陸軍内部では、奇妙な噂が流されている。
実はかなり前からある都市伝説の一種だが、スケールが大きい陰謀説というのは解明に苦を労する故に、誰もがティータイムの合間の雑談の贄にとどめていた。
運用資金、として何より海軍の経済的な権力を一部掌握する”陸軍隠し財産”。その規模は膨大らしいが、海軍の転覆や完全支配などは当然図れるわけでもなく、精々嫌がらせ程度の代物だろう。だが、噂されている総額が真実だとして、タイミングと使い方見計らえば効果的な大打撃にもなり得る。
特に、海軍が力量を試そうとしている前代未聞の大規模作戦が発令待ちの状態であれば尚更と言えるだろう。
何はともあれ、財産への道には特殊な鍵が必要であると噂されている。それはなぜか、女性、そして一部の男性が自慰行為の際に使う器具とされるモノで、通称バイブと呼ばれている。
何故それを秘密の鍵として起用したのかがこの都市伝説の最大の謎だが、推測ではただのバイブではないはずだ。改造され、特殊な形をしているはずのそのバイブは、光学迷彩と再帰性反射材の応用で突きつけられると鋭い凶器に見えたり、特殊な電磁波を発して開くとも言われている。
和歌山の白浜警備府。
『バイブ……ですって?』
「あぁ、可笑しい話だろう? 私も最初耳にしたとき馬鹿げていると蔑視していたが、何度か耳にしている内に聞き慣れてしまってな。それがこの間に会った陸軍時代の上官との話題として上がったのが面白くてな、ついつい話したくなってしまったんだ」
宍戸大佐は何かから追いかけられていた故に息を整えてるのか、あるいは何かを察したように、数秒間を開けてから口を開く。
『それって……なんかその……バイブ? みたいなものから、えっと、スタンガン? みたいに? 出るんですよね? なんか武器になるみたいな?』
「ん? スタンガンのようかは知らないが、まぁ電磁波を発生させるとは聞いたことがあるな。派生として紅蓮を纏うとか、六等分に分裂してベイブレードとなりダビデの星を描くとか、ニトログリセリンが組み込まれていて暴発するとか……まぁ、噂程度の事だが、そこまで深く考える必要はない」
『突きつけられたら凶器に見えるけど俺から見たら凶器に見えない……? え、そしてジリリリって電気発生できる……? え? えッ?』
「……す、すまない宍戸大佐。混乱させてしまったようだな……まぁ、多忙な身から出た戯言として片付けておいてくれ。この類の話はいくらでもある」
「失礼します司令官」
「私も失礼するね!」
「ん、私は執務に戻るので、私も……ではなく、私は失礼するぞ」
『あ、ウィィッスゥ!』
補佐官と秘書艦が入ってきたのを切りに、斎藤大佐は通話を終わらせる。
執務室に足を踏み入れた補佐官は、正式な補佐官ではなく整工班の副班長なのだが、作戦時に参謀として会議に参加したり、自身の経歴から憲兵隊の指揮への助言を与えたり、現在のように執務を手伝うなどして、ただの整工兵として扱うには微妙な立場だが、着々と発言力を高めているのは紛れもない事実である。
「誰とお話に?」
「あぁ、月魔くんの良く知る司令官だ」
「兄貴ですか!? 元気にやってるといいなぁ……」
「え、兄貴? って、だれ? 親戚の人?」
「兄貴は俺の兄貴です。姐御もいます」
「だ、だからだれ……?」
「長良、宍戸司令官の事だ。八号作戦で蘇我中将の下で前線に出た」
「前線……あぁ! けっこう前に、艦娘と一緒に戦ったって言うあの!? 生きてたんですねー」
生きているとはなんと無礼だと斎藤と月魔は思ったが、長良が印象として主張する「前線で突っ走る戦国武将みたいな提督」だと聞いた二人は本人を知っているが、誤解する理由に理解を示した。
無礼どころか、ぴょんぴょんはねながらサイドテールを揺らす彼女は、むしろ好奇心を寄せている。
「まぁそれはともかくだ……月魔くんはここに来てもう慣れたかな?」
「ハッ! 斎藤司令官の御指導もあり、順風です。兄貴からの人生教訓として、まずは慣れろ、及び慣らせ、と言われましたので。そして次は、なるべく見えるように実力を示せ、とも言われましたので」
「すごい事言うんだねーその前線の司令官さん」
「斎藤司令官、並びにあの結城司令官との同期ですので、ヤバイです」
「あははっ! 本当にヤバそうですねっ! 逆にそんな二人でなに話してたか気になります! なに話してたんですかー?」
「あぁ、彼には司令官としての威厳を保たないと、こうして陰口を叩かれる事になるぞと忠告をな」
「陰口など誰でも叩くでしょうに……」
「ん? では貴官はどんな陰口を私に叩いたのか、詳しく教えてはもらえないかな?」
「あ、い、いいえ! 自分は司令官の陰口など叩いた覚えはありません! ただ兄貴が七光りクソ眼鏡の元陸軍お勉強箱と言っていた割には優秀な方だなと思ってはいました!」
「それを詳しく聞かせてくれないかッ? 場合によっては今度アレに会う時の為に、牙突の練習をしなくてはならないのでなッ」
「お、落ち着いて落ち着いて!」
詰め寄る斎藤大佐は比較的多忙な司令官ではあるが、群を抜いてというわけではなく、世迷い言を態々同僚の司令官に話すような真似をする人物ではない。彼が言ったように、この手の話はどこにでも存在している上、どれも信憑性は多少頷けるレベルで構築されているのだが、この話は彼の父である、現海軍大臣もプライベートで言及を漏らした事があるのだ。
このような都市伝説に縋りたくなる時期も彼にはあり、また、徳川埋蔵金の発見を夢見るトレジャーハンターの気分で仕事の合間に調べていた時期も、人には言えない黒歴史であると、彼の中では結論付けている。
大佐のように調べた事がある人々は、その度に個々で自分の中での信憑性を増していったが、その度に伝説の規模に目眩みし、キリの良いところで打ち止めにすることがほとんどである。斎藤大佐は資料などを漁った結果、その中でも陸軍創設に関わった者が多く、現代に至るまでの歴史的な革命の立役者たちの聖地である西日本にあるのではないかと目をつけ、そこで断念した経験がある。
近々あった佐世保方面での台風、そしてそれに乗じた人為的な襲撃もなかったわけではなく、それと彼の陸軍の上司が「隠し財産を移動させようとしているかもしれないな」と話題を持ち上げた時期、そして何より海軍大臣が言及していた事実などを照らし合わせ、そこにあるのではないか……と、錯覚に似た症状が出た。
もちろん確証のないモノばかりで、単なる話題作りの法螺話、あるいは余興とでもいうべき代物だが、陸軍が黙って海軍の独走を見逃す訳がないと思っている故に出た”警告”のような言葉は、現在宍戸大佐を何かに気づかせたことに、彼は気づいていない。
もしかしたら、斎藤大佐は彼に陸軍への抑制をすることを期待していたのではないかと、後に思い始めた。
電話を切ってしまったが、彼が電話した理由は陸軍の都市伝説よりも、もう身を固める準備はできたかどうかと聞くためであり、もしもデキてなければさっさと結婚するか、する気がないのなら妹の親潮をさり気に勧めようかと思っていた。一応妹想いではあるが、同期の結婚相手は誰になるのかがとても気になるという変わったタチの持ち主でもある。
「ま、まぁソッチのことなんて気にしないで! それよりもほら、今日は海外士官の人が来る日ッスよ」
「あ、あぁ……確か、アメリカからの士官らしいな? 最近多くないか? 大阪警備府でも諸要港部でも、アメリカの割合がやたらと多い気がするんだが……」
「えーそうですかー? あ、でもあっちのほうが人口が多いから当然かもしれませんっ!」
「そんな理由で来られたら我々は人口的に侵略されてしまうぞ……」
「見かける機会が多いだけなのではないでしょうか?」
「そうだといいのだが……まぁ、少なくても廊下で海外士官の大名行列を見ることはないだろうから、その店は安心だな。バブル時代では、米国に行った日本人が数十人規模で屯して道を歩く姿が新聞になったり、アメリカの企業やタワー買収などが重なって、反感を買う事になったと聞く。そうならないといいのだがな……」
「バブル世紀をまるでそこにいたかのような口ぶりで話していますが、斎藤司令官は何歳なんですか?」
「野暮な事は聞くものじゃないぞ月魔くん。少なくてもその時代を謳歌できた歳ではないぞ。というより、何十年前の話だと思ってるんだ?」
「……バブル、ってなんですかー?」
「「…………」」
長崎警備府。
オイゲン参謀長を筆頭とした7人グループの集団は、礼儀に則り密集して右側を歩いていた上、人の少ない中庭にいたため反感は買わなかった。というよりオイゲン参謀長は上司なので、状況を知らない人には外国人士官に警備府内部を案内しているようにも見えた。
しかし、行き交う士官や兵士らの目には、思わず一般女性士官が叫んだ「何あの超絶イケメン外国人!?」が、6人の超美人な艦娘に囲われているようにしか見えず、彼らの脳内を過った”ハーレム”という言葉は反感というより殺意を沸かした。
「な、なんででしょうか……こちらを見ている人が多いような……why……?」
「Probablyだけど、ガングートのパイプの匂いじゃないかしら? ニッポーンは基本禁煙だから。まぁGambier Bayがビクビクすることはないわ! Youは私達みたいな外様と違って、ここの艦娘なんだから! HAHAHA!」
「うぅ……案外匂いが散乱するモノなんだな……いや、そもそもこの警備府が悪いんだ。軍事拠点だろう? 軍港だろう? 何故無臭でいられるんだ!? 私の祖国など匂い以前に生ゴミが放置してあったりしたんだぞ!?」
「あぁ……」
「……ん? え、今のって嘘だよね? なんでタシュケント何も言わないの? その反応まるで本当みたいな……え?」
「あ、少なくてもスウェーデンでは大丈夫ですよプリンツさん!」
フォローをするよりロシアから話題を逸らしたゴトランドを見て、オイゲンは察する。
「それよりも、かなり賑やかな警備府ですね。鎮守府にいたときには見られなかった活気と言いますか、楽しさと言いますか……Freedomな感じがして、私は好きですね」
「Beringhamもそう思うのね! greatな警備府よねっ! Meの大好きなhamburgerが売ってるのが一番好印象だったわ!」
「今は大抵の場所で売ってたりするんだけどね……」
アイオワが所属する柱島泊地は離島のため、酒保の品揃え自体が限られている。要望が多ければ努力するが、外国人が大半を占める柱島においても、日本食がメインである。
「じゃあ二ポーンの鎮守府は全部greatね! HAHAHA!」
雑談を交えながら歩く集団は、辺りの士官に挨拶をしたり、艦娘と会えば立ち止まって話し合ったり、女性の士官に会えばベリングハム少佐にサインをもらったり連絡先を教えてもらうなど、警備府内の空気を無自覚に斡旋していた。
集団が向かう先は一応出口だが、所々立ち止まってるあまり、進めていない。
少し歩くと、前方で艤装の運用方法、海戦での戦力向上、そして着物の一番手っ取り早い着付け方について議論していたベンチを独占する集団と鉢合わせする。
「あ、オイゲンさん! こんにちわ! そちらの方々は……」
「この人達は司令官に会ってた人たちで、いま出口まで案内してるの!」
「そうなのですか……お客様がいらしたのなら、わたくしがお茶をお出ししましたのに……」
「あ、大丈夫だよ! 別にそれほど長い間いたわけじゃないし!」
「そうなのですか……」
「……ん? あなたは……」
旗風がベリングハム少佐をじっと見ていた。
「私の顔に何かついていますか?」
「い、いいえ……あぁ、思い出しました! スタイル・メンで出ていたモデルさんです!」
「え、も、モデル!? な、なんでモデルさんがここにいるのよ!? っていうか、なんで旗風知ってるの?」
「え!? い、いいえ……その……」
旗風は頬を紅潮させ、着物の裾を掴みながらモジモジ体を揺らす。
その視線の先には、ベリングハムというゲルマン系超絶イケメンの骨格きめやかな顔があった。
無意識に松風をチラチラと見てしまい、やがて視線はそちらへと向いてしまう。
「ん? どうして僕を見てるんだい旗風? そんなに見つめられると……照れちゃうじゃないか」
「あ、あの……」
「フッ……すまないイケメンさん。僕の妹は少々照れ屋でね。君みたいな端正な顔をした男性を見ると、ついつい固まってしまうんだ」
「はははっ、愛らしいお嬢さんにそのように思われるなんて男性としての光栄に思います。ありがとう、Ms.Hatakaze」
「あの……は、はい!」
ニッコリと笑うベリングハム少佐に、同じく笑顔で返す旗風。
実は、男性ファッション誌を見ていた理由も含めて、松風にかっこいい服をプレゼントしようとしたのだが、その中で偶然表紙を飾っていた彼の服が旗風にピッタリだと思い、どこで買えるか聞こうとしていたのだが……イケメンな松風のイケメンな行動を見れて役得であったため、これで良しとした。彼の身長を考えても、まず合いそうな服ではないとも思ったので、プレゼントはこの前目にしたメス男子が着ていた破けそうなぐらいピッチピチの執事服に决めた。
その一方、少佐は光栄だとは思ったが、女性に容姿を褒められる事自体に慣れている上、彼の想い人の性質上、股間とケツには響かない様子だ。
「それにしてもイケメンね。松風、タキシードでも着たら? 一緒に並んで歩いたら街の女の子斡旋するわよ多分」
「はははっ、それもいいかもしれませんね。もしMs.Matsukazeでよければ、モデルの仕事を紹介しますよ?」
「僕は女の子なんだけど……」
「「WHAT THE F○CK?」」
アイオワと少佐が思わず口をもらす。
松風は極めて中性的な顔立ちをしている。それは女性だと言えば納得はするし、普段から着こなしている服を考えれば初見からそれほど判別は難しいわけじゃない。
しかし今日は休暇。普段着れないようなチャラ男系のボーイッシュな私服を着ているので、超美少年だと勘違いするのも無理はない。
「いや凄い駆逐艦の集団に出会ってしまった。これは今日で一番貴重な体験かもしれません」
「屋上でシシード司令官に縛られていたのは無かったことにするんですか……」
「あ、私としたことが自己紹介を忘れていました……私はA.S.ベリングハムです、よろしくおねがいします」
「あ、ご丁寧にどうもありがとう!私はこの
「「「……KAMIKAZE!? WHAT THE (BEEEEEEEP)(BEEP)(BEEEEP)!!!」
その名前を聞いた途端、彼を含むアイオワとガンビアベイが放送禁止用語を連発しながら中庭にある樹木の後ろに隠れてしまう。
当然その奇行には驚いているが、同行していたタシュケントやガングートは頭をかしげている。
「Hey did you guys hear that!? Kamikaze! I thought she was a f○cking destroyer!(おい聞いたかよ!? 神風だって! 駆逐艦じゃなかったのかよ!?)」
「OMG……OMG……(嘘でしょ……こんな事って……)」
「Wait, don't tell me you didn't know that suicide attacks was here Gambier!? What Era are we in!? Hey Gambier!!(ちょっとまって、まさか自爆攻撃があったこと知らなかったわけじゃないでしょうねぇガンビア・ベイ!? いつの時代よここはァ!? ねぇガンビア・ベイ!!)」
「あ、あの……」
誤解の氷解は、過剰反応により数分ほど要した。
中庭の近くにある、使われていないロッカー室。
カミカゼ! スーパースーイサイドカミカゼアタックボンバーガールとかクソうるせぇ外国人勢が真下にある中庭から聞こえてくる。マジ卍。つかもう帰っていいからみんなのお仕事の邪魔だけはしないでお願い……。
ロッカーの中で、俺は震えていた。
斎藤大佐の都市伝説で言われていた辿り着くための鍵と、コンビニ強盗をしていたヤツの手に持っていたバイブ……なんか、共通点多すぎやしませんかね。馬鹿でも察しはつくと思うが、これはあのコンビニが、陸軍の隠し財産とやらと、何か関係あると結論付けるしかない。冷静さを欠く2つの理由としては、壮大な都市伝説だと思っていた法螺話が現実味を帯びてきたことと、それが結構近場にある事の2つだ。
近代的な軍隊の構造を守り続けなくてはならない性質上の問題で、陸軍を海軍の傀儡にしたり、解体したりすることはできないが、支配に近い事ができる以上、何らかの報復手段を持ってしかるべきだと言うことは理解できるので、都市伝説が本当だとしても、ある程度冷静でいられる。
持っていたとしても、嫌がらせ程度のことしかできないだろうけど、もしそれが海軍に発覚したら取り上げようとするはずで、もしガチであのコンビニだったら、近場にいるってことで陸軍に恨まれる可能性がある。
自分で言うのもなんだけど名前が通る方なので標的にしやすいし、暗殺……いや、アニメの世界じゃあるまいしそれはないけど、先を見越して何事にも慎重に行う必要がある。
いつも通り、俺は冷静になる。
一人が息を荒くしててもなんもならない。だから深呼吸をしなければいけない状況にある……目の前にある状況に対しても、心を落ち着かせる必要があるからだ。
財産とかなんとか、ワケわかんねぇけど、目先の問題のほうがずっと問題なんだよなぁ……今出ていったら司令官生活終わるナリ。
「涼月の胸……おっきい……」
「は? 私のも大きいでしょう?」
「た、確かにそうなんですけど……足柄さんのより涼月の方が歳が近いから、なんというか……」
「初霜? 言っていいことと悪いことがあるって、これまでの人生の中で習わなかったかしら?」
「す、すいませんでしたっ!!!」
「まぁ自分でも分かってるのよ……ベージュって結構近寄り難いのよね……はぁ〜……」
ガチで言ってはならない事を言っても寛大な心で許してくれる足柄さんマジ勝利の女神だわ。誰かもらってやれよ。
ここに至った
通話があちらの都合で切られたと思ったら突然、演習から帰ってきた艦娘たちが汗を拭くために演習場の近くにある部屋……つまり、ここに来場って次第。
ロッカーの外には色鮮やかな艦娘の制服ではなく、むしろ肌色の方が多い。
そりゃそうだ。彼女たちは体を一時的に拭いてるだから、あられもない下着姿をまるで俺に見せつけるかのように脱いで、ここにいてもおかしくない。
再度演習するための一時休息には最適な部屋は、隣の部屋にあるんだが、なぜここに……陰謀やでこれ。
ロッカーの隙間から覗いたら、自分の胸を触る初霜が見えた。二人のを見る初霜、落胆する初霜。
格差社会とは正にこの事である。
「ま、まぁまぁ! ほら! 女性の魅力は胸だけじゃないでしょう?」
そうだぞ、と俺も声を出さずに念を送る。
初霜の悩みが解決されてほしいって事もあるが、当然このままクソ長い女子トークをされては俺もここから出れないから、さっさと行ってほしいという念も入れている。
基本的に拭くのは早いし待ってればいいことだが、このままでは俺の身が持たない。また誰かから電話が来て鳴ってしまう可能性と、時雨たちがまだ俺のことを追跡しているかもしれない懸念も含めて、双方とも来ないことを願う……。
ピロロロッ!
「「「え?」」」
なんだと?