連続投稿分1/6
帝都観光~飴屋の爺さんと義妹と~
「フォウ」
動物に頬を舐められたような感覚に意識が覚醒する。
「あ、目が覚めたハク?」
目を開けるとクオンの声が聞こえたのでそちらを見る。すると髪をしっとりと濡らしたクオンが浴衣姿で座っているのが見える。あんまりにも可愛かったためそのまま起きて歩いて行きクオンを軽く抱きしめた。抱擁を解くとクオンは目を潤ませていて、自分はそのままその唇に…
「フォウ!フォ~!フォウ…」
…フォウの鳴き声に我に返った。クオンも同じようで苦笑をこぼし、軽くキスをしてそのまま離れる。しっかしさっきのフォウの声“朝から!何をさかってるんだ!まったく…”的な感じに聞こえたんだが気のせいかね…うん、気のせいだな。
とりあえず気を取り直して、お互い浴衣から普段着に着替える。ちょっと待ってるかなと言って部屋を出たクオンを見送りつつ自分は座布団に腰を下ろした。さて、今日は何するかね。仕事を探さにゃならんが、ルルティエに誘われていた帝都観光も捨てがたい。そう思いながら自分の膝の上に乗ってきたフォウを撫でる。ホントにふっわふわだなこいつの毛並みは。自分の撫で方が気に行ったのかフォウも気持ちよさそうにしていた。そういや 馬あいつもブラッシングしてやらんとな十日ほどはお世話になっているわけだし。そんな事をつらつらと考えていると、料理の乗った盆を持ったクオンが戻って、続いて同じものを持った女子衆が入ってくる。どうやらクオンは朝食をとって来てくれたらしい。女子衆は盆を置くと軽く頭を下げて部屋を出て行った。
「じゃ、食べようか。今日はネコネが帝都を案内してくれるらしいから、この後ルルティエと合流して帝都巡りかな」
「ほう、ネコネが案内してくれるのか。それにしても仲好くなれたみたいで何よりだ」
「うん。ネコネはとってもいい子かな。ハクも可愛いからっていじめたらだめなんだからね?」
「はいはい。いいからとっとと食っちまおう。クオンの料理が冷める」
それにクオンはうんと返事をした後、首をひねる。どうかしたんだろうか?
「ねぇ、ハク。今日の朝食は私が作ったなんて言ったかな?」
「いや、言ってないが。かま掛けただけだよ。大体匂いで判断したがやっぱりクオンの料理だったか。いただきます。…うん、うまい」
自分としてもなんでわかるのか不思議だがわかる物は仕方ないだろう。嬉しそうに、しかし悔しそうに、ビックリさせようと思ったのにと言うクオンを愛でながら、穏やかに朝の時間は過ぎて行った。
朝食も食べてひと段落したころ、クオンと共に部屋を出てルルティエのもとに向かう。フォウは定位置の自分の肩の上だ。ルルティエの部屋からは楽しそうに話す声が漏れ出てきていて少し遅れたかと思いながら部屋の外から声をかけた。
「すまん、自分とクオンだ。入っても大丈夫か?」
「あ、ハクさま、クオンさまどうぞ」
「あ、おはようございますです。ハクさん、クオンさん」
部屋には案の定ネコネが居て、少し待たせてしまったみたいだ。
「すまん、少し待たせたみたいだな」
「いえ、わたしも今来たところですので、それほど待ってはいないのです。それにしてもクオンさんの言っていたハクさんと恋人だというのはホントだったですね」
ネコネが自分とクオン――正確にはクオンに抱きかかえられた自分の腕とクオンを見ながら、微笑んでそう言う。少し恥ずかしいのだがこれくらいは甘んじて受けるか。しかし自分に対して好意的なネコネに違和感を感じるのだが何故だろうか?あと脛がむずむずする。これはなんだ。
ネコネは自分の様子には気がつかなかったようで自分の肩にいるフォウに目を向ける。
「ところでその肩の…見た事のない動物なのですがハクさんが飼っているですか?」
「ああ、帝都に来る途中で妙に懐かれちまってな。どうやっても離れようとしないから仕方なく連れてきた。名前はフォウだ」
「へぇ、フォウさんですか。かわいいですね。あ…」
ネコネが聞いてきたので、そうフォウを紹介した。ネコネも動物は好きらしく手を伸ばしてきたのだが、フォウは逃げて自分の反対側の肩に移動する。
「すまん。こいつ自分とクオン以外に懐かなくてな。ウコンはおろかルルティエにも懐かなかったから相当だと思うぞ」
「うう、そう言う事なら仕方ないのです。…さて、気を取り直して、ハクさんとクオンさんも来た事ですし、早速出発するです」
ネコネはフォウに避けられちょっと落ち込んだが、気を取り直してそう言い、帝都観光に出発する事になったのだった。
ネコネの案内で帝都の街を歩く。クオンは帝都の広さに感嘆の声を漏らし、ルルティエはあまりのヒトの多さに目を白黒させていた。ネコネの帝都や帝にまつわる眉つばのような話を聞きながらも歩みを進めると都をまたぐように流れている川の傍に出た。しかし、帝の話は一晩で橋を架けたとか、ヤマト成立時から生きているとか、本当に眉唾な話ばっかりだな。
「これが、オムチャッコ川なのですよ」
そう言うネコネの声を聞きながら自分は河の方に目を向ける。大小様々な船が河を行き来し、水夫の威勢のいい声がそこらじゅうから聞こえてきていた。クオンとルルティエもそれを穏やかに眺めている。ネコネの説明をBGMにしばらく河を眺めていたのだった。
「それで、次はどこに連れて行ってくれるんだ」
「さらに南に下って門までいくです」
そうネコネはにこやかに言って歩き出す。自分たちもそれに続くのだった。そのまま門へといき、その大きさに驚いた。それ以上に驚いたのは、ウィツァルネミテアを彷彿させる像――自分が何度も助けられ、最後には塩となって消える原因となった巨大な化け物。それを見てオシュトルの仮面が思い出された。それを見たクオンが悲しそうな顔をしたのに気がついて手をぎゅっと握ってやる。自分はここにいる。絶対にクオンから二度と離れない、そう思いを込めて。するとフォウが自分たちのそんな空気を感じ取ったのか甘えるように肩の上ですり寄ってきたので、二人でフォウに大丈夫と言った後、礼を言う。自分たちの前で楽しそうに話すルルティエとネコネを見ながら、安心させるようにクオンの手を優しく握った。
ネコネのそろそろ昼時だという言葉に促され、露店がずらりとが並ぶ一角にやってきた。そこらじゅうから流れてくる匂いが食欲をそそる。皆とりあえず歩き通しで疲れているだろうと思い、ネコネのお勧めの飲み物を三つ買った。今日のお礼も兼ねて代金はクオンと自分で出す。とりあえずは今日一番世話になっているネコネに自分が渡し、ルルティエにはクオンが渡す。
「あ、ありがとうなのです、ハクさん」
「ありがとうございます。クオンさま」
「今日のお礼には足りんだろうが、自分達からの気持ちだ。遠慮せず飲んでくれ」
「うん、という事で今日のお昼ごはんは私たちで持つよ」
「で、でもわたしは何もしていないですし…」
「帝都巡りに誘ってくれたじゃない。そのおかげで今日は楽しめてるんだからそのお礼、ね?」
ルルティエも頷いてくれた事だし、食べ歩きといきますか。そう思っているとクオンが飲み物に口をつけて美味しいかなと言いながら自分にも進めてくるのでそれを飲む。間接キスだが自分もクオンも全く気にしない。ネコネはニコニコしながら本当に仲良しなのですねと言い、ルルティエは顔を真っ赤にしながら顔を手で隠していた。…ルルティエ、指の間からがん見してるだろそれ。そんなこんなでルルティエも年頃なんだよなと思った一幕だった。
その後はそのまま露店巡りだ。クオンがおいしいと言ったヨルクルという料理を食べたり(酸っぱかった。変な顔をしていたようで三人に笑われた)、シャッホロという国の伝統料理や、ナコクという国の家庭料理を食べたりした。中でもネコネの故郷だというエンナカムイの料理は素朴な味ながらなんだか懐かしく一番箸がすすんだ。ネコネは故郷の味を褒められてまんざらでもなさそうだった。ちなみにフォウにはうまそうな果実を見つくろってもらっていくつかを与えた。
「ふぅ、なんやかんやで結構食ったな」
「ちょっと喉が乾いちゃったね。一服しながら一休みしたいかも」
「わたしも久しぶりに故郷の料理が食べられて嬉しかったのです」
「確かに少し食べ過ぎたかもしれないです」
のほほんとしながら道を進む。するとルルティエが何かを見つけたのか足を止めた。ルルティエの目線の先にあるのは絵巻物や書冊を扱う店の存在する通りのようだった。なんだか目に見える範囲にいるのが女性だけなのが気になるが…。
「?どうした、ルルティエ」
「あ、あのっ――そ、その…少し見てきてもいいでしょうか…?」
「何か買いたい書物でもあるのか?」
「あ、…はい。…そんな…感じです。ちょっといってきますね」
ルルティエはそう言うと店の方に駆けて行った。…ルルティエが入っていくときに見えた、オシュトルと強面の男が絡み合っている絵は見なかった事にしよう。というか文化は人の時代と比べて未発達に見えるのに、そういう方面にだけ発展しているのはどうなのだろうかと思った自分は間違っていないはずだ。
残された自分達は、すぐそこに見える茶屋で待ってようと話す。そちらに向かおうとすると、自分は小路から出てきた男とぶつかってしまい、男が手にした包みから紙の束が零れ落ちてしまった。フォウはびっくりしたようでクオンの肩に飛び移ったようだ。
「っと、すまない。手伝おう」
「ああ、助かります」
自分はすぐに謝ると、散らばった紙を拾い集める。拾い集めている紙に書かれている文章が目に入り一瞬固まるが、気にしない事にした。全部が零れ落ちたわけではなかった為、割とすぐに拾い集め終わり、男に渡した。
「あ、こちらこそ失礼しました。私も前を見ていなかったのでお互い様です」
「これで、全部か?」
渡す時に男の顔が目に入って少し驚く。自分は多分前はこいつと敵対していた、それが何故か直感的に分かったからだ。…多分態度には出ていないと思う。
「ああ、ありがとうございます。すいません、急いでいますので私はこの辺で。ネコネさん、お兄様によろしくお伝えください」
「はぁ」
「それでは、失礼します。縁があればまたお会いしましょう」
男はウコンの知り合いのようでネコネにそう言って去って行った。ネコネは心当たりがあるのかないのか微妙な表情をしている。…いやあれは心当たりはあるけど、ちょっと嫌だな位の感じか。もしやネコネは知っているのだろうか?奴が男の友情(かなりマイルドな表現)を描くのを趣味、もしくは仕事にしている事を。クオンは自分と同じような事を男から感じたのか表情が少しだけ硬い。…なんか微妙な沈黙が続くがルルティエが店から出てきたので、切り替えてその場を後にする。
人通りの多い屋台通りをはぐれない様に歩く。自分の腕に抱きつくクオンが飴細工の屋台を見つけたようで、そちらによる事にした。屋台には赤青黄色と様々な飴細工が並べられており、女性陣は皆一様に目を輝かせていた。確かに凄い技術だな。
屋台の主だろう、好々爺然とした爺さんがこちらに気がついたようで近づいてくる。なんか懐かしい感じがするが、似たような人に会ったことがあるだろうか?
爺さんは美少女三人+可愛い小動物という事で気を良くしたのか、にこやかに飾っている飴を四つ取って自分たちにそれぞれ渡してきた。
「おまえさんは、花のように華やかな娘さんじゃな。では、花の飴がよかろう」
「あはは、ありがとう。お上手かな」
爺さんの言葉によくわかっているじゃないかと頷きながら、満更でもなさそうなクオンを見る。うん、クオンにはやっぱり花が似合うな。
「そこのかわいらしいお嬢さんには、この小鳥なんかがよかろうて」
「可愛い…まだココポが雛だったころみたい…食べるのがもったいないくらい」
ルルティエには小鳥か、良いチョイスだ。しかし今では突然変異種としか思えない巨体のココポにもそんな時代があったんだな。いや当り前ではあるんだが。
「最後に、とびきり可愛らしいお嬢ちゃんには…うむ、これなんてどうかの?」
爺さんが差し出した飴はクオンとルルティエの飴に比べ一回り大きいものだった。さすがにネコネも躊躇って受取ろうとはしない。
「お嬢ちゃんには初めて会った気がせんのでな。ほらおまけじゃ」
「ですが…」
「なに、全部値段は変わらんし、構わん構わん」
爺さんはそう言うとネコネに親しげに目配せする。ネコネに似たお孫さんでもいるのかね、この爺さんは。ネコネはなかなか受取ろうとしないが折角の好意だ、受け取ってやったらいいさ。
「ネコネ、ヒトの好意は素直に受け取っとけ。な、爺さん」
「うむ、そこの兄さんの言う通りじゃわい」
「ハクさん…」
「な?」
「…はい、なのです」
自分の後押しに頷いたネコネは恐る恐る飴を受け取って、小さくお礼を言う。その様が可愛くって、ついつい頭を撫でてしまった。するとネコネは拒絶こそしなかったが、恥ずかしかったのかそっぽを向いてしまった。爺さんが驚いたようにこっちを見てたがなんだったんだろうな?爺さんは何事も無かった様に表情を戻すと、自分にも飴を差し出してくる。あまりに自然な動きだったのでつい受取ってしまったが…。
「そして、おまえさんにはこれじゃ」
「ん、ああ、ありがとう…って爺さん、なんだこれは?」
「ワシの渾身の労作ギギリ飴じゃ」
うん、確かによくできている。確かによくできているが…リアルすぎる。これはむしろ食欲を根こそぎそぎ落とすかのような見た目だ。まぁ貰った物に文句をつけるのもあれかと思い頭部分から齧りつく。…って
「まずっ!ていうか苦いぞ。これは本当に飴か!?」
「うむ、ギギリ味じゃな。いや苦節数年、この味を出すのは苦労した」
「…めちゃくちゃ無駄な努力だな」
良い笑顔の爺さんに半眼を向ける。多分食べるとは思っていなかったのか最初は驚いたような顔をしていたが、いまはしてやったりって顔だ。
「うむ、こんな別嬪さんばかり連れている男にはこれ以外くれてやるの物はないわい。と、これはおまけじゃ。娘さんの肩にいる小動物にでも食わせてやるが良い」
うん、なんかもう諦めたわ。クオン達も苦笑いだ。爺さんがフォウ用にと飴をくれたので与えてやる事にする。一応植物由来の物だし問題は無いだろう。あんまりやりすぎるとダメだろうがな。自分がフォウに飴を与えているのをみてネコネがちょっと羨ましそうだ。
「フォウ!フォフォフォフォ~ウ!」
フォウは美味かったようでめちゃくちゃ喜んでいる、出会ってから今までで一番渾身の鳴き声だった。そんな風にしていると通りががやがやと騒がしくなる。なんだろうと思っていると、人々が通りの中心を開けるように道の端によって行った。何が起きているのかわからずに周りを見渡すがクオンとルルティエも同じようだ。ネコネも判っていないようで首を傾げていた。
「おお、オシュトル様だ…」
「オシュトル様…」
「おしゅとるさまだ~!」
周りから聞こえ始める声に通りの向こうに目を向けると、兵と仮面をつけた男が馬に乗りこちらに歩いてきているのが見えた。
「右近衛大将オシュトル…」
クオンのつぶやきを聞きながら本当に人気者なんだなと思う。周囲からはひそひそという風であるが乙女たちの黄色い歓声が聞こえ、民達の視線には畏れ、憧れ、親しみ、そして何より信頼が込められているようで、自分はほぅと感嘆のため息を漏らした。
「文武両道、清廉潔白、いつも民の事を考えてくれる、大変素晴らしい御方じゃよ。この帝都で平穏な暮らしができるのもひとえに両近衛大将のオシュトル様とミカヅチ様のお陰じゃな」
「へぇ…そうなんだ」
そう言いながらもクオンもルルティエもオシュトルの事を目で追う。ネコネはネコネでオシュトルに美惚れているようだし、これが右近衛大将の魅力か、そう思いながらオシュトルを見送る。
するとオシュトルが束の間立ち止まり、こちらに視線をやった後、微笑を浮かべるとそのまま歩いて行った。ウコンとも上司部下の関係なわけだしネコネの事も知っていて可愛がっているのだろうか。驚いたように固まっているネコネの頭に手をやり優しく撫でると、嫌がっているわけでは無いようだが、照れくさかったようで自分の脛を蹴ってくる。
「いて、痛いって、ネコネすまんかった」
「…ふん、分かればいいのです。でも、嫌ではなかったのです。ハクさんが子供扱いするからなのです」
顔を赤くしてそう言うネコネに微笑ましさを感じる。脛に感じる痛みがなんだか懐かしい。…なんだろうな、この感情は。自分に妹はいないが、妹がいたのならこんな子だったら良いなと思う。もしかしたら前の時、自分とネコネは兄弟のように接していたのかもしれんな。
「もう、ハクったら。ネコネが可愛いからってお兄さんぶるからかな。確かにネコネみたいな子が妹だったらな、とは思うけどね」
「わたしもクオンさんみたいな姉がだったら大歓迎なのです」
「う~ん。…それなら、本当に呼んでみる?」
「えっと、クオンさん…」
確かにクオンは一人っ子だし、妹という物にあこがれがあるのだろう。それはネコネも同様なんだろうな、ウコンという兄はいるが姉はいないみたいだし。さて、どうなるか…
「どうかな?」
「えっと、その……あ、姉さま?」
「うん、ネコネ!これで私たちは義姉妹かな」
クオンの嬉しそうな声とネコネの照れくさそうな声、でもなんだか二人とも嬉しそうで頬が緩んだ。ルルティエも嬉しそうに笑っている。笑いあうクオンがなにかネコネに耳打ちをすると、ネコネが顔を赤くしてこっちを見てから近づいてくる。なんだ…?
「…えっと、ハクさんは姉様の恋人ですから、特別に、そう特別に…ハク
「えっと、無理に呼ばなくてもいいんだぞ」
「…ハクさんが呼ばれたくないのならそうするですが?」
「…フォウ」
ネコネに無理をして言っているんじゃないかと言ってみると、少しだけ悲しそうな顔をしてそう聞いてくる。うん、呼んでくれるなら自分もそっちの方が嬉しいのだし、ネコネが無理をしていないのであれば大歓迎だ。あとフォウ、その呆れたような鳴き声はなんだ。
「いや、そんなことはないさ。自分も可愛い妹が出来て嬉しいよ、ネコネ」
自分が本心からそう言うと、安堵のため息を吐いた後、はっとした顔をして、ネコネは上目づかいで自分を睨みつけて口を開く。
「わたしの 兄さまには全然及ばないのです。姉様の恋人だから、しかたなく呼ぶだけなのです…だから勘違いしないでほしいですハク兄さま」
「自分がウコンに敵うわけないだろうが。ま、それでもありがとなネコネ」
ネコネはその言葉を聞くとプィッと顔をそむけて、ほら次に行くのですと言って歩いて行く。ルルティエはそれを追いかけて、自分とクオンは新しい妹が出来た事を嬉しく思いながら笑顔を交わすのだった。そしてネコネに追いつくと、その手を左右から取る。ネコネは嫌がらなかった。その顔には戸惑いや嬉しさや恥ずかしさはあったが後ろ向きな感情は見えなかった。
その後混じりたそうにしていたルルティエの手もクオンが取って、しばらく四人で手を繋いで帝都の街を歩いたのだった。その時フォウがネコネと手を繋いでる方の肩にいるのが印象的だった。こいつのヒト嫌い?もいつかマシになると良いよな。