整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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ゲーセン

 

 ーゲームセンター。

 

 普段からカロリーの高いもの脂っこいものを食べない二人へ細心の注意を払いながら、できるだけ体調を壊さないものを選ばせた。

 二人は素で、ご飯に焼肉のタレを少しだけかけて、それだけで満足しようとしていた所を見て泣いた。

 その後照月たちと別れ、夕立ちゃんが提案したゲームセンターへと脚を運んだ。

 

 焼肉のあとで行く場所としては少し体臭を気にするところだけど、大丈夫。こんな美人揃いの女の子達から焼肉の匂いがするなんて興奮しない?いや、しないか(※彼女たちはちゃんと消臭対策をしています)。

 

 

「すげぇ!舞鶴のゲームセンターなんて目じゃねぇ!」

 

「これは完全に田舎者ですね分かります」

 

「は?それがどうしたんだよ?都会人よりはお金持ちだからな俺、海軍だし」

 

「お金で人間の価値が分ける考え方は間違っているって豪語していた人が何か言ってるけど?」

 

 いやいや時雨さん、違うんだよ。俺は別にね?そういう考え方の持ち主じゃないんだよ。だけどね?都会の人は田舎から来た、イコール知識が浅い、イコール出世できない、イコール稼ぎが悪い……って、最終的には何でもかんでもお金に繋げて考える人が十割なんだよ。

 都会はなんでも揃ってるから、お金さえあればなんでも出来ちゃう、イコールお金に集中しちゃうーーこれは当たり前の法則なのです。

 

 そう、このゲームセンターでもそうだ。

 

『うおおおお!!!すげぇえええ!!こんな編成見たことねぇえええ!!!』

 

『俺は神だ、崇メロン』

 

 ゲーム業界に元気が無い時は、課金で活気ーン!課金系ゲームは、大抵の場合は他のプレイヤーと連携して戦うスタイルを取っている理由は、対戦系にするとお金の力でパワーバランスが崩壊させられるからだ。基本そんな奴らと戦いたくなくなってやめるのを阻止しているのだ。

 え、じゃあおかねのつかいかたをせいげんすればいいのに、なんでやらないのぉ〜?と聞いてきたガキンチョに、俺は答えた……その方がいっぱいお金使ってもらえるからだよ。それがどんなにその人へ悪影響だろうと、どれだけ子供の金銭感覚を狂わせようと、大事なのは、オ・カ・ネ、だからねッ。

 

 ままあの人怖い〜!だってさ。自分から聞いてきた質問への答えを素直に受け止められないなんて、今矯正しないと将来ろくな大人にならないぞ。

 

「大人げないな〜将来の提督様は」

 

「ほっとけ。上ッ面だけで全てに無関心な大人になるより、まだ色々な事に興味を持てる子供な大人でいる方が100倍いい」

 

「で、ですよね!!私も色々な事に興味を持っちゃいますから……少し子供っぽい性格って思っていましたけど……」

 

 なんだよモジモジしやがって可愛いなコンチクショウ。

 

「村雨ちゃんはかわいいな。そのままの君でいて」

 

「もちろんです!で、では!早速興味を示してしまったあのゲーム、一緒にしませんか!?」

 

「ん?あれ?」

 

「はい!」

 

 指差した先には、4つのパネルを踏み倒す事によりダンスを演出するゲーム、ダンスダンスレボリューションズがあった。一時期はインベーダーゲーム並の流行りを見せたこのゲームは、今でも根強い人気を博しており、少なくともこの手の遊戯がゲームセンターから消える事はまず無いだろう。

 

「え、俺でいいの?時雨とかじゃなくて?」

 

「宍戸さんがいいんです!最近お勉強ばっかりで村雨、ちょっと寂しかったんですから……」

 

「でも……」

 

「だめ……ですかぁ……?」

 

「やるに決まってんでしょ?」

 

「やったぁ!」

 

 そんなにさ、上目遣いで不安そうな顔されたら、やるしかないみたいな?

 時雨も同意して、春雨ちゃん達も俺たちのプレイを見たいらしいので、他の客と順番を待つ。

 

『ウワーマケチャッター』

 

『マコちんハホントウニゲームがヘタダナー……ソンナトコロモカワイイヨー』

 

『タケシマジサイコーナンダケド〜ゲキラブ〜!』

 

 早く台から降りろブサイク共。

 

 社会でたまに見るウザい存在が台から消えると、俺と村雨ちゃんは台の上に乗ってお互いにコインを入れる。

 

「せっかくだから何か賭けない?」

 

「まったく、時雨は本当に賭け事が好きだなぁ……」

 

「まるで日頃からギャンブルしてるみたいに言わないで!そうじゃなくて、村雨がスコアで勝ったら何でも言うことを聞くとか……」

 

「ね、姉さん!?」

 

「それって逆を言えば村雨ちゃんに何でもできるって解釈でいいの?」

 

「あ、宍戸くんが勝ったら、一品奢られるか次遊ぶゲームのコインを貰うかのどっちかね」

 

 やばい、純粋に食い物奢られる方が利益が高いと思ってしまった。今の時代の性別における理不尽さは、こうやってドンドン一般常識として植え付けられていくんだな。

 なんでもされるのが村雨ちゃんじゃなかったらこのまま辞退して去り際に「クソアマァァ!」と罵声を浴びせる所だった。

 

『難易度を選択するドン!ルナティックでオッケー?ニコの魅力を伝えるのん……』

 

 混ぜるな。

 

「それじゃあ始めるか!」

 

「はいっ!」

 

 そして曲がスタートした。ちょっとイジワルして、結構難しい曲と難易度を選択してやったぜ。

 俺の華麗なる反射神経と運動能力でならば、例え普段やっていなくてもそこそこ上位に行ける!

 

 村雨ちゃん、この勝負貰……ん?

 

「あっ!い、意外と難しいですねっ……よっと!ん!はっ!」

 

「…………」

 

『『『……ゴクリッ』』』

 

 見るな野次馬共。貴様らが見ていい代物ではないのだぞ。

 

 ただでさえ柔らかそうな身体してるのに、さらに柔らかそうな胸部装甲がぷるんぷるん揺れてる。

 それは、激しく動くと起こる自然現象で、理論的に考えれば予想できる事だ。漢の悲しい性……雄の宿命……俺はさっきから横で揺れるスペースショットに、目が釘付けなんや。正面の意味不明な矢印なんて目じゃないんや。

 クソ!なァんて物理学だァ!学校の物理学の授業は、訳の分からない長方形なんて使わずに、おっぱいを使えばいいと思う。そしたら楽にA+取れたのに。

 これが君の狙いだと言うのか村雨ちゃん、卑怯だぞ!

 

「はぁ……はぁ……や、やりましたぁ!宍戸さんに勝ちましたぁ!」

 

「やったね村雨!お金が増えるよ!」

 

「おいやめろ」

 

 マジでやめてくれ時雨。女は金を毟り取る快感を覚えるとおばあちゃんになるまで消えないんだぞ。村雨ちゃんがそんなクソ女だとは微塵も思わないけど……ほら、万が一、兆が一って事もあるじゃん?

 

「じゃあ素直に従おう……村雨ちゃんのお願いは何かな?」

 

「それじゃあ、春雨達とも一緒に遊んで下さい!」

 

「え?なんでも言うこと聞くんだよ?流石にもっと他にあるでしょ?」

 

「春雨も宍戸さんと一緒に遊びたいと思いますし、村雨は宍戸さんと遊べて、それだけで満足ですからっ」

 

「村雨姉さん……!」

 

 優しい世界……いや、村雨ちゃんが天使なだけか。はは、村雨ちゃんの優しさを世界中にバラ撒けば戦争の一つぐらいは終わらせられるんじゃないか?

 そんな娘のさ、物理学を見れた野次馬連中は本当に幸運だったな。お前らは今後の人生、嫌なことはあった時にこれを思い出すといい。

 

「で、でもわたし、どんなゲームがいいかわからなくて……」

 

「それなら安心するっぽい、丁度あそこにいいゲームがあるっぽい!」

 

 ゲーセンではお馴染みのガンシュを指差す夕立ちゃん。

 名前は、der haus des untoten……翻訳すると、ゾンビ達のザ・ハウス。今でも一部から絶大な人気を誇る、凄く懐かしいアーケード用ファーストパーソンガンシューティングゲームのシリーズ二作目。銃を持って、画面に出てくるゾンビを倒しまくるシンプルなコンセプトは、大体慣れてくると大抵の場合、死なない事よりもスコアアタックを目指す事になる。

 

「夕立は五月雨と一緒にタッグを組んでやるから、タッグ同士でスコアを競うっぽい!」

 

「つまりは、2on2のスコアアタックです!五月雨、負けませんよ!」

 

 二台同じゲームが隣同士にあるのは、そう言う競い方ができるからか。なるほど……面白そうだな。

 

 二台を占領し、俺は初心者の春雨ちゃんに、ゲームのやり方を説明しながら二人分のコインを入れて、夕立ちゃんと五月雨ちゃんペアを迎え撃つ準備をする。

 

「だ、大丈夫でしょうかぁ……」

 

「大丈夫だよ春雨ちゃん、俺に任せてくれればいいから」

 

「なに俺かっこいいオーラ出してるのキモ」

 

「流石にそれは酷いぞ!いいじゃんかこういうときぐらいカッコつけても!!」

 

「そうやって僕の妹を落とそうとするのは流石に頂けないんだけど……」

 

「この百円玉から始まる恋があったっていいじゃないか」

 

「素敵な考え方です!春雨もそう思います!」

 

「やれやれ、俺は色々とイケメン過ぎるな」

 

 時雨が嘔吐するジェスチャーをしたのはともかく、相手はこのゲームやってそうだし、初心者を抱える俺は少しぐらい本気でやってもいいだろう。

 

「始めますよ〜!」

 

「「「応!」」」

 

 五月雨ちゃんの合図で、スコアアタックの火蓋が切って落とされる。

 

 最初のボスから最終局面まで一気に進み、倒さなくてもいいゾンビを倒しながら春雨ちゃんの分までスコアを刻む。

 

「あ、春雨ちゃん!アイツのふともも弱点だから撃って!」

 

「はい!あ、きゃぁ!」

 

「危ない春雨ちゃん!!」

 

『I am...I am...』

 

「ふぅ、なんとか乗り切ったな!」

 

「お兄さん……助けてくれて、ありがとうございますっ!」

 

「フッ……こんな可愛い女の子を助けられないなんて、漢って言えないだろ?春雨ちゃんぐらい可愛かったら、なおさら、さ」

 

「お兄さん……ぎゅ!」

 

「春雨ちゃん……キリッ」

 

「オロロロロロロロ!」

 

 時雨はその嘔吐ジェスチャーはやめたほうがいいと思う。一応女の子なんだしさ。

 

「いっぱい殺しましたね夕立!」

 

「素敵なブッ殺パーティーっぽい!」

 

 汚い言葉を使うのもやめたまえ君たち、春雨ちゃんや村雨ちゃんにその言葉遣いが移ったらどうするのかね?

 ゲームの結果は果然、あっちの夕立五月雨ちゃんペアが勝利する。まぁ当然だよね。でも高がゲームなのに、しょんぼりしながら謝る春雨ちゃん可愛い。ヨシヨシと頭を撫でてやるゾイ。

 

「なに気安く春雨に触ってるの?殺されたいの?」

 

「なんで!?」

 

「本当に仕方がない人だね宍戸くんは、じゃあ僕にあのゲームで勝ったら許してあげるよ」

 

 時雨が指したのはあれだ、定番中の定番であるレースゲームだ。何気に回るペースが早いなオイ。

 

「お前がやりたいだけじゃないのか?」

 

「べ、別にいいでしょ!?せっかくゲーセンに来てるんだし!悪い!?」

 

「わ、分かったから!ドードー」

 

 そんなにカッカしなくてもいいのに。なんだ、あの日か?

 俺たちはそのレースゲームの方に移動するが、そこには先客が居たようだ。暫くその人たちのドリフトを見ながら、俺は待っていた。

 

『あ……そんなに速く……あぁ!』

 

『ホラホラどうした?俺のが速すぎてもうイッちまったか?』

 

『い、意地悪するなよ……ほら、仲良く一緒にイこうぜぇ……?』

 

『ったく、相変わらず物好きな野郎だな……ほら、俺のオシリの匂いを嗅げる位置から、しっかりついてきな』

 

『おう……あぁ!イッた!俺たち今イッたぞ!』

 

『よーし、レースゲームはこれで終了だな。あそこのプリクラでも撮って帰るか』

 

『な、なぁ……本当に帰っちまうのか?もっと一緒に……』

 

『……さっきヤッたばかりだってのに、しょうがねぇヤツなぁ。じゃあもう一回宿に寄り道するぞ……あ、俺たちはもう終わったんで、ここいいですよ』

 

「ありがとうございます。ほら宍戸くん、僕達の番だよ?」

 

「…………」

 

「どうしたの?」

 

 あのさぁ……さっき「ヤッた」ホモカプたちが座った汚らしい場所に座れってか?時雨はHIVの心配はしていないのか……いや大丈夫、彼らは衛生概念まではネジ曲がってないはずだ。

 

 時雨と同じようにワンコインを入れて、車の選択画面に移る。

 俺はGTシリーズと言うレースゲームで定番の車を選んだ一方時雨は……INFERNO?な、なんだあの車すげェカッケェ!後で検索してみよ!

 

「……宍戸くん、村雨ともやった賭け、僕ともやってみない?」

 

「いいぜ、金が関わる事だった場合千円未満にしてくれれば後はなんでもいいぜ」 

 

「漢に二言はないね?じゃあ始めるよ!」

 

 

 

  ーー日本海軍艦娘中尉ーー

 

      時 雨

 

 

 

『スゥリィ、ツゥゥ、ゥワン、グォォォォォ!!』

 

「「うおおおおおお!!負けるかぁァァ!!!」」

 

 3秒カウントと共に、スクランブル発進した両者の車は順調なスタートを切る。

 目にもの見た妹たちは歓声をあげながら勝ってほしい相手を応援する。フッ……こっちには、「頑張れっ、頑張れ!」と応援してくれる村雨ちゃんと春雨ちゃんがいるのだ。

 彼女たちの応援さえあれば、例え世界最高のレーサーが相手でもぶつかって行くぞ。

 

「宍戸くん邪魔ァ!車体を相手にぶつけるなんて卑怯だよォ!?交通安全法知らないの!?」

 

「うるせェ!やったときのペナルティが無いって事は、やってもいいって事だろうが!大体、時速200超えてる時点で安全法的にアウトだろ!?」

 

 チートやイカサマを使わないだけ有り難いと思ってほしい、勝負の世界は思っている以上に残酷なのだ。やるかやられるかの弱肉強食の世界、自然界の掟である。

 家庭用FPSゲームだって、オンラインサービスを開始すると大抵そこには上級者がいて、負けたら雑魚扱い、勝ったら回線悪いと口実を作ろうと努力するが、結局のところ辿り着くのが「自分が弱かった」という真実だけである。

 そう、言い訳をしても、そこまで頭が回らなかった貴様が悪いのだ。

 

「ドリフトの境地……見せてやる!」

 

「抜かせぇ!僕に勝てると思ってる!!?」

 

「次の第三コーナーの後の高速で、エンジンをバリバリ吹かせて、突き放してやる!」

 

「なっ!?多角形ブレーキング!?そんなの僕だってできるよ!」

 

「お前もできるって何気にすごいな。実際やってるとかないよな?」

 

「そんなわけ無いでしょ。って、そんな事言ってる間に追いついちゃったよ!」

 

 怒涛の追い上げ……ホースパワーはあっちの方が上なのか。

 

「な、なに〜!?……仕方がない、お前には特別、とっておきの技を仕込んでやる」

 

「な……そ、それは……?」

 

「秘技!溝落とし!!」

 

「「「あ……」」」

 

 コーナーの溝にタイヤを入れてドリフトするよりも早くカーブを曲がれるこの技……カーブの所に当たって、車体がスピンする失敗に終わった。時雨の車の道を遮ろうとするが、華麗なドリフトで追い越される。

 ゴール直前で起きたこの出来事、一言申せば……萎え。

 

『ゴォォォォル!!』

 

「流石は時雨っぽい!やっぱり車関係なら整備工作員の時雨に任せるのが一番っぽい!!」

 

「はは、別に車に興味があるわけじゃないけどね。でも、これで宍戸くんは僕のお願いを聞かざるを得ないのだ。やったねみんな!奴隷が増えるよ!」

 

「やめてぇ……」

 

 俺、よく考えたら負けてばっかりじゃないか、クソォ!これが同人誌だったら俺が勝ってこのままアヘ顔ダブルまで持っていけたのによォ……!

 

「じゃあちょっと面倒くさいお願いだけど、聞いてくれる?」

 

「なんやねん?下ろした芋をち○こに付けるとかだったら、例え漢の約束でも平気で反故にするぞ」

 

「なんでそんな拷問みたなアイデアがサラリと出るのかな君は……でも、多分宍戸くんなら喜んで食いつくと思うよ。実はね……」

 

「「「……え?」」」

 

 

 

 なんやてッ?

 


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