整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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バトルの前談

 

 

 沖縄作戦が失敗、か……あんなに戦力投入したのにさ。

 失敗だなんて、俺の勘、鋭すぎ……? 

 連合艦隊を追ってきた深海棲艦大艦隊が一斉にコッチに向かってきて俺たちの国を火の海にするところまで想像できた。

 

「よし、逃げるぞお前ら。最早この国は終わりだ。深海棲艦が迫ってきている今、オトコもオンナも世紀末レ○プし放題な治外法権国家ニッポンと化すんだ……あ、でもそこだったら俺ハーレム作れーー」

 

「な、何を言っているんだ宍戸……? この国は関係ないだろう?」

 

「え、どういう事っすか?」

 

「「「……?」」」

 

 親潮と夕張も入ってきて、イロイロとキッツキツのお部屋。全員がクビを傾げる中、なにかとんでもない誤解を生んでしまったのかもしれない……と、斎藤大佐は申し訳なさそうにしながら彼の真意をスマホで表した。

 

「すまん、これの事を言っていたんだが……」

 

「「「ん〜〜?」」」

 

 俺の双肩に朗らかなで、穏やかで、柔らかなむにゅむにゅの球体を乗せてきた村雨ちゃんや親潮たちと共に、液晶が表示するニュースサイトの記事を凝視した。

 一応、勉強モードを発動して読解力が冴えていた俺は一秒ぐらいで理解し、海軍技術戦術論の本に視線を戻した。

 驚愕する村雨ちゃんたち。時雨も興味を唆られたのか春雨ちゃんの肩からスマホを覗き込み、夕張はその反面、俺の教科書に視線を集中させた。

 やっぱり夕張メロンちゃんは技術者向きなのかな……世界情勢よりこっちに興味そそられるとか。

 

「「「中東にて民主革命が成功……?」」」

 

「サウジアラビアの王族であり提督だったムアンマル・アッバーン少将……現在は国家指導者という御立場の方だが、大規模作戦を反故にして革命作戦を実行し、成功したらしい」

 

「す、すごい……」

 

「本当にすごいわね。あ、宍戸さん、この通信システムの理論についてなんだけど……」

 

 夕張もっと世情に興味もって。

 

 俺は海軍大学校の講師が画面でくっちゃべってる事を夕張に解説しながら、心底安心していた。沖縄作戦が失敗なんてするはずがないのは戦力的に見ても明らかだし、失敗したらそれはそれで海外士官や外国人に有利な状況となるだろう。

 

「……え、よく見たらこの革命のリーダーって」

 

「あぁ、海軍大学校時代、貴様によく話しかけていた彼だ」

 

「知ってるの宍戸くん? え、斎藤さんも?」

 

「兄さんと司令の秘密のお知り合い……ま、まさか! 噂に聞く司令と兄さんと三人でい、いやらしい関係を持ったっていう、あの……!?」

 

 あぁ、俺という、警備府を支配する立場にいても、噂というのは制御が効かないのか。

 何故か俺と斎藤大佐とあのタリバン……じゃなくて、ターバンヘッドが、まさかの3p!? 名付けて、男子の3p!? そんなネーミングセンスなさ過ぎる噂は俺様が、海軍大将に代わってオシオキよぉ!

 

「親潮、ガチでドコ出の情報なのソレ?」

 

「同期にそうなってると言われたのですが……え、まさか、嘘だったんですか!? 親潮は司令がエイズでも治療に付き合って行こうって覚悟していたのに……」

 

「エイズじゃないしラブトライアングルSOSでもないに決まってるでしょおおおぉおお!? 俺の司令官ピチピチの肌を見て分からんのかえェ!?」

 

「バミウダみたいに深そう……ぶふっ!」

 

「時雨姉さん……トライアングルで例えるんだったらピンク・トライアングルの方が……」

 

「話の盛り上げ方、なにか違うね、悲しいなぁ……てかなんでアラビアン1×ジャパニーズ2なのッ!? アジア最終予選かよッ!? 親潮、その同期にはちゃんと口を酸っぱくして言ってやりなさい。宍戸司令はイケメンでハンサムで優雅で華麗なのに勇猛かつ最強な提督だってな?」

 

「は、はいっ! い、いわれなくても、司令はかっこいい人だって、みんな分かってますから!」

 

「当然だぜグッハハハァ!!! 分かったかみんな? 特に時雨、お前なんで無反応なの? あ、まさか俺がイケメンだってついに認めちゃった感のある反応ですねぇ……」

 

「え? あ、ごめん、違和感ありすぎて逆に気づかなかったっ。言葉って虚空だねっ」

 

「は? 勝負ですッ」

 

 ROUND ONE, FIGHT! 

 

「待ってください兄貴、姐さんッ! 俺の部屋で暴れないでください!」

 

「月魔くんの言うとおりだ。いや部屋を荒らす分には構わないんだが、それで困るのは月魔くんと貴様だぞ。部屋の清掃、管理はすべて使用者が請け負うのが原則。貴様の上官に当たる者はここには居ないが、清潔を保たねばどうなるかなど私が言わずとも分かるだろうに……」

 

「え? 清潔に保たねばどうなるかって……ま、まさか、俺のお部屋にバイ菌を撒き散らす気じゃ……! こ、この変態大佐! 俺のお尻はまだまだピチピチの処女なのに……!」

 

「兄さん、司令にそのようなコトをしようと企んで……?」

 

「村雨、そういうのはイケないと思います。というか最低です。一応私たちの提督である大佐が宍戸さんにそんなコトをする人だとは思いませんでした」

 

 ジョークだったのにこのフルボッコ感半端ない。

 

「なるほど……貴様、私を愚弄しただけでなく周囲にまでそのような戯言を撒き散らすとは……勝負だッ」

 

 斎藤大佐、参戦!!

 

「え、やばっ。春雨、この部屋にいたら駄目よ! すぐに逃げないと提督たちのバイキンが伝染って死ぬわよ!!」

 

「駄目です夕張ちゃん。お兄さんを救うために……私がこの醜い争いに、終止符を打ちますッ」

 

 春雨、参戦!!

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 中庭を囲う賑わっている。

 その中心で司令官と、元司令官と、警備府のエースである二人の計四人が壮絶なバトルを繰り広げている光景は、ここでしか見れないレアな海軍士官の日常であり、これを見るために仕事と中断して野次馬と化した者も多い。

 その最前列にいる鈴谷を筆頭に止めようともせず、いけいけ! とヤジを飛ばす者が多数派であり、少数派の止めようとしたが諦めた派は、横で雑談タイムに入っていた。

 

「いっけー! シグシグと宍戸っちチームがんばれ~!」

 

「鈴谷? これはタッグマッチではなく、バトルロイヤルですわよ?」

 

「正にスマッシュブラ○ーズ! あ、白露的にはシスターズ? まぁいいや! 白露も参加したいけど~、四人が上限だから、とりあえず観客に徹するね! サドンデースっ! ファイ!」

 

「どっちかと言えば○ルティメットストームっぽい! 宍戸さんと時雨の取っ組み合いが最高にハイっぽい! そしてサポート役として春雨と提督さんが何故か横で戦ってるっぽい! ド派手な忍術がこの狭い面積内で激突っぽい!」

 

「何をやっているのかしらあの四人は……組手? いや、ダイナミックすぎるし、そもそもこんな所でMMAなんて非常識にも程があるし……陸戦訓練、かしら?」

 

「冷静に分析している場合じゃないッス初霜さん!! それに皆さんも! 四人を止めようとは思わないんですか!? 壁蹴りからの空中戦なんて、これじゃ海軍は肉体言語で深海棲艦を倒してると誤解が広まりますッ!!」

 

 月魔の一言一句は至極当然の事……と断言はできないが、確かにこのような事をしている場合ではない。少なからず皆が止めるべきだと思っているのは、彼の後ろに続く彼の後輩が頷いているのを見て分かる。だが同時に興味を示した、誰がこの戦いを制するのかと。

 そもそも誰と誰がなんの為に戦っているのかなど状況を全く把握していない野次馬には、映画ばりのアクションを見せる四人の近接格闘戦術を見ながらヤジを飛ばすぐらいの事しかできない。

 飛翔する正拳突き、腕に押し掛かる脚撃、繰り出す技が放つ疾風。

 

 当然のように、そして何時も通りの展開だが、勝利の栄光は拳を高らかに上げる時雨に委ねられた。

 

「「「うおおおおおおお!!!」」」

 

「シグシグかっこいい!!」

 

「ねぇ、次白露行っていいよね!? 時雨を倒して、姉の威厳、勝利の二文字、宍戸くんの領有権を一気に勝ち取れるってことでしょ!?」

 

「は!? 宍戸っちと一日デート権!? そんなの聞いてないし!! 鈴谷も入る!」

 

「っ!? 親潮も参戦します!」

 

「ファッ!? 元司令官のケツかけて勝負!? いいっすね~」

 

 こうやって、一人のふざけた発言から噂やデマが作られるのだ。

 

「俺の人としての権利がドンドン剥奪されているんですが……」

 

「春雨はまだ戦えます! あの三つ編み倒して春雨がお兄さんのすべてを手に入れるんですッ! 下がっててくださいお兄さん! 春雨が……ここで決着をつけます!」

 

「姉である僕のことを外見的特徴で呼ぶとはたまげたなぁ……かかってきてっ、サドンデスだよッ」

 

 春雨ちゃん、そして時雨の圧倒的オーラに立ち向かえる相手はそうそういない。例えこの戦いに、誰が勝利しても俺の権利は誰にも渡らないし渡らせないけど、とりあえずボコボコにされた斎藤大佐を引っ張りながら親潮に手伝うよう要請する。

 

「親潮! 早くこの戦場から彼を退場させてくれ!!! さもないと殺されるぞ!!」

 

「え、嫌です、触りたくありません」

 

「なんで!? え、まさか大佐が感染力の強い病にかかっているとか!? 何だそれは!? 梅毒!? エイズ!? HIV!? クラミジア!? ヘルペス!? 性病性のなにか!?」

 

「いいえ、ただ触りたくないんです」

 

「────」

 

 意識を保っていた斎藤大佐が轟沈した。

 

「分かった二人共! 俺が悪かった! だからその牙突みたいな構えをいますぐ解いて、俺と一緒にケーキを食べよう! 訓練をいつも頑張ってるみんなを労うためにサプライズとして買ってきたやつなんだけど……もうすぐ警備府に着くはずだから、訓練用コンバットナイフより、フォークを持とうぜ! ……それとも、俺のおチ○チンの方を持ちたいのかな? なんてっ」

 

「「「はッ???」」」

 

 攻撃の矛は俺へと向けられた。え、ダメージ999ぐらい食らってんのに、もう場外一発アウトなのに、Shigure WINなのに、もう疲れてるのに、強制参加ってアリなんですか?

 

「宍戸くん、それはどうかと思うなっ。僕が君の言う漢だったら、貴女方の奴隷になるのでこの場はどうかその御美しいお手をお収めください! ぐらいは言うかなっ」

 

「ん? それ言うぐらいだったらパラシュート無しでスカイダイビングしたほうがマシだぜ」

 

「北の国の訓練かな? え、は? こんなかわいい女の子に向かってなんてこと言うの殺すよ?」

 

「は? 理不尽なこと言っておいて殺すなんてお前いつもより酷いんじゃ……ま、まさかお前、あの日じゃ……や、やだ怖いっ! ぼ、ぼくっこなか弱い(笑)女の子の金銭的隷属奴にされちゃお〜〜〜!」

 

「あ、xxすっ」

 

 あ、死ぬ。

 

 

ーーーーーー

 

 

 蹂躙される宍戸大佐。

 それを2階の窓から密かに見守る外国人がいた。

 

「あぁ…‥! CPT.SHISHIDOがあんなカタチに!!! この私が助けに行かなくては……!」

 

 休憩中に、突然立ち上がったベリングハム少佐がこの休憩室に来たのは、数十分前のことだった。

 


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