斎藤長官は自分の息子の居る艦隊をどれだけ増強したいんだろうと思ったぐらい警備府には艦娘がなだれ込んできた。
陽炎、不知火、黒潮、浦風、磯風、浜風、谷風……は俺の部下だった艦娘だ。
その他、龍田さんと天龍も加わり、俺が会ったことがない艦娘は省くが、とにかくそれぐらい多くの艦娘がいる。佐世保の鎮守府勢より断然数は少ないのは当然だけど、いよいよ司令官を二人置いた理由が分かったわ。(艦娘)多いッス。
警備府の副司令兼駐留艦隊司令官兼参謀長、つまり実質ただの参謀長に降格処分となった俺は、それでも司令官だった時より忙しい日々を送っている。
出撃所、小型管制室。
「艦隊行動を取る時、フォーメーションAからBは発令から最低でも15秒以内で変形できるようにしてくれ! おれがかんがえたさいきょーのふぉーめーしょん、だ! 必ず役に立つ! 臨機応変性を高めるための訓練でもある! 実際にこれらの戦闘態勢は既存のものにある欠点を埋めることとなり、戦闘詳報にバツが付くか、花丸が付くかの差があるんだ。リラックスしながらやればできる! 整工班は引き続き必要装備の点検を進めてくれ! 幸い佐世保艦隊の一部施設装備は俺たちで利用できるようになった! 島に拠点を作る時の基本は絶対に忘れるなよ!? 駐屯地の陸軍連隊長がバックアップしてくれているから、こっそり余分に浮遊橋やパネル橋を使えるぞ! 使い方は説明書を読めば簡単! 反抗作戦での使い方は応用を入れるから使い方を覚えたら俺の戦術詳報に目を通せ! 他にも色々と支援を要請中だが、海軍本部には、内緒だぞ!」
『海軍本部に内緒って……そんな大声で叫んでたら聞こえちゃうじゃん……』
「なんか言ったか時雨!? 貴様はこのような状況下でも上官への礼儀というものが成っていないようだなぁ!? 俺のようなイケメン頭脳明晰チ○ポがカッコ良すぎて貴様から女の子を取ってしまうからと言って、嫉妬することはなかろうぉ? のぉ時雨!? おん!?」
『『『イケメン……?』』』
新米の艦娘たちよ、俺をジト目するな。
は? お前ら誰と比べてんだよ? 容姿って相対的なんだから、流石に俳優や雑誌のモデルと比べられると誰でもブサメンになるぞ?
『それよりも、なんで僕が女の子を取り上げられると嫉妬しちゃうみたい言われてるの? それじゃレズビアンじゃん』
「し、時雨……お前……艦息……じゃなかった、のか……? 主人公って……たいてい……男なんじゃ……?」
(※主人公が男だとは限りません)
『ひ、ひどい……! ひっぐ……し、しぐれ……おんなのこ、なのに……えっぐ……ふえええん!』
『全艦、あの小さな管制室に砲撃構えっぽい! あの小さな的を粉微塵にするっぽい! 時雨のイジメ方が何時もより酷いっぽい!』
『若い司令官は成った途端に粋がってゴミになるってのはホントだったようだな!? 龍田ァ! あの管制塔への接近戦はオレたちでやるぞォ!』
『うふふっ……天龍ちゃんがこんなにも楽しそうにしてるなんてぇ……ふふ、ふふふふふっ……!』
はい反逆罪。
何時も虐められているのは俺だし、こんな大規模な艦隊に砲撃されたら警備府が崩壊するし、龍田さん絶対に俺のこと楽には死なせてくれないよね。
俺は準備を怠らないミスター万全だ、オムツは履いているので、ズボンを濡らすことはない。
「それより第五艦隊の神風たち! 連携や作戦内容に問題はないか?」
『問題ないです! だ、大丈夫……大丈夫……』
「後でやる初霜たちとの演習は、俺が直々に指導するから体力は温存しとけよ!」
『『『はい!』』』
神風たちはあの大失敗した作戦に参加させられて心的ダメージが深いと思ったが、そうでもないらしい……あるいはただ強がっているだけなのか。ここは俺の判断や推測だけじゃどうにもならず、俺より立場が近い初霜たちにメンタルケアを任せる。
手元にあるセーフティーチェックリストにペンを入れて、最後に俺がサインする。この天候と準備された艤装、装備での艦隊行動には異常なし。好天候で作戦に臨む予定だが、悪天候に備えたプランも用意してある。
一息つけるために、演習を行っている艦隊へ一時帰還命令を出した。
「艦隊指揮の方は順調のようだな宍戸大佐。流石だが、このフォーメーションに意味はあるのか? 陣形自体は既存のモノがある以上は必要ないと思うんだが……」
斎藤司令官殿、参謀兼整工班の月魔、並びに軍令部から視察に来ている秋津洲さんもこの小さな管制塔に来ている。管制塔って言っても小さな港のオフィス程度の大きさしかないんだから、四人入るのはちょっとイヤイヤイヤァ! むさ苦しい! 男二人は出てって!
「既存の単縦陣などは基本的であるため、汎用的ではあるものの、どうしても最良とまでは行きませんので、状況に応じた最善の陣形を練習させる必要があるのです。まぁフォーメーションと言っても2つだけですので、あとは既存の陣形のおさらいと射撃訓練だけですね」
「ですがこの陣形の使い所なんて兄貴以外に有効活用できる人間なんて……ま、まさか兄貴また前線に行くつもりじゃ……!?」
当たり前だろ、みんな行くんだから最前線に行く必要があるのは必然だし……よくよく考えたら、艦隊司令官と副司令官と参謀長兼任している時点で、このクソ偉そうな司令官必要なくね?
陣変形そのものはただの訓練であり、いかに慌てずに実戦へと臨めるか、それを体に覚えさせるってのが本来の目的である。
「それにしても、宍戸大佐の要望が全部通っちゃうなんて凄いかも! 海軍長官に対しても発言力があるなんて、尊敬するかも!」
「ありがとうございます秋津洲さん…‥と言いたい所なんですが、こちらの司令官は長官殿の身内なので、俺の力ってわけじゃ……」
「だが要望は悪くはなかった。これで我々の長崎警備府にも箔がつくというものだ」
俺が願い出た3つの要望は奇跡的にすべて叶った。
その一つが、柱島艦隊の作戦参加だった。
ただ問題もあった。
ここは他の警備府よりある程度大きく作られている。これは佐世保鎮守府の補佐としての役割を果たすための構想があるためだ。
原則的に司令官レベルじゃないと個室は許されない中で、4~5人が入れる部屋を何個か有事の際に開けておく事が義務付けられているためである。
これを全部埋めて、更に柱島艦隊が来るとなってはもうスペースがないので、誰かがテント張って寝ないといけない事態を避けるために、個室や倉庫を改装している最中である。
細かい人事面の仕事は斎藤司令官が担当してくるんだが、外国艦が五月蝿いというクレームは未だに相次いでるからアイツら民泊行ってくれないかな?
つか、なんでコッチに来るの? 佐世保鎮守府に行けよ。警備府多すぎるんだよ艦娘。明らかに俺が指揮できる艦娘の総数超えてるだろ。
だから俺と斎藤大佐や荒木大佐みたいな司令官クラスが三人も居るんだよね? 一応俺たちの艦隊と警備府は赤城中将お預かりということになってるんだけど、いっそのこと誰か昇進させて警備府そのものの統制を取ったほうが良いと思うんだけど……ここで一番権限持ってる人を决めないと意思決定が滞るぞ。形式上は斎藤大佐だけど。
だから後に斎藤大佐は昇進した。
俺を昇進させろ。
二つ目は新装備と設備装備の増強ーーに合わせて、明石次官から試験を頼まれていた装備の実戦使用許可。試験品とはいえ強力な武器を得ている我が警備府とそれを試験する艦娘らは、それだけで他を出し抜くほど大きなメリットを持っている。
そして三つ目は、
「一時補給、整理がおわったので、みてくださいっ!」
「あぁ、ありがとう大鯨中佐」
後方支援担当として大鯨さんをこっちに召喚することだった。
俺が八号作戦を早く終わらせることができたのは、少なからずこの人のおかげであり、海軍省に入れてほしいぐらい有能な人なんだが、未だに地方要港部の司令官をしていたと聞いたので、総司令には直々の申し出をした上で、佐世保鎮守府の参謀に編入してもらった。
補給と準備に関してのスペシャリストで仕事が早く、そして何より可愛い。
このはわわ艦娘が入れば艦隊の士気も上がる。俺のモチベーションは最高潮へと達する。よし、イケる。
反攻作戦を取ろうとしているのは、全世界が注目しているところだ。もはや極秘作戦でも何でもない。
だからアメリカ海軍を主体とした、人民海軍、大韓海軍、露海軍の連合艦隊は、日本が来る前になんとしても沖縄を占領したいと思っているはずだ。だから、今頃はもう進行しているんじゃないかと思った。進軍開始して、沖縄が目前! ってなった時にメディアで公表するみたいな?
頭を抱え始める。
その場合この反攻作戦自体が白紙に戻されるから嫌なんだけど、どんな状況にも対応できるように艦娘たちの指導だけは怠らないようにしよう。
ひとまず、佐世保に行っている柱島艦隊にも指導したいんだけど、まだ帰ってきてない。
時間かかりスギィ!
ーーーーー
佐世保第四鎮守府。
ここにいるすべての艦娘は、第二鎮守府に戻った赤城提督の指示で行われている作戦内容の確認と、実技演習に勤しんでいる。赤城提督の個人的な感情はどうであれ、彼女は任務を全うしようとしている。
柱島艦隊、並びに阿久根要港部が出撃所に帰投する。
彼らのみでの作戦演習は、同海域での作戦を行う者との連携を重点的に練習することで、作戦効率を上げる名目で行われている。彼らは最終的に、長崎警備府の艦隊司令官の下で指揮される事となるが、この人事には「こんな扱いづらい艦隊使いこなせないから、宍戸に任せよう」というーー佐世保方面総司令官、そして佐世保第一鎮守府の提督として着任した蘇我提督の判断によるものだった。
準備は着々と進んでいる中、古鷹と一緒に眺める出撃所を見て、その気持ちがますます高まった。
絶対に宍戸に任せる。こんな奴らを統括できないし、アイツが頼んだんだから、アイツが面倒を見るべきだ。
「やぁ、帰ってきたねぇ君たちぃ……見てたよぉ……ハァ……ハァ……オレっちの結城艦隊と、外国艦の皆さんの連携は……まぁその……ナオキです。君たちは噂に聞くぐらいキレイだから、深海棲艦も魅了されちゃうかもね……今のオレっちみたいに」
目を三日月形に変えた結城司令官が、隣で立ち尽くしている荒木大佐を差し置いて、外国艦を口説き始めた。
「Thank you! Handsome boyにそんな風に言われると、照れちゃうわねっ!」
「ハハハ、思ったことを言ったまでだよ。もちろんオレっちの艦隊の五十鈴や名取、そして最近来た長良も可愛んだけどさ……やっぱり顔の整い方がだいぶ違うんだよねぇ……!」
「だ~んけ!」
柱島艦隊旗艦となったオイゲンの胸がユサユサと揺れる様を見て、薄ら笑いを浮かべた。
「オイゲンも、ビスマルクも、アイオワも、ウォースパイトも、リットリオも、リシュリューも、オクチャブリスカヤレボリューティヤも、全員、おっぱいがデカイときた! これは、エッチエチなスケベおま○こだという証拠だね? その男から精液を摂取し続けなきゃま○こからエロエロイロイロ垂れてきて生命活動に危機を及ぼす欲情子作り塊魂みたいなカラダをしているのが、どれだけオレっちの理性を狂わせるか分かるかい?」
「あッ?」
「うんうん、安心して。オレの鬼頭指揮棒は、作戦完遂率を19%上げるんだ。君たちとはもっと作戦の連携を取らなきゃいけないから、後で全員、オレの部屋に来なさい。みっちりと連携して、連結して、孕ませベイベー砲、発射だおっ」
「いいわよ」
「え、マジ!? ねぇ聞いた五十鈴!? オレっちというイケメンち○ぽがようやく理解された瞬間だぞコレ!? やっぱり世の中イケメンですわぁ……」
「もちろんよ。そのF'CKING FACEを粉微塵にできるなんて、日頃のSTRESSを有り難く解消できるCHANCEじゃない! ね? みんな」
「「「異議なし」」」
「え、ちょ、ま、助けて五十鈴。いや名取、いや長良でもいいから。オレっちはまだ死にたくない! 死にたくないんだ!」
「し、司令官……」
「見ちゃ駄目よ名取。それに長良も、アレの存在自体が教育に悪いんだから。それよりさっさと入渠済ませちゃいましょ。長崎警備府に帰って宍戸司令官の下で演習させてもらうわよ」
「う、うそ……嘘だよねぇ……? 嫌だよぉ……! こんなの絶対おかしいよォ! そうは思いませんか荒木司令官!? オレっち、なんか悪い事しましたカァ!?」
「え、そ、その……不純なのは、良くないと思うよ?」
「は? ウッソだろお前!? こんな、王道を征く、スケベーエロスに手を出してないとか、何やねんお前。金玉ついとんのか!? 中○しの申し子ことインキュバスと搾精の申し子ことサキュバスは惹かれ合うナカなんだお!? あ、やめて! や、や、やめろォ! 海の上を歩くなんてできない! オレ艦息ちゃうねん! できないってイッてるでしょおおお!? あ」
一部地方の基地からの艦娘達、そしてその司令官達は一癖も二癖もあることに頭を悩ませている蘇我提督は、軽いため息を吐いた。
「一人は公然猥褻、もう一人は……まぁ、艦隊運営指揮を得意としていない、か。彼らを長崎警備府に預けようとは言ったが…‥警備府に入れるのは流石に厳しいか……? 宍戸は彼らを手懐けている様子だしな……ハハハ、流石はあの宍戸先生のお孫さんと言ったところか。いっその事宍戸をこちらの第四鎮守府の提督にでもすれば……いや、そうしよう。古鷹もこれで夜這いができ──ウァアアア!!!」
「パパッ!! い、いくらなんでも怒りますよ!?」
「ク……すまんすまん。だが小さな艦隊の司令官等を束ねる司令官として、彼が適任なのだから視野に入れてないワケではない。結城も多少アレだが有能な故、文句を言えないしな……この作戦は、あまり乗り気ではないな」
「ど、どういうことですか?」
「連合軍の艦隊は、既に動いているのではないかと思ってな……」
「え、なんで分かるんですか?」
まるで知っているような素振りを見せる提督に対して古鷹が首をかしげ、蘇我提督は瞳を閉じる。
情報通として有名だが、それ以上にスパイとして国際的な情報にも精通している結城司令官が、フィリピン亡命政府から連合軍の動きを聞かされていた。連合軍の艦隊の作戦が既に遂行されている事を知った結城司令官が真っ先に話した相手は、反攻作戦の総司令官となった蘇我提督、そして宍戸司令官だった。
この情報を聞いた二人は別々の考えを持っていた。
蘇我提督は、連合軍が出しゃばるのであればどうすることもできないので、無闇に反攻作戦を実行しなくてもいいと思っている一方で、宍戸司令官などの若手士官らはむしろ戦力と作戦遂行能力の向上、そして確実な作戦成功への準備に乗り出している。
先方が、主力とされる深海棲艦もほとんど撃破していないので……その上、連合軍の連携が取れる確証がないと、各幕僚が語っていた。主にアメリカと中国で構成される軍だが、参加国は互いに利権を取るために戦っている故、自国領土ではないので、士気も低い。
そんなのは無視できる。
どう転んでも、発令すれば確実に沖縄は外国の手に渡ってしまう艦隊であるのは確かである。
被害をある程度緩和できたとはいえ、作戦が失敗するあまりにもレアなケースとは違い、普通に戦って負ければ損害が甚大となるのは必須である以上、海外連合軍の失敗を願うような人物ではないが、今はただ与えられた命令をまっとうする事に専念する。
準備段階である以上、反攻作戦そのものは発令には至っていない。佐世保鎮守府主導のもと本格的なギアアップを行っており、作戦開始時刻まで数週間。
絶え間なく続く緊張感ーー海軍だけでなく、陸空軍ですら息を呑み、汗を拭う。
「はぁ……宍戸さん、私は……」
「ん? お前やっぱり宍戸のことを? うん?」
「だ、黙って仕事してくださいっ!」
「ぐお──ッ!!!」
「溺れる! 溺れるゥ! あぁもうやだぁァァ~ッッッ!!!」
「もっといい声で泣きなさいよ! Come on! アハ! アハハハハハ!!!」
「OMG……何してるのよWarspite?」
「え? だ、だってBismarck、あなたがQueenみたいにしろって……」
「言ったけど流石に引くわねその女王様っぷりは。これでBritisch艦の本性は容赦のないサディストだって分かったわね皆? 英国紳士は英国淑女(女王様)を誇りに思っていると豪語するけれど、一体どんな性癖してたらそんな事が言えるのか、怖くて近寄れないわっ。ね? アドミラール? ビスマルクのほうがあなたの女性として相応しいと思わないかしら?」
「え? う、うん……うん?」
「The f"ck did you say? Wana Boston Tea Party?(なんつったお前? ボストンティーパーティー始めたろか?)」
「なるほど、Meのcountryにまで飛び火させるなんて……これは改めて誰がこの艦隊のFLAGSHIPか決める必要があるようね」
「ぎゅ〜……大丈夫ですよ〜っ、提督は、リットリオのお胸に埋もれていましょうね〜っ」
「り、リットリオ……苦しい……!」
柱島提督が同人誌で見る性通教えられる系ハーレムショタ状態となっている姿を見て嫉妬心を燃やし、それを隠そうともせず、一応上官である大佐に対して心の叫びを浴びせる結城司令官は、出撃所の水面で溺れていても元気である。
「ハァ!? フザケルナヨお前!? 何が悲しくてお前みたいなヤツのハーレム見せつけられにゃあかんのや!? ぶっ殺すぞオラァ!」
「「「なんか言った? 本当に溺れ死にたい?」」」
「イぎだいでずッッッ!!!」