うたわれるもの 別離と再会と出会いと   作:大城晃

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出会いにして再会4~エヴェンクルガの姉弟~

出会いにして再会4~エヴェンクルガの姉弟~

 

 

 

「なぁ、ウコン。なんか人数減ってないか?」

 

「もう今日中には帝都に着くからな。何人かは今日の朝早くに先触れとして先行して貰った」

 

「やっぱり、お偉いさんを連れてるとそう言うもんが必要になってくるのかねぇ。ま、そう言う事なら納得したよ」

 

 明けて翌日、野営の片付けをしてから野営地から出発し今は馬上だ。移動しながら、ウコン一行の人数が減っているように見るのが気になったのでウコンに尋ねると、そう答えが返ってきた。人数も減っている事もあるし、昨日の事もある。今日の移動で帝都に着くとの事だが気を引き締めよう。ホントはだらだらといきたいんだがね。

 

「しかし、アンちゃんも悪いな。奴らの訓練に付き合わせちまってるみたいで」

 

「そう思うなら自分を試合に誘うのをやめろ。あいつらくらいの腕ならともかく、お前とやるとなると命がいくらあっても足りん。そもそも自分はあいつ等の教官ではないぞ」

 

「まぁ、そう言いなさんな。あいつ等からの評判も上々だぞ。護りが硬く攻撃の時も堅実、少しでも隙を見せれば付け込まれる。刀を使わせても強ぇが、鉄扇を抜いた時の護りはまさに鉄壁ってな。聞いた話じゃあ連戦連勝だって話じゃねぇか。やっぱりここはあいつ等の負け分を取り返すために俺が…」

 

「断固拒否する。お前とやるのは危なすぎるって言ってるだろ。あの一回で懲りた」

 

「そう言わずによぉ、アンちゃん」

 

 ウコンとそんな風に話をしながら道中は進んでいると、前方に車輪がはまってしまったのか動けなくなっている様子の荷を積んだ荷車と女性が見えてくる。女性はこちらに気がついたようで手を振ってきた。一行の代表としてウコンが声を掛けに行く。…しかし結構な別嬪さんだな、胸も大きいし。…そう考えたところで後ろにいるクオンの方から只ならぬ圧力を感じたので、思考をそこで中断する。まぁなんだかんだ言って自分にはクオンが一番だからな、うん。美人を見かけたらついつい美惚れてしまうのは男の悲しい性なんだ大目に見てくれ。

 

「どうされたんですかい?見たところ車輪が嵌って立ち往生しているようだが」

 

「すみません、道を塞いでしまいまして。いま私の仲間が助けを呼びに行っているのですが、それでは日が暮れてしまいます。申し訳ないのですが荷車を押し出すのを少々お助け願えないでしょうか?」

 

「…そいつぁ災難だったな。よしテメエ等、荷車押し出すから何人か手伝え」

 

「応よ!」

 

「よっしゃ!任せな」

 

 ウコンの呼びかけに何人かの男たちがいそいそと溝にはまった荷車に集まっていく。美しい顔立ちの女性からの頼みだからか、皆無駄に張り切っているように思える。…あとお前ら、自分の方を見てあんたは来るなよと言わんばかりのアイコンタクトをしてくるのはやめろ。いかないから。

 

「見ず知らずの者の為に、ありがとうございます」

 

「いや、道を塞がれては仕方がない。気にするな」

 

 ウコンがそう言うと女は袖を口元にあてて上品に笑う。

 

「本当に助かります。それから厚かましくて大変申し訳ないのですが、もうひとつだけ頼んでも宜しいでしょうか?」

 

「なんでい、おぅ、言ってみな」

 

 ウコンがそう言うと女はクスリとほほ笑んだ。

 

「ああ、貴様たちの積んでる荷を置いて行ってもらおう」

 

「…ハァ?」

 

 言われた言葉にウコンは声を低くしてそう言うと、女は悪びれた様子もなく首をかしげる。というか口調変わってるな。さっきまでのは演技だったって事か。

 

「おや。聞こえなかったか?貴様らの運んでいる荷を置いて行って欲しいといったんだが」

 

 女がにやりと笑ってそう言った次の瞬間、荷にかぶせていた布が勢いよく舞い上がり、そこから幾人もの男たちが飛び出してくる。

 男たちは荷を押そうと近づいてきていた男たちをあっという間に組み伏せ、男たちの登場に驚いていたウコンも背後から近づいてきていた赤い髪の男に首に短刀を突き付けられその動きを封じられる。…しかし、ウコンがこの程度で動けないとは妙だなとは思う。しかし状況としては最悪一歩手前ってとこだな。周囲に目を走らせてみれば森から男たちが出てきていて、弓を引いていつでもこちらを狙える構えを見せており警戒せざるを得ない。

 

「ぁ……あぁ、クオンさま…」

 

「大丈夫だから…ね」

 

 後ろではルルティエが涙交じりの声で動揺しているが、それをクオンがなだめているのが聞こえる。

 

「ハ…ハク殿…」

 

 自分から少し離れた場所にいたマロロも首に短刀を当てられ、震えあがって自分の名前を呼んでいるが今はどうする事も出来ない。

 

「へぇ、やるじゃない」

 

 ウコンは不敵な態度を崩さずそう言う。声は固いように感じるが少し違和感を感じる。なんだろうか…。

 

「安心しろ。私たちの目的はその積荷だけだ。大人しくさえしていれば、命を取るような真似はせん。それとも無駄な抵抗をして、おまえの部下たちとその女たちを危険にさらすか?」

 

「……しゃぁねぇ」

 

 ウコンは女を見ながら腰の刀を外すと、それを目の前に放りだした。そして周りを視線だけで一瞥し周りにも同様にするように促す。自分もその声に合わせて馬からおり手綱だけを握った状態にした。この状況では逃げ出すのは不可能と判断できたためだ。

 

「オメェ等もだ。いいか、余計な真似はするな。大人しくしてりゃ何もしねェって言ってんだ。言われた通りにしてやろうや」

 

『………』

 

 皆がざわめきながら顔を見合わせている。しかし、この状況はどうしようもないと観念したのか、一人、また一人と武器を捨てていった。それを横目に見ながら自分の方にウコンの目の前にいた女が歩いてくるのが見える。そう言えばこの女の気配はどこかで…。ああ、昨日の奴か。こんな事になるなら騒ぎを起こしてでも捕まえておくべきだったか。女は自分の前に来ると腰の刀をさして武装の解除を求めた。…腰の鉄扇はただの采配用の道具にでも見えたようで取り上げられなかった。まぁ普通に鉄扇を武器として使う輩なんて稀…どころか自分以外に見た事がないし、外から見ればただの扇に見えなくもないからな。

 

「これは取り上げさせてもらうぞ、昨日は世話になったからな」

 

「……やっぱり、昨日の奴か」

 

 その言葉でクオン達が風呂に入っているときに近づいてきていた奴だと確信する。自分のところに来たのは昨日の意趣返しのつもりなのだろう。得意げににやりと笑う女には悪意や害意と言った物は皆無だった。自分も大人しく刀を抜きとられる。

 

「さて、おまえもだ」

 

「ひっ…マ、マママ…マロは…マロは…」

 

「そいつなら何も持ってないから、そう脅かさないでやってくれ」

 

「む、脅かしたつもりは無いのだが…、そうだな、見えるところに武器は持っていないようだし、なにより、見るからに貧弱そうで何か隠し持っていたとしても、何かできるとも思えん」

 

 女は自分から少し離れてた位置にいたマロロにも視線を向け武器を捨てるように言ったが、マロロはめちゃくちゃ動揺しているようで言葉がうまく出てこない。見かねて助け船を出したが、それで納得してくれたようだ。なんかマロロがぼろくそ言われてたが些細な問題だろう。

 

「よし、おまえたち」

 

 女がそう言うと男たちがてに縄を持って現れ、皆を後ろ手にして縛っていく。女も縄を取り出し自分に近づいてきた。

 

「よし、おまえは私自ら縛ってやる。手綱から手を離して手を後ろにやれ」

 

「自分にそう言う趣味はないんだがな…」

 

「ふふふ、大人しく縛られていろ」

 

 女は楽しそうにそう言うと手際よく自分の手首を背中で縛っていく。すると自分にだけ聞こえる声量で声をかけてきた。

 

「そのまま聞いていろ。これはあの男の仕組んだ茶番だ。さっき言ってた通りすぐに解放されるだろうから大人しくしておいてくれ。ま、私がおまえを担当したのは昨日の意趣返しだ。悪く思わんでくれ」

 

 そう言うと、女はそのまま自分を先導してウコンの傍まで連れて行き座らせる。そして、ニコリとこちらに笑みを向けると自分から離れて行った。多分、あの男と言うのはウコンの事だろう。何が目的かは知らんが、安全性はかなり増したと見ていいだろう。ま、途中から思ってたが、こいつは基本的には善人って言っていい精神構造をしてそうだから信用はできるか。…正直クオンに危害が加えられそうな状況になって大人しくしている自信は無かったから、少し安心した。それとさっきから気になっていたウコンの様子にも得心がいったな。

 

「いんや~、流石はノスリ。見事な手際じゃね~の。さすがは俺の女じゃんよ」

 

 ぱちぱちと手をたたく音と男の声が背後から聞こえたのでそちらに目を向けると、いかつい男が手を叩きつつ、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて現れた。あ、多分ウコンの目的はこいつらだわ。

 

「私はおまえの女になどなった記憶は無いがな。おまえの記憶違いじゃないか?」

 

「なんだよ連れネェなぁ。ま、今はこいつらじゃんよ」

 

 そう言ってこちらを見る賊にウコンが声をかける。

 

「テメェ等、賊か」

 

「ご名答です」

 

 ウコンの言葉に先ほどあいつを拘束した赤い髪の男が女――ノスリの傍に行きそう答える。賊の頭とみられる男はウコンの問いかけを気にした風もなく、ココポから下ろされて拘束されていたクオンとルルティエを見て、その卑下た笑みを深めると舌舐めずりした。…よし、あいつは最低でも半殺し確定だな。

 

「うほほっ、こりゃ上玉じゃねぇの。帝都にだって、こんな上玉滅多にいねぇじゃんよ。決まりじゃん、この女は俺様のもんに決定な」

 

「オイ、テメェ等。縛り上げた連中の身ぐるみ剥すの忘れんなよ」

 

「「「ヒャッハー!!」」」

 

 男の掛け声とともに、周りを取り囲んでいた連中とは別の、ガラの悪い男たちがわらわらと近寄ってくる。ルルティエは涙を浮かべながら震えるが、クオンはニコリと笑いながら口を開いた。

 

「折角だけど遠慮しとくね。どう見ても好みじゃないから」

 

「へぇ…」

 

 その言葉に、頭目と思われる男は興味深そうにクオンを見ると感嘆したように声を漏らし、それを見たクオンは不敵に笑って見せた。それを見て男は口角を釣り上げ笑みを深くする。

 

「いいじゃん、いいじゃん!気の強い女だ、ますます気に行ったぜ!お前たちは今から俺の女だぜ。たっぷりとかわいがってやるから楽しみにするじゃんよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、頭の中で何かが切れた音がしたような気がした。ああ、半殺しじゃ足りんか。あの野郎には生まれてきた事を後悔させてやらないと。

 

「頭ぁ、少しは俺たちにも分けてくださいよ」

 

「バカヤロウ!こんな上玉、指一本だって分けてやらねえよ!」

 

 ルルティエは恐怖に震える体を男の大声でビクッと跳ねさせ、クオンの名前を呼びながら身を寄せるのが見えた。ルルティエを安心させるように優しく笑ってクオンが声をかけるのが聞こえる。

 

「大丈夫。そんなに恐がらなくても大丈夫かな。きっとハクがなんとかしてくれるから」

 

 後半は自分を見ながらそう言うクオンに苦笑が漏れる。助けを求めるようにこっちを見るルルティエに笑みを返し自分は前の男に視線を向けた。その時、美しい女が二人手に入ったと大喜びしていた男に鋭い声が掛けられる。

 

「モズヌ、勝手な真似はするな。我らノスリ旅団と行動を共にするからには、我らの流儀に従ってもらう」

 

 頭目――モズヌに鋭い目を向けながらノスリが釘を刺す。その横には先ほどウコンに返事をした赤い髪の男が控えている。

 

「我らの目的は積荷のみ、それ以外には決して手を出さない、ヒトに危害は加えない…そう言っておいたはずだが?」

 

「いいじゃんよ、いいじゃんよ~。ンナ堅苦しい事言いっこ無しにして、やりたいようにヤッちまおうぜ。ぜ~んぶ俺様に任せておけってよぉ」

 

 そう言いつつモズヌはノスリの傍まで近寄ると、なれなれしく肩に手を回す。モズヌが移動している間にノスリと目があったが、その目は今は私に預けてくれと言っているような気がした。自分の気のせいかも知れんが。実際、動こうと思えば動ける。手の縛りも緩い物ですぐに抜け出せるようにしてくれているし、慣れ親しんだ武器も手元にある。先ほどこちらを狙っていた弓兵も今は降りてきているし、周りを囲んでいる連中を出し抜く自信もある。後はクオンとルルティエ、後ウコンあたりを救出できればなんとでも出来るだろう。無論、こちら側に死傷者が出るだろうが。

 

「それにちゃ~んと分かってるゼェ~。ノスリが妬いてるって事によ。いい加減素直になって俺様の 情婦おんなになっちゃいなヨ。折角、こ~んな良いもん持ってんだからヨ」

 

 そう言いながら、モズヌの指先がその豊満な胸部に伸びようとした瞬間、ノスリはその指を掴んで軽くひねった。ぽきんと、軽い音を立てながら奴の指は曲がってはいけない方向に曲げられ、モズヌは捻られた指を抑えながら悲鳴を上げてノスリから離れた。…正直胸がすっとしたぞ、ナイスだノスリ!

 

「お痛はダメよ、坊や」

 

 そう棒読みで言いながら、ノスリは痛みに悶えるモズヌを見下ろす。彼女は隣に立つ男に笑顔を向けた。

 

「どうだ、オウギ。今のはなかなかの良い女っプリじゃなかったか?」

 

「ええ、さすがは姉上。その魅力に思わずめまいを起こすところでした」

 

 パチパチと数回拍手をしながらそう言った男――オウギにノスリは機嫌を良くしたようでニコリと笑みを浮かべる。

 

「ふふふ、そうだろう、そうだろう。これでまた一歩、いい女に近付いたな!」

 

「いぎ…が、なな…何をしやがるー!」

 

 蹲っていたモズヌはそう言うと涙目で立ち上がり、ノスリに食ってかかった。…いやおまえは自業自得だろうに。ノスリの対応は腕に覚えのある女としては優しい方だと思うぞ?下手したらそのままボコボコニされてなにを切り落とされても仕方ない。いや、若干自分の願望が入ってるな、うん。あいつに酷い目に遭えっていう。

 

「無粋だな。女との戯れを、笑ってさらりと流すのが良い男と言うものだぞ」

 

「超痛いじゃんよ!こんなん流せるかー!」

 

「はぁ、やれやれ。だからお前は良い男になれんのだ」

 

「…ンだとぉー!」

 

 ノスリの物言いにキレたのかモズヌが再びノスリに手を伸ばそうとするが、その動きが止まる。理由は単純だ赤髪の男―オウギがモズヌの背後を取り、その喉元に鋭く光る刃を当てていたからだ。

 

「どうしました、続きをしないのですか?」

 

「ぐ…っ…、じょ、冗談じゃん冗談、な、なにムキになってんじゃんかよ」

 

 モズヌはそう言いながら引きつった笑みを浮かべていた、心なしか体も震えているようだ。オウギが刃を下げないでいるとノスリが気にしていないという体でオウギに声をかけた。

 

「構わんぞ。こんな場合に男のヤンチャを許してやるのもいい女の条件というものだ」 

 

「…姉上がそう言うのであれば、仕方ないですね」

 

 オウギは突き付けていた刃を下ろすと何事もなかった様にその場を離れた。いまだに喉に刃を突き付けられている心地なのかモズヌは首をさすりながら立ち上がる。刃を突き付けられたせいなのか、指の痛みのせいなのか分からないがその顔には大量の冷や汗が浮かんでいた。

 

「グ…へへっ、ま、まぁいいさ。俺は(おっぱいの)小さい娘が好きだからなぁ!。元々デカチチはあんまり好きじゃねぇンだよー!ババアになるとシオシオに萎んで垂れてくるんだからなー!!」

 

「ま、待ってくださいよ頭~」

 

 モズヌは負け惜しみのようにそう言うと、逃げるように森の方へと向かって言った。その手下だと思われる男たちも後を追っていく。その背中には汚物でも見るような女性陣の視線が突き刺さっていた。…沈黙が痛い、さすがにあそこで幼女趣味宣言は…な、幼女趣味な賊とかもう救いがないぞ。ノスリは気を取り直すように咳払いをすると、皆がそちらに注目した。

 

「ん、んっ!よ、よし運べ。…騒がせたな。では、積荷はいただいてゆくぞ。さらばだ!」

 

「それでは道中お気をつけて、皆さん」

 

 モズヌのせいで若干ぐだぐだになったが、何とか立て直し荷物を奪っていく者とは思えない言葉を残して、ノスリとオウギは茂みの奥へと姿を消した。荷物もノスリの手下たちが荷車ごと積荷を運び、姿を消していった。武器なんかはそのまま置いて行ってくれたみたいだな。

 そういえばあいつら――正確にはノスリとオウギにもウコンに会った時のような感情を感じたが、切羽詰まりすぎてそれどころじゃなかったな。しっかし、ホントに自分の前の交友関係はどうなってたんだろうなまったく。

 

 

 そノスリたちが去って数分、そろそろ良いだろうと、ウコンに目線を向け説明を求めた。

 

「で、これはどういうつもりだ?ウコン」

 

「…何の話だ?」

 

「…惚けるつもりならこちらにも考えがあるが」

 

 ここにきて惚けるか…。今の自分はクオンに危害を加えられそうになって心に余裕がないんだよ、あんまりふざけていると…な?建前はどうあれ、ルルティエを――クジュウリの姫様を危険にさらしたっていう事実はあるんだ。やりたくは無いが最悪お前の首が飛ぶぞ?そう思いながら少し怒気を込めて奴を見ると観念したように肩をすくめる。

 

「はぁ、アンちゃんは誤魔化せなかったか。さすがに良い目をしてやがる。よっと」

 

 話す気になったようだ。ウコンが体に力を入れると手を縛っていた縄が簡単に千切れ、ウコンは自由になり立ち上がる。後ろでマロロがひょえぇぇ!?とか叫んでいるが気にしない。自分も縄を外しクオンの方に目を向けた。

 

「よいしょっと」

 

 目をむけるとクオンは掛け声と一緒に立ちあがっているところだった。クオンを縛っていた縄は、それと同時にスルリと解け地面に落ちる。自分とウコンもそれを見て立ち上がる。ウコンは振り返って縛られている皆を見ると口を開いた。

 

「お察しの通り、こいつは謀だ。あの賊どもをぶっ潰すためのな」

 

「おじゃ!おじゃぁあ!?」

 

「情報は正確にな、ウコン。後にきた賊たち―あの幼女趣味の変態とその一味を、だろ?最初の奴らはお前の協力者ってとこか?」

 

 ウコンの発言に訂正を入れるように要求する。しかしマロは知らされていなかったか。…まぁ、あいつが知っていて普通にできるか、というと無理だろうから妥当な判断だな。

 

「あー、アンちゃんその通りなんだがあまり他言は…」

 

「わかっているさ。だがうちのお姫様はそれじゃ納得しないぞ?もちろん自分もな」

 

 そう言って話すと自分は後ろを向きクオンを出迎える。クオンは自身が巻き込まれた事はどうでもいいんだろうが、自分と初めての友達であるルルティエを巻き込まれた事には腹にすえかねているのだろう。正直この威圧感を正面から受けるウコンには同情を禁じ得ない…と言いたいところだが、自分もクオンとルルティエを巻き込んだ事については腹にすえかねているのだ。よって、同情の余地は無い。ウコンの前へと歩いて行くクオンに、自分も笑顔で並ぶ。もちろんクオンも満面の笑顔だ。…もちろん目は笑っていないが。

 

「ウコン。もちろん説明、してくれるよね?」

 

「お、おう」

 

 冷汗を流して頬を引きつらせるウコンに、逃がさないぞという意味を込め自分も笑みを深めた。

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