「タダイマ」
「「おかえりなさい」」
「頑張ってるみたいだけど、提督への道は掴めそう?」
「海軍刑法第二編ダイサンショウ、ダイサンジュウゴジョウ、シレイカンガヘイジセンジトワズ、ショクムヲトウヒ、イキスルコトハ、キンコケイガイイワタサレル」
「……頑張ったみたいだね。うん」
また数ヶ月が過ぎた。
横須賀第四鎮守府の寮内を使用する俺たち生徒は、学校が終わるとすぐに帰ってきて、食事の暇を惜しんで勉強に打ち込む。
軍事刑法、戦時特別刑法、戦時刑訴規則、日本法典、事実報告、秘密保持、下士官・兵士戦時昇進規定等などを勉強して研究する。
金曜日には期末テストを行って、雪だるま式にその知識を埋めていった。
他にも、指揮官の心得、教育者・教練者心得、対下士官・対兵士勤務計画作成、将校および一般社会における将校の態度、部下に対する指揮官としての将校心得、国民に対する将校心得等など、様々なラインナップとなっております。
お陰で俺の覚えた事が口から勝手に垂れ流しとなっている状態である。
提督候補たちの全員が順調に追いついているわけじゃないけど、大将の鑑識眼が正常に運行しているのか、テストで良い点を出せなかった生徒はさらにペースを上げて打ち込んだ。
でもそれは、地獄を乗り越えた証であると言える。ここからお勉強のペースは少し下がって、研究重視と研修などに偏る事となる……と言っていた。確か次にやるのは安全保障学だったな。
期末テストを終えた俺は、時雨春雨ちゃん村雨ちゃんの三人が遊びに来ている自室のベッドにダイブする。
「……よし!これで多分もう終わりだろ!?もう終わってる!(伝説)クソがァ!なんで俺がこんなお勉強箱にならなきゃいけねぇんだよォ……もう何かする気力も起きねぇよォ……!」
「宍戸くんがやるって言ったんでしょ。あ、このドレスとか可愛くない?」
「私はこっちのほうが好きかも。スカートが短すぎるのはあまり……」
「え、なんで?あぁ、でも確かにそうかもね。村雨ちゃんがそんなクソエロいミニスカニーソ履いてたら、サキュバスかと思って俺っち催淫されちゃうかも……」
「僕の妹を汚そうとする汚物は成敗!!」
「うお!いつもながらアブねぇぞ時雨!健全な成人男性の反応に対して汚物とはなんだァ!!俺に詫びろ!」
「どうせ胸しか見ていない宍戸くんに、そんなこと言われる筋合いはないよォ!」
「パイパイ、下らない喧嘩はそこまでだ」
「「あぁん?」」
有名だが下らなすぎるセリフで場を和ませようとした結城には悪いが、そのセリフ凄くアホだと思う。
村雨ちゃんは、自分(胸)の話題となって盛り上がっていた事が恥ずかしかったのか、俯いて顔を赤くしている。
「……まぁ、それだけ元気なら何よりだよ。二人共本当にご苦労様」
「時雨から労いの言葉を授かるとは光栄だな。まぁ今ミイラになるわけにはいかないからな」
「ミイラって、アレの事ですかぁ?」
学生である身分、一人一部屋と言う待遇は受けず、大抵は二人で部屋を共有したりするのが一般的である。しかし、俺たちの課程では何故かスリーマンセルで行くらしい。俺のルームメイトは結城……そしてもう一人、意外な人物が俺たちと苦楽を共にする事となった。
そう、それは正に春雨ちゃんが指す先にある、ヤツだ……一応まだ生きてるから指さすのはやめてあげようね春雨ちゃん。
「大丈夫ッスか中佐?」
「ア……ダ、ダイジョウダァァァ……」
なんかゾンビみたいッスね。
元陸軍第16師団第20連隊隊長、斎藤中佐。部屋隅っこで垂れかかってるこの人は、最初来た時は話し掛けられるまでは存在自体気付かなかったけど、居たんだなこれが。
深海棲艦の到来や時代の煽りを受けて、陸海空を跨いでシフトチェンジする人も増えたので、今じゃ所属を変えることは珍しい事じゃない。だけど中佐及び連隊長って立派な役職を得て変えるのはかなり珍しい。
俺との戦いの後、突然後天的に妖精が見えるようになり、意思疎通もできるようになった彼はすぐに提督への道を歩み始めたのだとか。
中佐ってポストだけに、一から試験やらなんやらを受けて、詳しくはわからないけど面倒くさい事色々して、自力でプログラム参加に間に合わせたのは最早敬意を通り越したドン引きレベル。主人公かよコイツ。
実は海軍へ行きたかったのだが、妖精が見えなかったので断念したとのサイドエピソードも本人から聞いた。普通の海軍に行けば良かったのに。
でも、そんな彼に労いの言葉を掛けるのは俺だけと言う不遇ぶりは流石に可哀想……あぁいや、部下を躾けられないようなお勉強箱には、丁度いい薬なのかも。
「本当に大丈夫ッスか?この指何本に見えます?」
「ア……ソ、ソレハ、コクボウリネン、ノ、ホンジャナイカ……ハ、ハハハ、ヨシュウハ、キサマヨリ、ハヤク、スマセタゾ……ハハ」
あ、これはもう大丈夫ですね。うん。まぁ本気でヤバイなら誰かに看病頼もう。
「明日は休みだし、久しぶりの東京見学でも行こうか……」
「え、休まなくてもいいの?」
「今はちょっとしたインターバルだよ。休める時には休むけど、俺は少し遊ぶ事を選ぶね。体力は消耗品じゃないんだし、寧ろ俺はダラケる事に慣れる方が余程怖いぜ」
「「凄くカッコいいです!宍戸さん(お兄さん)!」」
「あぁ、いや、それほどでもないけど?むふ、むふふふふふ」
「キモ。あ、でもカッコイイからお願い一つ聞いてくれる?」
キモいけどカッコイイ(哲学的オクシモロン)。
「また脂肪増幅薬が欲しいの?」
「違うよ!ほ、ほら、あれだよアレ!村雨や春雨はもう行ったからさ」
「ん?ダイエットブートキャンプ?」
「デリカシーのカケラも無いの君ハァ!!?」
「痛テェェッ!!!」
斜め45度は、日本刀が最も威力を出す角度である。時雨さんのシグレチョップは、動脈が波打つ鎖骨の上の辺りに命中して……痛い。
これで気絶できたらいいんだけど、漫画みたいに気絶しないんだよこれが。首チョップで気絶って神話は何処から出てきたんだろう?
「東京!病院!僕達!これで分かるでしょ!とにかく明日行くからね!」
強引にも、明日の予定は時雨によって決められてしまったのだった。
行くつもりではあったので、別にいいけどね。
ー病院の一室。
日本の中心地として、あらゆる分野の最高峰の集結地ーーそれが東京。
東京にあるとある病院。古い歴史だけじゃなく、人の命を救うための最高峰の技術が取り揃えられている場所、それがここだ。
国が定めている超高額な治療代で金銭的な潤いを保ち続ける病院ーー特に、癌治療などは金銭的にかなり病院側に利益を与えていると聞くが、そう言う金が税金として徴収されてそれが海軍の活動源だと言われると、複雑な気持ちになった事がある。
そんな時は大抵、国会で寝て温泉旅行するだけ俺の数十倍は貰ってる政治家達と比べれば、国防って役目を果たしている海軍として寧ろ誇らしく思う。
俺はここに数回来ている。来坊の理由は様々だけど、今回は時雨の姉妹絡みで来ている。
窓際にて、姉妹達に囲まれながら和気あいあいとした雰囲気を作り出す、一人の女性がいた。
「ほらほらみてみて!あたしがいっちばぁ〜〜〜ん!姉妹の中で背が高いんだから!」
「ははは、そうだね、うん」
「ん?なに笑ってるのかな〜時雨?あたしの審査基準に何か文句でもあるのかな〜?」
「いや、姉さんは相変わらずおバカだなって思って」
「はいコロスからそこ横になって〜」
「「「は、ははは」」」
俺、村雨ちゃんと春雨ちゃんは、ベッドの上でいっちばーん強いチョークスリーパーをかけられている時雨を助けられず、ただ苦笑いするだけだった。確かに白露さんだけ爪先立ちオッケーなのは異議を唱えざるを得ない。
白露さん……彼女は時雨達姉妹の長女であり、俺としては一応先輩に当たる人だ。時雨の姉妹なだけあって美人だが、凄く取っ付きやすくて人懐っこくて、周りをとっても和やかな雰囲気にしてくれる人だ。
時雨はあんな事を言ってても、彼女を姉として深く尊敬している。それは春雨ちゃんや村雨ちゃんも、そして、
「相変わらず元気っぽくて何よりっぽい〜!」
「本当に元気が尽きない人ですね……あ、こ、これは別に、元気なのが駄目ってわけじゃ!」
「分かってるよ五月雨ちゃん。それにしても、暫く会わないうちに横須賀に配属されてたんだね二人共。特に夕立ちゃんの活躍は色々耳にしてるよ」
「一軍っぽい!」
「あ、って言うことは、私は三軍……」
「ぽい、これでジュース全員分買ってこいっぽい」
「え、で、でも、これ10円……」
「は?それぐらい自分で考えろっぽい、だから三軍扱いなんだっぽい。はよ行かンと弾薬にするぞっぽい」
「ひ、ひえぇぇぇぇ……!!!」
などと、茶番を繰り返しているのは四女の夕立ちゃん、そして六女の五月雨ちゃん。二人共、今は横須賀第二鎮守府所属だ。
夕立ちゃんは駆逐艦としてはかなり凄い成果を上げている。正確には何が強みなのか云々はあまり聞かされてないが、夕立ちゃん自身の口実では「重巡クラスの火力はお手の物っぽい〜!」と言っていたので、ゲーム風に言うと攻撃力が強いのかな?
そんな夕立ちゃんと同じ釜の飯を食う五月雨ちゃんは、艦娘としては特に目立った所はない。
少しドジっ子だが、そんな彼女でも秘書艦として立派に業務を成し遂げているのだ。
「それにしても宍戸くんが来てくれるなんてね〜!妹たちからは何時も話題に上がるスーパースター!隅に置けないね~、よ!色男!」
「白露さんにそんな事言われたら、俺本気でそう思っちゃいますけど?」
「本当の事だからいいのいいの!」
結構前からの知り合いでもある白露さんは説明不要の元気体質。そんな彼女との待ち合わせ場所は何時もここの病院だ。
理由は、彼女の右脚と右腕にあった。
艦娘として活躍されていた彼女は、深海棲艦との戦闘の最中に大怪我を負うーーそう、右腕と右脚を失う程の大きな怪我だ。
奇跡的に一命を取り留めた彼女は、もう艦娘として復帰できないかとも思われたが、国によってチャンスを与えられたのだ。
そのチャンスこそ、いま白露さんの体の一部として機能している義手と義足である。
従来の義手義足より遥かに柔軟な動作を可能としたバイオエレクトロニクスの最先端ーー胚性幹細胞を遺伝子操作して作り出した人間の手足と同一の生体部品を神経と繋ぎ合わせ、欠損前と変わらない操作性の実現を現実の物とした。
と、専門的な言葉を述べられた事があるけど、全然分からなかった。
まだ試験段階らしいのだが……いや、であるからこそ、テストパイロットが必要なのだと言う。元々艦娘だった事もあり、これらの維持費、治療費等などは全額国が負担して、特定のレストランやゲームセンターなどの施設が無料で使用できる白露さん。
ある意味羨ましいと言う奴らも居たが、流石に不謹慎だ。時雨たちは、姉がこう言う経験をしているから、艦娘になって戦うことは消極的なんだろう。
でも、今の白露さんを見れば、あまり暗い気持ちにはならない。まだほんの少しぎこちなさがあるけど、全然元気に動いてるもんなこれが。
「時雨〜?姉は労るものだよ〜?なんで宍戸くんみたいにお土産を買って会いに来るって選択肢を省いたのかな〜?」
「い、痛い痛い痛い!よ、横須賀に来たときもあげたじゃん!そんなに必要ないでしょ太るよ!?」
「上納品は病人の唯一の楽しみなんだよォ!?コォブラァツイストォ!」
「痛タタタタタァ!!助けて宍戸くん!!」
「アーイタソー」
「後で覚えてろォォ!!」
甘いものが好きなのは女の子の特権!とかいいながら東京BANANAを貪った白露さんには「そんなに食べると糖尿病になりますよ」って言ったのだが、一睨みされて、目を逸らしてしまった事がある。
俺はそんな彼女に糖尿病の恐ろしさを伝えるアメリカのドキュメンタリー番組「ダイアベティックシンドローム」を見せた所、糖を制限し始めたのだ。
コーラはオリジナルからゼロへ、おやつは甘味から煎餅へとシフトチェンジした。まぁ病院からメニューを強制される事がほとんどらしいので、実際に食べる物と言うよりは、病院食へのモラルを保つ為の教養を与えたのだ。
「チッ……歯ごたえのないヤツだァ……」
「大丈夫か時雨?」
「アッ……サーロインステーキになりそうだった……」
「どんな例えだよ?つーかサーロインステーキってどんなのだっけ?」
「脂身と弾力の多いお肉の事です!」
「ありがとうサミペディア。いい弾力と脂肪分ね……」
と、ベッドで死んでる時雨より、村雨ちゃんの胸の方に視線が行く。
「きゃ!ど、どこ見てるんですか!」
「あ、ご、ごめん!わ、悪いお目々だなぁ〜!こ、この!このォ!」
「ニヤけながらやっても反省してないの丸分かりだよ?」
「仕方ねぇだろ!?俺は漢だぞ!?素直じゃない男なんて漢って言えるかよォ!?」
「男の子は素直にならないとイケナイのは私も同意見かな!素直な男の子なのに理性を保っていられるなんて、とっても素敵じゃない?」
「そうですよね!白露姉さん!」
「白露さん……春雨ちゃん……俺という漢を分かってくれるんだね……!」
「じゃあそんな素直な宍戸くんへ質問!この中でいっちばん好きな女の子は誰!?」
「は?」
The F*ck?
「誰なの?だれなの!?教えて教えて!」
「そ、それは友達として、ですか?」
「カノジョにしたい子に決まってるじゃん!ほら、男の子なんだったらはっきり言っちゃって!」
「「「…………」」」
白露姉妹一同、一斉にこちらを凝視してくる。宴会で「誰が好きなの?」的な質問はかなりいい感じに場を盛り上げてくれる。でも御見舞に来きた人へぶつける質問としては、少しダメかもですね。
俺は漢だ、別に答えるのはいいのだが、すげー答えづらいのだ。なんか、本気で気になってる的なオーラを出してきてるヤツがいると、何故か素直に答えられなくなるのが人間だ。時雨なんか、下手に答えたら殺す的な眼光を浴びせて来てるぜ?
ハーレム系アニメだと結構ありがちな質問なんだなこれが。こういう時、邪魔が入るのが定番だけど……来ねぇな。まぁいいか。
「俺は全員を幸せにしたいんだよ!みんな!俺の性欲処理ペットになる事を許してやらない事もないぞ!」
「「「最ッッッ低」」」
「夕立、準備できた?」
「オッケーっぽい、肉片にしてやるっぽい」
「許して」
って展開はなるべく避けるべきだ。漢らしさ、潔さ、そして素直さを履き違えると、例えそれがどれほど心に素直だろうと初代大統領ジョージ・ワシントンと桜の木みたいに行かない。
言葉を選べって事もあるんだろうけど。
つーわけで、
「村雨ちゃんかな?」
「え、えぇ!?」
「やっぱり身体目当てじゃん……宍戸くん、覚悟はできてるね!!?」
「ア、オニイサンガトオクニナッチャッタァァ」
「ま、待ってくれ!これには事情があるんだ!!」
ヤバイ目を向けられて釘を刺された感覚を覚えた俺は正に、蛇に睨まれたカエル状態。だが、好感度が上昇した理由を、回想と共に説明していく。
そう、あれは俺が、スカラシップを得る為に死者狂いで受験勉強するアメリカの大学生の如く、頑張りすぎて机にひれ伏してしまった時だった。
『宍戸さぁ〜ん?居ますかぁ〜?』
『グゥー……』
『って、机で寝ると風邪引きますよ〜!もうっ……最近、頑張りすぎですよっ』
『…………』
『……男の人の背中って、やっぱり大きいですね……ふふっ、お勉強が終わったらぁ……私達のこと、いっぱいかまってくださいね?……もちろん、村雨のこともっ』
『…………』
『……ちょっとぐらいだったら……村雨に頼っていいですよっ?わたしじゃ、少し足りないかも知れませんけど、ふふっ、村雨ちゃんに頼りたくなぁ〜る〜、村雨ちゃんに頼りたくなぁ〜る〜……ふふふっ!』
『……ッ』
ぐうカワ。
「まぁそういう事なんだ。今は村雨ちゃんの催眠術に掛かってるから、俺は頼りたくなる村雨ちゃんとしか回答権がないのだ」
「む、村雨?本当なの?」
「〜〜〜!!あ、あの時起きてたんですか!?」
「あぁ、半分ぐらい意識がなかったから、うろ覚えではあるけど」
「うぅ〜〜〜!!」
激しく悶始めた村雨ちゃん。顔が林檎のように紅く染まり、手で顔を隠さずにはいられないと訴えるかのようにうずくまる。
その直後眠ったので、それまでしか知らないけど。あと正確には気絶だな。気絶するタイミングはかなり重要で、寝過ごしを防止する為に必ずこの時間に寝るって規則を自分の中で作るのだ。
軍隊ではあるあるの規則だけど、学生だと勉強しなきゃいけないので、破って勉学に勤しんだりしなきゃやってられないのだ。
「んん〜確かに村雨は男受け良いもんね〜!完敗、私の負け!」
「やったぜ。これぞS勝利」
「いや、村雨に恥ずかしい思いをさせた事でCマイナスだね。でも代わりに宍戸くんの恥ずかしい過去を僕達に暴露してくれたらAまで上げてもいいよ」
「俺、好きだったアニメキャラに結婚してくださいって、クラスの前で告白した事がある」
「「「…………」」」
「引くなよ!!今や性的マイノリティや異常性癖を持つ大人も少なくないこの世の中、俺はそう言うちょっと恥ずかしい過去があるだけ!ただそれだけ!可愛いを通り越して普通すぎるって言われても過言じゃないだろうがァ!」
「じゃあもう一つ言えば僕の図らいでSにしてあげるよ」
「俺、昔デス○ートが好きで、半年ぐらいLさんになりきって過ごしてた頃がある。そこからテニス初めて、試合の時に長いジーンズとダボダボなYシャツ着てダルそうに出場した事ある」
「「「…………」」」
「分かったから……もう、痛いから……」
おい、本気で引くんじゃない。ジャパニーズ男子は誰しもこれぐらい恥ずかしい過去を持ってるもんだぞ。君たちだって恥ずかしい過去の一つや二つあるだろうが……それを棚に上げて引くとは、それこそ恥ずかしい行為ではないのかね!?
『白露さーん、そろそろお願いしまーす』
「あ、はーい!いつもの事ながらごめんねみんな!」
「大丈夫だよ姉さん、がんばってきて」
「うん、みんなも私を見習って頑張るんだぞ〜!」
「「「はぁ〜い!」」」
白露さんは駆け足で別の病室へと行く。病室と言うよりは研究所みたいな所で、義手義足の具合と使用頻度、そしてそれに伴う破損や修理の必要性を懸念したりする場所がある。
データを取って、修正点や問題点をどんどん洗っていくのだそうだ。
「よし、じゃあ俺たちも行くか……俺は久しぶりに東京見学するけど、時雨たちはどうする?」
「僕達は丁度行きたい場所があったから姉さんに会ったあと行こうとしてたんだ、宍戸くんも来るかい?」
「邪魔じゃなかったらお邪魔させてもらおうかな」
「夕立達も来るかい?」
「行くっぽーい!」
「行きます行きます!」
「じゃあ早速行くか!白露艦隊、出発進行!」
「なんで君が旗艦みたいになってるの?」