整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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陸軍さん2

 

「と言う訳でさ、あそこの陸軍軍人さん達に話しかけない?」

 

「え?私はちょっと……」

 

「私も少し……」

 

 我が鎮守府切ってのエース翔鶴姉妹は露骨なNOを出す。隣で、同じくバツ印を指で作る大鳳も出来れば辞退したいとの事。

 

「え、なんでさなんでさ!?救助活動でイケてる成果を出してる20連隊だぞ!交友の輪を広げるのに最適じゃん!」

 

「宍戸さんだって知ってるでしょ?陸の人って、私達がいるとちょっと嫌な感じ出してくるの」

 

「まぁまぁそこをなんとか!」

 

「ちょっと無理、翔鶴姉も駄目でしょ?」

 

「無理とは言わないけれど……私も出来れば……」

 

「私も遠慮したい気持ちが大きいです……」

 

「大鳳まで……んん〜分かった。でも気が変わったら遠慮なんか必要ないからな!」

 

「は、はぁ……?」

 

 

 

 と言う具合に、こちら側も気持ち的には乗り気じゃない。これはいい例題だ。

 

 陸軍と海軍の亀裂には日本軍創設の歴史を辿らなくてはいけない。その代々先輩方から受け継がれてきたヘイトの伝統と、海軍に準ずる立ち位置となってしまった劣等感が、両陣営への嫌悪感を煽るのだろう。

 元々は海軍の立場が強くなったせいで、陸軍よりも偉いみたいな風潮が何処かしら生まれたのが原因だ。そこからライバル心を燃やし、海軍も「変に突っかかってくる人達」と言う悪循環が生まれた。

 

 まぁこれは少し大袈裟な言い方なんだろう。

 陸海問題は総合的に見て重大ではなく、普通に連携は取れてる辺り気にするのも無駄なのかもしれないが、わだかまりはできるだけ取り除きたい様子。

 そう考えると、ナンパの一件はそう言う因果関係から来た、運命なのかも知れない(※ただの偶然です)。

 

 何はともあれ俺は、飲み会で仲の悪いグループ同士を取り持つ為に雇われた、幹事みたいなものだ。

 こういう時は大抵話す口火を切ってくれる、勇敢でお調子者でコミュ力の高い人が話してくれれば良いのだが、

 

『出会い系サイトクソみたいな女しかいないからやめとけって!ソース俺だから!』

 

『マジッスか!そんなことあるんスね〜すげぇッス!』

 

『ナンパする時はな?チャラければ良いってもんじゃないんだぜ?エッチまで持って行きたかったらな……「俺、前戯が本番だから」ってオーラ出しとけよ?それで三割行ける……ドヤァァ』

 

『『『さっすが結城さんッス!!』』』

 

 海軍から既に一人で独走中の奴いるんだよな。アイツも頼まれた口なんだろうけど、完全にヤリチ○トークで盛り上がってる。しかも話し相手は昨日ナンパしてた奴らだ。因みに三割って少ないようで結構凄いーー本当だった場合に限るが。

 あぁ言うやつがいると「アイツは特別だから」みたいな雰囲気になるし、口火役の効果も薄くなる。

 

 

 

 陸軍側の中佐さんもさり気なく頑張ってくれてるみたいだが、これも効果なし。

 コイツらの師団長は何やってんだ?とも思ったが、実は舞鶴海軍基地と言う別の海軍さん達と談笑中らしい。

 ったくよォ……うちらだけトップが階級釣り合ってねぇんだよ。中将と中佐ってすげぇギャップだから。

 

「って言う訳でさ、折角の交流会なんだからあそこの陸軍の人達と話さない?」

 

「ミーはあまり乗り気じゃナイネー。比叡が行ってきたらどうデース?」

 

「わ、私もちょっと……っていうか私に振らないでくださいよ!」

 

「分かった分かった気が変わったらでいいから!……じゃあ、鹿島はどう?」

 

「鹿島ですかぁ?私が行くと、しつこくチヤホヤされそうで怖いですぅ……」

 

 お前がここの主役になるってこと?確かに問答無用で可愛い娘をトイレに連れていきそうなゴロツキ感あるけど、自分がチヤホヤされること前提で話すのうぜぇんだけど。一旦学校で孤立したら絶対イジメられるタイプだわ。

 

「じゃ、あそこの中佐さんいるじゃん?」

 

「はい、それがなにか……」

 

「あれ斎藤提督の息子さんなんだって。エリートで将来の元帥候補なんだとか」

 

「あ、そ、そうなんですか!ふ、ふ〜ん……あ、鹿島ちょっと失礼しますっ!」

 

 うん、随分と失礼だね。お金と権力にしか興味はないのかね君達は!?いや、鹿島の気持ちも分からんでもない。俺だって最近ビッグな提督達とお話する機会が非常に多いのは、周りからすれば狐野郎とも陰口を叩かれかねない。

 

 でも俺には使命がある。提督になると言う使命が……半分ぐらいは勢いだけど。

 その使命を果たすためだったら、いろんな事に消極的な俺でも、時には大胆に行動するもんなんだ。

 

 提督達からマイクを貰い受け、飲み会的なノリで食堂を宴会雰囲気に巻き込む。

 

「さぁ〜てさてさて皆さん盛り上がってきた所横から申し訳ありゃーせん!自分は舞鶴第二鎮守府、整備工作班副班長の宍戸龍城と申します!つい先程メンテの仕事から上がったばかりでいかり肩となってますがご了承ください!」

 

 自分が場を仕切らせてもらうと明言する。「何やってんの?」みたいな顔でこちらを見てくる時雨姉妹と鈴熊。当然だ、思い付きのノープランだもんね。

 俺は、聞いてて疲れない程度の口調と長さのスピーチをした後に、今からやる事の説明に移る。

 

「では今から、マジカルバナナと言う連想ゲームを、陸軍海軍の皆さんと交互にやっていきたいと思います!勿論全員参加で」

 

「なッ」

 

「私もやるのか……」

 

 提督達も驚きの様子。

 でも仕方がない、そう言わないと盛り上がらないんだから。今更ルールを言う必要はないが、万が一知らない人は隣の人に聞いてくれと伝え、早速ゲームを始めようとするが、

 

『何勝手に決めてんだ!交友会なのに強制参加かよ!』

 

「あ、いや、別に強制参加ってわけじゃ……」

 

『俺に命令しようってのかァ!?アァン!?』

 

「ちょ、ちょっと陸軍の皆さん落ち着いて……」

 

『おい!テメェら副班長に偉そうな事言ってんじゃねぇぞクソ野郎共!』

 

『何だとォ!?いつも高学歴で偉そうな顔しやがってェ海軍のくせにィ!!』

 

『何だとォ!』

 

 クッ……アニメだったらこんな事にはならないのに。和やかムードが一変して殺戮ムードと化す。

 物を投げ合うほど常識を持っていないわけじゃないが、流石に見過ごせない事態だ。隣にいる提督たちの方を向いたら「自分で撒いた種だ、どうにかしろ」的な視線を向けてくる。一喝するしかないか。

 

「お静かに願いますッッ!!」

 

「そうだ!静かにしろお前ら!」

 

『『『…………』』』

 

「ありがとうございます中佐殿……分かりました。ではこうしましょう、連隊長殿と自分が率先してやります。あとに続きたい者は手を上げて叫んで下さい」

 

「致し方ないか……では皆の衆、私は大尉殿に必ず勝ってみせよう。海の者をこの手で倒す、交流会のいい切り口になるだろう!!これは陸軍と海軍の戦いと心得よッ!!」

 

『『『お、おおおおお!!!行けぇ連隊長ぉぉぉ!!!』』』

 

 同じようにマイクを持つ中佐が俺と共に中央に向かう。乗せられやすい奴らだなあの人達。

 

『副班長も頑張れぇぇ!!』

 

『宍戸くん!班長として応援してるぞ!』

 

『勝ったら副班長のケツ可愛がってあげますよぉ!』

 

「ありがとうみんな!最後のはいらないぜ!」

 

 なんだかんだで、関わり合おうとするムードは作れた。この中佐の口利きのお陰もあるけど、そのせいで負けられない戦いになってる。車の中で暇だったらやるような連想ゲームだぞこれ?なにムキになってんだお前ら……と思いながらも俺も楽しくなってきて、そんな事どうでも良くなってきた!

 

 

 

『……どうなってるのこれ?鈴谷たちが居るのってただの交流会だよね?なんでマジカルバナナ?』

 

『血の気が多い殿方が多いとこうなりますのね……血気盛んな方は嫌いではないけど、好みでもないですわよ?』

 

『右に同じく。ハァ……宍戸くん、あれ楽しんでるね、村雨も参加したら?』

 

『わ、私はちょっと遠慮したい……』

 

『場を盛り上げようとするお兄さん……カッコイイです……ふふふっ』

 

 

 

 おぉ、見てるな時雨達。皆がいる中でカッコイイところ見せて、俺の男気見せてやるぜ!

 

「では参りますよ、中佐殿!(ただのゲームとは言え、部下達やテメェの親父さんの前でその嫌味ッ面ァに泥ォ塗らセテェもらうゼェ……へっへっへ!)」

 

「はい、では行きますよ(そんな事はさせん……泥を被るのは貴様の方だッ!)」

 

 

 海軍代表vs陸軍代表の頂上決戦が幕を開く(※ただのマジカルバナナです)。

 

 

「マジカルバナナァ〜バナナと言ったら滑る!」

 

「滑ると言ったらスキー」

 

「スキーと言ったら寒い!」

 

『『『おおおおお!!』』』

 

 

 何もなかった所で馬鹿なゲームをするとやけに盛り上がるのは、やっぱり馬鹿騒ぎが好きだからだろうか?

 序盤は定番な物からスタートし、徐々に難しい言葉で相手を崩す戦いへと移行する。それに連れ食堂も盛り上がる。

 

「ウィリア厶・ギルバードと言った羅針盤」

 

「羅針盤と言ったら航海!」

 

「汚らしい海を渡る航海と言ったら十五世紀」

 

「ッ!?15世紀と言ったら戦国時代!」

 

「戦国時代と言ったら戦争」

 

「戦争と言った歩兵!」

 

「歩兵と言ったら輝かしい陸軍」

 

「陸軍と言ったらチンピラの集まり!」

 

「チンピラと言えば貴様」

 

「貴様の前にいる貴様と言えば部下の躾もできない七光りクソガキ!」

 

「アァン!?何だと貴様ァ!?」

 

「うるせェ!!テメェとテメェの部下達見てれば偏見も生まれるっちゅーンだァよォ!!何が汚らしい海だアァン!?母なる海に謝れェ!!」

 

「貴様こそ訂正してもらおうかァ!!陸に住む国民の救助を行っているのは陸軍なんだぞ!?」

 

「へぇ〜そうなんだぁ〜?ただのレスキュー隊兼剣道部かと思いましたぁ〜」

 

 

「「ググウウウウウッッ!!!」」

 

「お、落ち着いて下さい副班長!ドードー」

 

「連隊長も落ち着き下さい!それじゃあ本当にチンピラにチンピラですよ!?」

 

 割って入ってくる部下達に促されて一旦落ち着きを取り戻す。

 コイツも斎藤中将や部下達に宥められ一息つくが、敵対心はその瞳に宿している。

 

「クッ……貴様に侮辱されたままではメンツが立たん……決闘を申し込む!!」

 

「け、決闘ぉぉぉぉ!?って、男に言われてもあまり……それに、決闘するのは違法なの分かってます?結構マイナーな法律ですけど」

 

「では勝負だァ!父上、種目をお決め下さい!!」

 

 

 

「ふむ……では剣道などどうだろうか?」

 

 いや止めろよ。

 

 

 

 

 こうして急遽、俺と中佐の一騎打ちが始まるのであった。

 

 To be continued。

 

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