うたわれるもの 別離と再会と出会いと   作:大城晃

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よろしくお願いします。

一話とプロローグを間違えて投稿してしまっていたようです。
この話の前にプロローグを追加していますのでよければそちらからご覧ください。


偽りの仮面 始まりの村編
始まりと再会~時を駆ける二人~


始まりと再会~時を駆ける二人~

 

 

 

「……ここは」

 

 目を覚ますとカプセルのようなものに寝ていた。とりあえず、おかしいと思う。なぜなら自分が最後に寝たのは草原だったはずなのだから。しかもこのカプセルは自分がコールドスリープされた時の物と同型のもののようだ。寝ている間にここへ放り込まれた?いや、あり得ない。こんなものを扱えるヒトはいまはないはずだし、そもそも大神となった自分が許可しない限りヒトが自分の姿を見ることは不可能なはずだ。

 

「ま、蓋も開いてるし、とりあえず出るかね」

 

 カプセルをでてみて自分の格好に気付いた。昔自分がコールドスリープされたときに着ていた患者用の手術着と同じような物のようだ。訳がわからない状況についつい顔に手を伸ばした時に気がついた。あるべきものがないことに。

 

「……仮面が無い?」

 

 そう呟いた時、この部屋のドアが開いた音がする。そちらに目を向けると――愛しい、もう一度だけでも会いたいと願った……本当はずっと一緒にいたいと思っていた彼女の姿があった。

 

「クオン……!」「……ハク!」

 

 久々に会ったはずなのに彼女の姿は最後に会ったときと左程変わっていない。……いや、むしろ若返ってないか?具体的に言うと初めて会った時ぐらいには。そうこう考えているうちにクオンが近づいてきている。目に涙をいっぱいに溜めて。

 

 それを見たらもう限界だった。近づいてきたクオンを力いっぱい抱きしめる。クオンはびっくりしたようで少しだけ体を硬直させたが、すぐに力を抜いて自分の体に腕をまわし、しっかりと抱きしめ返してきた。

 

 大神となった事でクオンとずっと一緒にいることは無理だと……正確には彼女の幸せを願うならば一緒にいてはいけないと思っていた。だから一度だけ会った以降は会いに行かなかった。行ったら我慢できずに抱きしめてしまうとわかっていたからだ……ちょうど今のように。

 

 少し力を緩めると、クオンが顔を上げる。自分はそれに吸い込まれるようにして……彼女に唇を重ねた。

 

「愛している。クオン」

 

 自然と言葉が出てきた。夢でもいい、今はクオンの事だけ、クオンの温もりだけを感じていたい。そう思いクオンをきつく抱きしめる。

 

「……うん、私も愛してるかな、ハク。それと、もう絶対に離さないんだから」

 

 クオンのそんな言葉を聞きながら、もう離さないとでも言うように、自分たちは長い空白の時間を少しでも埋めるように……長い間抱きしめあった。

 

 

 

SIDE クオン

 

 

 目が覚める。最近は眠るたびに次は目が覚めないんじゃないかと思ってしまうのだが、なかなかに私はしぶといようだ。まぁハクを捕まえるまでは死ぬ気はないのだが。しかし昨夜はかなり危なかったと思うのだが体の調子がかなり良い。まるで……

 

「まるで若返ったみたいかな……っつ!え、うそ――」

 

 自分の声に驚いて、姿見を探す。見つけた姿見に映っていたには……

 

「……本当に若返ってるのは予想外かな」

 

 15歳、ハクと出会ったころの自分の姿だった。確かに自分はある時から容姿に変化は無くなったが体は衰え続けていた。声を出すのも一苦労でかなりかすれた物になっていたはずだ。そこで初めて周りの状況に気がつく。今いるのは私が昔使っていたテントの中だ。

 

「でも、なんで――っ!」

 

 急に頭痛がしたかと思うと、頭の中に情報が浮かんでいく。ヤマトを見てみたくて家出、今いるのはクジュウリの國のシシリ州、遺跡を調査、遺跡近くでテントを張って一泊、今日は遺跡調査の予定。そこまで 思い出して……気がつく。今日は私がハクを見つけた日なんだということに。

 ……何にも考えらられなくなってテントから飛び出す。そして気がつけば遺跡の中、ハクを見つけた部屋の前にいた。頭では分かっているのだ。もし遺跡で彼を見つけたとしても、それはハクではないとういうことは……それでも彼の顔を見たかった。

 

 意を決して部屋へと足を踏み入れる。

 

 部屋に入ると、ヒトがいるようだった。それは私が恋焦がれていたヒト、愛しくて恋しくてたまらなかった、いつだって会いたくて仕方なかった、私が生涯をかけて探し続けたヒト……ハクだった。

 

「……ハク!」「クオン……!」

 

 私がハクの名前を呼ぶと同時に、ハクが私の名前を呼ぶ。自然と目に涙がたまっていた。

 

 彼を探しまわって、でももうきっと会うことは叶わないと、心のどこかで思っていた。その彼が、ハクが目の前にいる。初めて会ったときと同じ姿で。

 無意識のうちにハクに近づく。一歩一歩、確かめるように、彼をまた見失わないように。そしてハクの前に着いたその瞬間、抱きしめられた。

 

 びっくりして力が入る。でもハクの温もりに安心して力を抜き私も抱きしめ返した。

 

 ハクの力が緩んでどうしたんだろうと思いながら顔を上げる。そして近づいてくるハクの顔に私はそっと目を閉じた。

 

 ハクの熱が唇から伝わってくる。もうこれ以上ないってくらいのとてつもない幸福感を感じる。

 

 そう思ったんだよ?でもその後の言葉でもっと幸せになれた。

 

「愛している。クオン」

 

 ハクはそう言って、また強く抱きしめてくる。

 前はびっくりしてちゃんと言葉にして返せなかったから、今回はちゃんと返そう。私の言葉でハクにちゃんと伝えたいから。

 

「……うん、私も愛してるかな、ハク。それと、もう絶対に離さないんだから」

 

 そういって、愛しい人を強く抱きしめ返した。

 

 ハクの熱を感じながらもう離さない、とでも言うように、私たちは長い空白の時間を少しでも埋めるように……長い間抱きしめあった。


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