整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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ディフェンスシステムについてのディベイト

 

 ー海軍大学校。

 

 時雨との約束は先なので、今は学業に集中させてもらう。

 

 そういうわけで、俺は今学校に来ています。比較的に、そして一見すると簡単なようだが、実はとてもレベルの高い会話を繰り広げる事となるのが、今日の議題である『安全保障学』についてだ。

 提督って立場は最前線の指揮官であり、国と国民を守る使命を持ち、それが仕事の本質である。

 

 東京の海軍大学校でもやる事だが、意見をぶつけてディベイトして、特別コースの俺たちが普通の学生等との差を見せつけてやるのが、今回の課題の本質である。

 

 安全保障学は国際政治学、軍事学などにも近い関係性を持つ。それと並びに、士官学校で学ぶ国防理念との関係性はかなり近しいものであるが……ぶっちゃけまとめてみると、ちょっとしたニュアンスが違うだけで後は一緒だ。こっちがちょっと上級なだけで。

 国を守るって一番重要な点は一緒だからね。少なくても今の政治家みたいな、自分さえ良ければ何でもいい的な徹底した保身派には、正直違いが分からないと思う。

 

 さてと……よくアニメで見るとは思うけど、デカ過ぎる権力を持つ生徒会が机を長方形状に並べて会議を様は、誰しも一度は目にした事があると思う。

 一番真ん中に生徒会長が座ってて、横に副会長と書紀を備えて学園を良くしよう的なあれ。多分あれと同じようなモンだ。スケールが国を守るってデカイ話なだけで。

 

「それでは、これより君たちの見解を聞かせてもらおうか」

 

「「「ハ!」」」

 

 はい!と言うわけで始まりました〜第一回、日本を守るためにはどうしたらいいでしょうか弁論大会〜わぁーパチパチパチ〜!

 斎藤中将は舞鶴に戻って、他の中将先生が俺たちを指導してくれるらしいゾイ。話を聞いてるだけだけど。

 

「留学生も見学に来ているので、我が国の恥とならぬようにな!」

 

「Nice to meet you guys!」

 

「ความนับถือ!」

 

「धन्यवाद」

 

「الله أكبر!」

 

 この学校はなにを隠そう、留学生も受け入れているのだ。日本も多民族国家になってきたな。っていうかさ……英語以外、何言ってるかサッパリ分かんねぇンだけど。なんて返せばいいの?

 

 そんなGAIJINは後ろにでもおいといて……この話し合いを先導してくれるのは、いま真ん中に座ってる学年首位が相応しい。

 そう、肉体労働もできて、それでいて楽々学年の首位も獲得出来ちゃう将来のスーパーイケメン提督であり完璧超人ことこの俺、

 

「では、今日の議題である国家安全保障理念の欠点について語りたいと思う。宍戸大尉、資料を」

 

「はい」

 

 ……のルームメイトの斎藤中佐です、はい。ゾンビがまさかの学年首位とは驚いたなぁ!やっぱりエリート家庭は一般人とは格がァ違いますねェ!

 俺はクラスで三位だが、運が良かった事が多い。俺が忘れてる所がテストに出なかった事多かったし、小論文では突然ひらめく事が多かったし、何より体調崩さなかったもんね。どんな学校でも体調はとても重要なファクターなんですよ。

 

 因みに二位は、

 

「では今度は歴史的な観点から見た国防理念の概要を説明していこう、秋津洲大尉」

 

「はいかも!昔から国を守る事はとっても大事かも!いろんな考え方が存在し続けてるかもだけど、世界の政治の基礎体、シビリアンコントロールとの歴史を辿っていかなきゃダメかも!」

 

 かもかもうるせぇ。でも美人だから許す(ある意味、世界の真理)。

 彼女は秋津洲さん、艦娘だ。目がチカチカするほど全体的に眩しい色合いを持つ。白い肌に、シルバーブロンドの髪、学生用の白い制服……艦娘時の服はたしかそれ以上にハイカラだったような気がする。

 

 オイゲンさんと、あと大鯨さんだっけ?その二人とのルームメイトで、この三人はとても美人だ。なんか、時雨たちとは別の方向性で美人だ。

 

 それにしても理解しやすい喋り方をするなこの人。教師とか教官とはに向いてるかも、かもかも。あぁやばい、かもかもが移ってきたかも。

 

「もっと国民のみんなを守る意識を高めるために、現状をいっぱいみんなに知らせるのが適切かも!」

 

「「「…………」」」

 

 俺の学友諸君は、俺や結城みたいな整備工作員はもちろん、通信部、情報部、イージス艦の元副艦長、提督の元補佐官ーー陸軍、空軍、艦娘など、ある意味日本軍の全てみたいなクラスなので、色んないい意見が聞ける反面思想もバラけるのは至極当然である。

 この人達は全員、安全保障学を兵学校の時に学んだので、この弁会でそれをファイナライズできるだろう。

 

 どうやって国を守る?文字にすれば簡単だけど、シンプルな質問ほど難しいとも受け止められる。多分複数の明確な回答があるだろうけど、それを実現する事が容易ではないので、もっともっと簡単に、そして確実に実現できる国防を追求しようとするんだろう。

 

 例えを言おう、政治家にもっと政治に親身になってもらって、平和を保つために毎日それについての会議を行わせる。多分これが最低限のラインだとは思うだろうけど、実現がほぼ不可能じゃん?そういう事だよ。

 どんな国だって100%納得できるような政策がないわけだし、完璧な政治って人間の永遠のテーマだと思うんだよね。

 

 あっ、関係ないけど、海軍大学校の生徒だった人がその課程で早々「大規模作戦時のイージス艦と艦娘による電撃戦法」を説いた事で脚光を浴びたと聞く。

 国防と言うよりは戦術じゃないのかそれ?とも思ったけど、そういう奇抜だがいいアイデアがあれば例え的が外れていても合格点なのだ。的に当てろと言われただけで、どの的に当てろとは言われてないもんね〜みたいな?

 

 天才は何をしても許されるのか、これもうわかんねぇな。

 

「海軍の仕事は、今や陸軍を遥かに上回る。当然海軍は相応の軍資金を必要すると言うのに。海軍へもっと軍資金を寄越してくれさえすれば……」

 

「陸軍へのバジェットカットを執行したからと言って何も変わるまい。それに、これらは金で解決できる問題じゃないんだぞ?」

 

「クソ……陸軍を消せば……」

 

「「「…………」」」

 

 斎藤中佐は陸軍出身ですよ〜……それを知ってるのは、今はルームメイトの結城と俺だけである。

 だから陸軍へのヘイトの話題を持ち上げられるとちょっと入りづらい。こういう話題になるとき空軍が置いてきぼりになるのはテンプレ。

 

『陸軍と空軍に行くバジェットを海軍へ回せば、新たなディフェンスシステムへのイニシアティブとなる!』

 

『陸軍へのバジェットは既にボトムラインだ。ポリティックスのセキュリティポリシーへのマインドセットをチェンジしなければ何もかもがインポッシブルだ!』

 

『深海棲艦をディフィートすればオールライトだろうが!』

 

「……宍戸、なんて言ってるか分かるか?分かんだったら説明してクレメンス?」

 

「え?あぁ、まだ何にも決まってないって事だよ。あと15分ぐらいこのままじゃないかな?」

 

「ありがとう!流石俺のダチだな!」

 

 いやいや、どういたしまして。

 でもすごーい!君たちは、意識高い系フレンズなんだね!日本語と英語にあんな風に交互に使うなんて、俺だったらできないよ〜!

 

「Hey……hey! Why are they using english and Japanese at same time?(おい……おい!なんであの人達は日本語と英語を同時に使ってるんだ?)」

 

「えーあーうん……ニューボーン、ジャパニーズカルチャー?」

 

「Wow! Awsome!」

 

 新しい文化、新しい言葉、新しい発見、新しい性欲……そうやって、人間は進化していったのだ。

 

「هل تؤمن بالله؟」

 

「え、な、なんて?」

 

「هل تؤمن بالله؟」

 

「……め、メシー!デーツ!デーツ!アイラブデーツ!」

 

「با تشکر از شما! تا زمانی!」

 

 お前は話しかけてくるな、何言ってるかわからないから。あと、アラブじゃなくて、アイラブだから。

 クソ……外国人勢がみんな俺の後ろに座ってるとかマジ勘弁や。発展途上国の人達はホント階級高いな。こう見えて少将だぞこのターバンヘッド。

 

 討論は続き、結局話が逸れたり、大規模作戦の時の将校たちみたいになったりしてまとまらない。俺の知ってる人たちは最低限一回はあくびをしている。

 艦娘の人たちがアクビする所を見るとちょっと可愛くて興奮する。むさい男たちしかいないここでは、貴重な可愛らしさの要素なのだ。

 ……って、討論に加われよ。なんでみんなと一緒にアクティブなトークにジョインしないの〜?

 

「凄いかもー!みんな徹底的に討論してるかも!やっぱり元気なのが一番かも!」

 

「そうだね……秋津洲さんは参加しなくてもいいの?」

 

「あ、秋津洲は大丈夫かも!大鯨とか参加したらどうかも?」

 

「おー名案だな!大鯨さンみたいな可愛いゆるふわ系に、『み、みなさん落ち着いてくださぁ〜い!』みたいな事言われたら、俺っチ、落ち着かずには居られないぜェ!」

 

「あ、あわわっ……」

 

 落ち着けっつってんのに落ち着かずには居られない。男子の視線が釘付けにされる代わりに、大鯨さんの巨乳に目線が行く……あ、でも確かに名案かも!学業が全部おっぱいで満たされているなんて、すげーぜ!物理学の授業で球体の面積求めるの全部おっぱいにしてくれねぇかなー。

 

 何はともあれ、結局国防なんて生涯をかけて構築された先人たちのシステムが最適だと判断されているから、今の海軍もこうしているわけだし、国民から大きな反感がない限りはシステムを変えても、このままで良かったと肩を落とすのが関の山だと思うぜ。

 そして最終的には科学部門の人達がもっと強力な兵器を作って、その都度システムを変える。それこそが、近代軍事史における真実である。

 

 と、何処かの偉人が話していたのを思い出した。

 俺が話しても軽くあしらわれるし、ハァ……今頃時雨たちは何してんのかな?

 

 

 

 

 ートレーニングルーム。

 

 

 

「ハァ……ハァ……!!」

 

「大丈夫時雨姉さん?そんなに汗かかなくても……」

 

「それじゃダメなんだ村雨!僕が維持していたと思っていた体重が、今日乗ったら軽くオーバーしてるなんてありえないんだ!僕は落とす!最低でも50までェ!!」

 

「今のままでも十分引き締まっててスタイルいいのに……春雨なんて、すぐに太っちゃうのに!時雨姉さん、ズルい!」

 

「工作員はある意味現役の艦娘よりも身体を動かすから……ハァ、ハァ……毎日身体を動かしていても体重が増えるのは納得いかないんだァァ!」

 

「今の女の子は60台でも気にしない人がいるんだし、あまり気にしすぎるとダメだと思うわよっ?」

 

「でも村雨は最低でも50超えてるでしょ?」

 

「え?あ、それは……あ、当たり前でしょっ!?で、でも女性の平均体重は日に増加してるって聞いてるし!む、村雨の背は平均身長より少し高いと思うし!わ、私……わたしデブじゃないしッ!!」

 

「分かったから落ち着いて。でも、僕はいつでもトレーニングに付き合うから、ね!」

 

「う、うぅ〜!」

 

「大丈夫だよ!村雨姉さんはとっても魅力的で……魅力的で……あぁ、お兄さん……村雨姉さんに取られちゃう……もっとパフェを食べさせなきゃッ!」

 

「春雨、太った原因がパフェにあるみたいに言わないでくれるかい?ちゃんと低カロリーなメニューと、太らないように栄養バランスのある食事を取っているんだ……僕は潔白だぁぁ!」

 

「知ってるか時雨たち諸君……脂肪は筋肉より重いんだぜ?」

 

「あ、宍戸くんおかえり。よくここが分かったね。あと今ぼくの事を筋肉マンって言ったね殺すよ?」

 

「そんな事言ってねぇよキン肉マンレディー」

 

 フィットネスウェアに身を包んだ時雨は汗をかいていて、作業服のまま汗だくになるのとは違って露出度もある。

 妹二人と一緒にベンチに座って休憩していたらしい。

 

「学校はどうでしたかっ?」

 

「下手な討論番組みたいで面白かったよ」

 

「そういう楽しみ方ができるお兄さん素敵です!お兄さぁ〜ん!」

 

「おいおい、あんまり近づいたらだめだぞ?今日いろんな人種とハグしたから少しキツくなってるんだ」

 

「ササッ」

 

 目にも止まらぬスピードで抱きついていた身体を放し、俺の後ろへ位置を変える。春雨ちゃん、位置を変えろって意味じゃなくてね?

 

 結局あと数日ぐらい意見を交わして、それから論文を書くって流れとなっているけど……大した意見は貰えそうにないので、国民の安全を第一とする国家政策と深海棲艦打倒を目的とした軍拡、で行こうと思う。

 兵学校で一度書いた論文をまた書くのは、長い年月海軍軍人として努めてきた視点で何が変わったかを見るのが結構面白い。

 学校では艦隊運用術、艦娘運用術など、他にも学ぶ事が色々ある。それから今度は各地で研修を行ったりするって言ってた。まだまだ長いな。

 

 ……それはそうと、時雨がこうして汗をかく理由は、言うまでもなく脂肪分だ。女と脂肪分……あとはわかるな?要するに三日坊主のダイエットをするって事だ。

 

「つーかお前、ダイエットする必要なんてあるのか?50台なんてかなり痩せてる方だと思うぜ?アメリカ人なんて60パー以上がオーバーウェイトで、30パーが超肥満なんだぜ?レッドネックって言われるのが嫌で首をなくしたんじゃないかってぐらい肉の塊だからな」

 

「それは流石に言いすぎ……でも少しは緊張も解けたよ。これで合コンは楽して行けるね」

 

「なんだよ合コンのためかよ?お前は身体測定当日に朝飯抜くって無駄な行為をする女子かよ」

 

「いや合コンのためじゃなくて、たまたま体重計乗ったら増えてたから始めただけだよ。そもそも合コンには乗り気じゃないの、知ってるでしょ?」 

 

「ごめんなさい時雨姉さん、代わりに行けなくて……」

 

「いいのいいの、僕が勝手に引き受けちゃった事だから」

 

 そう、俺は時雨と合コンへ行く事になったのでゴザル。

 

 


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