整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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テレビは食堂で

 

「みんなー集まってー!鴨川要港部の醜態が晒されるよー!」

 

「「「ひょおおおお!!!」」」

 

 食堂が賑わってる。

 

 それはもちろん食事だからってのもあるけど、所属している全員が集まってるんじゃないかって思うぐらいの人口密度。

 中央にはワイドスクリーンがあり、これはもちろんワイドショーを見るためのものではない。

 

 出撃中の艦隊、要港部内の連絡事項、地図表示、ここや大本営からの緊急連絡など、状況を効率的に伝えるためのもので、司令室などからでも、要港部全体に情報を伝え、見られるようにしている。

 

 それが今は、下らない夕方アニメを流している。

 理由はもちろん、二分後に鴨川要港部が映されるからだ。みんなも気になってるし、俺もどうなってるか足をジタバタさせながらこの日を待っていた。

 

「ちょ、宍戸くん足邪魔ァ!貧乏ゆすりやめてって言ったよね!?」

 

「ごめんね、テメェ等がなんて言ったのか気がきでならないんだよ」

 

「僕がなんか変なこと言うと思ったの?イヤだなぁ〜流石に言わないって!っていうか、ぼくの名誉もかかってるんだよ?」

 

 時雨どころか、村雨ちゃんや春雨ちゃん、それにその他大勢がテレビに釘付けなのはもちろん、補給担当までこっちに出てるのはどういうことだ。飯作れ。

 

「宍戸くんの勇姿を、この私が見届けてあげるんだよ!?もっと喜びなって〜!」

 

「そうは言われましても……っていうか、白露さんの発言も気になるんですよね。前線艦隊としてインタビューアーになんて言ったのか。あと鈴谷、お前もだぞ」

 

「え、スズヤハナニモヘンナコトイッテナイヨ?」

 

「総旗艦鈴谷ッ!!君はこの鴨川……しいてはこの日本海軍の威信を背負う立場であることを忘れてもらっては困るねェ!?失言などがあれば軍法会議モノだとは百も承知だとは言わなくても分かるよねェ!?君のその胸部装甲を揉みしだく私刑を今から行ってもいいのだよォ!?」

 

「き、キモ!鈴谷のおっぱい見ないでってば!」

 

「その気迫と精神をふだんから纏っていただければ説得力がありますのに……」

 

 知るかッ。

 でも話題は減るどころか膨れ上がる一方だぞ。国土復帰はかなり大きな話題を呼び、ナショナリズムを燻らせるいい材料なのはもちろんだが、いまだに島々へは陸軍の駐屯部隊などを置く程度にとどまっている。もちろん本州にいる人たちを故郷に返す事は到底できないとは思うけど、少なくても取り返したニュースはその人たちにいい印象を与えるだろう。

 御蔵島など、比較的に近隣の海域には海軍要港部を作る予定らしいけど、メインは八丈島らしい。あの八丈島はそれほど日本海軍にとって、そして国にとって重要なものだったとは流石に知らなかったなぁ?資源があるだけの諸島かと思ったぞ(※資源があるだけでも重要です)。

 

「お兄さん!テレビが始まりましたよ!」

 

「来たか……」

 

 春雨ちゃんに腕を組まれているが、それが気にならなくなるほど、集中力はディスプレイへと向けられている。

 陽炎、浦風たちがゲイ共と共同でスクリーンの設定をいじくり回している理由は画質が悪いからである。普段から地元テレビ用に使ってないとこういう不具合が出るのは当然だが、画質設定イジリ慣れてないんだったら無理にしなくてもいいのにと思ったのは俺だけだろうか?

 チャンネルを変えちまったのか、明らかに地上波では出ないような映像が映る。

 

『おおおぉぉぉおおおううおうおうおう!!!に、忍ぽ……に、妊ぽおおおうおうおうぅぅぅ!!!』

 

「「「…………」」」

 

「……いや、違うんすよ、これ多分司令官のですよ」

 

「いや、どっちかと言えば熊野だろ」

 

「どおおおおうおうおうおう言うことですのおおぉぉ!?わたくしがあのような卑猥淫乱ドスケベ作品に出ていたとでも言いたいのですのおおおおうおうおう!?!?」

 

 それ以上喋るな熊野、声が似てるからガチでお前かと思ったぞ?

 しかしジト目は全部俺の方向に集まり、時雨と白露さんは笑いそうになった口を抑えている。鴨川の英雄的な司令官として、俺は毅然とした態度で部下のミスを許す。

 

「ハハハ、まったくだめだな〜次から気をつけなきゃ、アハハ。さ、て、と……気を取り直して、もう一度地上波にもどしてみようかっ!」

 

 整工班がデッキをイジり、モニターの映像が変わる。

 

『ごめんなさいごめんなさいっ!な、ナマイキなこといってごめんなさいっ!あ、いやぁっ!そ、そこはまだビンカンだからぁっ…い、いくううううううううう!!!』

 

「気を取り直してって言ったよねお前らァ!?さっさと鴨川の勇姿を見せるローカル番組に変えねぇとテメェ等のォケツホジクリカエシテヤルゾォオオオラァ!!!」

 

「「「オッスお願いしまーす!」」」

 

「お前らは石抱きだぞ」

 

「「「頭に来ますよ〜」」」

 

 結局は我らが夕張が修正に入って、30秒後やっとアンダーグラウンドからアッパーグラウンド(地上波)の映像に戻る。

 

 最初に映ったのはどうでもいい……わけじゃないけど、ナレーションと共に紹介されるのはこの街の風景である。そしてここを守るのが、と繋げられながら映された鴨川要港部。

 

「「「うぉおおおおお!!!」」」

 

「凄いよ!HDで映ってるここ!!」

 

 当たり前だろ。

 

「映ってますっ!!テレビにここ映ってますよっ!!」

 

 村雨ちゃんが一番はしゃいでるとか……おっぱいがプルンプルン揺れる股間に悪い侍。鴨川要港部が作られた経由と、短い間に立てた功績の数々、そして平均的な要港部よりも戦力が多いことなど、情報的なことを数度に渡り伝えられ、「それじゃあいよいよ中に突入していきたいと思います」、とナレーションをしていたと思われる女性が内部に入っていく様子が映される。

 ここはもちろん後から撮ったシーンであり、最初は門前に押しかけていたのは、遠くのテーブルで夕張と一緒にご飯を食べながらニコニコしている綾波ちゃんや、このあいだ行ったプーソーの話を混ぜ込んで盛り上がっている門番兵士たちが知っている。

 

『ここが、奇跡の奪還を果たしたと言われている鴨川前線艦隊と前線指揮官の宍戸中佐のいる要港部です!世間で今、話題沸騰中のこの要港部!その事についてどう思っているのか、早速中に入り話を聞いてみましょう』

 

 カメラが中に入って、内部の様子と更に適当な情報を流しながら、出会い頭に話を吹っかけて行くテレビ。実は俺のに限っては、門前で行われたインタビューの他に、演習場、そして執務室で行われたインタビューがある。どちらを採用するか、あるいはどう編集されるかはわからないので肝をひやしてたけど、今のところは問題ない。

 そう、今のところは。

 

『前線指揮で大成功を成し遂げた艦隊として、今話題沸騰中ですが、その事について一言お願いします!』

 

 歩いていた艦娘に突然その質問をふっかける、みたいなシチュエーションを演出したいんだろうけど、明らかに不自然な歩き方を見て全員が思ったと思う……これはヤラセだ。

 そして横の文字で肩書が書かれている事から、ヤラセ説は更に信憑性を増す。

 

 第三艦隊の艦娘。

 

『は、浜風です!』

 

『あ、はい、それで今の心境は……』

 

『は、ハハハ浜風です!』

 

 その浜風の浜風コールに、この場の全員が笑い転げる。心境について質問してんのに、ハハハ浜風です!はないだろ流石に。

 

 第三艦隊の艦娘。

 

『司令官はどのような人物ですか?』

 

『そうだね〜。色々なモノをスマックする人だと思う!』

 

『え……?』

 

 当然俺は谷風を睨んだが、そっぽ向かれた。

 陽炎たちにも睨みを効かせたが、同じくそっぽ向かれる。つまりこれは、鴨川要港部の娘たちは俺の名声を落とそうと陰謀を蠢かせている証拠である。

 幸いにも“深海棲艦を叩く”という意味として捉えられたので、おしりペンペンで許してやろう。

 

 第一艦隊の艦娘。

 

『あの前線の艦隊に所属していた6隻の内の一人だと聞いていますが、本当でしょうか!?』

 

『うん』

 

『八丈島奪還の勝因は何にあると思いますか!?』

 

『味方の指揮と、固い絆から成る連携……かな?』

 

 意外とは心外、と言われるだろうが、時雨の口からは俺の悪評が出ることはなかった。

 キョトンとした顔を見る限り「アレ?あのシーンは使ってくれなかったんだ」みたいなことを思ってるんだろう。つまり悪いことは言ったけど、その部分はごっそりと編集で削られた事になる。

 

「時雨、お前の取材中ってどれぐらい長かったの?」

 

「え?多分、20分ぐらいかな……あまり覚えてないやっ」

 

 あの数秒ほどのシーンのために、そんな無駄な時間を費やす事になるのはテレビ特有だが、NGになったところはなんて言ってたのかすごく気になる。

 

 第一艦隊の旗艦。

 

『え?どうやってエリートカン倒したかって?そんなのパパーン!ってやってババーン!ドカーン!キュイキュイ!ってやったに決まってるじゃん!』

 

『あ、そ、そうなんですか……』

 

 鈴谷の説明の仕方って柱島のアイオワさんに似てる気がする。こう、直感的に覚えろ的な?教官には向いてないけど、でも一応この鴨川で一番指揮がうまいんだよな。

 順調に紹介されていく中で、問題の俺と春雨ちゃんのツーショットロリコンシーンはまだ使われていない。少なくても、現在HDスクリーンに流されている、俺が執務室でベラベラ話してるシーンまでは、春雨ちゃん個人のインタビュー映像しか流されていない。

 春雨ちゃんと村雨ちゃんのキラキラしたお目々が写してるのは、映された執務室にて別人のように振る舞う司令官様である。

 

『小官はどのような状況にあろうとも、その任を最善と思われる形で遂行する事こそ、海軍軍人の使命であると思います。人のため、国のため』

 

「宍戸くんカッコ……ブフッ!!」

 

「ふはははは!!誰あれ!?笑い止まらないんですけどー!アハハハ!!」

 

「「「ハハハハハハハハ!!!」」」

 

 てめぇら笑ってんじゃねぇよ。建前でも全国のお茶の間に報道されるんだからさ、かっこいいイケメン提督みたいな雰囲気を演出しなきゃ海軍に抹殺されるだろうが。

 でも俺が吐いてるテンプレセリフと仕草を真剣な眼差しで見る親潮やその他の少数派。真面目な性格からか、あの司令官(俺)からなにかを得ようとしているのだろうか?

 それに比べて、カレーを口いっぱいに頬張りながら画面に映る提督が発する一言一句へツッコミを入れる白露さん、そして浦風に黒潮。知るところ、誰もが注目を預けるこの俺は笑顔でそれを容認しているが、心内に秘めた握りこぶしの存在にも気づいてほしいと思うのは、ワガママだろうか?

 

 その後テレビにナレーション付きで映ったのは、鴨川要港部が行った御蔵島、八丈島、小笠原諸島への遠征攻略作戦の全貌。要はやった作戦のアナライズであり、まるで歴史の授業を見てるような感覚である。これを俺がやったと思うと、偉大な功績を上げたとして威張ってもいいと思うけど、それ以上に他人がやった感が半端ない。

 少数精鋭での前線指揮は間違ってないけど、所々、新型戦術や少数撃破の裏技など、明らかに盛ってる説明があり、他人事のように思えてくるのは必然だろう。

 

 そのまま「今後の日本海軍の海外での活躍が期待されます!続いては、海軍将官会議から帰ってきた方々からの発表です!」と繋がったので、事実上、鴨川要港部がテレビに再登場することはないだろう。

 

 ……あれ?

 

「なんか普通だったな」

 

「そうですね……よく考えたら、あんなにスゴイ作戦を成功させたんですね」

 

 村雨ちゃんは胸に手を当てながら感傷に浸る。

 それもそのはずだと、後になってから思い出し、合点を突く事になる。このとき俺は出されたカレーの味のことしか考えてなかった上、元帥の艦隊との交渉に成功しただけであると言う事実から、誇れる功績としては微妙であると思っていた。

 そもそも、やむを得ないとはいえ、前線で指揮を取るなんて古臭いことはしたくなかったことと、連日の鴨川への問い合わせやファンメール、並びに同僚からの通信や日常的な業務、そして終わったにも関わらず作戦について軍令部の連中から掘り下げられ続けたこと……それらの要素が重なって、俺の客観的思考を鈍らせていたが、落ち着いて考えれば分かることだ。

 真相はどうであれ、横須賀鎮守府の諸港が打ちのめした深海棲艦の大群を、たった一つの要港部が制圧して、常に前線を指揮して一週間というスピード攻略によって、失われた島々を一瞬にして取り返した海軍の実力。

 国民が見れば、みんな「SUGEEEEE!!!」と思うこと間違いないだろう。実際そうだし。

 

 次のニュースが始まった。

 内容は言ってたとおり、海軍将官会議の結果報告みたいな記者会見である。もちろん昔の日本海軍のように内々で処理していた時代と同様に、話す義務はない。増してや、発表する制約なんて条例にも憲法にも載ってないが、知らせるべきだと海軍側が思った場合は、むしろ日本海軍側から記者会見を開く事もある。

 見る限りでは海軍側が開いた感じである。

 もちろんこれも昔はやってなかったけど、知らせるべきとは、高級士官の一人が大将とか元帥に昇進したり、それと共に世間に渡るほど重大な職に就いたりする時に行う。そしてこれも、見る限りではそれについての内容らしい。

 

 海軍中将クラスの人が壇上で喋ってる。

 軽い咳払いと挨拶の後に「え〜」から始まる短いスピーチが始まった。

 

「「「一!ニ!三!」」」

 

 俺の部下たちがカウントアップは、この短いスピーチの中で発せられる「え〜」の回数を示している。「九!」で止まったので、一分にも満たない序盤演説に9回以上“え〜”を入れていた事になる。この人を壇上に立たせるぐらいだったら、二等兵でもいいからスムーズに喋れる人にしてほしい……というかするべきだと思う。

 そしてお前ら、一応あの人は第三鎮守府の提督だからバカにすると痛い目に遭うぞ。

 

『先程行われた会議にて、えー、舞鶴第一鎮守府の、えー斎藤提督を、えー大将へと昇進させ、えー海軍大臣へと、えー任命された旨を、えーお伝えします』

 

 パシャ!パシャ!パシャ!

 

 カメラフラッシュの一点集中砲火が中将を襲う。

 それもそのはず。提督から海軍大臣へと昇格するのは正に異例……ではまったくないけど、そんなにあるわけじゃない。それは問題ではなく、世間でも薄々ささやかれていた派閥争いのリーダーである彼が、内閣入りした事がスクープなんだ。

 すでに分かりきってたことだし、順当に行けば黙っててもこうなってたし、文官としての才能もある斎藤中将……いや、大将が親任されるのは当然だろう。海軍の人格者であり、カリスマ性を見てもこの人選に相違はないだろう。

 文官と武官を合わせて、正にこれは文武両道……なんちゃってっ。

 

『えー引き続いて荒木軍令部総長には、えー連合艦隊司令長官の職が親任され、えー並びに横須賀第一鎮守府の司令長官を兼任されることを……』

 

 これでついに確定した。

 保守派は、革新派に敗れたんだ。

 これで暴徒になるのは、なるべく避けてほしいんだけど。

 

「あのビール腹のおじさんが僕たちの司令長官に……?」

 

「言っておくけどあの人は前線でも活躍したことがある偉い人なんだぞ。あのパシャパシャカメラフラッシュ浴びせられているパシャとは大違いなんだぞ……なんちゃって」

 

「パシャ?」

 

 パシャ……オスマントルコ時代の将軍クラスの人たち。

 

「やかましいよ」

 

 時雨と俺はカレーは冷め始めたカレーを頬張る。

 二度目にすくいあげたカレーは、しがみついてる春雨ちゃんの口にねじ込んだ。正確にはねじ込もうとしたら、ぱくっと食べられた。

 鈴谷のジト目が痛い。

 磯風の面妖な眼差しが突き刺さる。

 野郎連中の羨望の視線が俺に一点集中砲火。

 

 もういいだろお前ら、いい加減に慣れろよ。

 

 えーの連語が続く中で、テレビに映っていた提督は未だに人事の話しかしてない。話が遅いのもあるけど、海軍内部そのもので、かなり改革的な人事が行われている証拠でもある。

 引き続いて、明石少将は中将に昇進と共に海軍次官の座を手に入れ、大淀次長は中将への昇進と共に軍令部総長へ。この人たちは海軍のエース中のエースなので、人選も当然であると言える。むしろこれ以外に配置されることがあれば内部から苦情が来るだろう。

 

『えー、続いて前期に行われた大規模作戦において、えー多大な成果を上げた蘇我提督は、えー中将への昇進と、えー統合される横須賀第三鎮守府と第四鎮守府の司令長官となることをーー』

 

「おい見てみろよアレ!昇進しちゃうし、こりゃ一等旭日も夢じゃないぞ蘇我提督!?すごくないかアレ!?」

 

「上司の手柄にされて悔しいとか羨ましいとか思わないの?」

 

「フン、そんなのは海軍軍人になる前に捨てた」

 

「口は立派ですわね……」

 

 熊野の言う通り口だけは立派が、それで何とかなることもあるんだぞ。報道陣は「おおお!!」と唸り声を上げていたので、それだけ世間では名前が通り、それも英雄的である事が推測できる。

 まぁ人事に関してはこれぐらいだと思ったが、まだまだ続きがあった。

 元帥に昇進した提督がいないのは少し驚いた。まだあの元帥行方不明扱いなのかな?見つけるまでは元帥の座はそのままにしておく的な?現実みろもう死んでるぞあの人、表向きは。あるいは誰も昇進したくないから大将中将全員が辞退したのか。

 

「まだ続きが……もしかして宍戸さんの名前が出たりとかっ!」

 

「ないよ村雨ちゃん。別に作戦に関しての記者会見じゃないんだし、それにもうテレビに出たじゃん」

 

「いいえ、親潮も村雨さんと同意見です!司令の功績は甚大です!名前が出てきて当然かと思います!」

 

 いやないから、功績がどれほどあろうと、物事を成す為の、然るべき場がそれぞれあるんだよ。結婚式で就職報告するぐらい場違いだぞ。

 

『えー最後に、えー前期の作戦において過大な功績を立てた十数名を、えー、一階級昇進させる事が決定されました』

 

「やっぱりあの作戦って僕たちが思ってたよりスゴ作戦だったんだね……」

 

「そうだな。あと一階級昇進って多分お前らのことだと思うぞ」

 

「「「え!?」」」

 

 コイツらも自分のやった事をあまり気にしないタイプなのか……前線で活躍した6隻は必ず昇進されるはずだと思っていたので、そのことを打ち明ける日を待ち望んでいたんだが、先を越されたか。

 まぁいいや、これで大淀次長……いや、総長は約束を違えない崇高な精神の持ち主ってことで、全ての出来事にカタが付いたことになる。

 俺はのんびりと、悠々自適な要港部運営生活に無事戻れるというわけだ。

 

 

 

『……え?あ、はい……えーその数名の中には、八丈島奪還の際に前線で活躍した艦隊と、えーその前線総指揮官として武勇を奮った宍戸龍城司令官も入っており、えー……あ、一年後に、大佐へと昇進させる旨を、お伝えしました』

 

『おおお!!あの宍戸司令官が!』

 

『これで海外への進出も安寧でしょう!』

 

 テレビ内の画面端にいる数人の海軍士官が何やら騒ぎ立てている。

 

 

 

 ん?

 

「宍戸くんが、二階級……特進?」

 

「縁起でもないこと言うなよ。多分、同姓同名の士官だって。おめでとうだな」

 

「明らかに君だよねェ!?」

 

 俺、死んでたの?

 

 


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