整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

40 / 144
血が付着したコ○ドームを拾った時のおぞましさは、口では形容し難い

 

 ー出撃所前。

 

「あぁもうめちゃくちゃだよ、どうしてくれるのこれ」

 

「センセンシャル!許してください!何でもしますから!」

 

「チッ、しょうがねぇな……しゃぶれよ」

 

「え、それは……」

 

「分かってんだろォ?もうヨツンヴァインになってんだから……しゃぶらなきゃ撃つぞゴラァ!」

 

 仕事中だってのに、雄マン(カリフ)を求めてくる子犬ちゃんの猛攻は止まらなかった。

 スパナをまるで銃のように見立てながらケツに突きつけ、巷で評判の喉ジメストロークを急かす。

 工業用アルコールとハンドローションもバッチリ用意していて、これから体中の穴と言う穴を未曾有の快感と刺激が通るとなると、マジたまらねぇ!

 

「ストップ。お前達はなにをしてるのかな?」

 

「あ、副班長、じゃなくて司令官ですか?今、ヨツンヴァインになってる変態整備工作員が入り込んでるんですけど、(快感への)不法侵入ですよ不法侵入」

 

「すいやせんすいませぇん……」 

 

 クッソ汚いカマ声ですいませんはNG。あぁ、何処を工作してるかと思ったらソッチを整備していたのか……いや、或いは開発か……いやぁ、まったく仕事熱心な整備士も居たものだなァ!

 

「ちょっと何やってるの!あっちの整備はまだ済んでないでしょ!?」

 

「いや、アッチのはもう済ませてありますよ?見てくださいよあの顔、あんないやらしい顔になっちゃってるよ」

 

『あ……あ……(愉悦)』

 

「早く行ケェお前ラァァ!!」

 

「「UBR姉貴オッスオッス!」」

 

 夕張の豪傑さながらの発声を聞き、ゲイ共は仕事に戻った。

 

「ふぅ……」

 

「どうだ班長さん、こっちの仕事はうまくやれてるか?勿論お尻の整備をしていたアンポンタンの件を除いて」

 

「えぇ……ではなく、はい提督。班長に任命してもらい、仕事にやりがいを感じています!」

 

「そんな固くならなくてもいいって、春雨ちゃんや綾波ちゃんだって何時も通りじゃん」

 

「コホンッ、なら遠慮はいらないわね!」

 

「切り替え早ぇな、もうちょっと戸惑ってくれてもいいのに……」

 

「だって立ち位置的には部下と上司で、舞鶴にいた頃とあまり変わりないもの……昔から変わらない、それってとても良いことなんじゃないかしら?」

 

「そうですよ!昔も今もその良さは変わらないんです!あの方々のように!」

 

「え……?」

 

 突然会話に入り込んできた綾波ちゃんが指す場所には、ゲイ共がとても分かりやすく後輩連中に整備の仕方を教えている光景だった。

 あわよくばケツの具合を確かめようとする所を見て、俺もより一層気を引き締める。

 

 夕張は整備工作班の班長となり、適任だったのかとても優秀である。レポートはとても読みやすく、仕事が早い上に皆を纏めるリーダーシップもある。階級上問題もなかった為、俺が抜擢した。

 

 その同期であり、出撃から帰ってきた綾波ちゃんは舞鶴にいた頃と変わらない、つまりは要港部のエースの一人である。一つ気がかりなのが……彼女は所謂、BLに目覚めてしまった事だ。

 なんと言うかその、凄く勉強したらしくて……空海が日本に衆道を持ち込んだのが日本BL文化の序章だったりとか、戦国時代でのBLは寧ろステータスだったりとか、大正時代に何故か男色文化が復活したりとか、パン袋を挟むアレの名称がバッグクロージャーだってのと同じぐらいどうでもいい事ばかり話してくるんだ。

 男色話題に発展したら逃げる……なんて手もあるが、あんな純粋で恋する乙女のようにキラキラした目で見つめてくると、どうにも切り離せない。これが、一人ひとりを大事にする役目を持つ司令官の定めだというのか……!

 

 あ、同期といえば春雨ちゃんもそうだな。陽炎、不知火、黒潮の指導を努めており、卒業した年が一つ上なので若干先輩と言うこともあり、新たな後輩を持ってウキウキしていた所を見かけた。

 

「ぎゅ〜!」

 

「お、おホホホォ〜!じゃなくて春雨ちゃん、少し離れようね」

 

「はぁ〜い!あっ、報告書はこちらです!」

 

 話していた隙に抱きつかれてたから驚いた……春雨ちゃんはスニーキング能力でもあるのかな?しかも出撃から帰ってきてこの元気っぷり、ふぅ……若い娘は最高だぜ!

 陽炎姉妹も俺たちに一礼してスタコラサッサと入渠しに行き、あの様子だともう三回ほど出撃できそうかな?と心に思ったが、予定は全部済ませたので行く必要はない。

 ハァ〜こんな元気っ娘ばっかりだと、俺も夜の方が元気になっちゃうなぁ〜!それを言ったら確実にセクハラなので、言葉は飲んでおくけど。

 

「相変わらず仲がいいでち!」

 

「ふふふっ……春雨はもう司令官以外の人には従わないのですっ!」

 

「春雨、それは色々駄目だと思うわ……」

 

「ははは、そうだぞ春雨ちゃん。そんな事を言うと、他の提督達が嫉妬しちゃうからな」

 

「他の提督なんてどうでもいいです!」

 

 他の提督涙目。俺も彼女のようにキッパリと自分の意見を言える人間になりたい。

 

「えぇっとそれで提督、なんでここに居るの?」

 

「え……ま、まるで居ちゃいけないみたいな言い方……あ、俺泣きそう」

 

「大の大人が泣かないでよ……っていうか普通は聞くでしょ?こんな油臭い場所に突然提督が降りてきたら」 

 

「一昔前の俺もこの油臭い場所でお前らと同じ仕事をしてたんだから、改めてBIGになった感傷に浸ってもいいでしょ?今回は視察も含めるけど……これ、今度発令される作戦で主に必要になりそうな物資を予測した一覧表だ」

 

「作戦って、まだそんな話聞いてないけど……」

 

「まだ予定の中の予定って所だけど、発令されていざとなった時に必要なもん無いと慌ただしくなるからな。一応作っておいてくれ」

 

「了解したわ、作ってくれてありがとう……舞鶴にいたときは急ピッチで仕上げたにも関わらず燃料が足りないとか余裕であったものね」

 

 それが常識です。

 どこの国でもある程度行ってることだけど、資材は軍事基地に必要以上の量を送る事はない。書類を捏造して資材を横領したり出来るからな。

 日本海軍ではそういう話は聞いたことがないけど、企業の重役は平気でやってたり、隣国の軍幹部がやった部品横領事件も記憶にある。

 起きてからでは遅い!出来ないようにシステムを組まなければ!などと、ご最もなスタンスのお陰で、俺みたいな横領する気ゼロのヤツが、先を見越して準備すると言ったことが容易に出来なくなってるんだ。

 

 警察も憲兵隊もこういう意気込みだったら事件が減るのだが、暇過ぎる状態を作ると今度は職を追われる可能性も出るので、どの道難しい問題なのは変わりない。

 

「お兄……じゃなくて、司令官はこれからこのあと何処へ行くんですかぁ?」

 

「要港部内をパトロールだよ。鎮守府ならともかく、ここは俺自身で視察できる範囲だから歩き回って再度トイレの場所とか確認するんだ」

 

「なるほどぉ……って、な、なんでトイレ限定なんですか司令官!?た、確かにばったり出会った男性とのハッテン場を設けようとするのはいい事なのですが……流石にトイレは露骨すぎますっ!せ、せめて中庭とかだったら……」

 

「綾波ちゃん、俺はね、一ッッッッッ言もね、そんなこと、言ってないから、ね?」

 

「は、はい、すいません……っ」

 

 もうなんかね、酷い。

 

「春雨も一緒に行きます!」

 

「行ってもいいけど、その前に入渠しようね。出撃後の、お、や、く、そ、く!だからね!」

 

「はい!あ、では中庭で待ってて下さい!そこから要港部の探索へと行きましょうっ!」

 

「う、うん」

 

 なんで集合場所を指定してるんだ?

 

「ではまた後で!行きましょう綾波ちゃん!」

 

「はいっ!ではまた!」

 

 手を振る春雨ちゃんと、綾波ペコッと一礼する綾波ちゃんはそのまま入渠所がある場所に向かった。

 

「ハァァ疲れた……」

 

「ご苦労、大儀であった」

 

「は?」

 

「うぉ!!い、いきなり殴るとは何事かね時雨中尉!?抗命罪かね!?」

 

「いや僕は逆らってないから、ムカついて殴ってるだけだから」

 

「えぇ……」

 

 そして入れ替わるように時雨が到来。春雨ちゃんと同じ艦隊に居たにも関わらず会話に入ってこなかったのは、整備工作班達を指導していたからだろう。

 艦娘だが先輩でもある時雨は、俺と同じくちょくちょくとショートカットをアドバイスしたり、手間取っている所を助けたりしている。

 俺は司令官だし、部下の心を掴むために親しみやすさなど演出して手助けをしていた。でも時雨はしなくてもいいのにする所、やっぱり世話焼きなんだろうな。

 

「で、なんの話してたの?」

 

「我らが提督が要港部を直々に視察して回るらしいの」

 

「視察って、これまたなんで?地雷原でも見つかった?」

 

 不発弾ならともかく地雷はないだろうが。つーか地雷原ってお前……足柄さんの過去じゃあるまいしさ。

 

「生憎時雨が望んでいる地雷はないけど、この前コンドームを見つけてさ……」

 

「え、えぇ!?ま、まさか、もうそんな関係になった人がいるって言うの!?ど、どうしよう私……」

 

「あはは、夕張って案外純情なんだな!」

 

「あ、案外ってなによ案外って!」

 

 顔を軽く覆った夕張の頬は紅潮しており、普段のクールさとは一変して、珍しく恥じらいを見せている。

 凄く可愛くて、いいと思います。

 

「……あ」

 

「ん?どうした時雨?」

 

「あ、え、えぇっと!あ、や、きゃ〜!ぼ、僕も恥ずかしい〜……」

 

「は?それやってて恥ずかしくないの?」

 

「フンッ!!」

 

 ゴフッ──!!強烈な一撃が俺の腹部を襲う。

 あ、コンドームの話で恥ずかしがらなきゃ僕女じゃない!って思って咄嗟の行動を起こしたのは分かるが、すげーわざとらしいのでNG。そして上官への攻撃はNG。

 

「痛ェ……」

 

「ふん、女の子は丁重に扱うべきだよって何回も言ってるじゃん!僕は忠告を聞かない人には容赦しないんだよっ!」

 

「ま、まぁまぁ……」

 

 痛みが収まるまでに2分を要したのは、やはり見事なボディーブローだったからか……見ていた整備工作班の連中も拍手していたぐらいすごかったらしい。

 

「ふぅ……いや、コンドームの話にはまだまだ続きがあってさ、どうやらそれ、使用済みらしいんだ」

 

「それさっき言わなかった?って言うか未使用のヤツだったら別に面白くなーー」

 

「血がついてたんだ」 

 

「「っ」」 

 

 二人は絶句した。

 あぁ、俺も拾ったあの時は、ホラー映画のクライマックスを見ているような顔をしたさ……いや、怖過ぎんだろこれ。

 

「そ、そそそそそれってつつつつまりつまりつまりつまり!!!」

 

「あぁ、班の連中の一人が怪我をして、出撃中だったから急いで応急処置をしたのが、落ちてその辺に寝転がってたそうだ。紛らわしいにも程があるよな?」

 

「「…………」」

 

 ははは、落胆するのも無理ねぇわ。俺もクソ紛らわしいゴミはゴミ箱に……できればカモフラージュして入れてくれれば助かる。

 俺も触った瞬間考えちゃったよ……あ、俺、変なモノに感染しちゃうのかなって。そしてあの血の量……相当酷い形で入れられたんだなって。

 

 緊急用の絆創膏がすぐ側にあったのにそれを使わなかった事、軍医さんにちゃんと叱って貰わなきゃな。

 

「そういえば司令官は行く場所があるんじゃなかったっけ?」

 

「あ、いっけねェそうだったァ!!俺ちょっくら行ってくるぞ!あとお前ら!今日はもう上がっていいぞォ!!」

 

「「「お疲れ様ですッ!!」」」

 

 

 

 ー中庭。

 

 上がっていいって言った瞬間、その敬礼の速さに感無量。立場と言うのはこれほど人に格差を付けるものなのかと、一々小さい事でその身に実感する。

 

 中庭は広く、普段は海兵が走り回ってるここも、任務が終われば社交場へと早変わりだ。ビルや学校の屋上みたいに、人がいない時は何故かテンションが上がって、誰がいると残念な気分になるとても神秘的な所だ。

 こういう感情を持つことを人は人嫌いと言うが別にそうではなく、ただ誰もいない場所に自分だけがいたら、何か自分だけの場所みたいで優越感があるじゃん。

 

『あ、提督じゃん!チーッス!』

 

『ごきげんようですわ』

 

 そして中庭のベンチから提督呼びで声を掛けてくる甲板ニーソシスターズ。

 鈴谷達は今日非番なので、出撃はしていない。片手でスマホをイジる鈴谷と、良家のお嬢様みたくスイカをフォークで食べる熊野は、若干シュールかとも思うだろうが、何でもフォークで食べるスタイルは彼女にとってデフォルトである。

 

「美味しそうなスイカだな。じゃ、いただきまーす」

 

「え、ちょ、なに鈴谷の頭かじってんのっ!?」

 

「あ~ごめん、美味しそうなスイカだなと思って」

 

「鈴谷の頭のドコがスイカっぽいワケっ!?」

 

 瑞々しい緑色の球体って言えば大体はスイカ、或いは鈴谷の頭を連想する筈だ。

 

「はしたないですわよ提督」

 

「スキンシップだスキンシップ。別にやましい事なんてしてないだろ?」

 

「でも鈴谷を食べましたわ!」

 

 そう言われると確かに如何わしく聞こえるな。

 

「確かにそういうと誰しも耳を傾けるかも知れない。だがよく考えてくれ。俺は、わぁーい!美味しそうなスイカが二つもある〜ぱふぱふ!とかの行為にも及べたんだぞ?」

 

「鈴谷、携帯」

 

「はいどうぞ!たしか憲兵隊の番号は……」

 

「ヤメテヤメテ、オレハタダナカヨクシタカッタダケ」

 

 そうやってすぐ通報するのやめろ。イマドキ女子のトレンドなのか?

 だがしかし、漢として自分が発した言葉は取り下げない。

 あの縦セーターみたいな鈴谷の制服には、名前の由縁となっている縦線が入っている。巨乳が着ると大きいと面白い具合にこの線が左右に広がって、形がより分かりやすくなるんだなこれが。

 熊野は……いや、凄く貧乳って訳じゃないんだけど、格差のある姉妹間で比べるのは酷だ。兄弟姉妹を扱う格差のせいで起こった戦争もあると思う。

 結論、姉妹同士でおっぱいは比べちゃだめだ。

 

「まったく……司令官としての意識を持ってもらいたいものですわ」

 

「調子乗ってましたすんません」

 

「いいじゃんいいじゃん!フランクな提督の方が鈴谷は好きだな〜っ!」

 

 鈴谷は……俺のことが、好き……だと?

 

「鈴谷さんは司令官の事が好き……なんですかぁッ?」

 

「「「うわぁ!!!」」」

 

 そしてまた気配なしで俺の背後から現れる春雨ちゃん。こんなにうまく誰かの背中を取れるものなんだな……時代が時代だったら忍者になって暗殺も楽勝だっただろうな。いや、忍者じゃなくてくの一か……いやはや、ニンニン春雨にハニートラップされたいで御座る。

 

「そ、その好きはどういうカンジの好き……っていうか、なんでここに居るの!?」

 

「司令官とこれから要港部内のお散歩デートです!」

 

「いや普通に歩き回るから待ち合わせここにしただけ」

 

「むぅ〜!デートって言ってくれてもいいじゃないですかぁ!」

 

「いや、俺まだ勤務中だし一応だからね?勤務中にデートとかとんだクソ野郎が居たもんだぁ!って上層部の耳に届いて首チョンパされるまでがテンプレだから」

 

「どこのテンプレですのそれは……?」

 

 しかし、自分が何も悪い事をしていないのにいきなりクビ宣言される事だってあるんだ。それが悪い事をしていたともなれば尚更だ。電光石火……女子が聞いた人の悪評が、学校中に知れ渡る速度と同じぐらい早い情報伝達により、知らずの内に吊るし者とされるのだ。

 そう、再三言われてきた事だが、人生とは何が起こるか分からない。

 

 ……あれ?これを悟る度に、何か悪い事が起るような予感がするんだけど……デジャブってやつか?

 

『き、緊急警報!緊急警報!東より大きな深海棲艦の機動部隊の反応を察知!繰り返す!東より大規模な機動部隊の群衆を察知!要港部内にいる者は直ちに出動態勢ヲ取ラレタシ!』

 

「「「……え?」」」

 

「……え?」

 

 三人はアナウンスがおわると、スピーカーから俺の顔へと視線を移した。

 

 深海棲艦がいきなり来た。

 

 ……いや、そんなこと言われても、俺の頭いまポカーンってなってるし。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。