ええ前半は京都に旅行に行ったり、FGOのアポクリファコラボをがっつりやったり、としていたら執筆時間が取れませんでしたとも。アポクリファコラボがおいしすぎるのがいけないのです。
ところで皆様はアキレウスさんは迎え入れられたでしょうか。
私は30連したらなぜかケイローン先生が3体もやってこられました。宝具レベル3です。
あと京都で北野天満宮に行った際に刀宝展をやってまして鬼切丸を見てきました。
FGO時空だとあの人が使っている刀だな~とか思いながらみていましたとも。
長くなりましたが、本編をお読みください。
道中~"自分"の記憶/おんみつしゅうのえんそく~
ああ、これは夢だとすぐに気がつくことができた。
なぜなら自分の膝にちぃちゃんが座り、何かを話してほしいとせがんで来ていたからだ。これは―――ちぃちゃんがまだ5歳くらいだったか?自分がそれなりに兄貴の住む区画に出入りしていた頃の夢だ。
まったく、こんな夢を見るなんて、今日兄貴と語り明かしたからだろうか?
『おじちゃん、なにかおはなししてよ』
『何かっていってもな……何かリクエストがあるなら聞くが?』
『じゃあねぇ、"たてのおとめ"の話がいい!!』
だが、ちぃちゃんにこんな話をした覚えはない。"たてのおとめ"?たぶん字は"盾の乙女"だと思うが……自分はそんな物は知らない。覚えていないだけか?あと、ちぃちゃんの左手に見える痣のような……赤い刺青のようなものはいったい何なのだろうか?
『で、どこの話がいいんだ?全部話すと今日一日でも足りないんだが……』
『ん~じゃーね~あれ!えっと、ろしあのはなし!』
『あ~あれか。またコアなのを……あ、武蔵も出てくるからか?』
『せいか~い。わたしむさしもすきだもん!』
……いや違う。自分は知らないが、"自分は知って"いる。他でもない自分の記憶がそう言っている。忘れるな。おまえは"自分"なのだからと。
『じゃあ、ロシアに出たところからだな?』
『うん!』
『これはまだ世界に魔術という技術が残っていた時の話――魔術王の企みから世界を救ってから1年の月日が流れ――何者かの企みによりカルデアは襲撃され、世界は漂白された。カルデアのマスター 藤丸立香はその原因を探るためにロシアに降り立った。それが新たな戦いの始まり―――』
自分の声を聞きながら部屋の中を見る。その中に妙に自分にとっては印象的で"自分"にとっては見慣れた物があった。
―――十字架のような形状をした大丸盾。
―――すでに数百年の月日が過ぎているというのにすぐにでも着れるような状態の黒を基調にした
―――ぼろぼろながらも原型を留めているトランクケース。
それは"盾の乙女"の振るった武器。
それは世界に知られることはなかった"英雄"の装束。
それは"彼ら"の旅路の中で育んだ絆が詰まった宝物。
それは"自分"にとってきらきら輝く宝物のようで、小さい頃は心躍らせたものだ。自分とは縁の無い物だとわかりながらも憧れた、例えば神話の中の英雄譚だったり、創作上の物語のような……そんな話だ。
自分はそんなものは知らなかった。
"自分"はそれを知っている。
そして自分は"自分"なのだからもちろん知っている。
ああ"自分"。忘れないさ、なんたっておまえも自分なんだからな。
そう心の中で呟き、それを受け入れる。
『彼は立香にこういった"俺はテメェを絶対に許さない。俺に幸福な世界があることを教えてしまった失敗を、絶対に許さない。だから立て、立って戦え。おまえが笑っていられる世界が上等だと、生き残るべきだと傲岸に主張しろ"』
そんな風にしているとかなり時間が進んでいたようで、自分の話も終盤に差し掛かっているようだ。
『"……そりゃ、きっと罪深いんだろう。なかったことになんてできないんだろう。でも、だから、だからこそまだだ。まだ
そこで夢が遠ざかっていく。それに藤丸立香がどう答えたか自分はもう知っている。
―――そして夢から覚めた。
夢で自分の記憶を思い出して――目が覚める。
「はは。ほぼ自分と同じじゃないか」
ハッカーやって、たまに来るちぃちゃんや義姉さんに世話されて、兄貴やいろんなところからスカウトされながらも笑って流して、最後には兄貴の実験に協力して眠りについた。正直、違いと言えば自分がその英雄の子孫らしいってことくらいか。
隣に眠るクオンを見る。クオンには伝えなくてもいいだろう。正直、人類の結末が同じなら細かいところ以外はクオンに影響が出ようがないからな。
「ああ、しっかりと
そう小さく呟き、隣に眠るクオンの髪をなでる。
今日は忙しくなるが、今はもう少しだけこのままで……。
夢の事なんかはおくびにも出さず、自分はクオンとともに皆の元に向かった。
遺跡調査の件は朝食の際に皆に伝えられ満場一致で賛成を得ることができた。最近は大きな依頼もなかったせいか、皆もとても乗り気だったしな。中でもネコネの喜び具合は中々の物で、飛び上がって喜んだくらいだ(中でも調査中の遺跡の未調査の区画を探索するというのが良かったらしい)。
その日の日が昇りきる前には車の手配、食料や消耗品などの手配は完了。オシュトルにしばらく留守にすることを伝えてからすぐ――日が昇りきる頃には自分たちは帝都を出発した。
うららかな日差しの中、二台の車が走る―――
一台の御者席には自分と膝の上のフォウ、ウルゥルとサラァナ、もう一台にはオウギとキウル、それに付き添うように車の窓から顔を出したノスリがおり、一台目――自分が御者をしている――の車からは女性陣の華やかな声が聞こえてきていた。
「♪~遺跡の未調査区画かぁ~」
「クオンさま……すごく、嬉しそうです」
「ヤマトで発見された遺跡はすべて調査済みの物ばかりですから。未調査の区画というのはわたしも始めてなのです」
弾んだ声を上げるクオンに、その様子に自身もうきうきしてきた様子のルルティエ、そしてクオンと同様にうきうきした声のネコネ。うんうん楽しそうで何よりだな。
「なあなあ旦那~、あれなんだ~」
「シノノンそんなに身を乗り出すと危ないわよ」
自分の後ろの窓から身を乗り出したシノノンがそう問いかけてくると、面倒を見ていたエントゥアが宥めるようにそう声を掛ける。
「ああ、あれはホロロン鳥だな」
「おお、小さいココポだぞ」
そう嬉しそうにはしゃぐシノノンの声をバックに自分は手綱を握る。今回は危ないところに行くわけでもないということでシノノンも一緒だ。で、オシュトルの奴が言い出してくれたため――
「アトゥねえちゃ、あれここぽといしょか?」
「あはは、うん。そうやねぇ、小さいココポやぇ」
「あらあら、シノノンちゃんもロロもこんなにはしゃいじゃって」
――マロンさんとロロも一緒だ。
マロンさんはオシュトルの屋敷を手伝っている(むしろ取り仕切っているといっても過言ではない)が、雇い主であるオシュトルがそれならば一緒に連れて行ってやるといいといってくれたため今回は一緒に来ることができている。
「ふむ……このような時間も悪くない……」
「だな。シノノンも楽しそうだし連れてきてよかったじゃない」
ロロの後ろから顔を出したゼグニさんが目の前に広がる景色を眺めながらそう呟くと、それに返すようにヤクトワルトがそう言った。今回は隠密衆全員での遠出である。
「ふぁ~」
やわらかい日差しについ欠伸が出る。こんなに穏やかな時間は久しぶりだ。最近は何かとアンジュとかカミュさんとかアルルゥさんとか、身分を気にせず出歩く三人組とか、皇女さんとか親善大使様とかに振り回されてたからなぁ。
「主様、眠いのですか?」
「どうぞ、私たちに任せて横になっていてください」
双子が自分たちの膝を叩きながらそんなことを言う。
「いや、大丈夫だ。せっかくだが遠慮しておくよ」
一度伸びをするとそのまま車を走らせる。向かう先は帝都直轄領――元ウズールッシャ領――まだまだ先は長い。
ああ、また夢か。
今度は若い兄貴か、最近特に夢をよく見るようになった気がする。
ちぃちゃんが自分の膝を枕にして寝ているタイミングで兄貴が話しかけてきたみたいだな。
『すまんな、娘の相手をしてもらって』
『いや、懐かれてるのは悪い気分じゃないさ。そのうち"おじちゃんのお嫁さんになるー"なんて言い出したりしてな』
『はは、娘が本気なら考えておこう』
『いや、そこを肯定されても困るんだが……』
そうそう、兄貴は自分の事を妙に信頼している節があって、こんな話にも乗り気だった。元々人口の減少に拍車が掛っていたのもあり制度上問題なかったからだろうが反応に困ったもんだ。
『しかし、娘の"盾の乙女"好きはお前の影響だろうなぁ』
『ああ、兄貴はあんまり好きではなかったよな。"現実味が~"とか何とか言って』
『ああ、魔術など過去の遺物だよ。原因不明だがその話の約百年後には魔術師はほとんど居なくなっていたという話だし、その痕跡と言えばたまにうちの家系に現れる手の痣のようなものぐらいだ。今、人類に必要なのは科学だ。この星を修復できるレベルのな』
あの話にあった戦いの――正確にはそれが起こった際の諸々の影響で普通の人も魔術師も大きく数を減らした。それから復興したらしいが、そこから環境汚染が進み、人の住めない星へと変貌してこのときのシェルター暮らしだった。
『現実主義もいいけどこういうのも必要だとは思うぞ。まぁ、家の中以外では誰も知らないような話だけどな』
『まぁな。ただ、ペットを飼いたいと言い出した時には困ったぞ。この環境だ、通常の家庭で動物を飼えるわけがないからな』
それはあれだ。よく覚えてはいないが、藤丸立香と盾の乙女――たしか藤丸・K・マシュ(藤丸立香と結婚する前はマシュ・キリエライトだったか)と行動を共にした動物。その話をしたからだろう。
『それは正直すまん。そこまで考えてなかったからなぁ』
『いや、気にすることはない。ところでこの前の話だが―――』
ああ、この後いつものように研究の助手に誘われたんだったか。どういったのかは覚えてないが断ったのだけは覚えてる。
『――う~ん。おとうさんうるさ~い』
そう言って起きてきた、ちぃちゃんの手の痣がなぜか妙に気になった……。
途中、村に寄って物資を補給したり、野営したりしながら進む。意外と道が整備されていた事も一因だろうが目的地には当初の予定よりも数日ほど早くつくことが出来た。
「やれやれ、こんな形でまたこの國に戻ってくるとはなぁ……」
「ああ、少し複雑な気持ちだな……」
「……お父様。はい、そうですね」
目的地まであと少しというところ――元ウズールッシャ領に入ってしばらく。
ほかの皆よりもウズールッシャへの思い入れの強い三人がそう呟くと目的地が見えてきた。
ここからは徒歩(といってもほんとに目と鼻の先だが)だ。車を止めるとぞろぞろと皆が降りてくる。
「で、ここがその遺跡か?」
「うん、そうみたいだね」
もう一台の車に乗っていたノスリが近づいてきてそうクオンと言葉を交わす。
クオンの言うとおり視線の先には、ヤマトの兵たちとそれに混じって学士らしき者達の姿もあった。
そしてその先……そこには屋敷ほどもある大岩があり、そこに大穴が開いていてそこから地下へと続く洞窟が延びているようだった。入り口には槍を持った兵の姿があることだし、間違いなく今回の目的はあそこだろう。
「あの、なんかすごく物々しい雰囲気なんですが……」
「ま、場所が場所だけに掃討が終わってるとしてもウズールッシャの残党が隠れていないとも限らないじゃない」
「連中に貴重な遺跡を壊されでもしたら堪らないですからね」
キウルの言うように物々しい雰囲気だが、ヤクトワルトやオウギの言葉通りそういう方面で警戒しているというところだろう。
「で、これからどうするのだ?」
ノスリが自分に顔を向けそう聞いてくる。
さて、今回の自分達の目的はここの調査なわけだが……このところずっと移動していたからか、皆の顔に疲れが見える。今日はここで少し休んで明日から調査を開始するのがいいだろう。
目を輝かせているクオンやネコネは反対しそうだが、疲れているときってのは注意力も散漫になりがちだし、休んでからのほうが効率、精度という面でも良い成果が得られるはずだ。
「とりあえずは着いたばかりだし休みを取って明日から―――」
「………」
「………」
そう言ったところで案の定クオンとネコネから圧力のある視線を頂戴する。とりあえずはこの二人の説得が先か。
「クオン、ネコネ」
「……なにかな」
「……なんですか、ハク兄様」
「とりあえず、そっちを見てみろ」
不満そうに声を上げる二人に自分の後ろ――シノノンとロロ、そしてマロンさんがいる方を指差す。
「ん~」
「ははさま~、ねむぃ」
「ええ、ちょっと待っててね。ロロ、シノノンちゃん」
そちらに視線を向けると、三人の顔に疲れを見て取って、自分達が少し暴走気味だったのに気がついたのだろう。クオンとネコネの二人は気まずげに自分から視線をそらす。
「そういうことで、今日一日は休みだ。遺跡は逃げないから少しは落ち着け」
「ん、そうだね」
「ハイです。ハク兄様」
「じゃ、ちょっと声を掛けてくる」
納得した様子の二人に胸をなでおろすと兵の下に近づく。
「すまぬが、良いか?」
「なんでしょうか?」
自分が声を掛けると兵は訝しげにこちらを見返してくる。こんな辺鄙なところに子供連れで居るのだ、少し奇妙に思ったのだろう。それにしても丁寧な態度に、勤勉そうな顔立ち。このヒトに話しかけて正解だったようだ。
「ウルゥル、サラァナ」
「「はい」」
双子は前に進み出ると懐から紋章の彫りこまれた小さな箱を取り出す。それには漆に金箔の文様が施され、総のついた紐が結び付けられていた。自分が兄貴から与えられたものだ。
「そ、それはっ!!」
それを見た瞬間に兵は驚きの表情を浮かべ、直立不動の体制になると、こちらに敬礼を向けてきた。
「し、失礼しました。連絡は受けております。ハクさまご一行ですね」
「ああ、先ほど着いたところでな。調査に来たわけだが、今日はここで休ませてもらって、明日から調査を進めたいのだが構わないか?」
「ではあちらの天幕をご利用ください」
「いや、場所を貸してくれればこちらで野営をする。任務ご苦労。丁寧な対応感謝する」
「はっ!では、あちらをお使いください」
「ああ、ありがとう」
兵とそんな会話をして皆の元に戻る。
あまりにもスムーズに事が運んだのが意外だったのか皆は訝しげな顔だ。双子が箱を出したところは見えない角度だったので余計にわけがわからないのだろう。
「なんか、急に態度が変わった風だったが、なんだったんだ?」
「ハク兄様、何を見せたですか?」
ヤクトワルトが自分のほうを不思議そうに見ながらそう声を掛けてくる。
ネコネも不思議に思ったのか自分に近づいてきて、そう聞いてきた。
「ああ、これだよ」
「……っ!?」
それを見せた瞬間、ネコネが息を呑みびっくりした顔になる。これは少しまずったか?さすがに皆見たことはないだろうし、気がつくことはないと思っていたんだが。ネコネの様子に気がついたのか皆もこちらに近づいてきて自分の手元を覗き込んだ。
「へぇ……」
「……これは」
「ん、どれどれ?実に見事な印籠だな……いったいいくらしたのだ?」
ヤクトワルト、オウギ、ノスリは印籠のつくりにとその施された細工に感心したように声を漏らす。この三人は気がつかなかったらしい。というかノスリいきなりその感想はどうなんだ?
「ハ、ハクさん!?それって……まさか……まさか……」
「そこに彫りこまれている紋章って……」
だが、キウルとルルティエは顔色を変えると、びっくりした様子でそう声を上げた。
「はい、そこまでだ」
「――ッ!!でも、ハクさん!?」
自分がそう言うと納得がいかないのかキウルはそう声を上げる。う~ん、これはある程度話さないと納得しないか。適当にそれっぽく話をでっち上げるとするかね。
「……今回の依頼主は帝城のお偉いさんかららしい。ここまで言えば後は判るな?」
「!!!!!で、では」
「……皇女さんの件で妙に気に入られちまったみたいでな」
キウルは自分のその言葉に目をぐるぐるさせながら、"胃が、胃が……"といってお腹を押さえている。皆も驚いて顔を引きつらせれていて、ちょっと表情が硬い。クオンだけはよくそんな口から出任せが出てくるとでも言いたげに苦笑いしていたが。
「キウル、ぽんぽん痛いのか?シノノンがなでなでしてあげるぞ」
「キウにいちゃ、ぽんぽんいたーなの?」
とりあえず、キウルの様子を心配してそう言っている最年少組に和む。
「で、では急がないとまずいのではないですか?」
マロンさんがそう言ってくるが、道中が順調だったおかげで予定も大幅に短縮できているし、一日くらいならば誤差の範囲内なのだ。それに疲れた状態で入って調査がおろそかになれば、それこそ問題だといって皆を納得させる。一部を除いて図太い我が一行はその言葉に緊張を解くと、野営の準備に取り掛かるのだった。なお、予想通りというかなんと言うか、キウルはなかなか復活してこなかった事をここに記しておく。あと、それを見てフォウが"やれやれ"とでも言うように首を振っていたのが妙に面白かった。
お読みいただきありがとうございました。