そしてそれはフェストゥムも同じ。だとすれば、この状況を打破するのは彼女等以外の、第3者によってでしかなされない。

よって、この介入は必然と言えるだろう。

マークノインの背後に、突如降り立つ青い影。レイが、グノーシスモデルの発展系と予測、判断した機体がここに現れた。屈んだ状態の着地体制から、ゆっくりと起き上がる機体は、標的を定めると左肩下部に搭載されている機関砲をフェストゥムに向け発射する。

その瞬間、フェストゥムは両腕で火炎放射を弾くと同時にその場から急速離脱。青いファフナーの射線から逃れようとする。

そのフェストゥムに機関砲で牽制しながら、青い機体はマークノインに接近した。

「やあ、お邪魔するよ」

青い機体の搭乗者は胸元にぶら下げたネックレスを揺らしながら、明朗にそう告げた。無論、無線機のないノートゥング・モデルにはその声は届くことはない。

それを確認したマークノインの搭乗者である西尾里奈は突然の闖入者に感謝することなく、寧ろ嫌がるように口を開いた。

「なんでコイツ等が来んのー?」

『今は必要な連携だ。文句を言う前にやるべきことをやれ』

その里奈の呟きに応えるように、彼女の傍に皆城総士の紅い幻影が現れる。それに里奈は渋々と言ったように「はーい」と返事をした。

こうして、互いにスレ違いながらも、即席の連携が成されるのだった。

――――

マークツヴォルフは一度距離をとった。自身の装備である『レヴィンソード』の刀身がフェストゥムの腕から伸びる触手に絡め取られ、折られてしまったからだ。折れた刀身は高く弧を描くように回転しながら落下し、マークツヴォルフから離れた位置に突き刺さる。

一見丸腰になったマークツヴォルフだが、実は戦闘能力を完全に失ったわけではない。彼女の機体には標準装備の『デュランダル』『マインブレード』以外にも、強力な装備が存在している。

それの使用する隙を見出すため、一旦距離をとったのだ。

フェストゥムは追撃をかけるため、左腕から伸ばされた触手を戻しながら右腕を引き絞るようにして攻撃体制を取る。

が、直後―――横から飛来する水色のプラズマ弾がフェストゥムに直撃した。

直撃したプラズマは破裂し、水色の爆炎を作る。その衝撃でフェストゥムは体勢を崩し、そのままプラズマ弾の飛来した反対の方向に倒れ込んだ。一体何が起きたのか、その全ては鏡のように磨きこまれた『レヴィンソード』の刀身に写りこんでいた。

空から接近している青い機体が銃剣のような武装を構え、そこから高速のプラズマ弾を発射していたのだ。

それは地面に突き刺さった刀身が横たわるその瞬間まで、鏡写しに鮮明に投影されていた。

「―――なに?助けてくれるの?」

マークツヴォルフに登場する立上芹は、驚いたように青いファフナーが居る方向を見た。そのファフナーはこちらに軽く会釈するように手を向けると着地し、フェストゥムに向かって滑るように地面を滑走しだした。

それを見た芹はフェストゥムと青い機体に対して十字に挟む様に逆サイドに移動する。西尾里奈と比べて、スムーズにこちらは連携を始めていた。

――――

人類軍との共闘が始まって数分で決着の時は来た。

1番早かったのは、やはりマークーベンのいる海上方面だった。
第3ヴェルシールド付近を戦場をにし、フェストゥムの後を追いかける形の青い人類軍製ファフナーは。装備しているアサルトライフ―――ガルム系の発展型であろう。

その武装の上部ユニットから2発のミサイルを発射する。

ミサイルの1発はシールドスレスレを飛行するフェストゥムに躱されシールドに直撃し、発生するシールドの赤い波紋と共に爆発する。2発目は海上スレスレに移動したフェストゥムを追いかけるが、上に回避され海上へ着弾し、水飛沫を上げる。

ミサイルを躱したフェストゥムは遠巻きを旋回していたマークジーベンの背後に回り込むと、ワームスフィアの変形であろうか、自身の眼前にワームスフィアを形成、そこから矢尻状のワームを多数マシンガンのように連続して射出した。


完全にこちらの知らない攻撃形態を取ったフェストゥム。それをCDCのモニター越しで見ていたレイは「なっ!?」と驚きの声を上げ、不意をつかれた形となったマークジーベンの、一瞬後の機体破壊を幻視し歯を剥き出しにして顔を歪めた。



だが、真矢はフェストゥムがワームを自身の眼前に形成した瞬間を後ろ目に確認、攻撃手段を瞬間的に察知したかのように放たれるワームを機体を左右に揺らすことで回避していく。






偏に、これは真矢の持つ天才症候群(サヴァン・シンプトム)。「異常推測能力」によるものである。

彼女は、相手の表情や仕草を見るだけで、考えていることが概ね把握することができる。これにより彼女はフェストゥムが自らの目の前にワームを展開したことを見て、「直接的な遠距離攻撃を仕掛けようとしている」ことを察知し、即座に回避行動を移すことができたのだ。

そして、そのスキを狙ってフェストゥムの真上に陣取った青いファフナーが、今度はアサルトライフルに取り付けてあるグレネード弾をフェストゥムへ向けて発射した。発射されたグレネードはやや軌道がブレながらもフェストゥムの眼前、海面に(・・・・・・)着弾。着弾したグレネードは爆発し、先ほどのミサイルの倍はあろうかというほどの大きさの飛沫を上げた。

一見狙いを外したように見えるこの攻撃。それは直接的なダメージを狙ったものではなく、マークジーベンの攻撃のアシストのために撃たれたものだ。水しぶきによりワームスフィアが掻き消され、フェストゥムも体勢を崩す。それにより矢尻状のワームも止んだ。

それを確認した真矢は機体の手を海面に差し入れると、それを軸にするようにして水しぶきを上げながら一気にフェストゥムに向けて反転した。

飛行による慣性により大きく横に流れながら反転したため、手を差し入れた海面からまるで海面を切るようなしぶきが上がっていく。

急反転により体にはかなりのGが掛かっているはずなのに、彼女の表情には僅かの機微も感じられず、只々冷静に標的を定めている。機体も未だ横に高速で流れているにも関わらず、彼女はまるで体が静止しているのではと思ってしまうほどに、その標準と銃口は一瞬たりともズレる事なくフェストゥムを捉え続けている。

そして、自身のイメージが完全にフェストゥムを捉え、それを表すかのように真矢の目が細まる。直後

Pi――――

ロックオンを告げる電子音がコクピット内に響き、真矢は躊躇なく引き金を引いた。

銃口から閃光とともに撃ち出された徹甲弾。それはまるで吸い込まれるように、初めからそうなることが決まっていたかのようにフェストゥムの頭部に穴を穿つ。

直撃した徹甲弾の衝撃でシリコンの破片が飛び散り、体を仰け反れせるフェストゥム。


そして、そのまま動くことなくワームスフィアの黒い球体に飲み込まれ、無へと帰っていったのだった。


――――


マークノインと青いファフナーは1箇所に固り、火力線を敷いた。
青いファフナーによる機関砲での牽制。そして、マークノインによる『サラマンダー』での制圧攻撃。同時に放たれる青い機体によるミサイルの3段攻撃。

牽制の機関砲を躱すフェストゥムは躱した方向から放たれる火炎放射を受け止める。そして、防御したことにより動きを止めたところへミサイルが迫り来る。

フェストゥムはミサイルを避けるため、火炎放射を弾き飛ばすが既に遅い。急速離脱を試みるものの、複数のミサイルにあっという間に追いつかれてしまい、その直撃を受けた。

爆炎に包まれるフェストゥム。複数のミサイルの直撃はフェストゥムの影を削りきるのには十分過ぎた。ミサイルの爆煙が消える前にその煙の中から、ワームスフィアが出現。フェストゥムの消滅が確認された。

「むぅぅ……」

里奈は不承不承といった面持ちで、『サラマンダー』を下ろす。彼女的には自分1人で事足りる戦闘に、ただでさえ信用できない存在筆頭である人類軍に手助けをされたという事実が、どうにも容認できない様であった。

――――

マークノインと、彼女と連携を取っていたファフナーの攻撃により消滅するフェストゥム。

その真下では、マークツヴォルフと連携を取っていた青いファフナーが、フェストゥムに肉薄していた。自身の装備品である銃剣のような武装をフェストゥムへ突き刺していたのだ。

その銃剣は、ルガーランスと同様の使用法を想定しているのか、青いファフナーはそれをフェストゥムに突き刺したまま、刀身を広げた。ルガーランスに比べれば広がり幅は狭いが、それでもプラズマ弾を発射するには十分な隙間ができる。

そして、青いファフナーは突き刺した銃剣をフェストゥムに押し込むようにしてプラズマ弾を発射。水色の閃光とともにプラズマはフェストゥムの身体を突き抜ける。射撃の衝撃により突き刺した銃剣はフェストゥムから引き抜かれ、フェストゥムはその衝撃により蹌踉めくが、直様右腕を振り下ろして反撃する。

が、青いファフナーは背部のブースタを起動し、空中へ逃れる。

そして、その隙を突いて別方向から攻撃を試みるマークツヴォルフ。この機体にのみ装備されている特殊武装『ショットガンホーン』を起動する。背中の突起物が反転し、頭部に角が生えたような形態を取る。そして、イージスとなじ様なフィールドを三角錐状に展開。

頭部を突き出す形で突進するマークツヴォルフを、フェストゥムは躱すことができずに直撃を受ける。先ほど青いファフナーが銃剣を突き刺した胸部へ上乗せするように突き刺された『ショットガンホーン』突進の勢いも加わって、このフェストゥムの影には十分に致命傷となった。

「はあああああああああああ!!!」

女性としては、いっそ雄々しさすら感じさせる雄叫びをあげ、立上芹は突き刺したフェストゥムを上空へ放り投げる。

空中へ投げ出されたフェストゥムは既に力尽き、身動きひとつ取らないまま消滅していった。

そんなあまりにも予想外の攻撃方法にその光景を上空から追撃を掛けるべく旋回していた青いファフナーの搭乗者は思わず2度見してしまった。

「頭部で攻撃するのか!?あの機体―――」

まさか頭突き用の武装があるなんて―――搭乗者に合わせた調整を施す技術者と、その武装で実戦的に戦える技術力に思わず感心してしまったのだった。

――――

そして、消滅した3体は影。最後に残る本体はマークフュンフとマークツェーンの2機と対峙していた。

フェストゥムは執拗にマークフュンフの展開する防護シールド『イージス』のフィールド越しから何度も打撃を加えているが、その程度ではマークフュンフは小揺るぎもしない。

むしろ、その攻撃によって生まれる隙をじっくりと待ち構える時間を作っていた。

そして、フェストゥムが両腕を広げ、フィールドに突き立てた瞬間、マークフュンフ―――堂馬広登は後ろを振り向いた。

「暉!!」

その声に応じるように、マークツェーンは片手で『ドラゴントゥース』を持ち上げ、マークフュンフの右肩に銃身を乗せた。

フェストゥムはなおも激しく『イージス』のフィールドを叩くが、前のめり両腕が広がり気味で叩きつけられた瞬間に、『イージス』中央のフィールドが消失し、露わになったマークフュンフの胴体から突き出された『ドラゴントゥース』の銃口が、前のめりになっているフェストゥムの胸部に密着する形で突きつけられる。

「ああああああああああアアアアア!!!」

声が裏返りながらも雄叫びを上げる暉。昂ぶる感情のままに引き金を引く。密着状態で発射された弾丸はフェストゥムの内部を蹂躙する。金色の表面が醜く膨れ上がり、破裂寸前の様子を呈した瞬間、もう1発ダメ押しの弾丸が発射され、膨れ上がった胸部は水風船を割ったかのように破裂し、内部の赤いシリコンを生物の血と肉の様にまき散らす。

そのまま地面に仰向けに倒れるフェストゥム。胸の中央に円形に表面が剥がれ、内部がむき出しになったその有様は神々しさすら感じさせるその幻想的な姿とはかけ離れた
あまりにも醜い内面を晒していた。

その醜き赤いシリコン。胸部の中央、やや右に存在し太陽光を反射して緑色に光る結晶こそが、このフェストゥムの心臓である「コア」と呼ばれる物質である。

コアを破壊すればこのフェストゥムは完全に消滅することとなる。フェストゥムはそのコアを覆い隠すように自己再生を始めていた。

徐々に剥がれた表面が元に戻っていき、赤い部分が小さくなっていく。コアもまた、赤い肉の様なものに覆われていく―――

その前に、マークフュンフの両手に構えるマシンガン『スコーピオン改』から発射された弾丸が、コアを破壊した。連射される弾丸の脅威にさらされたコアは一瞬で粉々にされ、フェストゥムから消失する。

その様を見届けたマークフュンフはその場から飛びのいて離脱した。

「―――まだ、解り合えないんだな。お前等と……」

止めを刺され、消滅を待つのみとなったフェストゥムを見て悲しそうに呟く広登。いつか、フェストゥムとも解り合い、共に生きていけると信じている彼の目線は未だそのフェストゥムへと向けられていた。

フェストゥムは真っ黒に変色―――ただの珪素の固まりへなりながら、ワームスフィアと共に消滅していった。

――――

「―――ふぅ」

CDCで、戦闘の行く末を見届けたレイは軽く息を吐いた。

一時は肝が冷えた場面もあったが、何とかこの場は切り抜けられた―――。そして、これから続いていく戦いの為に必要なものも理解し、思考をまとめていく。

―――まずは2年間のブランクの解消。そして各自の戦闘法及び陣形の調整。まずはここから始めていきましょう―――。と必要な事を纏め、思考を中断する。

「敵の消滅を、確認!」

要澄美の状況報告が成され、一瞬場の空気が弛緩する。


「救護班は、溝口さんの救出に向かってください」


―――だが、その空気は直後に塗り替えられることとなる。




『SOLOMON』





ブザーと共に表示された敵の新たな反応。それだけで弛緩した空気は再び緊張状態に戻り、解析が進められる。

「ソロモンに応答―――っ、何これ!?」

3Dレーダーに映し出されたモノは、今までに見たことが無い、警告音が鳴り響くほどに巨大な質量のワーム。そして、その反応が消失するとともに「それ」は姿を現した。

「―――」

「―――」

「―――」

「あれは―――」

中央モニターに映し出された映像を見て、周りが絶句する中、レイは僅かに反応を返した。

そう、最初に対応した元軍人のジェレミーが思わず「何これ」と口走ってしまう程に、CDC内の皆が絶句してしまうほどに、それは異質なものだった。

――――

海上では既に救護部隊を乗せた船が溝口の近くにやってきていた。

「おーい!」

簡易的な1人用救命ボートに包まれた溝口は無線機を握った右手を振りながらこちらに向かってくる船へ声をかけた。

「陣内!ここだ、ここー!!」

溝口の視線の先には、特殊部隊用の高速艇がこちらへ向けて進んできており、その船首に1人の男性が手を振りながら溝口に応えている。

「オヤジさーん!今行きま―――!ッッ」

笑顔で溝口の声に応えていた陣内だったが、その視界に映ったものを見て表情を一変し、険しいモノに変える。それをみた溝口は怪訝そうに「?なんだぁ―――」と後ろを振り向く。

「―――ッな!?」

溝口も目の前に広がった光景を見て、驚愕に表情を染めた。

そこには―――












―――あまりにも、巨大な『祝福』の姿がそこに在った―――。















――――


突如姿を現した巨大なフェストゥム。その周囲を旋回するマークジーベン、真矢も驚きを隠せないでいた。

「フェストゥム……なの?」

「何だ……あの巨大さは……」

ジークフリートシステムを司る皆城総士もまた同じ、その表情を驚愕に染める。5年前も、2年前も、あのような存在はデータ上にも存在していない。正しく初めて見る光景であった。

ただ一つ、人類軍の面々だけはその存在に対して特別驚く様子を見せていない。

「追ってきたか……」

先程、真矢との通信に応じた男性は、輸送機内そ座席に座り、手元のモニターでその存在を認識し、やはりか―――という感想を得た。彼の前の席に座っている少女は、静かに目をつむる。

「こんなところにまで……」

「ッ……しつこいっ」

「っく……」

青いファフナーのパイロットたちも3者3様の反応を示す。が、その中のだれもがまるでそれを災害を見るかのような、いかにも忌々しくもどうしようもないかのような眼でその存在を唾棄していた。

彼らはこの巨大なフェストゥムを知っている様子だ。あらかじめ知っているならば、確かに驚くことはないだろう。そう、その巨大なフェストゥムは輸送機に乗っている男性の言葉通り、追っているのだ(・・・・・・・)

巨大なフェストゥム。その顔に当たる部分は静かに竜宮島を見据えている。はたして、その黄金の貌は何を捉えているのだろうか。彼らにもし、思考というものがあるのだとしたら、島を見据え、何を思っているのだろうか。やがて、巨大な『祝福』はその目的も、胸中もなにも明かさないまま、本当に何もアクションを起こさないままにその姿を薄れさせていった。

CDCは今までに見たことのないフェストゥムの存在に最大級の警戒態勢をとっていたが、そのフェストゥムの反応がソロモンから消失したのを確認すると、しんと静まり返った広い室内に、どこからか安堵のため息が漏れた。

「ソロモンが沈黙……消えました」

ジェレミーからの報告を聞いたCDCからは安堵の息が静かな空間に響く。

「余程重要な存在を島に入れたようだ……」

真壁史彦は深刻な面持ちでそう呟くと、脱力して椅子に座り込みもたれ掛かった。大きく息を吐いて、言葉を続ける。

「フィールドを解除。来訪者を、招き入れよう」

「はい。何はともあれ、会って話をしてみないことには判断はできませんね」

史彦の言葉にレイは頷き、踵を返すとCDCを後にした。その表情は険しく、新たに出現した脅威や島に来訪した人類軍、そしてこれから起こりうるであろう問題の数々を想像すると、やりきれない気持ちになる。

彦島では先程戦闘を行っていたマークフュンフ、マークノイン、マークツェーン、マークツヴォルフの4機が1箇所に合流していた。

彼らは揃って上空を見上げている。

彼らの上を3機の青い人類軍ファフナーが通過して行き、輸送機へと戻っていった。。驚くことにあの3機はそれぞれ機種が違うにも関わらず揃って飛行能力を備えているようだ。その様子を見ていた4人。特に、マークノインに搭乗する西尾里奈は人類軍を警戒するように睨みつけていた。だが、すぐにジークフリートシステムから指令が入る。

『何をしている。帰還しろ』

「あっ……―――」

彼の指示に物申すかのように、ジークフリートシステムに座っている皆城総士の前に、里奈の紅い幻影が現れた。

『だって、あいつら信用できないですよーっ!』

それに対して、総士は子供に言い聞かせるように、嗜めるように口を開く。

「忘れるな。ファフナーに乗れば乗るほど同化現象に襲われる」

その言葉を聞いた里奈は「うう……」と痛いところを疲れたと言わんばかりに、それでもまだ何か言いたげにするが、総士は取り合わない。

「戻って検査を受けろ」

『はーい……』

再度の指示に里奈も不承不承といった形で拗ねたように返事をして戻っていく。それを見届けた総士は「全く……」といった面持ちでため息をつく。

『マークツヴォルフ。帰還します!』

『ほら、大丈夫か暉』

『ありがとう―――っ。助かる』

次いで芹の凛々しい声が上がり、その後に肩を貸しているのだろうマークフュンフと今回唯一の負傷者である暉の声が届く。仲間同士での連携や人間関係は相変わらず良好な様子で、先程も分断されるまでは連携は上手くやっていた。

その事実を再確認した総士は、「ふ―――」と僅かに苦笑を漏らした。そして、ファフナー全機のドッグへの帰還を確認したところで、自分もジークフリードシステムを停止。席から立ち上がる。

フィードバッグという形で、ファフナーの受けたダメージを一身に共有する自分もまた、彼らと同じように検査が必要なため、医務室へ向かうのだった。

―――

竜宮島波止場。人類軍輸送機が誘導されたこの場所には、竜宮島特殊部隊の面々が銃器を構え待機していた。相手が人類軍である以上、何をしてくるかはわからない。通信内容から少数の人員しかいないのは判明しているが、警戒して損をすることは決してないのだ。

輸送機の出入り口から設置されたリフトへと足を踏み出す1人の軍人。輸送機に向け構えられている銃器の数々に、怯むこともなく彼は感慨深そうに周囲を見渡した。

「たどり着いたな。Dアイランドに」

口からは感嘆の息とともに言葉が紡がれる。その男の背後から、1人の少女が興味津々といった様子でリフトに立つ。

「―――ここのミール(・・・・・・)空気なんだ(・・・・・)

何でもないような様子で、少女はつぶやいた。

だが、そのつぶやきはまさしく異様である。何故、少女は島にミールがあることを知っているのであろうか。そして、フェストゥムの頭脳体である結晶『ミール』が島の空気となって遍在していることを、ひと目で見抜くことができるのだろうか。

その様は不可解なものである。

もし、少女の言葉を輸送機の周囲に居る特殊部隊が聞いていたら、同様とともに一層、警戒を強めるだろう。それが起きず、余計な対立が発生しなかったのは不幸中の幸いと言えただろうか。

そんなことはつゆ知らず、少女は大きく深呼吸をした。まるで、それはこの島のミールと交信をしようとしているかのようである。

「―――私たちを、受け入れてくれてる!」

少女の言葉に、男は無言で頷くと、少女の背中にポンと、手を当てて、先へ進むように促す。

その2人の背後からは、先程の戦闘で、真矢達と共闘した青いファフナーの搭乗者達があとに続いていった。



感想、意見、評価、お待ちしています。

ううむ……戦闘シーンなのに、長々と説明文を書いてしまう。
これはイカンと思いつつも結局書いてしまう。

どうしたものか……。

あ、さりげなくサラマンダーの所にオリジナル設定、というか独自解釈を突っ込んでみました。

劇中で全く聞いている様子のないサラマンダーをフォローしようとした結果がこれだよ!
これが限界だったんです許してください。

あ、後下にレイ君の紹介を行いたいと思います。

興味ない人はスルーしていただいて結構です。

では、どぞ


レイ・ベルリオーズ
(イメージCV:松本恵)
プロフィール
生年月日:2132年06月20日(19歳)
星座/血液型:双子座/O型
身長:174㎝
体重:65kg
好きな物:小説、コーヒー、チェス

第1種任務:竜宮島ファフナー部隊部隊長
第2種任務:慶樹島エンジニア(技術開発)

人物像
男性とも女性とも取れるような中性的な顔つきで、淡い金髪とエメラルドブルーの目が特徴な青年。基本的に誰にでも柔らかい物腰と丁寧な言葉遣いをし、顔立ちも相まってアルヴィス内部に小さいファンクラブが出来ているとのことだが、本人はそれを知らない現実。羽佐間カノンの恋人でプライベートではよく海岸や楽園でデートしている。
Alvisにおいてはファフナー部隊の隊長を勤め、既にパイロットを引退したものの、部隊の面々を纏めている。彼がいるからこそ一騎が無茶苦茶をしない(出来ない)とも言えるだろう。
慶樹島において、エンジニアとしても活動しており、ファフナーの新型ドラゴントゥースやレヴィンソード等の兵装を開発、また現在は新型ファフナーの設計、建造も行っているが、現在は行き詰まっている様子。
フェストゥムに対しては強い敵意を持っており、竜宮島の理念である「フェストゥムとの共存」に対して、他の者たちと違いやや懐疑的。
最も、これに関しては「対立者が居なければ物事を掘り下げることはできません」とも言っていて基本的には賛成している模様。
現ファフナーパイロット候補生の鏑木彗に尊敬の念を向けられている。

地味に技術者として日野洋治に、ファフナーパイロットとして日野道生に支持しているハイブリッドな人。

人物相関

人物:その人物から見たレイ⇔レイから見た人物像
羽佐間カノン:恋人何よりも大切な存在⇔恋人。何よりも護りたい存在
近藤剣司:親友であり師でもある⇔親友でありちょっとした弟子のようなもの
鏑木彗:憧れの先輩⇔期待の後輩
日野洋治:尊敬する偉人
日野道生:ファフナーの先輩、尊敬に値する人
皆城総士:自分より皆を率いるのに向いている⇔どう接すればいいかわからない
真壁一騎:凄い奴だな⇔切り札であり仲間、生き急ぐのはダメだと思う
西尾里奈:信頼する先輩⇔時期隊長として最も相応しいと思っている


ファフナー搭乗時には変成意識の影響で過激になり乱暴な言葉遣いが見受けられた。現在はパイロットを引退している。

シナジェティック・コード形成数値(上は黄金率)
黄金率.      0.618:1:1.618
レイ・ベルリオーズ.14.833:1:15.273
変性意識下の特徴/備考
過激/変性意識中は口調も攻撃的になるなどの変化もある。

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マークヌル
分類:ノートゥングモデル
開発:人類軍
機体タイプ:高火力型
搭乗者:レイ・ベルリオーズ
初期搭載兵装
・レージングカッター(左腕部のみ)
・複合兵装型右腕部【デストロイ・アーム】
:高周波クロー
:レーザーバレット
:大型レーザー砲『シヴァ』

嘗てレイが搭乗していた人類軍製ノートゥングモデル。
第2次蒼穹作戦の際、ザルヴァートルモデル、『マークニヒト』との戦闘を経て最終的に大破。現在は解体され新型ファフナーの素体として再利用されている。

こんな感じです。
如何でしょうか?如何にか他のキャラを食わないように、そしてしっかりと活躍できるようにしてみた結果ですが。

質問等有りましたら気軽に感想欄にどぞ。