うたわれるもの 別離と再会と出会いと   作:大城晃

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すみません。この話を飛ばして投稿しておりました。
それでは 出会いにして再会3~クジュウリの姫と巨鳥(注:太りすぎて飛べません)~ お楽しみください


出会いにして再会3~クジュウリの姫と巨鳥(注:太りすぎて飛べません)~

出会いにして再会3~クジュウリの姫と巨鳥(注:太りすぎて飛べません)~

 

 

 昨夜の宴会は最高の盛り上がりだった。なんせボロギギリなんて化け物がいたにも関わらずこっちは死者はゼロ、怪我をしたのも帰りに道を踏み外してこけたマロロが負ったかすり傷のみ。これで盛り上がるなと言う方が無理な相談だろう。宴は遅くまで続いたようだが自分とクオンは昨日と同様に適当な時間で切り上げて休ませてもらった。

 

「おお、寒っ」

 

 井戸から水を汲みその水で顔を洗いながら身震いする。さすがに雪が降る季節だけあって寒い。

 

「お、アンちゃんじゃねえか。昨晩はよく眠れたかい?」

 

 寒さに身を震わせているといつ来たのかウコンがそう声をかけてくる。昨日は相当飲んでいたようだが二日酔いの様子もない。相当酒に強いのだろう。

 

「ああ、ウコンか。昨日は気分良く眠れたさ」

 

「そいつぁ良かった。そういや昨日話した件だが考えてくれたかい?」

 

「ああ、クオンとも話して受けさせてもらう事にしたよ」

 

 昨日宴会中に次は帝都に向かう予定だと話したらウコンから提案があったのだ。

“俺はクジュウリから荷を運ぶ依頼を受けてるんだが、お二人さんさえよけりゃ同道しないか?”と。詳しく話を聞いてみると、自分たちの人柄も能力も確かだというのは話してみた印象とギギリ討伐の件で確信できているから良かったらという話だった。荷については今日か次の日には届くという事でそこまで時間はとられないし、二人で行くよりかは確実に道中の安全性はあがるということだった。クオンと話してみた結果、同道させてもらおうという話になったのだ。自分としてはクオンと二人旅も魅力的だとひそかに思っていたが安全を考えると人数は多いに越したことは無い。

 

 

「おう。そいつは良かった。荷は明日までには届くはずだから、遅くとも明後日までには出発できるはずだ。アンちゃんたちも準備をしておいてくれや」

 

 用事はそれだけだったのか、場所を開けるとウコンも水を汲んで顔を洗い始めたので、ウコンに一言かけ自分は部屋に戻る。

 

 部屋に戻るとクオンにウコンたちに同道する件を正式に了承したと伝えた。

 その後はいつものように朝食をとり、クオンが女将さんに何か手伝いは無いか聞いていたが、村の英雄さまに働かさせられないと断られた。女将さんに昨日借りた太刀を返却しようとしたところ、お礼と言うのにはなんだが貰ってくれ、と言われたのでありがたく頂戴する事にする。

 

 さて、という事は今日一日は確実に開いてしまったわけだがどうするか。部屋に引きこもってクオンとゆっくり過ごすのも捨てがたいが…。

 

「さて、今日の予定が浮いちまったがどうするか。やっぱり、ごろご「ゴロゴロするのはなしかな」そうですか…」

 

「ハクは村に来てからあんまりゆっくり見て回れてないし。村の中を回ってみるってのはどうかと思うんだけど、どう?」

 

「そうだな、クオンと一緒ならなにやっても楽しそうではあるが、それもまた良いか」

 

「うん!私もハクと一緒ならどこに行っても楽しいと思う」

 

 クオンの提案に乗って、今日は一日村の中を見て回る事にする。とは言った物の辺境にある小さい村だ。そんなに見て回る物もなく、結局は村の子供たちに捕まって遊びの相手をする事になった。子どもと言っても男は男。武器やら武に対する関心も高いようで自分の腰に下げている刀を見た子供たちに請われ、村の外れあたりで稽古をつけることになった。正直自分の剣術なんて、記憶にはもうないある人物の見よう見まねを戦場で鍛え上げただけのものであり、正式な流派などを収めているわけではないのだが基礎的な事は教えられる。基礎的な型を一通りと体力づくりの仕方を教えるなどして場を濁した。

 

「ほぉ、昨日も腰に刀を下げているのを見て思ったがアンちゃんは剣も使えるのかい」

 

 そうやって子供たち相手に剣術教室をやっていると、近くを通り掛ったのかウコンが近づいてきてそう言ってくる。

 

「まぁ、何かの流派を収めているでもなく、我流だがな。基礎的な事を教えたりならなんとかってとこだ。自分の基本はこっちだよ」

 

 腰に差している鉄扇を指して言う。実際に扱うとなれば刀よりも鉄扇の方がしっくりくる。まぁ、リーチの問題なんかで刀を使う方が効率のいい場合ってのも多々あるがな。

 

「いや、そう謙遜することもねえさ。見ていたが、教えている型そのものは理にかなっているしな。どうでいアンちゃん、一つ自分と試合ってみねぇか?」

 

「おいおい、お前とか?昨日の動きを見てたが自分では厳しいと思うぞ」

 

「にぃちゃん、こっちのにぃちゃんとしあいするのか?おれみてみたい!」

「「「ぼくも」」」「「「おれも~!」」」「あ、私も見てみたいかな」

 

「おにーさん、およめさんにかっこいいとこみせないと!!」

 

 断る方向に持っていきたかったんだが、子供たちとクオンに退路を塞がれる。そういえばクオンの傍に一人だけ女の子がいたっけな。クオンに格好いいとこ見せないとと言われると弱いんだが、格好悪いとこを見せてしまいそうなきがするぞ。そんな周りの様子を見ていたウコンはニヤリと笑ってこっちを見る。

 

「アンちゃん、やるだろ」

 

「はぁ、これでやらんって選択肢はとれんだろ。まったく、一回だけだぞ?」

 

「おう、ほれアンちゃん」

 

 ウコンは自分の答えに笑みを浮かべ訓練用の木刀を放ってくる。それを受け取ってウコンと向き合う。ちなみに審判は近くを通りかかったウコンの部下が受け持ってくれた。

 

「じゃ、いくぜアンちゃん」

 

 そう言った途端、ウコンから普段の親しみやすい雰囲気が消え、殺気と言うか強烈な剣気のようなものが漂い始めた。明らかに達人とかそれに類する奴の雰囲気じゃねぇか?これ。だが、これと同程度の物ならば受けた事がある…ような気がする。これだけ強烈なのをたたきつけられているというのに自分は思った以上に冷静だった。

 

「ほぅ、これは楽しめそうだな、アンちゃん。俺と向かい合ってそこまで平静を保つとはな」

 

「馬鹿言え。冷汗かきっぱなしだっての。自分はさっさと終わらせてゆっくりしたいぞ?」

 

「はっ!それなら俺を速攻で倒せばいいだろ?ま、やられる気は無いが…な」

 

 そう言うと同時にウコンが動いた。まずは小手調べのつもりなのか基本通りの型の袈裟切り、だが速度が尋常ではない。だがしっかりと見えてはいるため、手に持った木刀で払い…って重い!受けるきる事は困難だと判断し一歩後ろに下がる。数手程似たようなやり取りを繰り返す。時折タイミングを見計らってこちらからも切り返すが簡単に防がれてしまう。先ほどの斬撃の重さから鍔迫り合いは悪手と判断し、そのたびにいったん離れている。しかしこれまでの攻防から何かを感じたのか、ウコンから感じられる剣気が増し、鋭さを宿した瞳の中に楽しそうな光が点った。…こいつ楽しくなってきたとか思ってんだろうなぁ。明らかに戦闘狂とかバトルジャンキーとかそれに類する奴の瞳だぞ。

 

「…思ってた以上にやるな、アンちゃん。楽しくなってきたじゃねぇか!!」

 

「いや、いっぱいいっぱいだっての…っ!」

 

 それからは防戦一方となった。懸命にウコンの残撃を防ぎ、いなし、避けた。反撃出来る瞬間を探してはいたがウコンはそんな甘い攻撃を繰り出す事もなく、防御しかさせてもらえない。

 

 その攻防を何回繰り返しただろうか?さすがのウコンもしびれを切らしたのか、少しだけ大ぶりな攻撃が一太刀だけ来た。“ここだ”そう思い攻撃に移ろうとした瞬間、背筋に悪寒が走った。本能に従って攻撃を中断し、斬撃は避けれるタイミングでは無かったため、木刀を斜めに構え受け流す構えをとる。次の瞬間、木刀同士が衝突し…爆ぜた。確認すると双方の木刀とも刃を模した部分が無くなっている。

 

 それを見た瞬間ウコンから放たれていた剣気が薄れ、いつもの雰囲気へと戻っていく。

 

「終わりか…。まさか、倒しきれないとは思わなかったぜ、アンちゃん。こうまで俺の攻撃をしのがれちまうと自信無くすぞ、おい」

 

「アホか、死ぬわ!防ぐので精いっぱいだったわ!最後のとかなんだ!当たってたら絶対死んでたぞ、あれは!」

 

 あれは絶対理性が飛んでる目だったぞうん。そもそもこれが試合…模擬戦だって事も今の今まで忘れてたんじゃないかこいつ?

 

「…もちろん寸止めにする気だったぞ…うん。いや、アンちゃんが思った以上にやるんでついつい本気になっちまったというか…な?アンちゃんも武人ならわかるだろ?」

 

「わかってたまるかこの戦闘狂め!もうお前との模擬戦とか二度とやらんぞ。真剣で、とかもっての外だからな!…ほんと真剣だったら何回死んでる事か…」

 

 ホントに今の模擬戦で何回死ぬと思った事か。こいつと模擬戦とか命がいくつあってもありん。もうやりたくないぞ。これが鉄製の物だったりとか真剣だったらとか考えると本気で死ぬ未来しか見えない。

 

「ま、機会があったら、また頼むぜアンちゃん」

 

「だから、やらんといっとるだろうに…」

 

 こいつ、聞く気無いだろ。これはしつこく誘われそうだな。うん絶対に逃げ切るぞ、そう絶対だ。と、言うか周りが静かだなと思い見渡してみると、みんなぽかんとした顔をこちらに向けて固まっている。うん?どうしたんだ。あ、クオンが正気に返って凄い勢いで近づいてくる。

 

「ハ、ハク大丈夫!?け、怪我は無い?」

 

「おう、自分は大丈夫だから少し落ち着け。それと頑張った恋人にご褒美は無いのか?」

 

 なんだか興奮と言うか、焦っているというか、そんな雰囲気のクオンの頭を撫でて落ち着かせ、ご褒美を要求してみる。うん、自分は頑張ったんだからご褒美があるべきだと思う。具体的には一日中ゴロゴロできる休日とかな。

 

「はぁ~、大丈夫そうかな。じゃ、ご褒美だったよね?ハク、とっても格好よかったかな」

 

 そう言ったクオンは自分の側面に回ってくる。何をするつもりなんだと思っていたら 頬に少し湿ったやわらかい感触を感じた。顔を向けると離れていく赤らんだクオンの顔、その後満面の笑みで自分の腕に抱きついてきた。それを見て自分の顔が赤くなっていくのを感じる。いや自分の彼女かわいすぎるだろ!普段からそれ以上のことはしてるが公衆の面前でこれはこれで恥ずかしいものがあるな。

 

「ふふっ、ハクったら照れちゃってかわいいかな」

 

「おうおう、お熱いねぇお二人さん。まったく独り身には来る物があるぜ」

 

 クオンとウコンの物言いに照れ隠しに頬をかき、周りを見てみた。あれ、みんな呆けたままでこっちの様子に気づいてないみたいだな。とりあえず審判をやってくれてたウコンの部下の青年の顔の前で手を振ってみる。それでやっと現実に戻ってきたようで。急に両者引き分けと言いだした。その声で周りも現実に帰ってきたたようだ。

 

「にぃちゃんもひげのにぃちゃんもすげー!けんがみえなかったぞ!」「おれたちもそんなふうになれるかな!?」「「「「「すごかった!」」」」「おにーさんもおひげのおにーさんもすっごい!」

 

 子供たちが口々にそう言いながらこっちに駆け寄ってくると自分とクオン、ウコンの周りを取り囲んだ。すごいと言ってくれるのは嬉しいが自分は基本的にずっと防いでいただけなんだがなぁ。

 

「にぃちゃんたち!もっとけいこつけてくれよ!!」「「「おれも!!」」」

 

「おぅ、こっちのにぃちゃんは疲れてるみたいだから。俺でよければ教えてやる」 

 

 こちらをちらっ見ながらウコンがそう言うので子供たちの相手は任せる事にする。女の子は自分たちの方にいるようだ。その場を少し離れると女の子が袖を引いてこちらを見上げてくる。

 

「ねぇねぇおにーさん、わたしでもおにーさんたちみたいにつよくなれるかなぁ?」

 

「大丈夫、なれるさ。こっちのお姉さんなんか自分と同じくらいには強いぞ?」

 

「ほんと?おねーさん?」

 

「うん、女の子でも強くはなれるかな。でもそれだけじゃダメ。どうせだったらお料理にお裁縫にお掃除にお洗濯にってなんでもできないとダメかな。後は男を甘えさせてやれるのが良い女の条件かな」

 

 クオン…間違ってはいないがこんな女の子に何を教えてるんだお前は…。だが女の子は目を輝かせて自分はそんな風になるという。まぁ、お母さんのお手伝いを頑張るってところがほほえましくて少し頬が緩んだ。その子の頭を優しく撫でて“おう、頑張れ”と言ってやると、お母さんの手伝いしてくると言って、走って帰ってしまった。

 

 女の子が帰るのを見送り、ちょっと休憩するかと思っていると、何かが走ってきているような音が聞こえたので周りを見渡すと、なんだか巨大な鳥がこちらに向かって走ってきているのが見えた。その鳥に対しウコンやマロロに感じたのと同種の感情が湧きあがってくるのを感じた。どうやらクオンも同じようで複雑な表情でそちらを見ている。…そしてそんな風に考えに没頭していたのが良くなかったのだろう。気がつくと体に衝撃を感じ、走ってきていた鳥に押しつぶされるようにのしかかられていた。まぁそれに感じたのが懐かしさというのも変な話だがな。

 

「ホロロッ、ホロロロ~!」

 

「ちょ、待ておまえ重いぞ!」

 

 自分の上で鳥が上機嫌に鳴き声を上げるのを聞く。鳴き声から推測するにホロロン鳥のようだ。もっともこのでかさはギギリの突然変異種のボロギギリと同じく、ホロロン鳥の突然変異種と言われた方がしっくりくるレベルだが。そうこう考えているとホロロン鳥から女の子の声が聞こえてきた。

 

「あ、あの大丈夫ですか?」

 

「あ~、大丈夫ではあるがどいてくれるとありがたい」

 

「あ、そうですよね。重いですよね。ほらココポ退いて」

 

 人間の言葉を話すホロロン鳥の変異種かと、とんちきな事を考えていたら鳥の背から可憐な少女が姿を見せた。

 

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい…本当にごめんさない…」

 

 本当に申し訳なさそうに頭をペコペコ下げ謝る少女に、自分は先ほど鳥―ココポと言うらしい―を見たときと同じような感情を覚えているのを自覚する。その表情が押しつぶさた事から来る物に見えたのだろう。先ほどにもまして謝ってくる。

 

「ココポ、立って…迷惑掛けちゃ駄目…」

 

 そう眉尻を下げながら少女は言うがココポはなんで?とでも言いたげに首を傾げるだけで自分の上からどこうとはしない。

 

「だからね、退いてあげて欲しいの…」

 

 彼女がそう言うとココポは体を左右に揺らして踊り始める。無論下敷きになっている自分は苦しさにうめき声を上げた。

 

「ち、違うの、踊ってじゃなくて…ほら、退いてあげて…」

 

 その後もココポを動かそうと色々、引っ張ったり、押したりするがココポの体はびくともせずむしろ遊んでもらっていると勘違いしているのか、嬉しそうに喉を鳴らすだけだった。全く動かないココポに少女は泣きそうになりっていたが、ココポは嬉しそうに自分の顔をなめ始めた。

 

「うわっぷ!?顔をなめるな、やめ―おおい、クオン」

 

「はっ!ほら、あんまり悪さしちゃだめかな」

 

 自分の呼びかけで、この一人と一羽に自分と同種の感情を感じていたであろうクオンが正気に戻る。クオンがココポに優しく諭すように言い、首筋を優しく数回叩く。するとココポは何事も無かったかのように立ち上がり自分の上からどいた。自分はその隙にほふく前進して抜け出すと、立ち上がって体に着いた土を落とし、手ぬぐいでココポのよだれで汚れた顔を拭いた。

 少女はココポから降りると体を小さくしてまた謝ってくる。

 

「本当に…すいませんでした」

 

「いや、いいさ。実際怪我なんかもなかったしな。はぁ、しかしひどい目に遭った。助かったよクオン、やっと抜け出せた」

 

「ハクも災難だったかな。でもホントに動物に好かれるねハクは。私の(ウォプタル)も凄い懐いていたし」

 

「まぁ良いんだが、毎回こんなんだからな…」

 

 クオンが自分の衣服に付いたココポの羽毛を取りながらそう言ってくる。なんで自分はこんなに動物に好かれるんだろうな。

 

「どうしてココポ…わたしがお願いしても…」

 

「ホロロロ…」

 

 何やらショックを受けている様子の少女を心配するように顔を動かすココポだが、元凶はおまえだからな?そのやり取りを見ていたクオンは何かを思案する様子を見せ、少女に声をかけた。

 

「たぶん、仲が良すぎるのかな?」

 

「えっ?」

 

「仲が良すぎて、あなたを主というより友達だと思ってるんだと思う」

 

「そいつからしたら遊んでもらってるって勘違いしたのかもな」

 

 クオンの言葉に続けるように自分がそう言うと少女は数回瞬きしてからココポを見上げた。

 

「…そうなのココポ?」

 

 しかしココポは意味がわかっていないのか首を傾げて鳴くだけだった。それを見ているとクオンが何か思い出したかのように口を開く。

 

「そうだ、私はクオン。で、こっちがハク。あなたのお名前は?」

 

「あ、どうも失礼しました。わたしはルルティエ、クジュウリ皇オーゼンの末娘になります」

 

「この國のお姫様とは、先ほどは知らぬとはいえ大変失礼いたした。クオンの紹介にあった通り、某はハクと申す者。よろしくお願いいたすルルティエ殿。しかし、「あ、あの!」?」

 

 話している途中にルルティエ(心の中でならこう呼んでも問題なかろう)に遮られたため“どうされました”と疑問を向ける。するとルルティエは少し口ごもったかと思うと、少々小さい声で答えを返してきた。

 

「あ、あの、わたしにそう畏まったしゃべり方はされなくても結構ですので。いつも通りに話してくれると嬉しいです、ハクさま、クオンさま」

 

「うん、そう言う事ならそうさせてもらうね、ルルティエ」

 

「ルルティエがそう言ってくれるんなら、自分もその方が楽だからそうさせてもらうか。そう言えばどうしてお姫様がこんな辺境の村に?」

 

「あ、それは…」 

 

 ルルティエの説明によると、クジュウリからの荷を帝都に献上する事になっており、ルルティエはクジュウリ皇オーゼンの名代として帝都へと赴く事になっているらしかった。荷の護衛には帝都から来た者が着く事になっており、その者たちとの合流予定地がこの村なのだという。

 

「なぁルルティエ、その護衛の代表者ってウコンって奴じゃないか?」

 

「は、はい、そうですけど…。ハクさまとクオンさまはウコンさまと面識が御有りなのですか?」

 

「うん、というかすぐそこにウコンがいるかな」

 

 クオンはそう言うと村外れのウコンが子供たちに稽古をつけているであろう場所を指さす。そちらのほうを見てみるとちょうど話題に上がっている人物であるウコンがこちらに向かってきていた。

 

「あ、ウコンさまですか?」

 

「そちらは…ルルティエ様!もう到着なされていたんですか」

 

 どうやら、間違いは無かったらしい。こうして帝都への道のりの仲間にルルティエとココポが加わる事になった。その晩はルルティエも自分たちと同じ宿に泊まり、クオンは夕食時や風呂などを通してルルティエとの親交を深めたらしく、友達ができたと喜んでいた。そしてその翌日、ウコン一行に自分とクオン、ルルティエを加えた一行はボロギギリ討伐を行った集団として感謝の言葉を贈られつつ、村を出る事となったのだった。


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