整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

108 / 144
舞鶴参謀時代 初霜ふもふ

 もしもこの舞鶴に、幽霊、亡霊、悪霊、守護霊がいたら、俺のところに来なさい! 以上!

 

 って、いるわけないやろボケ。

 

 幽霊なんてこの世に存在しない。ウィンチェスター・ミステリーハウスは創作で、ヴァンパイアなんて存在しなくて、この世にあるすべてのオカルトは実在するものではありません!

 

 幽霊でもなんでもなく、俺が見た勇姿は実在する艦娘のものである。

 

 それは俺たちは輸送船試験を行った数日後に証明された。

 

「この度、遠征艦隊に臨時編成された初霜です! よろしくお願いします!」

 

「おう! よろしく頼むぜ初霜!」

 

「ふふふっ、元気な娘ね〜」

 

 食堂に近い廊下で、遠征艦隊の旗艦天龍や龍田さんと話しているのは、紛れもなくあの黒髪のバンダナ少女である。

 初霜はどうやら要港部所属らしく、鎮守府への研修として一時的に配属された、言わば選ばれし精鋭艦娘である。

 

 艦娘として、要港部から鎮守府に研修としてやってくるのは鎮守府側としては珍しくない。だが、選ばれる艦娘は相応の実力を備えている証拠でもあり、艦娘、そして要港部として言わば栄誉を賜るレベルである。

 一般的な感覚で言うのならば、大学受験せずに、大学側からのスカウトを受けている、みたいな状況だ。一時な編成だが、惑うことなく、彼女の将来は期待されている。

 

 何よりも、初霜は美人可愛い。

 俺好みの黒髪ロングで、先端を縛ってるのも個性的で素敵だ。ちゃんとした大人の女性としての魅力も兼ね備え、少女のような愛らしさがある。天龍と龍田さんも表情を和らいでいる様子で、彼女に声をかける者は誰であっても好印象を残して去っていく。

 

 たまに、不安げな表情を浮かべる時がある。それは刹那で起こる出来事で、瞬きをすれば、普段どおりの真面目な顔に戻る。

 しかし、それは硬派な彼女が見せる一瞬の油断なのかも知れない。

 

 そんな、何処か奥ゆかしさのある彼女の後ろ姿を、いつの間にか追いかけていた。

 

 研修期間である三週間が半分ほど過ぎた頃、個人的な忙しさと部署が違うことから、まともに話す機会を設けられないでいた。

 

 そんなある日、酒保で初霜を見かける。

 

「んん〜……天龍さんにはこれと……龍田さんにはこれ……それとみんなには……」

 

 酒保と言うなの売店では様々な物が取り揃えてある。日用品、スナック菓子、戦闘糧食、ポーカーとかの玩具などなど、要はコンビニだが、昔の名残からこう呼ばれる事もある。

 一般的に酒保は軍人が働いているように思われるが、副業禁止なので一般人が店員をしている。今日も笑顔で接客するオバはんに挨拶してから、初霜に近づいた。

 

「し、宍戸中佐!?」

 

「あぁ敬礼はいいから。今日オフだし、初霜もオフだろ?」

 

「は、はい……」

 

 ルビー色の色彩を放つ瞳は、少し警戒心を孕んでいた。

 

 初霜の経歴は仕事の合間にちょくちょく聞いていたので、ある程度彼女の事は知っている。

 

 高浜要港部のいち艦隊の旗艦として成果を出していた。個人の対空戦術の強さもさることながら、練度を伸ばせば確実に一軍入りを果たすだろうと予想していた。運の良さもあり、夜戦のお供としてはこれ以上にない艦娘だと、遠征艦隊からも、一時的ではあるが、信頼できる仲間として親しまれている。

 

 ぎこちない間合いを取る二人。距離を狭めるために、俺は一歩前へと踏み出した。

 

「遠征艦隊のみんなに何か買って行くつもり?」

 

「は、はい。日頃お世話になっているから、何かついでに買っていこうかと思って」

 

「なるほど、絆創膏と消毒液、ジッパー袋に、サプリメントか……実用的なものばかりだけど、お土産的な物はいいの?」

 

「私がもらって嬉しものを選んでるのですけど……変、でしょうか?」

 

「いや、その中には初霜の分も入ってるんだろ? それに、天龍はウチラの提督みたいな物欲の塊じゃないんだから、何もらっても嬉しいと思うよ」

 

「それならよかった……え、あれ? お財布……」

 

 お会計を済ませようとレジ前に立とうとした初霜が手を突っ込んだポケットをモゾモゾさせてから呟いた、お財布、という言葉は、衝動的に俺の胸ポケットから小型の財布と、たまたま中に入ってた諭吉を出させた。

 

「一万円お預かりしまーす」

 

「え、そ、そんな! いいです宍戸中佐! っていうか、なんで中佐が払う……んっ!」

 

「俺、可愛い娘見ると格好付けたくなる体質なんだ……ドヤァ?」

 

 人差し指を押し付けられた初霜は赤面した。

 こちらも顔が爆発するほど恥ずかしい。

 店員のオバちゃんも「キモッ、コンビニで奢るのがカッコいいと思ってるクソ勘違い男乙」みたいな目で見ているのは理解しているので、あえて視線を合せないまま、初霜を引っ張りながら店を出ていく。

 

 

 

 初霜のレジ袋を俺から受け取ったのは、広場にあるベンチに座ってからだった。

 比較的ゆったりとした空間が楽しめる広場は休憩時間によく使われるが、午前10時を回るここが埋まるのは二時間後となるだろう。

 

 俺が知る中でも真面目な性格をしていることは知っているんだが、まさか財布を忘れちゃうなんてドジっ子を踏むとは夢にも思わなかった。

 

「あの、ありがとうございます、その……買ってもらっちゃって。お財布を忘れた私へのフォローだったんですよね?」

 

 漢はここで「え? 何のこと? 俺はただカッコつけたかっただけ。財布忘れてたの? じゃあ、なおさら俺の株上がっちゃって、かえってラッキーって感じ?」「素敵! 抱いて!」「初霜……」「宍戸さん……」とロマンチックへの強行突入を果たすだろう。

 その展開が臭すぎるんだよなぁ……一旦保留にしておこう。

 

「俺の諭吉はエ○ゲー買うための諭吉くんだったのになー……」

 

「す、すいません!! 明日必ず返すので、それまで待ってもらえれば……!」

 

「ははは、ごめんごめん。ちょっとからかって見たくなっただけだよ。初霜みたいな可愛い娘に奢れて光栄だったよ」

 

「可愛い……なんて」

 

 わずかに表情が曇った。

 軽蔑として受け取ったわけじゃない。自分の容姿に自信が無かったわけでもない。この時の初霜は、俺が想像するよりも、遥かに違う事を考えていた。

 

 可愛さで仲間を守れるのか?

 

 彼女なりに突っ張った感情を抱いていた事を知ったのは、ずっと後になってからだった。

 

「奢ってあげた代わりに、少しお話でもどうかな? あまり時間は取らないからさ」

 

「うん……分かりました」

 

 コンビニで買ってきたボトルのお茶を開き、潤された喉から最初に声を出したのは俺だった。

 

「噂に聞く初霜は、すごく真面目で整理整頓な艦娘だと聞いたから、お財布を忘れるなんてドジは踏まないと思ったんだ。こういうミスをよく繰り返すわけじゃないんでしょ? ここ最近、ちょっとしたミスが増えてるんじゃないの?」

 

「な、なんで分かるんですか……?」

 

「なんとなくだよ。でも俺の予想は命中してたみたいだし、その報酬として、なんで調子が悪いのか教えてもらってもいいかな?」

 

 銃に見立てた指を天に突き、ウィンクで初霜に笑顔を向ける。「あははっ」と笑顔を返してくるが、すぐに曇りのある表情に戻る。

 

「天龍たちと上手くいってない……って事はないな。俺が見ても、十分な成果を発揮していると思うし、初霜からは良い噂しか聞かないし、任務そのものに支障がない以上とやかく言うのもなんだと思うけど……俺も舞鶴に初めて来たときはそんな感じだったし、表面上よく見えても、慣れない環境だとストレス感じるよな。初霜もそう?」

 

「まぁ……そんなところです」

 

「…………」

 

 俺たちが座るベンチの後ろには天龍がいる。

 

 実は、お茶をちょびちょびと飲みながら、遠くにある出撃所を眺める初霜の様子を見てくれと頼んだ天龍は、少し心配していた。

 自分の艦隊に所属している艦娘が活躍の場を……ひいては戦場を自ら望んでいるのは、世界中を探しても少数派だろう。

 

 精神状態に異常があるのか、自殺願望を持つほど追い詰められているのか、あるいは彼女をそうさせる何かがあるのか……何れにしても初霜が提督に、もっと出撃させてほしいと直談判した光景を見た天龍は、俺に初霜がどんな心情なのか聞いて欲しいんだと。

 

 まさか、この真面目そうな顔の裏には戦闘狂としての素質があるとは……それはともかく、天龍自分で聞けや。腹割って話すのが怖いとかフフ怖の名が廃るぞ。

 上官よりも赤の他人に話す方が楽な時もあるので、初霜が何故出撃したいのか、何故時々曇った表情を見せるのか……生理ってわけでもなさそうだし、家族内の問題だったら聞き出せねぇぞ。

 まぁそこまで個人的な話だったら、せめて天龍や龍田さんが心配していた事だけは伝えておこう。本人たちは嫌がるだろうけど、一時的でも艦隊のメンバーとして不満や問題を解消したいと思う辺り、天龍たちもまた、仲間想いだなーってね。

 

 ついでに、初霜と二人きりでベンチ。

 

 イイ感じに見えなくもないので、俺がバイだとかゲイだとかいう噂を解消するいいチャンスにもなる。定期的に通りがかる人々よ、噂が広まるのは原則的に嫌いだが、今だけはできるだけ多くの人に広まって欲しい。俺とこの可愛いはつしもふもふはお似合いであると。

 

「宍戸中佐は……珍しく前線で戦った経験があるんですよね? 八号作戦で……何故中佐は必要でもないのに、最前線で戦おうとしたんですか?」

 

「え、あぁ、アレね……まぁ、その、うん……前線艦隊の一部である哨戒艦隊は、俺の船を含めて深海棲艦のディテクターに入らない程度の電波指数な上、航空機を捨てる覚悟で索敵機を小まめに発艦させてたら、敵が散乱している状態だったからそれを俺の指揮のもとで撃破していったら、そして誰も居なくなった……状態になってたみたいな」

 

 俺はこの嘘を生涯に渡ってつき続けなければならないとなると、地獄に落ちそうで怖い。

 

「そ、それはすごいですね……」

 

「別に俺が凄いわけじゃないさ。俺の艦隊が、俺の言うとおりに動いてくれたからっていうのが大きいんだ。艦隊のおかげで、最終的に前線の艦隊は小破で済んだ、みんなの命を守れた、って点では、自分の中でもかなり誇りに思ってる事だけど」

 

「私も、そこは誇って良いと思います。やっぱり貴方は凄い人だと思います」

 

「え、そう?」

 

 グへへへへへへェェェ!

 

「……宍戸中佐のように、艦隊を指揮できる立場になれば、私も仲間をちゃんと守れるようになれるでしょうか?」

 

「ん?」

 

 意外な質問だった。

 初霜は、他人に興味がないわけではないだろうけど、仕事と私情をキッチリ区分けするドライさがある。それは仕事態度としては悪くないが、反面厳しさを感じさせ、仲間とのコミュニケーションが円滑に行えない時がある。

 そんな初霜の表情は、何時になく不安そうに、そして何かの答えを探している。

 仕事のスキルを向上させるための質問じゃない、これは彼女自身の私情から来ている問だ。

 俺は、身体と顔の向きこちらに寄らせた初霜を見て、直感でそう感じた。

 

 お茶が零れそうなペットボトルを気にも留めず、ベンチの上に手を置いた初霜に注意を呼びかけた。我に返ったように再度出撃所を向いている間、その質問への言葉選びを慎重にしてから、初霜に俺が思ったことを投げかける。

 

「初霜は艦隊を指揮する提督になりたいの?」

 

「い、いいえ! そういう事を思って言ったんじゃなくて」

 

「いや、初霜の気持ちは分かる。仲間を守りたいって気持ちは、俺も同じだからね。だからもっと出撃したいって気持ちもわかるよ」

 

「え? なんでその事を……」

 

「一応は幕僚だから、色々な情報が耳に入ってくるんだ。艦娘個々の性格とか、整備現場での愚痴とか、参謀長の妻の浮気で家庭内と参謀長の機嫌がシュラバヤみたいな情報をね」

 

「す、すごいですね……」

 

「でしょ? 色々なデータを頭に入れて、その情報を精算して、作戦と基地や方面軍全体の動きを円滑にするのが仕事なんだ。多少パーソナルな事を聞いたりして、その不満や問題を解消するのも、提督……ひいては、その分身としての役割を受け持つ参謀のお仕事なんだ。今はまだミスがないかも知れないけど、頭の上にモヤがあると、未来の失敗の要因を作っちゃうから……俺の言いたい事、分かるでしょ?」

 

「…………」

 

「どんなことでも良いんだ! 俺に話してくれ! 誕生日だったのに誰も気づいてくれなかったとか、舞鶴の仲間たちと話してる時に所々会話を途切れさせちゃったとか、最近お通じが良くなくて、通常時は100cm以上繋がってるはずなのに、昨日はタネマシンガンだったとかッ!」

 

「汚いです、本当に汚いです」

 

「すンません。でも一人で抱え込むより、吐けば楽になる事もあるぞ? 初霜ってさ、他人に頼った経験とか、自分の本心をさらけ出した事とかってあまりないんじゃない? ほらほら、聞いてあげるからさ、話してみなよ。仲間を守る事について、真剣に誰かに話せるのって、俺ぐらいしかいないぜぇ?」

 

「なぜ貴方に限定されてるんですか……ふふっ」

 

 思わず頬を和らげた初霜は、自然体だった。紅色の瞳は細められ、手を口に添えて微笑む姿は、そうそうとした軍事拠点には似つかわしくないほど麗しいものだった。

 感情から来た顔の動きは、同時に彼女自身の警戒心も説いてくれたのか、微笑み合う二人の会話を再開させたのは、初霜の方だった。

 

「……私は仲間を守るために、強くなりたいんです。出撃の件も、そんな安直な理由から来ているんだと思います」

 

「初霜は十分に強いよ。でも一人でできる事に限りがある以上、初霜だけが強くなっても意味はないんじゃないかな」

 

「そう思います……でも、やっぱり仲間を守るためには、強くならなくちゃ……」

 

 ……初霜という艦娘は、みんなを守るために戦っている。

 戦う理由なんてそれで十分。そう断言できるほど、彼女の中では最優先事項であり、それを真っ向から公然と否定できる人間なんて限定的だ。その為ならどんな戦いにでも繰り出し、あらゆる任務を遂行する事でその練度と仲間との協調を高めていた。

 初霜の強さの真髄はそこにある。

 しかし、その強さの軸が裏目に出てしまい、要港部で一度トラブルを起こしてしまったらしい。

 

 味方の艦隊が窮地にあり、それをいち早く察知した初霜が、出撃中で、しかも補給が必要だったにも関わらず、独断で艦隊編成から離脱し救援に向かった……というものだった。しかも一人で。

 幸いにも轟沈を出さずに済み、その状況を整理して、少なからず初霜の活躍も評価されて然るべきだったが、司令官は初霜の命令無視を咎めてしまった。

 高浜要港部の司令官は俺の提督育成プログラムの同期であり、ルールには厳格な態度を取るヤツだったが、良い結果を出した臨機応変な対応に「ありがとう」を言えない阿呆じゃない。

 司令官としては彼の気持ちはわかる。独断での行動は危険であり、少なくても艦隊が任務を終えてから全員連れて行くべきだった。何より、初霜のような艦娘が知らぬ間に轟沈してしまう状況は是が非でも避けたいーー初霜の姉妹、そして彼女を慕う仲間のためにも。

 注意を呼びかけ、心配した意を初霜に伝えられれば良かったが、時として人間は情報伝達をうまく行えない状態がある。流石に司令官の怒鳴り声と一週間の謹慎は初霜に堪えたらしく、それ以降は出撃回数も減らされた、と言っている。

 

 が、それでも普段どおり任務をこなしていた。

 

 普段どおりとは言っても、周りの皆もたまに感じる双瞳の暗雲は、潜在的に彼女が秘めている「戦わなきゃ」という使命感と、それから受けるプレッシャーと……勘違いからくる劣等感を抱いていた。

 

「戦わないといけないのに、鎮守府の皆さんとても強くて、多少自信を持っていた私でも付いていくのがやっとで……私なんか足元にも及ばないレベルだなって……」

 

「まぁ重ねた年数も違うし、正規空母や戦艦も居るから、海戦技術的な問題はあまり気にしなくても良いんじゃないかな? 鎮守府みたいな王道的に拠点制圧や大規模作戦を指導する艦隊の一翼になるより、要港部の後方支援の方がはるかに重要だったりするし、そんなのは比較の対象に入らないよ。もちろんレベルの差がありすぎるからって意味じゃなくて、分野が違うからって意味でね」

 

「でも、それでも私は……この手で、一人でも守りたいんです」

 

 今まで仲間の命のためだったら自分が犠牲になる事すら惜しまず、戦いとは味方を守ることだと信じて疑わない艦娘は、今その考えを変えながら、より効率的に仲間を守るためには、どうしたらいいのか? そんな、彼女の力量内では答えなど、到底見つけようのない問題に真っ向から挑んでいる初霜を見て、俺は実直に言葉を出す。

 

「初霜がもっと強くなって、それで提督にもなったらサイキョーだし、救われる仲間は増えるかも知れないけど、正直言っておすすめしない。理由は、どれほど自分一人が頑張っても、救われない仲間がいる事に気づくから。そして、仲間を守る方法をまた考えてしまう。でも、考え続けるのは良いことだ。一人ではどうしようもないレベルの問題は、頼れるその仲間と一緒に考える……これじゃ駄目かな?」

 

「仲間と、一緒に……?」

 

 考えすぎると人は盲点を作ってしまう。それはどんな事でもそうだが、意外な点をつかれた、と物語る初霜の瞳は正に良い例だ。

 

「出撃を減らされる事はヘコむ。でも、何も出撃だけが守る方法じゃない。まずは遠征艦隊のみんなに相談でもして、仲間を守る方法について話し合ったり、模索したりするのはどうかな? 探すために出撃を増やしてほしいって言うんだったら……いや、やっぱりこの鎮守府や初霜が所属してる要港部だとちょっと難しくなってるかも知れないけど……」

 

 初霜は黙り込んだ。模索という言葉の響きに揺さぶられたのか、手元のペットボトルを遊ばせながら、真剣な眼差しで地面を見つめている。心内を整理しているのが顔の筋肉の動きでわかる。

 心の整理に言葉をかけて邪魔をするのは、彼女の今後に関わってくる問題だと十分に承知しているが、ここはあえて俺が後押しする。

 

「……なんなら、俺の警備府に来ない?」

 

「え……?」

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。