整備工作兵が提督になるまで   作:らーらん

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明石次官が、来たゾ

 

 ……あ、もしもし! ぼくのこえ……きこえますかぁ?

 ぼくぅ……いまぁ……こころのこえで、かみさまにおはなししてるとおもうんです。

 みんなのことをいつも見守ってるかみさまなら、とうぜん、ぼくのこころのこえも聞こえてるはずですよねっ!

 あのぉ……おねがいですからぁ……死んでくれませんかぁ……? 或いは、ご逝去頂いてもぉ……よろしいでしょうかぁ……?

 こんなロクでもねェ運命とか試練とか平然と投げつけてくるから、神様なんて信じる気にならねぇんだよなぁ……ロッカーの外で三人がこちらを凝視しているわよ。

 

「い、今のって……」

 

「はい……電話、のような音……」

 

「普通に誰かが置きッパにしてたんじゃないかしら?」

 

 ありがとう足柄さん! すごく真っ当かつ妥当な推測をする大人の女性に、今度の合コンに勝てるようにと、エールを一杯送ることを決めた。そのまま無視して出ていってくれ足柄さん……!

 

「なるほど……では、忘れ物箱に届けてあげましょう」

 

「それがいいわねっ」

 

 リズム良く、無慈悲に鳴り続けるスマホ音を聞きながら思った。

 

 司令官人生、終わった。

 

 ピー音と共にメッセージを……というところで、ロッカーに近づいていた涼月の整った顔が、俺の視界という画面の半分以上を掌握し、ビクビク震える司令官系男の子と下着姿の女子を対面させようとしていた、その瞬間だった。

 

『あ、こちら明石です! 警備府の回線では繋がらなかったので、こちらに連絡を入れさせていただきました! 明日のヒトキュウマルマル辺りにそっちへ向かいますので、もしよければ来着の準備をお願いします! それでは!』

 

「「「え?」」」

 

 え? と発した声の中には俺の声も入っている。

 え、明石中将来るんですか? 視察に来ること自体は知ってましたけど大分あとだったような……え、なんで突然? 抜き打ちみたいな? 

 

 俺以上に驚いている艦娘たちは、数秒間ほど固まっていた体を言葉と共に氷解させていく。

 

「あ、あの……今のって……」

 

「明石……それって、海軍次官の? と、というより誰の携帯なのかしら……?」

 

「消去法だったら宍戸司令官しかいないけど、なんでこんなロッカーに……あ、もうそろそろいかなきゃ! 二人共行くわよ! ただでさえ休息時間でもないのに演習時間の合間を借りて来てるんだから、待たせたら申し訳ないわ!」

 

「え、でも提督のお電話が……」

 

「いいえ、足柄さんの言うとおりよ涼月、行きましょう! それに、いくら彼の電話とはいえ、あの明石次官から直接連絡されるなんて気味が悪いわ! 触れぬが仏よ!」

 

「確かに……では、参りましょう」

 

 若干傷ついた初霜の言葉はさておき、三人は再び、演習場に駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 翌日の朝。

 

「という事があったのですが……なぜ、あのような所にお電話を……?」

 

「涼月、余計な詮索をするもんじゃないぞ」

 

「は、はいっ……申し訳、ありません……」

 

「……ドジっ子よろしく、あんな所に忘れ物をするなんて、司令官として恥ずかしくなっちゃうじゃないか……俺の顔を赤面させたね。いけない娘だ」

 

「あっ……!」

 

 顎クイ。

 整列する士官らが凝視する中、人生最大の危機を乗り切った俺は、司令官が持つ特有のイケメンオーラと立場上の権限を最大限に利用した行為を、この麗しい乙女にシていた。涼月も、発熱しそうな表情で頬を染める。

 

「ん〜これは美女と野獣……」

 

「は? 白露さん俺泣きますよマジでうえええええええん!!!」

 

「せめて謝るまで待ってあげて。あとダイの大人が気色悪いからやめてもらえる!?」

 

 飛鷹の罵倒は、士官と艦娘たちが規律良く立ち並ぶ警備府正面玄関の異様な空気に、再び静寂を呼び戻す。じゃれ合いながらも張り詰めた雰囲気は拭えなかった。

 旗艦クラスの三人だけでなく、参謀部から数人と、整工班から数人、憲兵隊も込みで閲兵状態にしており、明らかにVIPが通りそうな人工的な道が構築されている。

 

 小学生が見ても、あー今から偉い人がここを通るんだなーと理解できるし、この張り詰めた空気を吸えば、整列している現在の士官たちのように、汗を垂らしたくもなるだろう。実際みんな緊張している。その証拠に縦横無尽が売りの白露さんだって口数が少ない。

 

 警備府の正面に停められた三つ車。

 全部黒塗りだから正にマフィア映画そのもの。

 ドライバーである士官が真ん中の車のドアを開けて、降りてきたのは、相変わらずピンク髪が目立つ明石次官。

 ちゃんと、ありがとうございます! と言ったあとに迷惑にならない所に停めてください、と言って黒い車はパーキングロットへと姿を消した。

 

 建物の敷地内に脚を踏み入れた瞬間、俺たち全員がお固い敬礼を捧げる。

 

「わざわざ出迎えてくれるなんて、ありがとうございます! と言いたいのですが……流石にこれはちょっと恥ずかしいですね……次からはやらなくてもいいんですよ?」

 

「ハッ! 明石次官が来られるのであれば、寧ろこの程度で良かったのかと、未熟ながら不安を募らせておりました」

 

「い、いいえこんな大層なお出迎えはいいですって! 視察するだけなんですから、むしろサーって勝手に入ってサーって勝手に出ていくぐらいが丁度いいと思っていますし!」 

 

 御立場に比例しない大変謙虚な方である。

 

 そのフランクさ、そして人柄もあってか、徐々に部下たちの憂い顔が改善されていく。直接会うのは、俺以外は初対面であり、工房に着くまで肩を工事ドリルみたいにガクガクさせていたヤツも少なくない。出迎えるために整列させてたので、着く頃にはほとんど挨拶組は解散させたけど。 

 

 明石次官が来られた理由、それは彼女が言ったとおり警備府内部ーーにある新型艤装、駆逐艦メインの装備、改良弾薬など、海軍省が開発、及び実用化させたモノの視察である。

 これらは別に次官が直々にやらなくてもいいことだし、定時的に回らないといけなくても大抵は鎮守府だけ回って後は鎮守府にいる参事官とかに任せたりするのが定跡なんだがーーこの人は自分の目で見たい人なんだろう。そういう所は素直に好感触なんだけど、遠出なのによく疲れないな……多分アレだ、艦娘だから疲れないんだろう。ざっと彼女のジュールを計算しても2時間程度しか寝てないはずなのにさ。

 つまりはこういうことだ、艦娘は人間じゃねぇ。

 

 とは言っても、彼女は全ての基地を見て回るわけじゃない。流石にそんなオーバーワークはしないと思うし、俺の警備府に来た根本的な理由としては、最新型の連装砲の調子を見るためってのと、艦娘たちの意見、要望を直に取り入れるためである。

 

 俺の警備府では開港から、主に駆逐艦の新式装備などを実用し、試験する任務も受けているため、それの結果報告を見に来たと言ったところだ。

 この試験とは、開発段階において必ず行われる、作った装備をオーバーキルするレベルで試される強度チェックとは別に、実際に使ってみた時の問題点を見て、局で行われる試験、予想と比べてどれほどの差が出るかなどの研究データ集めと、装備の最終的な調整を行う為に通るプロセスである。

 

 鉄と油の匂いが立ち込める工房に足を入れる。

 同じく敬礼して整列する整工班は、美人なピンクロングを目の前にして心も股間を固くしてやがるぜ。ビビりすぎてチビらないのは褒めてやる。

 端っこの新人なんて泣きそうになってるぜ? まったく肝っ玉がなってねぇよなぁ? 俺ぐらいになると、オムツを濡らさないまま帰らせる事も可能だ。

 

「お目にかかれて光栄です。私が整工班班長を務めさせて頂いております。早速ですが指名に預かった新装備を並べさせて頂きました。どれも使用期間は三ヶ月前後でーー」

 

 ねぇ、見て、俺の班長マジでイケメンすぎるな。

 あの明石次官を目の前にしてもこの度量、そしてスラスラ概要に移って必要な情報を上げる姿勢。正に整工班の模範を体現しているダンディズム。

 

 抱かれたくないヤツいるの?

 

「ねぇ宍戸くん、キモい。顔キモい。僕が引っ叩いてあげようかっ」

 

「は? な、何がどうしたって……? べ、別に見惚れてなんか……」

 

「お兄さんのばかっ、ばかばかっ、ばかぁっ!!春雨だって桃色じゃないですかぁ……!」

 

 春雨ちゃんが後ろからパカパカ叩いてくる。

 春雨ちゃんの可愛いおててだったらまだ良かったが、俺の背中を叩いているのは小柄なお手ではなく、艤装である。両手に持った単装砲のせいで、野球のバットで背中を千本ノックされている気分だ。

 

「ということもあり、全体的に強度は上昇したのですが、メンテナンスが増えてしまう事と、それを怠る事により火力の減少しやすくなった事以外では、我々から申し上げる改善点はありません」

 

「ん〜……やっぱり資材が限られているとどうしてもだめですね……新素材の開発ともなるとまた費用がかさみますし……宍戸司令官はどう思いますか?」

 

 なるほど、元々は整工班だったから俺に振るのか。

 

 ふざけるンじゃないですよォ明石次官ッ!? 直に装備触ってねぇヤツが直接関わってるヤツら以上の回答を出せるとでもォ!?

 

「素材の有無に限らず、やはり装備の改良によって長所と短所ができてしまうのは仕方がない事だと思います。しかし資材の消費を抑える考案や、強化されても弾薬の使用頻度に影響しないのは確実に進歩している証拠です。特に12.7cm連装砲C型改二は軽量化と火力の面で成功したにも関わらず、反動を抑えているのは素晴らしいと思います。圧式駐退の改良もそうですが、ジェラルミン素材の改良だけでよくあそこまで強化できましたね?」

 

「あははっ、開発には苦労しましたよ本当に……でも、やっぱりまだ何か足らないような……んん〜〜!」

 

 一人で考え込む明石次官。

 考えるのは別にいいんだけど、あなたがいる事で少なくてもここにいる人の半数は石化しちゃうんだからさっさと視察済ませて帰ってほしいお願い。

 かくいうこの俺も、用意したオムツを変えなきゃいけない事態だけは避けたい。何か問題があれば、一番責任を追求されるのは俺なんだぞ。

 時雨ですら緊張する始末だし、旗艦クラスが工房に勢揃いするのは騒然とした光景である。

 

「えっと、夕立でしたっけ? この装備の使用はあなたがメインだと聞きましたが……」

 

「っぽい! 結構使いやすくていいっぽい!」

 

「だよね! あーでも新装備だからちょ〜っとお高め感があって、もし壊れちゃったりしたらどうしようって思うことあるかも」

 

「そう思うっぽい? でももっとこれが増えれば最高に素敵なパーティーできるっぽい!」

 

「口を慎め貴様ラァッ!! 明石次官の御前であらせられるぞォ!! ステキパーティーだがハロウィンアタマイカレだが知らぬが、この御方を何方と心得るゥ!? 警備府と白露姉妹の恥晒しめガァッ!!!」

 

「そ、その姉妹の中に当の白露が入ってるんですが……いいえ、別に敬語とか義務じゃないんですから、楽になさってくれていいんですよ? なんなら、宍戸司令官も明石にタメ口でも構いませんけど、いかがですかっ?」

 

「い、いいえ! 小官は誇り高き海軍軍人であるが故に、そのような真似は、天地神明が赦し給うたとしても、大淀総長が許しませんッ!!!」

 

「え、なんで大淀……?」

 

 突然の名前に、明石次官も、周りのみんなも少しだけ驚き、困惑していた。俺の中では多分あの人トラウマになってんだろうな。

 しかし敬語を使わないのはイケない。これは俺の言葉に終始頷いてた春雨ちゃんと時雨が証明している。夕立ちゃんは頭が幼いのかどうか知らないが、あまり敬語を使わずぽいぽい言ってる印象がある。

 それに対して美味しそうな体しやがってよぉ……白い肌に覆いかぶされた生脚、大きめに育った胸部装甲、エロい顔(直球)。こりゃ、暇がある時に分からせてやらないとなっ。

 

 明石次官は他の艦娘とも話しているが、話題の軸は装備への不満や、利便さを図るための改良案を集めている様子だが、艦娘の中にもやはり同郷のように話せる娘と緊張して言葉が出ない娘がいる。

 

 全体的に会話は20分程度で終わった。

 移動の時間を短縮する為に次々と廊下を歩いていた艦娘に声を掛けまくって、工房が明石次官との握手会みたいになっていたとはいえ、流石だなぁ……情報の飲み込みと次に移るペースがシームレスっす。

 効率良く話せたとして彼女の満足した表情が伺える。

 

「わざわざお話するためにこちらに呼び寄せてしまったのは少し忍びないんですけど……でも、そのおかげで楽ができちゃいましたっ。ありがとうございますねっ!」

 

「明石次官の為ならば、総員整列できますよ。それが、明石次官のような美人ならば、その意欲も掻き立てられるというものです」

 

「あ、あははっ、そ、そんな美人だなんて……っ」

 

「「むぅ〜〜〜!!!」」

 

 春雨ちゃんと村雨ちゃんは、彼女に対抗心を燃やしているようだ。

 時雨から始まる艦娘の俺への罵りは公然と行われるはずだが、流石にビッグネームの前ではそれも萎縮してしまうのだろうか、

 

「明石さん。この人みんなにこういう事言ってるので、あまり気にしないでもいいですよ」

 

「そ、そうなんですか……?」

 

 いや、そんなことはなかった。

 

「ははは、自分で言うのもなんですが、小官は常に人へは平等でありたいと思っています。ですので、誰かを特別扱いするのは気が引けるのですが……そんな私でも、特別扱いしてしまう人ができてしまうかも知れませんね……チラ」

 

「あ、あははっ……ま、まったくもうっ! お口がお上手なんですからっ……」

 

「ほんとですよねッ、宍戸さんにはガッカリですっ」

 

「お兄さん……口が上手いヤリ○んさんですッ」

 

「去勢エンドっぽい!」

 

「どーどー貴様ら、一つずつツッコんでやろうか? いや面倒だから総括しよう。黙りなさい貴様ラァッ!!! 俺のフランクフルト・デカマーラーが火ィ吹くぞオラァ!!!」

 

「「「きゃあー!」」」

 

「あ、あははっ……」

 

 白露さんたちマジでやめて。マジ結構偉い人の前だから。工房内の兵士たちも、班長も、明石次官までもが失笑。

 しかし、ここでも陽気な雰囲気が警備府を包み込み、整列している整工班はかなり落ち着きを取り戻してきたらしい。

 

『司令官の野郎マジ美人と仲良くしやがってクソ野郎が……俺も絶倫だったらあの野郎みたいに……!!』

 

『我らが亜威怒流、村雨チャンならまだしも、明石次官とまで繋がっているとはなッ……暗殺も止むなしか』

 

『お前ら静かにしろよ。給料さえ貰えればいいだろ? 後で脅してボーナス巻き上げれば実質警備府は俺たちの支配下に……そしたら春雨チャンは俺のおチ○ポ奴隷……グヘヘヘヘヘエッ!!』

 

 気が緩みすぎて本音が漏れて来たか? ん? 俺の抑制力舐めるなよ後で張り倒すからなお前ら。他にも『明石さんのスリットに手突っ込みたい』とか『明石次官とパコリアンナイトしたい』とか、単純に軍法会議モノだからやめろ。

 

 一通り視察を終えた明石次官が、次のステップである装備の詳細を求めてくる。

 

 装備に関しての書類は物理的な紙とパソコン内部のデータとして記録されている上、一部の人しかアクセスできない情報もあるので、そこにたどり着くには執務室、参謀長室、主計部、或いは整備工作班のオフィスのいずれかを訪れる必要がある。

 

 なので移動するみんなに伝え、敬礼されながら整工班のオフィスに着く。50mも無い距離だが、室内に移動したのは俺、村雨ちゃん、明石次官、そして班長だけである。

 艦娘たちや整工班には仕事に戻らせ、他の白露姉妹は解散させた。これ以上俺の監督不足と部下をコントロールしきれてない感を見せるのまずい。

 軍需を掌握していると言っても良いぐらいに強い影響力のある明石次官を前にして、平然といられる艦娘はただの馬鹿か、よほど肝が座ってるかのどちらかである。

 

「ここで良かったのですか? じっくりとデータを考察するに相応しい場所は多々あれど、わざわざ我々が騒音を鳴り響かせている仕事場の隣などとは……」

 

「私は元々こういう職についていたので、大丈夫ですよっ!」

 

 今も事実上足で基地を回る辺り、就いてるようなモノなんだよなぁ……それに整工班の生みの親だし、よく考えたらこの人って偉人? 

 画面の前に座ってる俺は、右側に明石次官の吐息と、前屈みなってるせいでクッキリと円を描く乳袋を感じていた。村雨ちゃんは左に寄り添い、ただ佇んでいるだけなのだが、俺の視線を察知したのか、またもやぷくりと頬を膨らませた。

 

 距離を離せないままアクセスコードをスパッと入力する。

 

「ん〜やっぱり資材の消費が激しいですね〜……」

 

「あえていつも通りに、資材の消費は原則的に他の装備を均一であると考えた上でこの数字ですが、やはりここだけは払拭できませんね。プリントアウトは一分ほどかかりますので、少々お待ち下さい」

 

「お願いします!」

 

 村雨ちゃんが印刷台の前で書類としてまとめてくれている。班長も手伝いながら、共同作業のように黄色のフォルダーへとまとめていく。

 

 つか楽しそうだなァ? ン?

 

 動くたびに揺れるイケナイ果実と、童顔でピュアで柔らかそうなポッペでニッコリ笑顔を放つ村雨ちゃん……村雨ちゃんは俺のモノだぞッ!!!

 

 渋くてシブいイケメンフェイス班長は整った前歯を見せて微笑むダンディズム……班長は俺のモンだぞッ!!!

 

 ……あれ? どっち取るの俺?

 

 まぁいいや(思考停止)、印刷にかかる時間はそれほどじゃないけど、明石次官が見ていないその合間を盗んで司令官宛のメールをチェックする。メール内にも、装備の部分的な詳細が入った情報書類があるので、それもプリンターに送る。

 個人メールじゃないので、万が一にでも邪なモノを見られる心配はない。新着5件。一気に開いて次、開いてまた次を繰り返し、メールのチェックも済ませる。

 この間、わずか5秒。

 

「け、けっこうすっ飛ばして見るんですね……」

 

 ファ!? なんでこっち向くの!? ピーピー印刷してるのそっちでしょ!?

 

「も、申し訳ありません!明石次官の目の前でまったく不躾な……!」

 

「別にいいですってっ! でも重要な案件でしたら、私に構わずじっくりと読んでくれていいんですよ? ってほら、いま新着入りましたよ! しかも重要度たっぷりのビックリマークで!」

 

 明石次官はどうやら俺に気を使ってくれているらしい。

 優しい人だなぁ……こんなのが上司になったら俺、口説いちゃうかも! つかスリットエロすぎウホォ! エロい上司には、弱みを握って執務室で執務ックスゥ!

 という要件で、一度同期の結城から警備府宛に送られて来たことがあったので、阿久根要港部全体からのメールを全て遮断した事がある。

 一日後には解除したけど、新着として来ているのが阿久根要港部の司令官からなんだよなぁ……もうやだぁ! なんでよりにも寄ってこいつなのぉ……ッッッ! 

 

 背中から100%の善意で「開けてもいいよっ」という雰囲気を出している明石次官は、下の者にとっては「早く開けろ」という威圧に変わっている事に気づいていないのだろうか? いや、絶対に気づいてない、断言できる。

 

 変なメールじゃありませんように変なメールじゃありませんように変なメールじゃありませんように変なメールじゃありませんように……!

 

「は、はははっ、そ、それでは、お言葉に甘えて開封させて頂きます。み、見た所、送り主はあの変人で名高い結城司令官のようですね! は、はは、まったくどのようなメールを送ってきたのやら……」

 

 

 

 ”宍戸元気か!? ちょっとマジな情報迅速伝達送信中〜な〜んつってHAHAHA! お前の近くの連隊長さん、会ったことがあるっしょ? あの人、陸軍の隠し財産の件でお前を尋問しようとしてるみたいだけど、もしも街で陸軍さンに会ったら、逃げて、どうぞ”

 

 

 

「「「……え?」」」

 

 

 

 WHAT   THE   F○CK?

 

 

 

 


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