佐世保鎮守府の庭。
村雨ちゃんが俺と腕を組んで歩くのは仕方がないことだ。
なにせ人が多いんだ。一般人が入り浸る場所から、時雨たちがいる軍人オンリーの場所に行くには、このルートを使うしかない。
つまりこれは離れないように、子供によくいう、手を繋ぎなさい! 的な命令であって、勃起を催す胸部を俺の腕にぷにぷに押し付けなさい! 的な命令ではないのだ。
村雨ちゃんの顔を見ろ? すごい二ヘラ顔だぜ? 嫌がってもないし、このままでも、別にいいか、みたいな?
「デートみたいだね、村雨ちゃん」
「えへへぇ~、そうですねぇ~……えへ、えへへへ……」
とろとろした顔しやがってよぉ?
俺がその気になれば、違うルートに行って、誰にも見られない場所につれていく事も可能なんだぞぉ~? そうすれば、ベテラン整備工作兵たる俺がどんな手を使って整備をするかなんて知ってるくせにさ、そんな無防備な顔しちゃって。
幸い、海軍の人もちょこちょこエリアを出入りしているからすんなり抜けれた。
「ほら村雨ちゃん、もう着いたよ。俺の腕に掴んでいたいんだったら、時雨たちのところに行くまではこのままでいいけどね」
「そ、そうですか……? な、ならこのままで……えへへっ、こうしてると、みんなに勘違いされそう、ですね……っ」
村雨ちゃんッッッ!!!
ぐへっへへへへへいつか犯したるっ。
「うわ、猿みたいな顔してるかも……」
「誰が猿ジャイ!? いくら秋津洲さんでも許さないぞ!? ……あ」
村雨ちゃんが離れて髪を整え始めちゃった……流石にそんな顔真っ赤にしてたら、ごまかせないと思うけど……あわあわしてる大鯨さんと、相変わらず俺に興味なさそうな初風が秋津洲さんと行動している。
「秋津洲さん、体の方は大丈夫なの?」
「別に負傷したわけじゃないから大丈夫かも! 秋津洲が指揮してた艦娘たちも全員ピンピンしてるかも! ……でも、来てくれなかったらちょっとヤバかったから、それだけはお礼言いたい、かなって……」
かもを外した秋津洲さんがモジモジしてるぞ?
雨降ってない?
「当然だ、仲間を救うのは義務だし、秋津洲さんたちの活躍が結果的に作戦を早く終わらせたんだ。本当に電撃作戦みたいだったって、それ世界中が言ってるから。事後処理の方が時間かかってさ……」
「事後処理の方が手間を取るのは当然だと思いますぅ……」
黒スト大鯨さんの仰るとおりである、俺のペ○スも、彼女の前では亀頭を下げてしま……おい、なに上がろうとしてんだ、やめろ、俺のパンツに貴様の存在感を隠すほどのスペースはないんだぞ! やめろッ!!
「素晴らしい活躍だと聞いているわ……村雨さんも前線に立ったんですよね? 私もあんたのような艦娘を目指したいと思います」
「そ、そんな、私はただの随伴艦で……」
おい初風、なんで俺にはタメ語で村雨ちゃんには敬語なんだ?
あまりチョーシ乗ってっと、いくら大鯨さんの秘書艦でも口にご立派フランクフルトぶち込むぞ。
「HEY! SHISHIDOたちも来ていたのね! 食べて飲んで踊る! こういうわかりやすいPARTYは好きよ!」
「アイオワさんも来ていたんですね」
作戦中に救出した艦隊のみんなは、一応大本営では大丈夫だと発表されていたが、本当に大丈夫なようで一安心した。どうやらオイゲンさんと荒木大佐は来ていないらしいので、アイオワさんとリシュリューさんとリットリオさんだけで来てるらしい。
人数が少ないが、ワリと存在感があるのは逆にそれだけ目立つということだ。
特にアイオワさんはエロアニメのアメリカ人が着るエロ服を着用しており、常にセークス状態。
雄共がこちらを凝視してるが、俺の顔を見て納得するあたり、俺も有名になってきたということだ。
「それにしても、何故あんなに張り切っていたんですか? 外国艦は頭のリミッター外したようなテンションでどうにかなってた、と言えば納得できるんですが、秋津洲さんも軍令部勤務だったのに、いきなり前線とか……ま、まさかとは思うのですが、上官に敬語使わなくて左遷されたとか……」
「そんなわけないかも! っていうか、ちゃんと敬語使ってるかも!」
「じゃあかもかもうるさいから反感買って左遷……」
「左遷から離れるかも!!!」
「あの、Meたちが頭おかしいみたいにいうのやめてもらえない?」
海外艦隊、例の艦隊、ヤバい艦隊といえばあそこしかないわけで……秋津洲さんたちは、かなり念密に戦闘計画を立てていたらしく、攻略スピードが早すぎてそれを追いかけようと作戦を早めるのが大変だったのは覚えている。
だけど、結果的にその計画は他の参謀や司令官が出した案を軽々と超える成果を出してたのは事実であり、功績のおかげで佐世保鎮守府でも名前が上がっている。
これも俺たちが死にもの狂いでバックアップをしたおかげって感じですね。
「ま、まぁその、軍令部も第一次作戦の失態を取り返すのに必死だったかも! だから秋津洲が頑張っただけかも!」
なるほど、そして成功したら軍令部に戻るらしいから別に気にする必要はないのだとか。
未来にて、秋津洲さんの口から話されることだが、大淀総長と話した事で得た仕事だと言われている。
大淀総長から将来的にも海軍でやっていけるように、盤石なコネクションを作ってもらう手伝いをしてやると言われたのだとか。作戦計画が順調にコトを運んだのも、秋津洲さんの貢献が大きいが、上手く行き過ぎたのが災いして、流石に熱くなりすぎたと反省する事となる。
彼女は実は一人の艦娘としての実力こそあまりないらしく、端的には弱いらしい
得意とするのはこういう大規模作戦の超大艦隊の総指揮や、大局面での戦術、戦略研究。しかし所謂、大器晩成型で、秋津洲さんは最初は艦娘として入隊したらしいので、見出されるまでは機会がなかったらしい。
彼女にとって沖縄大規模作戦は名を上げる絶好の機会だったのだとか。今後、幾度となく功績を上げ続け、有数にして優秀な艦娘として海軍に名を馳せる事となる。そして、何気に料理が得意。独身。
秋津洲、艦娘准将への昇進パーティーで漏らした真実である。
「なるほど……でも元気で良かったよみんな、本当に心配したんだぜ?」
「あ、ありがとうかも……」
目的地まで歩きながら、時折、秋津洲さんがサインを求められたり、大鯨さんがナンパされたり、アイオワさんがナンパされたり、初風がナンパされたり、村雨ちゃんが告白されたり……え、俺は?
「随分と凄い顔ぶれを連れているね宍戸大佐」
一通り歩いたところで永原元帥の一団と巡り合った。一団と言っても、彼の隣りにいるのは武蔵さんと大和さんだけである。
この二人……というより、彼の艦娘たちは海軍のリーサルウェポン。
46センチ砲、51センチ砲という、ひと目見たことがあるがとんでもない艤装を装備しており、戦艦っていう珍しい艦種ながら、あれは圧巻の一言で、絶対に相手したくないタイプの艦娘である。
もう一度言うが、演習でも絶対に相手したくない。あんなの装備できるのはこの大和武蔵ペアを置いて他に居ない。
……そういえばアイオワさんも戦艦だったよな?
もしかしたら載せれるかも……?
元帥は一応、海軍のトップとして君臨していた人であり、俺たちとしてはいち早く敬礼をする以外に敬意を示す手段はない。アイオワさんはみんなに釣られるように、少し遅れて敬礼する。
「永原元帥! ご容態のほうはいかがでしょうか?」
というか大淀総長に殺されなくて良かったですね。
元帥や大和さんがあれから無事な様子を見て初めて安堵できた。
「容態……ってほどでもないけどね、別に病気でもないし怪我もしてない、祖国に足を踏めて、体が喜んでいるかな、ははは……君には、感謝しているよ」
「ハ! ありがたきお言葉!」
「永原元帥! 海軍には復帰するのですかも?」
そんな敬語使ってるから左遷されるんだよ。
「あぁ、実は沖縄の統括を任されるらしいんだ……でも僕は少将に降格するつもりだから、元帥じゃなくなるよ」
「「「え!?」」」
ま、まさかの告白……衝撃的すぎて顎が外れるかと思ったわ。
そして、アイオワさんは遅れて「Oh my God!」といかにもアメリカン的な反応を見せた。
「そ、それは本当ですか!? で、でも何故……」
「まぁ、元々死んだことになっていたし、今更戻ったって、役職なんて沖縄基地の司令官ぐらいしかないだろうからね……それに、年齢的に考えても、それぐらいの待遇でいいんじゃないかなってね」
沖縄の司令官として正式に着任する意思はあるようで、彼も、大和武蔵さんペアも、安堵の表情を浮かべていた。
後で彼に、降格処分願いの真意をメッセージで聞いたが「ケジメ……かな」と一言だけ帰ってきたので、空気的にはなんとかなったのかなと、俺の苦労が報われた気がした。
その方がいい、大淀中将の下になるのは自分が無抵抗な人間である事を示している。正にケジメ。
どちらにしても沖縄みたいなクソ危ない場所に行きたいような人居ないだろうし、司令官として着任させるとしたら……誰を指名してたんだろう?
俺じゃないよね?
それにしても、未だに彼が大淀総長はともかく、他の人たちから狙われていたのが謎だ。それを今問いただすことはできなかったが、のちに電話でこう言われた。
『私は平和主義者であると同時に、面倒くさがりなんだ。誰も傷ついてほしくないし、海外に進出なんてしたら、国内でも問題はあるのに、問題をどんどん増やしてしまう。だからやるべきじゃないって思った。鎮守府に籠もって、ただただ、ママたちと一緒に生活するような環境が良かったのに、海軍の人たちは邁進を選んだんだ。そのせいで僕の仕事を増やすなんて、僕のバブリティーが許さない。ぼくの仕事が増えるのも嫌だし、ぼくがいる環境を脅かされるのは、死ぬほど嫌だ』
なるほど、イケイケの現海軍、革新的に進出と強き日本と、東亜の団結を実現させるために勇往邁進する現在の海軍では……特に元帥みたいに偉い立場の人が、比較的若いのに何もしたがらない老人みたいな事言ってるとムカつかれたり、反感を買う可能性は十分にある。
資源や貿易力をもっと増やしたい国、特に今の風潮では、保守的な発想なのかもしれない。
個人的には悪くないと思うけど、俺みたいに波に乗る事も、時には大事である事は、ご理解いただけただろうか? 強力な上、独立軍と化している元帥艦隊を排除したがるのは、統合運用のコントロール面では理にかなってるだろう。
でも、話していて分かった、あの元帥なら、ちょっかいさえ出さなきゃ問題ない。俺がそうさせる。
ただ、俺がケツを持ち続けるのは無理なので、そのための環境を整えなきゃ。
このまま沖縄に引きこもってくれますように。
「……海軍では降格処分を受ける士官は歴史的に見ても稀ですが、永原元帥自身がお決めになったことであれば、人事局……ひいては、海軍大臣もお断りすることはないでしょう。では、ご武運を!」
「あぁ……ありがとうね」
再度敬礼し、元帥に対して背を向ける。
秋津洲さんたちは元帥と対面して話したのは初めてらしい。元帥から離れるまではロボット歩きみたいな動きをしていた村雨ちゃんと初風。
「秋津洲さんと大鯨さんまでカチコチになる必要ないんじゃないですか?」
「逆に宍戸大佐はなんであんな自然に話せるかも!? 元帥かも! トップかも! 降格するにしても畏れ入るかも!」
ははは、どうやら俺を凄い人間だとようやく理解したようだなみんな。
「HAHAHA! でもPRESIDENTじゃないんだから、そんなにビクビクする必要ないわよ!」
「それぐらいの肝っ玉、秋津洲も欲しかったかも……あ、宍戸大佐、斎藤准将かも!」
気づけばかなり近い場所まで来ていた。
「あ、本当だ、おーい来たぞ~……え」
そこには、見事なドラゴン。
かっこいいじゃねぇか……組体操とは、一人ひとりの練度と絆の強さを、全体的な形状の美しさで表す、正に軍隊の奇跡の競技だと言える。
一人ひとり近くで見るとエチエチな女の子がやってるって、はっきりわかんだけどね。パンツ丸見えの状態でやるなんて、ホントダメダメな艦娘たちなんだからぁ~……司令なら止めろよ斎藤司令……ッ!
「おい! なにやってるんだお前ら! パンツ見えちゃうでしょ!」
「え~大丈夫だよ~! ほら、今日このためにスパッツ履いてるんだよ~!」
「し、白露姉さんやめてください! お兄さんにそんな卑猥なもの見せないでください!」
白露さん分かってんのか? スパッツでも男はOMATAがONATTAになるんだぞ。
あと白露さんが履いてるサイハイソックスとスパッツが被り合わさって、村雨ちゃんが履いてるようなストッキングみたいになってるから、どちらにしてもただエロすぎるんだよなぁ……配色わざとそうさせてるでしょ。あとでふとももスリスリさせてもらうからなッ。
「お兄さんみてくださぁーい! どうですかぁ~!」
龍の頭を演じている春雨ちゃんは空いている両手を無邪気に振ってるのは素直に可愛い。
「可愛いぞ~!」
「ありがとうございまぁ~す! ん~……ちゅっ!」
投げキスとは、オトナなコトしてくれるじゃないか、えぇ?
時雨は春雨ちゃんの足を抱えるというポジションに居て、すごくきつそう。
思わず吹き出す。
「今僕のこと見て笑ったでしょ!? あとで殺すから!」
「おいおいおい、言いがかりはよしてくれよ……この仰々しい龍の姿を見て、俺のために作ってくれたのかと思うと健気で笑っちゃうだろ?」
「宍戸くんのためじゃないよッ!! 成り行きでこうなっただけ!! やるならアジア系の龍の方が楽そうでが良かった!!」
「それただの蛇じゃねぇか!!」
表現には限界があるんだから、これぐらいやってくれねぇと何してんのかわかんねぇよ。
大勢のギャラリーが騒ぎ立てる、あの前線の龍が来た! 沖縄に参加し、またもや成功に導いた! そう、一回目の作戦に参加しなかった俺が、二回目に参加して成功したんだから、大規模作戦成功ジンスクとなるのは必然!
今なら俺の髪の毛が入ったお守り一枚千円でどうだ!?
「さぁ張った張ったぁ!!」
「「「…………」」」
なんか言えよ。
「はいはいはい!! 春雨20枚でお願いします!!」
買おうとしてんじゃねぇよ。
「ありがとい春雨ちゃん! でも髪の毛なんて汚いもんより別のものあげるね! 金もいらないから! 流石に良心が傷んできたから慰めなくていいよ! はい! 俺様お守り廃止ね!」
「残念です……」
「っていうか、いつまでこの組体操やらせてんですか斎藤司令!? そろそろ解散させてやってくださいよ親潮と隼鷹がヤバそうですよ!」
「だ、大丈夫です……! さ、最近鍛えてなかったから……うぅ……これぐらい……ッ!」
「飲みすぎた……運動してる……吐ぎそう……ッ!」
「あ、あぁ、皆解散しろ!」
そして言われるがまま段取りを踏んで解散し始めるドラゴン。
時雨が最初に離したから、春雨ちゃんという頭が外れて、首が飛んだドラゴンが一瞬だけ完成したのは芸術的だと思った。
「っていうかなんで眺めていたんですか斎藤司令官、女の子をスカートであんなコトさせるなんて非常識にもほどがありますよ!?」
「わ、私が指導をしたんじゃない、彼女たちが勝手にやり始めたんだ……」
「テメェは保身にしか興味ない責任転換系クソ将校かよ!? 止めるのも司令官の役目でしょ!? それでも止めなかった上、甘酒に浸っていたということは、斎藤司令もパンツ丸出し女子たちを眺めて股間の青春開放男子になっていたということですよ!? ちゃんと理解しているんですか!?」
「し、しかしパンツはこういうときは見世物として一興だと言われたが……」
「誰が!?」
「五月雨が……」
「え? で、でもよくコミマで、パンツをチラチラ見せびらかすコスプレイヤーさんたちがいるから、パンツをお見せしたら盛り上がるかなって……」
「盛り上がるよッッッ!!! でも見せる時は俺と二人きりのときにしなさい!」
「「「はッ!?」」」
全員が俺に敵意を向けてきた。
「すまん言葉のアヤだ……何はともあれ、そういうときは最低でも時雨や鈴谷みたいにスパッツを着用するように!」
「どう解釈すればパンツを見せろからスパッツ着用しろになるっぽい……?」
「え、でも白露も履いてるよ~? ほらほら~!」
白露さんのは説明がしにくいんだよなぁ……クソ、この公衆の面前で股間のヴィーナスがピーナスを呼び起こそうとしてるぜ……!
「あれ? 宍戸くんに会いたいって言ってたあの人どこにいったの?」
「あ、ほら、彼なら今こちらに向かってきているあの……って、宍戸!? どこに行った!?」