整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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イケメン○ね

ドスケベとは何なのか?

 この用語についてのデフィニッションは総じてエロい女を指す。所謂ただの持論だが、それに共感してくれる人は必ずこの世界にいる。

 

 あの色々とプリンプリンなプリンツさんが来ること、それ則ち、TDN、ERO。

 

「お久しぶり。元気そうで何よりだよ」

 

「グーテンターク!久しぶりに会えて嬉しい!」

 

 執務室には俺とオイゲンさんしかいない。

 時雨は予定通りの出撃に加え、村雨ちゃんは他の部署からの書類を持ってくるために警備府を歩き回っている。

 

 まさか同期のオイゲンさんが来るとは思いもしなかったが、元は秘書艦として活躍していたのは聞き及んでいるので、仕事が楽になるのは俺にとっていいことだ。

 

 ただ、彼女も一介の要港部を指揮していた身だから、そっち方は大丈夫なのか?と心配していた。海軍省の人事に口を出すつもりはないけど、憶測としては西に集めた戦力の増強と言ったところだろうか。

 警備府で重大な作戦立案をする時なんかは、頼れる同期がいる事は心情的な意味での負担を軽減してくれる。心の支えは一つでも多くあったほうがいい。

 

「メールでも言ったと思うけど、昇進おめでとう!シシードはやっぱり凄いな〜。警備府の司令官をやっている間に勉強もしてるんでしょ?」

 

「うん、毎日三時間程度ね」

 

 仕事の合間にやっていたりするので、一点集中した時間を見れば一時間程度である。

 過分な地位を貰ったとはいえ、これに似合う教養っていうものはどうしても必要になってくるのは必然だ。防衛全書はもちろんだが、部隊や一般的な艦隊を指揮する教育も学んでいる。

 将官になるための教養は、整工班の時に軽く蘇我中将からワン・ツーマンで習った事があるが、まさかこの時期になって活かされるなんて思いもしなかった。

 

 教養の中には振る舞いとか社交界でのマナーとか、所謂貴族坊っちゃん達が学ぶような事が多い。

 

 そして実はこれが一番厄介であり、マナーってのは、英検一級とか安全保障学とか艦隊運用学を合わせても到底辿り着けないほど膨大な情報量を含んでいる。

 

 何故なのかと聞かれれば、人生をかけても覚えきれないほどマナーというのは無数にあるからという単純な理由だ。覚えるだけで100を有に超える行事一つ一つにありえないほど細かいルールやら仕来りがあるが、日本は特にそれが細かい。

 なんでそんなにルールを作るんだと聞かれれば、二重に上流への礼儀、そして教養があると見せるのに最適なツールだからだ。

 〇イッターみたいな大衆の場でもフォローし返したり、FF外と付けなければ礼儀知らずと言われたり、無言フォローは大罪だったりと、俺が頭にハテナマークを付けるような風習、マナーを強要する文化なので、案外そういう礼儀作法を覚えるのに慣れているのかもしれない。

 

 実際に舞鶴でテストを受けて合格点を直々に貰った俺が言うんだ、間違いない。

 

「大淀さん越えちゃうかもね!」 

 

「いや、流石にそれはない。それはともかく、オイゲンさんは柱島のみんなとは連絡取ってる?」

 

「うん、みんな相変わらず元気!アドミラールも元気!」

 

 あの提督まだあんな左遷場所みたいなところにいるのかよ。任期は満了したんじゃ……いや、これまた人事が働いてるのかな。

 

 会えたことを本当に嬉しそうに微笑みながら、この金髪碧眼巨乳は自分の胸を寄せるように脇を締めた。

 ドイツの胸囲、恐るべしと言ったところか。あれで絞り出される液は、さぞ濃いだろうなぁ……ムク。

 

 相変わらずエロすぎて……あぁそうか、このスケベ外国艦に、遠慮なんていらなかったんだ。

 

 

 

 『……オイゲン参謀長。服を脱いでもらおうか』

 

 『ふぇ!?な、なんで……』

 

 『貴官が敵国のスパイであるかどうか、この私自らがチェックしようというのだ』

 

 『で、でも来る前に武器の所持確認は済んで……』

 

 『いいから脱ぎやがれェこのメスブタがァッ!!』

 

 『ひぃ!うぅ……こ、これで、いいっ?』

 

 『ほう、フムフム、腕よし、脚よし、胸部よ……ん?なんだこれは?胸部になにか隠しているな?』

 

 『な、なにも隠してないよぉ!ただ胸がおっき……きゃ!』

 

 『このイケナイオッパイと身長が釣り合っていないんだよォ!!随分と男に特化した武器だなァ?おん!?これを使ってどんな情報を吐き出させようとしていたんだ?アァ──ッ!?出るのは精液だけだぞこの全身ドスケベ女性器がァ!これは、コッチの方も検査しないとイケナイようだなぁ!』

 

 『そ、そんなぁ……!』

 

 『お、今度は上目遣いか?そんなに俺からイロイロなモノを吐き出させたいとは度し難いロリ巨乳め。そんなエロエロ童顔女スパイは、やっつけないといけないな!卍ッッ解──醜肉棒二重魂最大直角砲(なんかきたないモノ)……覚悟しろ、プリケツ・オイゲンッ!』

 

 『いやあぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

 

 佐世保第一鎮守府、会議室。

 

「どうしたのシシード?目が三日月形になってニヤニヤしてるんだけど」

 

「こういう時の宍戸さんは妄想してるんですッ、プイっ!」

 

 口を膨らませる村雨が言うとおり、いやらしい妄想にふけながら会議に出席していた俺は、既に前の会議から一ヶ月が過ぎていた。

 

 俺の警備府にはあまり変化はなく、強いていてば参謀長のオイゲンさんが入ってきたせいで一時期とても大慌てとなったことぐらいか。それも慣れてほとぼりが冷め始めるのは約一週間程度であり、一ヶ月ともなれば士官たちの当たり障りは俺とほぼ変わらない。

 

 相槌が随時交わされる会議の内容は言わずもがな、沖縄奪還作戦のことだが……流石に一ヶ月でまた司令官を招集するなんて。

 集合した司令官や参謀連中の中には代理として来ている人が多い上、小さな要港部であれば出席すらしていないところもある。長崎警備府は佐世保の右腕である以上は出席する必要があるが、流石にオイゲンさんと村雨ちゃんを連れてくる必要はなかったか。二人はなんか裏でおしゃべりしてるし、他のみんなもやる気ないし。

 

「ふむ……では、長崎警備府からは何か案は無いかね?」

 

「ハ、現状では様子を見るのが適切かと思います」

 

「おいおいどうしたんだ?前線の龍ともあろう者がそのような息でどうする?」

 

 その渾名って呪いか何かなんですかね?事あるごとにその名前を出されるのマジハズいんですけど。吐かれる度に視線がこっちに集まるのマジ落ち着かねぇし。

 

『あの宍戸司令官ともあろう者があのような曖昧な意見を申すとは……これは肩を緩めてもいいと言う暗示……』

 

『ついでに、我々のおまん……失礼。肩だけでなく、全身を緩めては如何かな?ホラ、こうやって……』

 

『あ、ダメ……』

 

 おっさん同士は流石にキモい。

 

 あっちにいる提督なんて俺のことを凝視して……あ、違う、あれ多分オイゲンさんと村雨ちゃん見てるんだ。

 

 キモッ。

 

「ふむ……では海外士官の方々は、どう思いますか?」

 

「私たちからはあまり……」

 

「ふむ、なるほど……お前たち、もっとちゃんとしてくれないと駄目だぞ?」

 

 アンタが退官したらちゃんとするぞ、と心の中で暴言を吐いておく。

 彼が助言を欲した相手は、佐世保の海外士官たちである。一介の日本海軍軍人として働かせることで、海外経験を積ませる名目で働いている、駐在武官のようなものだが、この人達が働くのは鎮守府などの普通の基地である。

 参謀長であるオイゲンさんもそうなのか、あるいは帰化しているのか、そこのところは全くの不明であるが、少なくても一年以上いるのは確かだ。

 

 というより提督、曲がりなりにも海外からは非難を浴びるかもしれない作戦の内容についての助言を海外士官に求めるなよ……まぁ、出席を許している以上、対等に扱わなきゃならないのは当然なんだが。出席する理由はもちろん仕事上の経験を積ませる関係もあるが、何より”日本海軍は何もやましいことしてませんよ~すごく健全でオープンで外国海軍とは違いますよ~”という演出的な要素もある。

 でも実際に作戦内容はおおっぴらにできない所もあるので、海外士官が出席している以上、決定できないことは多い。

 

 予想通りなにもないまま二度目の会議は離散する。

 会議室に残ったのは俺たちと……そして海外士官グループとの交流が、オイゲンさんが声をかけたことで始まった。

 帰って神風たちとカルタでもしようかと思ってたんですけど。

 

「はじめまして!私、プリンツ・オイゲン!こっちは村雨!そしてこっちは」

 

「宍戸です。我々は長崎警備府から来ました」

 

 勝手に俺たち全員の自己紹介をはじめようとしたオイゲンさんを牽制したら、ぷくぅーっと眉毛を曲げられた。本来は俺が紹介しなきゃいけない立場なんだからそのエッチなお尻引っ込めて前かがみになるなスケベちゃんオラァ。

 

「ははは、ご丁寧にどうもありがとうございますcommander宍戸。私はエイジャックス・ベリングハム、以後お見知りおきを」

 

 イケメンさんと握手を交わした。

 直接取材以降、俺の記事が気になって30回ぐらい見ていたが、この人の名前が話題に入っていたのを思い出す。

 村雨ちゃんにそれをダシにして言い寄ったら夕立ちゃんにジャーマンスープレックスホールドされた記憶は新しい。

 

 ……確かに、雑誌に出るほどの超美形イケメンクソち○ぽ。表現すればオイゲンさんを男体化したみたいな感じの美形さか?あるいは男体化ビスマルクさんぐらいが妥当か。

 どちらにしろ、村雨ちゃんに目隠しさせて視界を独占したい。見ないで村雨ちゃんッ!!イケメンなんて人種はどうせ女食べまくってるクソチ〇ポばかりなんだと啓蒙したい。村雨ちゃんがコイツに興味を持つようなことがあれば焼身自殺で死んでやる。

 

 彼が、「そしてこちらが」と順を追って紹介していったのが、後ろに居る三人である。

 

 GAMBIER BAY、Ташкент、GOTLAND。

 

 ガンビアベイ、タシュケント、ゴトランド……名前を聞いて、超筋肉ムキムキマッチョで色々とテカテカした同人誌の竿みたいな奴を想像したのは俺だけじゃないはず。

 こんな強そうな名前と並べるヤツなんてジョージとかジャックとかありきたりでハリウッド映画のキン肉マン役ぐらいだろう。

 

 こんな奴らが女なわけ、

 

「あ、あの、it's a pleasure to meet you…」

 

Здравствуйте.(こんにちは。) はじめましてだね!」

 

「よろしくお願いいたしますっ」

 

 うわ、なんだこの美人達、ガチエロかよ。

 ガンビア・ベイさんはオドオド系のツインテエロボディ。

 ゴトランドさんは儚げな艶やかさを持つ泣きぼくろ麗人。

 タシュケントさん……なんかすごく包容力ありそうでかわいいんだけど。マジで抱きつきてぇ。

 

 オイゲンさんを合わせてわけ分かんねぇぐらい国がごっちゃになってるけど、美男美女のGAIJINグループには変わりない。

 俺と村雨ちゃんの場違い感は半端ないのは言うまでもないが、人種を間違えていても村雨ちゃんだって対抗できるぐらいの美貌は持っている。

 俺の感覚から言わせてみればこの会議室は日本じゃなくなったから早く出よう。

 

「お、お待ち下さいコマンダー!実は私、一度でいいので敬愛するコマンダーシシドにお会いしたかったのです」

 

「ほう、貴様は日本での滞在は長いと聞くが、我が階級章を見てコマンダーとなァ?英語ではキャプテンではないのかねェ?敬愛しているなら語尾にサーを付けろハンサムボォォイッ!?」

 

I... I thousand apologies, sir!!(も、申し訳ありません、宍戸様!!)

 

「ふん、分かればよろしいのだ。俺は懐の深い男だからな、この俺様の寛大さに慄くがいい……ハハハハハ!!!」

 

「「「…………」」」

 

 見ろよ、この艦娘たちが俺に向ける陶酔(けいべつ)の眼差し。俺がイケメンより上に立ったから、多分みんな股間大洪水させてるんだろうなぁ〜。

 

 という冗談はともかく。

 

「流石です!私ももっと見習わなくては……」

 

「べリングハム少佐……俺のケツ、しっかり追えよ?」

 

「は、はい♂♂!」

 

 妙に頬を染めて強張った敬礼をする少佐。

 ……後に彼がホモだったと知った俺は、発言を後悔した事は言うまでもない。外交の道具として使われているとはいえ、アナポリスを主席卒業したというだけあって、相当頭もいい。彼が発したイケメンという言葉が、実は正しい使い方をされていた事に気づかなかった。

 

(※イケメン=性的にイケる男性を示すゲイ用語)

 

「ハハハ、しかし間近で見るとなおイケメンですねキャプテン宍戸は」

 

「テメェ嫌味か喧嘩なら買うぞ?」

 

「い、いいえそんな事は!……でも、悪い人ではない事は良くわかりました。これで安心して、彼女を見送れますね」

 

「え」

 

「図々しいようですがもう一度紹介させていただきます。彼女はガンビア・ベイ、数日後に長崎警備府へと着任するので、よろしくお願いします……どうかしましたか?」

 

「え、いや別に?うん……チラッ」

 

「っ!」

 

 村雨ちゃんは今度は、ヤバッ!って感じでそっぽ向く。つまりアレだ、報連相ができていなかったというわけだな。確かに俺の艦隊に入ることは知っていたけど、”誰が”までは知らなかった。

 まさか海外艦とは……村雨ちゃんの体にいっぱい報連相を叩き込みたい。

 

「なるほど……じゃあベイ、よろしくな」

 

「T-thank you……」

 

 ぎこちない握手を交わしたベイは、気の弱いアメリカ小娘らしい。アイオワさんみたいな奇妙すぎる英語は話さない分、ネイティブな英語で、それでいてとても愛らしい娘が俺の艦隊に加わる事となる。

 

 後にガンビアベイ以外にも、アイオワさんやサラトガさんなどの強力なアメリカ艦がこの作戦に参加するか否かにおいて、問題が生じる事となる。


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