整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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 今更ながら人物紹介です。オリキャラや艦娘などを整理しました。

※長崎警備府編登場時の設定です
※オリキャラは● 艦娘は★

■長崎警備府
 ●宍戸龍城……主人公、大佐。
 ★時雨……部下、大尉。
 ★村雨……部下、中尉。
 ★春雨……部下、少尉。
 ★白露……姉妹の長女、少佐。
 ★鈴谷……部下、少佐。
 ★熊野……部下、大尉。

 ★足柄……艦娘指導役。
 ★間宮……補給艦、補給担当。
 ★涼月……第五艦隊旗艦。
 ★飛鷹……第一艦隊旗艦。
 ★隼鷹……第一艦隊。
 ●ダンディーナイスミドル班長……整工班班長。
 ★菊月……整工班。
 ★三日月……整工班副班長。
 ★第五駆逐隊……神風を含めた駆逐隊。

■鴨川要港部の元部下
 ★夕張……整備工作班班長、中尉。
 ★ゴーヤ……整備工作班教育係、少尉。
 ★綾波……第三艦隊、腐女子。
 ★親潮……第二秘書艦。
 ●月魔……元憲兵、整備工作副班長。少尉。
 ●ゲイ三人衆……ゲイ。
 ★yaggy(陽炎、不知火、黒潮)……駆逐艦。
 ★第17駆逐隊(浦風、磯風、浜風、谷風)……巨乳3/4。

■提督育成プログラム(海軍大学校)同期
 ★秋津洲……中佐、主席卒業者。軍令部職員。戦術に長ける。
 ★大鯨……少佐、卒業者。下田要港部司令官。
 ★プリンツオイゲン……少佐、卒業者。
 ●結城真司……少佐。阿久根要港部司令官。
 ●斎藤真……大佐。白浜要港部司令官。

■海軍幹部
 ●荒木……大将、保守派のリーダー。連合艦隊司令長官、横須賀第一鎮守府司令長官。
 ●斎藤……大将、革新派のリーダー。海軍大臣。親潮、斎藤真の父。
 ★大淀……中将、軍令部総長。革新派の事実上のリーダー。
 ★明石……中将、海軍次官、日本統合造船社長。自覚のない黒幕。
 ●蘇我……中将、横須賀第二鎮守府提督、娘に古鷹、加古。
 ★加賀……大湊警備府提督。保守派の事実上のリーダー。
 ★那智……中佐。大洗要港部司令官。
 ●舞鶴第二鎮守府の班長……海軍省職員。素晴らしい上司だった人。
 ●荒木連龍……大佐、柱島泊地の提督。仕事ができない。荒木大将の息子。
 ★赤城……佐世保第二鎮守府提督。
 ●元、永原元帥……元横須賀第一鎮守府、元連合艦隊司令長官。
 
■その他
 ●タクヤ……JAFG幹部。
 ●田中晃司……JAFG幹部。
 ★睦月型全員……駆逐艦。半数が横須賀。
 ★秋月三姉妹……長女は舞鶴、二人は横須賀。
 ★外国艦……一部を除いて殆どが柱島にいる。



長崎警備府編
覆面ボス


 

 一年後、佐世保第一鎮守府、中庭。

 蒼天の下で輝く佐世保鎮守府は1世紀以上も前に作られた海軍要塞であり、所々についたシミは時間の経過を感じさせる。

 過去の遺物として扱われるはずの古い建物に敬意を表しても、進み続ける人類社会にとって取り壊しを余儀なくするはずが、あろう事か軍隊という重要な組織によって今なお使われている現状を見る限り、伝統を重んじる心と、人類の歴史を作り続けてきたのが戦争であると改めて思わされる。

 中庭には整列した兵士数名、佐世保参謀長、人事部長、そして司令長官である提督、そして大佐への昇進を受ける一人の士官がいた。

 階級章と、新たに作られた警備府司令官用の識別章、そして勲章を付けられ、大将と大佐は敬礼を交わす。

 形式上の昇進式の作法をするならと言わんばかりに、軽いスピーチも形式張った言葉が並べられた。

 

「私は一、海軍軍人としての責務を常に全霊を持って果たし、最善をきす事を、天地身命にかけ誓います。親愛なる日本海軍の士官としてこの場に居することこの上ない誉であり……」

 

『宍戸大佐!こっちに目線向けてください!』

 

『大佐!大佐の同期よりも早い昇進をした件についての心境はいかがですか!?』

 

『昇進した感想!感想です!感想言えやコラァ!』

 

 うるせェ張っ倒すぞメディ公がァ……!

 

 現実感のないまま大佐、そして明日に長崎警備府の初代司令官として着任予定となっている俺は、熟練は自負するが部下となる熟練のオッサンたちに比べて遥かに若い士官である。前職は二週間ほどだが、セ○キャバでセクハラやらかして辞任した軍需副部長の代わりが来るまでの臨時副部長である。

 結局適任者がいなかったのでそこの一人が昇進して副部長となる形となったが、昇進したことで「退役して年金ぐらし!計画がパーになっちまった」と嘆いていた。有能な人は一人でも必要なので、そんなの無理な話だ。

 

 報道陣からのカメラフラッシュと「ホラホラこの棒が欲しいんだろ?」と言わんばかりの黒くて太いのぉっ……を押し付けられる図はさながら、陵辱系のマルチチ○ポをグイグイ押し付けられているメス男子(オクシモロン)。

 インタビューが終わった後でも、度々俺に近寄ってくる男子たちはさながら、卒業しちゃう憧れの先輩に近寄ってくる後輩たち。 

 

 俺は短い間柄だったが、残された時間を仲間たちとの交流に使っていた。

 

「宍戸参謀はあの警備府に着任するんですよね!?新しい警備府か〜俺たちも行きたいッス!」

 

「ハッハッハ、だめだぞ。お前たちが居なかったら提督が困るだろ?」

 

「ははは、セク○ャバ行くような野郎が居るようでしたらもっと困りものですけどね!」

 

 一応自分たちの上司だったヤツに対してその言い方は……まぁ俺のことじゃないし別にいいか。

 仲間との別れは何時も名残惜しさを感じるが、それでも俺は行かなくちゃいけない。俺の新天地……長崎警備府に。

 

 

 

 長崎警備府。

 

 九州の主要都市であるこの地は、古くから大陸との貿易に使われていたらしい。発展した土地を守るのは重大科目だが、感情論を捨てて理論的かつ数学的な比較をすれば舞鶴や横須賀ほどの重要性はない。

 大阪警備府や横須賀みたいな巨大人口を有しているわけでも、舞鶴やその周辺に密集している要港部が守る核プラントが集結しているわけでもない。

 しかしこの九州は幾度も歴史上日本を揺るがしてきており、人口の少なさもさる事ながら、精鋭揃いと呼ぶに相応しい土地と性質を持っている。

 単純な人口増加も狙っているのか分からないが、俺の膝下で深海棲艦の魔の手から国民を守る義務を背負っているのは紛れもない事実である。

 

 その責務を全うするための下準備は、意外にも気さくな挨拶から始まる。

 交流を経て、自分を知ってもらい、仲間意識と団結力を高める事こそが肝要。でも今の時代は気をつけたほうがいい。積極的すぎると肩を強張らせる結果となる上「日本社会特有の団結力の強要マジ嫌い」とか思われたら失意どころじゃない。

 ここは”フランクすぎる”上司を演じるに限るが、程度を間違えれば、こんなヤツの下で働くの?的な舐められ方をされるため、加減が難しい。

 

 とりあえず着任は明日であり今日は休日なんだけど、俺は一日前行動をわきまえてる有能な士官なので、みんなの顔と警備府の下見を休日を潰してまでする俺マジ提督の鑑だから褒め称えろ。

 

 ──俺はこの個人的な企画を──”提督さん、一日限定で身分を隠して警備府に潜入しちゃおー大作戦!”と名付ける事にした。

 

 警備府内の装飾や色彩を見て思い立った言葉は”新品”そのもので、佐世保とは色の鮮やかさから異なっていた。警備府の規模は、要港部のワリにはデカイんですけど?程度だが、それでもニ、三倍程度の大きさは備えてある。

 

 警備府が二、三倍デカかったら弾薬庫もそれぐらいデカイと言わんばかりに巨大な格納庫から出てくる艦娘たちへと声をかけた。

 

「や、やぁ……ぶ、ブヒィ!こ、こんにちわブヒ」

 

「え?あ、こんにちは……」

 

「誰あなた?ここは関係者以外立ち寄りは禁止よ?」 

 

 おい、俺様の顔見て分からねぇのか?礼儀が成ってない駆逐艦には、エッチなお仕置きが必要なようだなぁ……?なんて言うのは正に悪提督の鑑である。

 さっき昇進を受けた大佐と今の俺の姿を比較しても同一人物だとは思えないほどラフな格好であり、肩章を付けていないのはもちろんだが、持っているのは大きな黒いスーツケースだけで、鉢巻を付けてブヒブヒ言ってるのが異物感しかない。

 袖を捲りあげて短パン着てたら水兵にも見えなくもないので、まず提督だと思われることは無いだろう。

 

 俺の姿にドン引きしている五人の艦娘は、大正ロマンの体現とい呼べる派手で清楚な和服姿をしていた。予め目を通した所属艦娘の一覧の記憶が正しければ、彼女たちは確か神風とその姉妹たちであると記憶している。

 赤、桃、青、緑、黄の配色は正にパワレンジャー。

 駆逐戦隊、カミカゼンジャァァー!!!

 

 よし、艦隊編成の際にはこの名前で行こう。

 

「お、おれ……俺、ブヒィィ!」

 

「ひぃ……!」

 

「旗風、僕の後ろに下がってて」

 

「は、春風も神風姉も私の後ろに下がってなさい!」

 

「ひ、ひどいブヒィ!お、俺は、ぶ、ブブブブゥヒィィィ──ッヒッヒッヒィィィッ!!……ごめん、着任予定の者なんだけど、整工班ってどこにいるか分かる?」

 

「あ……あなたは、整備工作班の人、なんです、か……?」

 

「あぁそうだよ」

 

 元、だけど。

 

「じゃ、じゃあ私達もそちらに行くので、つ、付いてきて!」

 

「分かった、ありがとう。荷物を運ぶんだったら手伝うよ」

 

「結構ですッ!!!」

 

「「「…………」」」

 

 男手の拒絶、ジト目で凝視。

 一緒に歩いてるはずなのに物理的にも精神的にも距離を感じる。怪しい人を見る目はあるようだが、何故神風たちは自分たちの上官だと気づかないのか?それは、軍装を着用しているもののラフな格好をしている……というのもそうだけど、単純に俺の肩章などが外されているからである。

 正体を明かさずに、なるべく一人の士官として警備府を見回るのはアンダーカバーボスをしたいからじゃなくて、気遣っている面もある。みんなは司令官が来るまでになるべく完璧な状態にしようと必死で走り回って最終確認をしてるんだから、一日早く来たなんて知れたら彼らの気が休まらない。

 俺の我儘で赴いている以上、これぐらいは気遣わなくちゃいけない。

 やってることがすでに提督らしからぬと言われるかも知れないが、実感がなさ過ぎて普通は複数の士官と共に黒塗りの車に護送されながら警備府に来場したものを、俺一人だけのロンリーな車旅となったんだ。

 

 普通の提督……特に、初代提督として着任するのであれば組織編成などの人事的なプランやホームページでの挨拶、着任式の挨拶やメディアへの写りを計算したりと色々と考えるべきだと先輩提督方に言われているが、もう要港部でやった事あるし、既にプランは整えてあるので、実をいうとここに来た目的は俺の有意義な暇つぶしの念もあったりして。

 

 なにはともあれ傍からみれば変人、あるいは不審者な俺。

 そういう人に対して身分確認を行わないのはいけないと思う。怪しいと思うんだったら現役の士官や艦娘は、海軍基地内だったら身分証明書を見せる権利があるんだからさ。

 

『……ねぇ、なんであの人ハチマキ付けてるの?もしかしてオタク系?の人とか?』

 

 暑いから汗かいてんだよ。

 俺は君たち美少女の舐めたくなるような艶めかしい汗はかかないんだよ残念な事に。

 

『僕もサッパリだよ朝風の姉貴。もしも整工班の人として着任するんだったら、遅刻は感心しないね。新人だったら尚更だけど……でもなんでかな?なんか普通の士官の人には見えないんだよね……姉貴たちはどう思う?』

 

『わたくしからは、特に何も……』

 

『春姉さん……神姉さん……』

 

『だ、大丈夫よ!私が付いてるわっ!し、ししししっかり私の後ろに付いてきてぇ!!』

 

 おいおいおい、これじゃあまるで小さい大正ロマン女子を付け狙うキモ豚だよ。

 しかも後ろって、俺も神風の後ろについて行ってるんですけど。

 通り過ぎる士官などからも「なんだこいつ?」みたいな顔されたので、俺の顔を見ただけじゃ提督だと気づかないようだ。というより、ハチマキを深く被りすぎてブーメランスネーク出しそうな顔になってるので、服装とも相まってなお気づかないだろう。

 

「つ、ついたわ!こ、ここがみんながいる出撃所だから!」

 

「あぁなるほど、デカイな出撃所……やってるのは出撃所の技術的な機能の動作確認か。昔やったことあるから懐かしいわ。ありがとう神風た……あれ?いない?」

 

 出撃所前で確認を取る整工班の連中の一グループの所で息を切らしている。5人が持っていた荷物には艦娘の艤装のパーツが入っていたので、彼らは多分艤装の出撃準備に取り掛かってるんだろう。

 その彼らが、神風姉妹たちと共に疑心の目を向けてくる。小声で話をされても俺には分かるんだ……遠まわしに「あの人ちょーキモいんですけどーチョベリバー」とか言ってるんだろ?

 ったくよォ?明日になったらお前たちのその和服に覆い隠されたエッチな身体に、誰が支配者なのか一日かけて教え込んでやりたいぜまったく。

 

 

 

『……おい、アレ誰だ?新人か?』

 

『あの顔たしか……あれ、どっかで見たことがある顔だわ。あるんだけど……おい、お前行ってこいよ』

 

『ふぇ!?私がですかぁ!?』

 

『お前新人に教えるの得意だろ?キョロキョロしてて右も左も分からなそうだし。明日司令官が着任するンだから、最低限の作法とかも教えておいた方がいいんじゃねぇか?』

 

『う……たしかに大事な時期だから、新人には付いていてあげなきゃ……』

 

『いいから行ってこいって!班長には俺から伝えておくからよ!』

 

『は、はい……』

 

 


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