下水道の戦い~愛の逃避行~
その夜、帝都を流れる下水道を脱出路として使う計画を立て、皆と共にユゥリを連れて歩く。……もちろんアトゥイもついて来ていた。そういえば下水に行くというのを理解していたのか、フォウは付いてこなかったな。
「……本当について来たのです」
「まぁ、そう言ってやるな。確かに腕は立つようだし、動機は不純だがやる気もあるようだしな。っと、ネコネ、暗いから足元気をつけろよ」
そう言いつつ歩いているとネコネが躓いてバランスを崩したので支えてやる。まぁ、自分としても言いたい事が無いわけではないが、それについては色々と諦めた。
「あ、ありがとなのです。ハク兄さまに姉さまがそう言うんでしたら本当に腕は経つのでしょうが……なんだか、あの様子を見ているとどうしても不安が……」
「……なにかあっても自分とクオンで何とかするさ」
ネコネの言葉にユゥリに話しかけるアトゥイを見ながらそう返す。正直自分も同じような不安を抱えているから大丈夫とは口が裂けても言えなかった。
「この前言ってた話を聞かせてって押しかけてきてそれを振り払うためについ……」
「まぁ、過ぎた事はどうしようもないさ。実際人数不足なのはあるし、アトゥイが加わってくれると助かるのも事実だしな」
「ありがとう、ハク」
ネコネと話していた自分に近づいて来てそう言ってくるクオンに気にするなと返し、少ししょげた様子のクオンの頭を軽く撫でた。正直なところ人数不足だったのは確かだし、前向きに考える事にする。
「安心してな、ユゥリはん。ユゥリはんはウチが絶対に護るぇ」
「あ……ありがとうございます……ですが、その……歩きづらいのですが……」
前向きに……
「大丈夫やぇ。こうしてウチが支えてあげるし」
前向きに………やっかいな娘を仲間に加えてしまった気がするな、やっぱり。心の中でそう呟きながら下水道横の通路を歩いていく。今更後悔しても仕方ないしフォローは自分とクオンでやればいいさ。…正直そう思わないとやってられん。
「それにしても、この臭いはきついですね」
「下水道なのだから仕方がないのです。人目につかずに帝都を出るにはここを使うのが一番なのですよ」
「ネコネの言うとおりだな。それにキウル、将来戦場に出た時もっと劣悪な環境で戦わなければならない事もあるかもしれんし、今回のように下水道を通らんといけない事もあるかもしれんぞ?その練習ができたとでも思っておけ」
「ハクさん……そうですね、そう思う事にします」
流石にこの臭いはきついのかそうぼやくキウルをそう言って宥める。キウルも自分の言う事は素直に聞いてくれるしとりあえずは納得してくれたようだ。正直な話この下の汚水道を通るよりかは万倍マシなのだ。我慢するしかあるまい。
「ひぅ――!」
「っと、大丈夫か?そっちは危ないからもう少しこっちに来た方が良い」
ルルティエがネズミの声に驚いて声を上げる。流石にこの環境は辛いか。ルルティエが歩いていたのは下水道に近い側だった為、少し自分側に寄るように言うとおずおずといった感じに近づいてきた。それを見て何を思ったのかアトゥイが茶番を繰り広げたが無視だ無視。
そのまま通路を進む皆はあまり口は開かないが若干一名は例外だ。
「なぁなぁユゥリはんはこのあとどうするん?」
「え、この後ですか?どうすると言われましても、都から離れるのですが」
「え、そうなんけ?」
「ええ、都の外で別の護衛の方とすぐに合流する手筈になっていまして、そのまますぐに」
はぁ、依頼の途中だってのに約一名めちゃくちゃ緩んでいるな。あとなんか視線を感じるが無視だ、無視。
「それがどうかしましたか?」
「そ、それは大変やね」
「ネコネ、この経路なら追手に追いつかれる可能性は低いんだよな?」
なんかまたアトゥイの視線を感じるが気にしない。ネコネは訝しげにしているが一応確認という奴だ。この狭い通路での戦闘なんて洒落にならんからな。それになんか引っかかる物があるんだよな。
「大丈夫だと思うですよ、ハク兄さま。目的地まで誰にも見つからないように最善の経路を計算したですし」
「うん、ここまで追手の姿もないし、私としても見つかる可能性は低いと思うかな。ここまでの予測もできるなんて、やっぱりネコネはすごいな」
「それほどでも…ないです」
「謙遜しなくてもいいのに。ネコやんはすごい。うん、ウチが保証するぇ」
そう言った後、ネコネはクオンとアトゥイに褒められて恥ずかしそうにしていた。確かにネコネの言うとおり心配する必要はない気もする。…待てよ?敵も貴族の関係者という事は下水道の地図を入手できている可能性はある。そしてネコネが言っていたようにヒトに見られずに帝都から出るにはこの下水道を通るのが一番だ。敵さんもそれは判ってるはず。そして向こうは結構な大所帯でもおかしくは無いって事は……。
「ネコネ、下水道の出口の位置についての情報は誰でも入手が可能か?」
「?たぶんできると思うですよ。時間はかかるですがやろうと思えば子供でも把握できると思うのです」
「そうか……。皆、ここの出口付近か出口から出た後で襲撃があるかもしれん、気を引き締めておいてくれ」
ネコネに下水道の出口を誰でも知ることができると聞いて警戒を一段階上げる。皆を引きとめると自分の方に注意を向けさせそう言う。皆、自分が何故そう言ったのか分からないのか思案顔だな。
「どういうことですか、ハクさん」
「ユゥリはオシュトル様の所に匿われていたようだが、まだ帝都から出ていないことと、脱出したがっていることは向こうさんも把握していたはずだ。そして帝都を脱出する際に人目に付かずに出るには夜に下水道を使うのが一番。やっかいな事に向こうさんはかなり大人数で動いている可能性がある」
キウルの問いに答えてそこまで言うとクオンとネコネは感ずいたようで、はっとした表情をしていた。ルルティエとキウルはもう少しと言ったとこだがまだ気がつけていないようだな。ユゥリも気がついたようだ。アトゥイは……まぁいいか。
「その推測が正しいと考えるなら……」
「……下水の出口をすべて押さえられている可能性があるのです」
「そういう事だ」
そこまで言うと皆の顔が引き締まる。自分達は警戒を強めながらも歩みを再開した。ネコネは自分の隣を歩いているが、自身の考えに穴が合った事が悔しいかったのだろう。少し落ち込んだ風だった。
「そんな顔するなネコネ。少なくとも都の中からの追手に関しては気にしなくても良さそうなんだ、それだけで十分に助かってる」
「ハク兄さま……」
「うん、これはどうやっても回避できなかったと思うし、ネコネに落ち度はないかな」
「姉さま……。ハイです。ありがとうございます、ハク兄さま、姉さま」
自分達がそう言うとネコネの顔にも笑顔が戻った。もう結構進んだな、さてもう少しで出口のはずだが。
「オシュトルに貰った地図によると、出口まではもう少しかな」
「どれどれ……確かにもう少しみたいだな」
さてここからがたぶん今日一番の難所だ。意識を切り替えろ。
「さて皆、警戒を厳にせよ。アトゥイ、ユゥリ殿の護衛は任せる」
「おに~さん、なんや雰囲気が変わったなぁ。了解やぇ。ユゥリはんの事は任せといて~な」
「キウルは後方の警戒。もし出口付近に賊が居たのなら某達の後方より援護を任せる。お前のその弓の腕あてにしているぞ」
「は、はい。ハクさん」
アトゥイは何ができるのかは分からんから基本的にはユゥリの護衛を任せる。やる気も十分だし問題は無いだろう。キウルには後方の警戒といざという時の援護。この二人は自分がこんな感じで話すのに慣れていないせいか微妙に驚いてる感じだな。
「ルルティエはココポに騎乗し周囲の警戒、某の懸念が当たった際は遊撃として動け。いざという時は敵を存分に蹴り飛ばしてよいぞココポよ」
「はい!頑張ろうね、ココポ」
「ホロロロロロォ!」
「ネコネ」
「はいです」
「其方は前方の警戒、襲撃があった際には呪法にて某とクオンの援護。もし負傷者がでた場合は治療を頼む。やれるな?」
「わたしを誰だと思ってるですか。兄さまと、ハク兄さまと姉さま、三人の妹なのですよ。それぐらい完ぺきにやり遂げて見せるのです」
ルルティエは基本的に警戒をしつつ待機だが、もし本当に襲撃があった際には遊撃として動いてくれるだろう。ネコネは基本的に前方の警戒。襲撃の際には後方からの援護と、もしもの時の治療要員だ。それにしても嬉しい答えを返してくれるなネコネは。
「クオン」
「うん、ハク」
「某の背中は任せる」
「承ったかな!」
クオンにはこれだけで十分だろう。クオンが背中を守ってくれていると分かってれば自分も安心して戦える。目が合うと優しく微笑みかけてくれた。
「ユゥリ殿はアトゥイの後ろに。くれぐれも前に出られませぬよう」
「は、はい。わかりました」
ユゥリはこの雰囲気に緊張気味のようだ。ま、流石にこんな雰囲気に慣れる機会は都ではそうそうないだろうからしょうがないか。さて鬼がでるか蛇がでるか……。
自分を先頭にして警戒しながら出口に向かう。すると自分の懸念が当たり案の定誰かがいるようだ。そう思った瞬間、出口方面と出口近くの別れ道からわらわらと男達が現れ、自分達を取り囲む。やれやれ思った以上に大人数だなこいつは。
「ふふん……どなたか知らないけれど、私達に何かご用かな?」
「これはこれは、驚かせてしまいましたね。いえ、ちょっとヒトを探していまして。ユゥリさんという方なのですが、ご存じありませんかねぇ?」
「さぁ、知らないなぁ」
男の言葉にユゥリがびくりと反応する。クオンは白々しくシラを切り通すがばれていないならこのまま見逃してくれたりはしないよなぁ。
「……そうですかい。それじゃあ仕方ありませんねぇ。だったら代わりにあんた達に相手をしてもらいましょうかい」
『へへへ……』『今日はツイてるぜ上玉ばっかりじゃねぇか』
もちろん当然のように…って、想像以上に下種の集団みたいだなこいつらは。ヒト攫いのたぐいかね?しかし、もしかして変装のお陰でユゥリの事はばれていないのか。だが元々容赦する気もなかったがこれで心おきなくぶちのめせるってものだ。
「な、なんなんですか、あなた達は!」
「ヒトを探してるんじゃなかったんだ?」
「ええ、そうだったんですがねぇ。ただ上玉が態々、こんな人目の付かない所までやって来てくれたんだ。ヒヒヒッ、これを頂かない手は……ヒブッ!」
聞くに堪えない口上に全力で踏み込んで近づき、鉄扇を男の頭めがけ全力で振りぬく。口上を述べていた男はその一撃で昏倒し下水の中へ落ちて行った。
「聞くに堪えぬ。ちょうど汚いものを流す下水もある事だしちょうど良かろう。フンッ!ハァッ!」
自分の突然の行動に驚き硬直していた出口側にいた男の残り二人も昏倒させ下水へと落とす。まぁ、死ぬかも知れんが自業自得だし、汚物まみれでちょうどいいくらいの連中だしな、胸も痛まん。
「すごい……」
「汚物はあるべきところに返るとよい。皆、
「「「「おうっ!!」」」」
「あやや、おに~さん強いなぁ」
自分の言葉に反応するように、皆も後ろに居た男達に向けて武器を構える。自分はゆっくりと歩いて皆の先頭にいたクオンの横に並び、男達に鉄扇を差し向けた。
「さて、汚物は消毒と相場が決まっているが……幸いここには火種は無いが汚物を流す水路はあるのでな」
「テ、テメェ!!」
「ハク兄さま、炎ならわたしが使えるです。汚物は消毒なのですよ」
「ち、おまえらやっちまうぞ!!」
『おうっ!!』
男達はやっと反応するが、正面の連中を倒したからには、後ろにいたこいつらを何とかすればそれで終わりだ。まぁ十人近くはいるが物の数ではないな。
「ふふん、興味深いな。帝のお膝元である帝都に、こんな連中も「おらぁ!」はいっと、まず一人かな。歯向っても構わないって言ったよね。もしかして女の前で格好付けたかったのかな」
自分に並ぶクオンを女と侮ったのか一人突っ込んできたが、クオンは男の手に持った刀を避けると綺麗に回し蹴りを決める。そのまま男は下水に落ちていった。これで一人。
「こ、このアマァ~!!」
「汚物は消毒なのですよ」
その光景とクオンの言葉に怒りの声を上げた男がいたが、ネコネの呪法で炎の柱に包まれ火だるまになって汚水道に落ちて行く。これで二人。
「ちぃ、な、なんなんだこいつら。お、おい、逃げるぞ、こんなの割にあわ「ホロロロッ」ヘブッ!」
「わたしだって……!」
「「て、ちょ、ま」」
逃げ出そうとした男は、自分達を飛び越えて跳躍した、ルルティエを乗せたココポに蹴り飛ばされ飛んでいき、男二人を巻き込み、絡まるようにして汚水道の方へ落ちて行った。これで五人。
「……!!ぐうっ」
「させません!そこもっ!」
「ぐわっ!」
黙って弓を構えようとした男二人を、キウルがその正確な射撃にて肩を射抜き、バランスを崩した男達はそのまま下水道へと落ちる。これで七人。
そこでこの場には場違いに思えるのほほんとした声が響いた。
「なあなぁおにーさん達、悪者なんやな?」
「こ、この状況でなに言ってやがるこのアマはぁ!」
残りの男三人のうち一人がそう叫ぶが、自分達も毒気を抜かれアトゥイの方を見る。そこにはいつもののほほんとしたアトゥイが立っていたが次の瞬間――
「じゃあ、遠慮とかいらへんね」
「「ヒッ」」
一瞬で男達の前に移動したアトゥイは手に持った傘のような形状の槍で男の一人を跳ね飛ばす。男二人が動揺した瞬間に――
「ハァッ!」
「セィッ!」
自分とクオンで接近し一人ずつ吹き飛ばす。そいつらもアトゥイが倒した男を巻き込みながら、運悪く下水道に落ちて行き、その場にいるのは自分達だけになった。つい勢いに任せて全員下水道に落としてしまったが、まぁ構わないだろう。そういえば自分とクオンの見立ては正しかったな。正直自分としてはアトゥイがここまでやるとは思わなかったが。嬉しい誤算ってやつかね。
「さて、掃除も終わったし、こんな場所からはさっさとおさらばするぞ」
さてさっさとここから出るかね。全員に怪我がない事を確認すると皆を促し下水道を後にした。
「はぁ~空気がうまい……」
「はい……本当に……」
下水道から出ると自分が言った事にキウルが同意を返してくる。皆も同じ気持ちなのだろう、各々深呼吸したりしながら外の空気を味わっていた。
そのまま目的地あたりへと向かう。目的地らしきあたりに着いたので、ネコネの持つ地図と照らし合わせると間違いなくここで合っているようだった。
「なぁ、なぁ、ユゥリはん。んと……な?その……」
なんか、自分達と少し離れたあたりでアトゥイがユゥリに告白じみた事を言っているのが聞こえるが自分は知らん。良い雰囲気みたいだがそいつには婚約者がいて、実際には女だからな。
「よう、どうやら無事だったみてぇだな」
「ウコン?」
木の陰から出てきたウコンはニヤリと笑いながらそう言ってくる。こいつはここに居ないはずなのだがどうしたのだろうか?
「遅かったじゃねェか。心配したぜ?」
「ああ、いろいろとな……っていうか」
「どうしてここに兄さまがいるですか?」
「ん、ああ、こっちはもう一人の方の護衛をな」
ウコンがそう言うと、奴が出てきた木の陰から線の細い青年が姿を見せた。この男がユゥリの婚約者だって男か。
「ユゥリ!」
「あっ……ンハライ!!」
ユゥリは喜びの表情を浮かべ、羽織っていた外套を脱ぎ棄て男のもとの駆け寄った。アトゥイはポカンとしているが…目を合わせないようにしよう。
「………はぇ?」
「え、えええ!?」
「お、女の……ヒト……?」
ユゥリの性別を誤って認識していた者たちが驚きの声をあげる中、ユゥリは男――ンハライに駆けよりその胸に飛び込む。
「ユゥリ、怪我はないか?」
「大丈夫。皆さんが護ってくれたの」
「そうか……良かった、本当に良かった」
それを見ながらクオンは嘆息しながらも納得の表情を浮かべ自分を見てくる。自分はクオンに苦笑いを返した。クオンは薄々感づいていたみたいだな。
「ああ、そういう……」
「姉さま?」
「みなさん本当にありがとうございました。みなさんが護って下さらなければ、ここまでたどり着く事はできませんでした」
それに続くようにンハライが自分達に礼を言い、愛の誓いみたいな事を話し出す。アトゥイは事態が理解できないのか、呆然とした様子だった。ユゥリが近寄って礼を言っていたが上の空だ。ユゥリはそれには気がつかなかったのか、ンハライと共に深々と頭を下げる。自分が祝いの言葉を投げると嬉しそうに頷いてくれた。そしてウコンに連れられ、以降は護衛として同道する手筈のウコンの部下達のもとへと案内されていった。
「これにて一件落着。さぁ帰るかみんな」
「「「「「………」」」」」
皆の視線が痛い。
「……あのヒト思い人がいたんだ」
「……ていうか女のヒト」
「……女性の方だったなんて…」
「……ハク兄さま知ってたですか」
皆からのジト目に耐えつつしぶしぶ頷く。というか、なんも喋らんアトゥイが一番怖いんだが。……なんかいまシャキンって聞こえたが。
「って、うおっ!」
急に槍を構えて切り掛って来たアトゥイの槍を、アトゥイに近い位置の腰に挿してある刀を鞘ごと腰から抜き出し受ける。切り掛ってくるアトゥイの目には光が無かった。……ってか怖っ!
「……おにーさんのあほー!!」
「って、ア、トゥイ。や、めろ、って。言ってるだろうがー!!」
目にハイライトのないアトゥイの連撃を捌いて一瞬の隙を付き、吹き飛ばす。抑揚のない声で、だが妙に迫力のある声で自分にアホーと言って切り掛ってくるのはやめろ。正直恐い。
「……ふ、ふふ、おにーさん、今日はウチの鬱憤晴らすのに付き合って貰うで。おにーさん強いし、なんかウチ楽しくなってきたぇ。アハ、アハハハハハハハハ!!!!!」
「ってなんでそうなるーーーー!!」
先ほどよりもさらに鋭くなった槍を鞘に入ったままの刀で受ける。正直ウコンには一歩も二歩も及ばない腕だが、達人の領域に片足踏み込んでるぞ、こいつ。というか皆も見てないで助けてくれ!!そんな意味を込めて皆を見るが反応は冷めた物だった。
「あ、ハクさん案外平気そうですね。それにしても凄いや。あの連撃を捌きつつ、まだ余裕があるなんて流石です」
「は、はい。すごいです。わたしじゃ目で追う事もできません」
キウルとルルティエは褒めてくれるのは嬉しんだが、アトゥイを止めてくれないかな……。
「……ハク兄さま、今回の事は正直わたしも擁護できないのです。いちおう兄さまに追加で労働の手当てを出すように言っておくです。兄さまの飲み代から」
「ハク、言い辛かったのは分かるけど、はぁ……。終わったらちゃんと労ってあげるから頑張って」
ネコネ、クオン。優しいのか厳しいのか分からん対応をありがとう。あと労いには膝枕を要求する……ってそうではなく止めて欲しいんだが!?。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!」
みんなはしばらくすると帰って行ったが、自分はそのあともアトゥイの槍撃を捌き続けた。空が白み始めるころに電池が切れるようにアトゥイがぶっ倒れ、それは、ようやく終わった。うう、朝日が目にしみるな……。もちろんオシュトルには後で特別労働手当を請求しておいた。
アトゥイを負ぶって白楼閣まで戻って、ルルティエを起こしてアトゥイをルルティエの部屋に寝かせてもらい(アトゥイの部屋が分からんかった)、自分も部屋に戻る。前にウコンと飲んだ時と同じように起きて待っていてくれたクオンを抱きしめ、布団に入るとそのまま泥のように眠たのだった。
ああ、今日は厄日だったな。