整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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ギアアップ2

 

 

 執務室。

 警備府は失敗したオ号作戦の実行をする前よりも格段に忙しく、人員も増えて、本格的な反攻作戦の準備をしていた。俺の影響も少なからずあるかも知れないけど、長崎警備府はあまり作戦に関わらず忙しくなかったから、いきなり仕事ができて忙しく感じるのかも知れない。

 

 艦隊司令官とかいう、警備府司令官と何が違うのか訳のわからない役職は副司令官として認識しており、佐世保第一司令長官ーーつまりは佐世保方面軍総司令官であり、俺の直属の上司として返り咲いたムキムキイケメンダンディズム提督こと蘇我中将は、我々に前面海域という名の海域を指定し、そこを全任する案が浮上した。

 

 これはつまり、大本営が作戦実施を発令して進行する際に、前線の取り仕切りは全部我々に丸投げという事でもある。そこでの細かい指示や意思決定も、大きな進路変更も、すべて斎藤准将の思うがまま……そして、当面の人事なども含めて、手中の範囲内での柔軟さが飛躍的に増す。

 しかし取り仕切るのは俺、総指揮権を持つのは先に昇進しやがったクソメガネこと斎藤准将。

 当然ながら相応にして責任が増える。

 

 あとで改変を要求しにいくが、蘇我提督の俺たち若手士官や、一等星と名高くなるほど練度をあげられた艦娘達への期待は大きい。

 

 補給面、陸軍開発の走行橋を大手を振って使えるが、これまた当然、スムーズに行くように管理をするのも俺の役目である。べリングハム少佐もいるので、ある程度負担が緩和されているが……いやぁ、やること多すぎてストレス溜まりますね。

 

「うっざ、え、なに? 警備府への物資の輸送が滞ってるって? 陸軍のはもう届いてるのに? 空軍基地なのに陸より遅い? ジョーダン? マイケルのジョーダンなの?」

 

「は、ハ! 申し訳ありません!! 空軍基地一同を総動員させている……と飛行隊長からも連絡を頂いたのですが、何分この非常時、その上書類の申請や空軍省との連絡系統が滞っているらしく……」

 

「あん? 空軍省って、大本営にある小さなお部屋のこと? ハッ、設備が整ってなければ組織も整ってねぇと来たッ! 九州の危機が迫ってるんだから、ソッチはファイターパイロットの一人でも出撃させるのがスジなんとちゃいますかねェ!?」

 

「も、申し訳ありません宍戸大佐!」

 

「今なんつったお前? 海軍では”だいさ”言うんやでェ!? そんな事も知らずによく空軍士官学校卒業できとるなァおん!?」

 

 悪態をつきながら足を机上に乗せた。

 

「はぁ~つっかえ、ほんまつっかえ。やめたら? この仕事。猿、おいサルゥ! すいませんしか言えんのかオラァ!? おりゃお前のケツの中から前立腺全部引っ張り出してェ内蔵ぶちまけてもええんやぞォ!?」

 

「も、申し訳ありません!!」

 

「CPT.SHISHIDO、彼は悪くはありません。ここは一旦TEAでも飲みながら落ち着きましょう」

 

「アメ公がイイ気になってんじゃねぇぞオラァ!! 2つ選択肢をやる。今俺に差し出した熱々のお茶を一気飲みして黙るか、俺のD○CKを咥えて黙るか、どっちが良いんだよ?」

 

「後者でお願いします……♂」

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!!! こ、コイツらデキてやがるゥ!? うあああああ!!!」

 

 逃げていく士官を追うことなく、俺はベリングハム少佐の差し出した紅茶をふてぶてしく飲んだ。キッツ、濃ッ。なんだこれ? ブリティッシュティー? クリームかミルクをデフォルトで入れろと言いたいんだが、このホモ少佐にそれ言うと恐ろしい事になりそうなので控えておく。

 

 ここにいる少佐。コイツは外国艦艦隊や海外士官との連携を取るために、俺と蘇我提督の下を行き来している。男を取っ替え引っ替えしてるなんて、とんだ尻軽男もいたもんだ。頼むからさっさと俺以外の男を見つけてくれ。

 

「空軍の人だからって威嚇しすぎ。流石に苛つきすぎじゃないのかな?」

 

「時雨は分からんだろう、いち組織を運営する時にかかる負担。それを維持するだけでヤバイのに、これだけ動かそうとするとね、なんかミス一つでも許せなくなるよね」

 

 当然、飛行隊長さんとは既にお知り合いの仲だ。

 何度か警備府にも訪れて、軽空母鈴熊や、旗艦の飛鷹、副旗艦隼鷹の艦載機などの視察をしていた。

 

「っていうか宍戸くん、自分で悪評広めてどうするの……」

 

「大丈夫ですよ白露さん。ほら、人格評判が奈落だったらこれ以下になることって滅多にないじゃないですか。ていうかですね、知ってるんですよ白露さん? 綾波ちゃんに協力していたこと、ぜ~んぶ、知ってるんですよ? 村雨ちゃんと五月雨ちゃん……それに時雨、お前も」

 

「「「え……?」」」

 

 白露姉妹は頭をかしげながら、本当に分かっていないような素振りを見せる。とぼけるのが上手いなァ~。隣りにいる春雨ちゃんは本当に知らなそうにしている。

 

「綾波ちゃんがコミマケで出した同人誌に、俺とベリングハム少佐の耽美物語を描いたとっても純愛物なクッソ薄い本書いたの手伝ったんですよね皆さん? なんでメ○ンブックスに上がってるのか疑問なんですけど、どういうことなのか、ここにいない綾波ちゃんのために、ご説明いただけると有り難いのですが? んッ?」

 

 全員が目をそらす。

 ベリングハム少佐が驚愕すると共に、手元の端末で俺が言及したサイトにアクセスしようとしている。

 そう、ある程度名前の通るリアルな二人の……名前は変えてるけど、俺とこのガイジンがモデルなのは一目瞭然。

 

「だって綾波の創作意欲を失わせたくなかったんだもん! 仲間のために、そして何よりお礼にくれたギフトカードのために……! 僕たちは、やらざるを得なかったんだよ!!」

 

「ほう、現金のためにやったと……? 多分ほかの皆は善意だと思うからいいとして、すごくエグいシーンがあったんだけど、アレはなに?」

 

「え、そ、そんなシーンありましたか……? 五月雨は、告白のシーンで終わったと思ってましたけど……あっ、ちなみに告白のお花のトーンは私が描いたんですよっ!」

 

 なるほど、純粋な少女のような笑顔を振りまく純粋無垢ムクな天使たる五月雨ちゃんには、あのいきなりすぎる拡張からの人体内部開発事業始動からのアクメ空中天昇曼荼羅を見せていないと? そこだけは褒めてやるよ。

 

「みんな、純愛物を書く時は素直に純愛にしよう。俺が何故かブッダに話しかけてるシーンなんて頭痛がしたぞ」

 

「逆になんで最後まで読んだんですか宍戸さん……」

 

「ご、ごめんね宍戸くん? 白露お姉さんは別にね? そういうつもりで描いたわけじゃないの! ただ宍戸くんがいじられてる所みたいな~って思ってただけでっ、それ以上でもそれ以下でもないから!」

 

「今世紀最大級に悪い弁解……なるほど。春雨ちゃん、今度俺と一緒にデート行こうね。この裏切り者共は、ぜーったいに連れて行かないから!」

 

「あ……お、お兄さんとデート……二人きりで、デートォッッッ!!!」

 

 ヤバイ、春雨ちゃんが超サイヤ人みたいになりそう。

 執務室でこれでもかってぐらいの人口密度は、部屋の湿度そのものを上げる。一時のお茶は人の心を和ませるというが、流石に人の出入りが多いと蒸し暑く感じ始める。

 

「司令! 遠征終わったわよ!」

 

 陽炎三姉妹が入ってきた。資源を取りに行ってもらう為の遠征は往復で何度もやる必要があるのでそれに当たってもらっていたんだが、当の本人達は”退屈”だと述べた。

 最も重要で、最も面倒くさく、最も楽しくないミッションとして挙げられる例えが遠征任務なんだが、これは資源が少ない国にとっては必須。

 今となっては雀の涙程度の収支しか得られないだろうが、それ以上に、作戦前なので各々の要港部で有り余るほど貯めておきたい……んだけど、流石に重労働を強いるのは心苦しく、効率の良いルーティーンで、なるべく出撃回数を増やさない方針で行っている。

 休暇は無いけど、こっちも休暇返上ブッ通しで仕事しているから勘弁して。

 

「ありがとう陽炎。お前たちもどうだ? ここにいるクッソイケメンな英国紳士系アメリカンが本場の紅茶を入れてくれるそうだぞ?」

 

「CPT.SHISHIDO、照れます♂」

 

「え、いいの? ってうわっ、本物イケメン!? しかもよく雑誌で見る人じゃん!」

 

「こんにちわ、LITTLE KITTIES(かわい子ちゃんたち)」

 

「「「きゃあ~~!!!」」」

 

「あはははっ!! 驚いたわ~、司令はんが言うイケメンは信用ならんからなぁ~。じゃあ、ちょっとお邪魔させてもらうでっ」

 

「本場の……と言いますが、米国の本場はコーヒーなのでは? スターのバックス……は確か、米国の企業だったと不知火は覚えています」

 

「おいおい、勘違いしてもらっちゃァ困るぜ? アメリカが本場にしているのはユダヤ人が作った経済的な昇華とファストカルチャーによる優等文化の積極的な取り入れだ。濃厚かつ歴史ある文化ってのはイタリアとかドイツみたいなヨーロッパ諸国各地に根付いた物を言うんであって、アメリカは安さとカフェインの効率的な摂取を世界へと広めたに過ぎない」

 

「そのとおりですCPT.SHISHIDO。流石は私の……いいえ、私が見込んだ人です♂」

 

 ベリングハム少佐も賛同しているようだ。

 俺の理論に基づけば、世界の各地に存在する文化なんてのは、資本主義格差社会で勝利した大企業による戦略で強引に取り込まれたり、フラッシュアウトされる。

 そんな社会の汚すぎる現実を知らないような純粋な百合のお花ちゃんたちが、お茶を飲んで顔を少ししかめる。紅茶が濃いのは正に本場っぽいから、これにミルクやクリームで薄めると苦味が滑らかになり、味による抵抗を感じなくなる。

 

「ん~美味しいわねこれ! 今度からコーヒーよりも紅茶にしようかしらっ」

 

「おいおい、コーヒーをハブんなよ陽炎。俺はこれでもコーヒーには少し五月蝿いぐらいに好きなんだ。飲めば種類が一発で分かるほど……って言っても過言じゃない。ドヤァ」

 

「え? そうだったの? わさわさっ」

 

「お、おおおおう! もし当てられなかったら、警備府二週走ってやるよ!」

 

 二週というラクラク走れる程度の距離に留めて保険かけてるのホント可愛いっ、と白露さんが褒めてくれた! ワーイ! 

 

「じゃあ宍戸くん! これ飲んで何のブランドが当てて!」

 

「……なんでそんな早く用意できるの?」

 

「良いからいいから!」

 

 本当はコーヒーの事なんてこれっぽっちも知らないんですぅ……! 

 って言えばギリギリ許され……るわけねぇだろアホか。

 少佐が持ってきたティートレーの中には、コーヒーも作れる道具が揃っている。銘柄って言えばインスタントのこと? 作り終えるまでの時間からしてそうだけど、それともブルーマウンテンやキリマンジャロみたいな味わっても何が違うか分からないタイプのコーヒーだったりして? もういいや飲もう。

 

 悠長にティータイムを楽しむ執務室内の全員が俺に視線を向ける。

 口に含んだスプーン一杯程度のミックスには既にクリームが加えられて、後味は若干ねっとりしている。だが飲みやすく、悪くないチープ風味である。インスタントのだと言えば大丈夫だろう。

 

「インスタント!」

 

「うん、それで何のブランド?」

 

「鬼畜時雨姉貴オッスオッス……」

 

「なんか言った?」

 

「なんでも……ザ・ブレンドの百十四だな」

 

「え、当たった? ほんとに?」

 

「「「うっそ!?」」」

 

 ハ……俺を見くびるなよ時雨? 俺は予めどんなコーヒーがここに運ばれてきたか少佐から知らされているんだ。情報を制する者、世界を制する。真理であり原則。

 

「え、嘘!? ホントにあたったの!? すごい! 流石白露が認めた人なだけはある!」

 

「司令はんすごいやん! やっぱ司令はんぐらいになると、なんでも知ってるんやな~って、改めて思うたわっ」

 

「はは、褒め過ぎだよみんな。高級士官は一応上流階級の人とも話さないといけないから、知識は持てるだけ持っておいたほうが良いって思ったんだ。一応、これぐらいの銘柄を区別できるまでにならないと、真の提督とは言えないからね、あははは」

 

「流石ですCPT.SHISHIDO……ここで申し上げるのもなんだと思いますが、それはTHE・BLENDではなく、私がポケットに忍ばせていたNESCAFEの方です。申し訳ありません」

 

「はーいっ、では今から、オチョくられ系可哀想副司令官様が、行き来混雑諸行無常状態警備府を二週ぐらいしてきまーす。はいすいませんね、味通じゃなくて」

 

「味通じゃないのが駄目なんじゃなくて、無理に背伸びするのが駄目なんじゃ……」

 

「お兄さん! 春雨も行きます!」

 

「駄目だよ春雨ちゃん。俺はね、自分に厳しいんだ。だから絶対に警備府を走る。そして俺が有言実行する漢だって証明するためにね。じゃあ……行ってくるから。 うん、分かった行くから、みんなしてドアに向かって指ささないでいいから、分かってるからイジメナイデエエエエエ!!!」

 

 

 

 警備府玄関前。

 

 二週走ってくるとは言ったけど、この二週にはちゃんと意味がある。

 出撃所で作戦演習と実技訓練をしている集団への指導、斎藤司令官との進歩報告、艦隊の小まめな再編成や細部に渡る整工班の人事とか装備とか、第四鎮守府にいる大鯨と連絡をとったり、倉庫の物資確認。

 この目で見てから指示や司令を出す。

 

 最終的に警備府全体を回り、往復しなきゃいけないのを含めて数時間ってところか。長い罰ゲームだけど、備えあれば憂いなし。自分が今できる最善の行動をすることで、未来の要因となる現在を正しい方向へと導ける。

 

 と大言壮語を吐き続けながら士官らの士気を上げ、なおかつ警備府の艦隊を見回る。中には、当然ながら反攻作戦に不満を持つ人もいる。そして何より、反攻作戦が開始される時期にも疑問を持つ者が多い。

 

 疑問点を付けるのが、中破した艦船ーー失敗した作戦の撤退戦で大いに活躍したイージス艦の数隻は、動けない状態だ。損傷が酷いわけじゃないけど、ちょっと損傷しているからメンテナンスと検査が必要だ。

 艦船は確かに強力だけど、うまく使わないと当然浮かぶ鉄の塊になっちゃうし、深海棲艦の撃退に成功した数より、世界的に見て破壊されて多数の死傷者を出した例の方が多いんだよなぁ……艦娘の壁として使うには人件費バカにならないし。

 そんな扱いづらくても随行すれば陸での戦車みたいな役割を果たすかも知れない……そして何より物資を大量に輸送できる船が直らない事には、まず作戦の発令はないと思ってもいい。

 武装していない輸送船の指揮も俺に任されているんだけど、この警備府には入らないから、艦娘が佐世保港湾に向かって実技演習をしなきゃいけない状態。

 

 そんな疑問も持たずに働いてくれる妖精さんマジリスペクト。

 

「ほら妖精さん、お礼の金平糖だ。みんなには内緒だよ?」

 

 っ! っ! と喜んでくれている。しゃがみ込んで少し話す。

 

「人はストレスを備蓄する生き物でね、愚痴とか、喧嘩とか、色々起こるかもしれないけど、その時の感情ってだけで、本当はみんな、みんなのことが大好きなんだ。もちろん俺もね。だから、溜息をつきたくなる時があるんだ……あぁやって、理由もなくいがみ合いが起きる時は特にね」

 

 

 

「ハァ!? Meがぶつかったですって!? ハッ、寝言は寝てから言って頂戴って、いつも口がピクルスになるぐらい言ってるわよね?』

 

「ザワークラウトじゃないかしらそこは? ……っていうかアドミラールはどこにいるのよ!? プリンツもいないし!?」

 

「「「…………」」」

 

「は、早く止めないと……い、五十鈴ねぇ、長良ねぇ……」

 

「これじゃ作戦演習のための戦術訓練が進まない……」

 

「というよりアイツはどこよ!? 電話に出るにしても外国艦の司令官が戻ってきてからにしなさいよね!? ホントアホ!!」

 

 出撃所の近くで騒いでいるのは柱島泊地と、合同演習のために来た阿久根要港部のみなさんだ。何故か司令官の二人がいないので、俺はさらに近づいて様子をみたんだけど、指揮権のある人は誰一人としていないみたいだ。

 いや、指示通りに動けば問題ないと思うんだけど、司令した通りに行動、そして演習するはずの肝心の艦娘たちが……まさか……喧嘩、ですかぁ?

 

 ほほぉー、これはこれは。

 この俺が口をザワークラウトみたいにして喧嘩はだめだお? って言ったのに、そういうことですか。え、喧嘩だめって、ジャパニーズだから通用しない? いやいや、だから英語でもドイツ語でも言ったさ(ドイツ語翻訳はオイゲンさん担当)。

 でも、あれだけ言っても、意味なかったんですかぁ……?

 

 ふーん。

 

「Hey」

 

「「ナニ!?」」

 

「……Fightingはあれほどnichtつったやろうがァッ!? おん? 怨ッ!? いいか今から貴様らそのケツ海上に戻さねぇとバリスティックF○ckingミサイルが○○○を○○○して貴様らの○○○を○○○ばりに○○○して○○○を○○○て○○○─────して貴様らのFuck"n社会保障番号剥奪してやるからなオラァァァァァッ!!!」

 

「「───ひ、ひぃぃぃッ!!! ご、ごめんなさいぃぃ!!!」」

 

 ハァ……はぁ……!

 

 よし戻ったな、言えば聞くではないかあの外国艦たち。

 この調子で、本来ここにいるはずで、今は何処かへと消えている司令官たち二人にも説教をせねばな。

 

「ありがとうございます! 宍戸司令官はやっぱりすごいですね~! 流石です!」

 

「ははは、そう褒められると悪い気はしないな! でも俺の不手際もあったし、ごめんな長良、五十鈴、名取、そしてその他の阿久根要港部の艦娘たち」

 

 阿久根要港部のみんなも、いえいえと手を振る。

 

「宍戸司令官が悪いわけじゃないわよ。柱島の提督はともかく、司令官が一人しかいないのに私たちの提督がフラフラどっか行っちゃうのが悪いのよ。ホント信じられない!」

 

「それは後できっちりと言っておくよ……そりゃもう、ベッドの上で泣いちゃうぐらい、キツイおしおきも兼ねてね」

 

「「「え!?」」」

 

 びっくりしている長良たち。

 はは、恐怖しているんだろうな。

 同性愛掲示板というリーサルウェポン、そして龍田さんというタクティカルウェポンがこちらにはある。尋問と辱めの連撃を耐えきれるかな結城は? 躱すのは得意だろうけど、そうは行かないからな。地の果て、いや、海の果てまで追いかけて絶対にホモ共とサディスティックタツタサンに嬲られるようにしてやる。

 

「……宍戸司令官って、やっぱり提督とデキてるのかしら……?」

 

「でも斎藤司令官ともデキてる可能性が微粒子レベルで存在してるー?」

 

「ねえさん達、冬の同人誌を見なかったんですか!? 宍戸司令官と外国人の方がお互いのカラダの構造を知り合い、探究心溢れる研究をする愛し合う二人がそれぞれのグランドライン(スジ)を探し求めて快楽のシャンバラへと身を投じてた、あのお姿を見ていないと!?」

 

「ハハハ、生憎だけどデキてないよみんな。俺じゃなくて、俺の尻合い♂に少し彼の処理を任せようって思っただけ。あと名取、その口ぶりだと俺が表紙に描かれてある薄い本、買っちゃったんだよね? 今ね、俺が持ってる権限のすべてを行使して耽美的な題材をテーマにしたアートを排除しようと尽力してるところだからさ」

 

「い、いくら提督でもそれは駄目ですっ!! 創作への冒涜です! 人権侵害です! 意味もなく文化を排除するなんて一人の権限でどうかできるような問題ではないと思いますっ!!」

 

 いつもオドオドしてるタイプの名取が今日は一段と語る。

 

 別に俺は特定のジャンルにホロコーストをしたいわけじゃない。どんな作品でも愛が込められていれば、素晴らしくなると思うし、それは尊重したい。

 ただ実在する個人の人権が脅かされているとなっては話は別だ。名取とか、あと綾波ちゃんとか……ついでに自分達の提督である荒木大佐と、その直属の上司である荒木大将による親子丼とか重い拷問みたいな内容の耽美創作を描いたザラさんは少し考え直したほうが良いと思う。

 

「それはいいとして……ちょっと見てもいい?」

 

「ハ!」

 

 近くに居た記録係から演習成果の詳報に目を通す。

 彼らと数回ほど相槌を交わして、五十鈴たちの艦隊とオイゲンさん……今はアイオワさんの艦隊がどのように連帯を取っているか、並びにそれぞれの性格、どうしても生じる問題点や摩擦などを考察して、頭の中で処理する。

 

「五十鈴たちの艦隊は与えられた命令をこなす精密さがある一方で、予想外の事をされた時に陣形が乱れたり、再編成がちょっと遅いな……まぁあの外国艦たちが突然進路や陣形変えたりすれば流石にそうなるのはわかる。臨機応変性に乏しいとは言わないけど、弱点になってたりする? 柱島泊地とは真逆なタイプみたいな……」

 

「そうね……確かに突飛な事が起こると少し指揮が乱れてしまうのは何度かあったわね。心がけてはいるんだけど、これだけ大きな作戦となると、ちゃんと任務を遂行できるかどうか……致命的な欠点よね」

 

 これは緊張の意味を大きく含んでいる発言だろうと思った。彼女たちの記録や演習を見ても、特段と臨機応変性に欠けてるとは思えない。

 だけど万が一、危機的状況に陥った場合の対策を上手く取れない、なんて事になったら遅いから、何とか払拭……いや、克服してほしいな。

 

「そりゃ欠点じゃないよ。この条件下で行われる海戦が君たちの実力を最大限に発揮してくれるんだ。そして柱島はアレでいい。世界の海軍を見てもあの柔軟すぎる動きは真似できるものじゃないから、君たちにない物は彼女らが支えることになるし、その逆もある。臨機応変性はなくても、マニュアルを忠実にして任務を遂行する能力も、決して凡庸ってわけじゃないんだからな? 自信を持って任務に当たるだけでいい」

 

「宍戸司令官……うん、ありがとう。ちょっと自信が付いた気がするわ。でも、もし良ければあの外国艦たちとどうやって連携を取るのか、少しアドバイスがあると助かるわ」

 

「そうそう! どうしてもうまくいかない時はとりあえず~みたいなのでもいいですから!」

 

「んん~……普遍的な法則はないけど、それ以上に必要なのは、アレを喋る暴風みたいに捉えるのがいいんじゃないかな。君たちは形式上だとしても随伴艦として扱うには惜しい艦娘たちだけど、あっちは艦種がほとんど揃ってるから必然的に柱島艦隊が目立つ。服装の目立つけど」

 

「アハハ、確かにキラキラしてるわよねっ」

 

 と言いつつ、自分たちの服を見下ろし始める五十鈴たち。そんなデッカイおっぱいしてるんだから見えるのはスマホ乗せられるぐらいデッカイおっぱいだけでしょっ! そのエッチなおっぱいで、俺の執務室の下でパイ○リしなさいっ!

 いや、俺は彼女たちの司令官じゃない。俺は真の女性を真に労る事のできるイケメン系提督である。雑談を交えたコミュニケーションで場を和ませながら、親身に彼女たちにアドバイスをする俺……自分で言ってて恥ずかしくなってきた。

 

「それ言うと君たちが地味みたいに感じちゃうかも知れないけど、その反面、敵の的になりにくいってのが案外一番の強みになったりもする」

 

 対人戦っていう演習での話だけど。

 

「作戦中は支援艦隊と言われるかも知れないけど、事実上は君たちが主体だ。敵艦隊をランダムに撃沈してくれる暴風流を纏う艦隊……仲間として戦う暴風と一緒に行動するのは心強いけど、無理に連携を取ろうとなんてしないでしょ?」

 

「確かにそうね……」

 

「勝手に敵艦隊が目の前から消えたらそれ以上に良いことはない。最低限のコミュニケーションはとってほしいけど、彼女たちは君たちが思っている以上に役立ってくれるはずだ。君たちのその意気で、この基礎訓練を一緒にやっててほしいんだ」

 

「分かったわっ、任せてちょうだいっ!」

 

 阿久根要港部総旗艦の五十鈴。

 おっぱいがデカく、態度もデカい。

 初対面だった時にいきなりタメ口きかれたのは驚いたけど、予想通りの自信と向上心を持っているようで、何よりおっぱいがデカイ。長良が向けてきた笑顔をニッコリと返して、おっぱいを凝視する。

 長良のおっぱい、そして五十鈴と名取におっぱいを交互に見るが……こりゃ、格差的だな。

 次女のおっぱいがデカイ艦娘が多い気がする。そうでなくてもエロい気がする。

 これはまさか……何らかの法則!? 如月、照月、春風、那智お姉ちゃん、龍田さん、神通ちゃん……セクシー……エロい!

 

「おい宍戸ちょっとこっち来い! 見せたいものがあるんだよォ!」

 

 五十鈴たちとようやく雑談をする機会を得たと思ったら、今度は彼女らの司令官様が俺を呼んでいる。演習場に通じるドアから半分体を乗り出しながら手を振っている。

 

「あなた今までどこに行ってたのよ!? 柱島の司令官が帰ってきてないんだからフラフラどっか行ってるんじゃないわよ!? バカなの!?」

 

「ひ、ひぃぃ! メンゴメンゴぉ! ただもうちょっとだけ電話サセテサセテ! あとそこの宍戸ちょっと借りたいんだけどイイ!? いいよね!? ちょっと孕まセ○クスの素晴らしさ啓蒙とかァ〜どぉうぅッスかァ〜!?」

 

「アイツ懲らしめてくるからちょっと待ってて」

 

「分かったわ」

 

「ちょ、スパナ持つのはノーノー。コームダウン。ドードー。大丈夫だって! オレっち、言った事はちゃんと果たすからさ……男として、ね?」

 

「は?」

 

 五十鈴の怒りが頂点に達したのか、ドアからはみ出している結城に近寄ろうとしている。俺も害虫を駆除する事に躊躇いはなかったが、ヤツの後ろから出てきた時雨が俺を諭した。お馴染みのハンドサインは五十鈴には理解できなかったようだが、異様な行動をする時雨と立ち止まった俺を見て何かを悟る。

 

 ちょっと待ってて、と言ったら素直に待っててくれる五十鈴は一先ず結城から距離を離した。時雨がちょいちょい、と手招きして俺を呼んでいる。

 

 ハンドサインは、明確に何かのメッセージを伝えているわけじゃない。

 少し真面目にならないといけない時に使い、実際に使う事は殆ど無い俺と時雨の間だけでなく、白露姉妹と結城や他の同期連中も使っていた軽い警告メッセージ。

 海軍兵学校時代に、夜抜け出したり、職員室に忍び込む時など、幾度となく使用し、同期の間だと最早それだけで会話が成り立つようになっていたのは懐かしい思い出だ。

 

 時雨と結城がいたドアの向こうは工房への近道でありよく使われる道だ。もしも込み入った話だったら執務室で聞こうと思ったんだが、どうやら緊急な用事らしく、珍しく二人共マジメだ。

 

「すま○こ宍戸、ちょっと緊張感を持たせないといけない話でな、執務室まで歩きながらでもいいか?」

 

「あぁ、ふざけたお前のその謝り方でどんな緊張感が持てるってンだ? あッ?」

 

「今回は結構マジらしいよ。結城くん、単刀直入に言ったほうが良いんじゃない?」

 

「そうだね時雨ちゃん。オレっちの国からの情報らしいんだけど……海外の連合軍艦隊、沖縄奪還に失敗したらしいぜ?」

 

「……は?」

 

 結城の情報の出処は不明だし、俺が取り扱えるレベルの情報じゃないから聞いてるだけだったけど、俺は連合軍の艦隊が失敗する可能性がある事を結城から知らされていた。それはショッキングな出来事ではなく、一部の海軍士官にとっては願ったり叶ったりな状況な訳だが、だからと言って反攻作戦を実行するのが正しいとは限らない。

 

 順応して俺たちが今度は沖縄を奪還する羽目になるんだろうけど、総司令官となった蘇我提督にこの事実を知らすべきなのは承知の上だろう。いち早く俺に知らすのは悪くないし、いよいよ俺たちが前線に出る羽目になるのかと思うと気ダルさが倍増するだけなんだけど、それでもこの焦り様はなんだろう。今までこんな顔したこと無いぞコイツ。

 

 時雨もだ、凄く焦ってる感じ。無理もないだろう、こんなスケールのデカイ作戦に参加するなんて今まで無かったし、俺としても手に汗を握らないと言えば嘘になる。

 

「安心しろって時雨、俺たちはあの八丈島を攻略した前線艦隊なんだ。俺たちにできなくて、誰にできるんだよ?」

 

「う、うん……そうだね……」

 

 俺たちだけじゃないが、思いつめる場面に直面しているのは確かだ。

 見つめ合う美男美女。

 

「おい! オレっちというイケメンさんの前で、プラトニックラブコメですかぁ……? クソォ! 時雨ちゃん! オレっちと一緒に、ハードラブかまさない!?」

 

「「地獄に落ちて」」

 

「F○CKッスねぇ! まぁいいや、急ぐぞ! 俺達には時間がない~のぉ~! 沖縄に根城張ってた深海棲艦がコッチに進行しに来てるって言うんだからなぁ!?」

 

 歩くスピードを急かそうとする結城と時雨が、サラリと、とんでもない発言をしたのはその時で、その重大性を理解するのに数秒かかった。

 

 

 

 そして司令官のいる執務室に着いた頃には、蘇我総司令に対して、各司令官へ緊急招集をかけるように進言していた。

 

 

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