アイドルは労働者(仮)   作:かがたにつよし

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詰め込み詰め込み。


13. It's time to be an employee

フラッグシップ・プロジェクトは夏フェスに向けた出張準備を進めている。

増毛Pと2人だけなら楽なのだが、残念ながら諸事情あってロジの手配は大人数だ。

関係者として招聘しているフラコン製作陣や、私専用の舞台装置係も含まれている。

企画部のフェス担当が契約したイベント会社の技術が、"World Wonders"で求められるそれに追いついてなかった為だ。

ドサクサまぎれにフラッグシップ・プロジェクト用の専属スタッフまで雇っているのは如何なものかと思うが。

 

解き方が有って無いようなロジ捌きで忙殺されていると、隣が妙に静かだという事に気づいた。

それを口にすると、意外な事に増毛Pが答えを返してくれた。

 

「合宿、と言っていたな」

 

合宿、だと?

フェス直前に?

 

「なんだ、行きたかったのか?」

 

まさか。

私は不治の病によって1日8時間以上拘束される事が出来ない。

24時間監禁状態の合宿など、給料を3倍にされてもごめんだ。

人類に一番適していない「労働」という作業を行う為には、私の場合半日以上自宅に居る必要がある。

十分な休息を取り、自宅の文物に触れて余暇を楽しむ事で、明日への英気を養うのだ。

 

「フェスのような極度の緊張に晒されるイベント前は慣れた自宅に居るのが一番です。環境の変わる合宿に赴いて追加でストレスを受けることもないでしょう」

 

「違いない。我々の思考だ」

 

我々は顧客から金を受け取っており、相応の責任が生じている。

仕事には万全を期さねばならない。

 

「だが、彼らの思考ではない。君は夏休みの宿題を早く済ませるタイプか?」

 

ん?

勿論そうだが。

 

「なら、学園祭はどうだ?」

 

「たしかに、前日まで詰め込みでした」

 

お祭りだからな。

気の合う友人達とお祭り気分で楽しむことは、大学生の醍醐味だ。

しがらみの無いモラトリアム期間だからこその特権ともいえる。

 

「同じだ。合宿は準備や練習であるのと同時に前夜祭でもあり、フェスは学園祭当日ともいえる。放課後の青春時間を削ってアイドルをやっている彼女らへ、武内なりの配慮といったところか」

 

なるほど。

シンデレラプロジェクトのメンバーは全員オーディションに参加し、選ばれたメンバーだ。

自らアイドルを志した彼女らならば、未だ「好きなこと」と「やるべき事」が一致しているのだろう、お祭り気分と言うのも分からなくはない。

それにデビューも浅く、各ユニットに1曲ずつ、プロジェクト曲に至っては今回がお披露目と言う状況。

仕事で夏フェスに参加するとはいえ、諸先輩方や我々に対する評価基準とは別であろうことは想像に難しくない。

 

「なら、私の曲も甘く見積もってもらえませんかね」

 

「残念ながら我々への発注者はこの346プロではない。願い事なら発注者に頼む事だな」

 

そんなことだろうと思った。

フラコン製作陣も、件の作曲家も我々へ相当の代金を支払っている。

すなわち、評価は厳しいという事だ。

 

知識や技術を収集すればする程、練習や実践でそれを身に付ければ付ける程、要求されるハードルは上がってゆく。

 

「働けど働けど、我が暮らし楽にならざり。とはこのことですね」

 

「仕方がない、労働者とはそういうものだ。そうやって足掻きながら、この東京砂漠で生を掴み続けるしかないんだよ」

 

30階の事務室から見下ろす渋谷の街は砂漠というよりは、コンクリート製の熱帯雨林といった方がピンと来る。

眼下の大通りを行く人や車両は吹けば飛びそうな存在だ。

しばらくすれば、我々も移動のため彼らの仲間入りをする。

遥か遠方で微動だにしない富士の山が少し羨ましかった。

 

 

 

増毛P御用達のイベント会社と合流した後、フェスの会場を目指す。

中央自動車道を増毛Pの運転する社用車が先導し、その後ろをイベント会社のマイクロバスとトラックが追う。

 

「企画の方がもう少し頑張ってくれるか、先生がもう少しハードルを下げるかしてくれれば、こんな大名行列を組まずに済んだのだがな」

 

私だって自宅でもっとゆっくり過ごす事ができただろう。

今日中に着いたところで、会場には資材とセット組み立ての業者しか居ない。

アイドルや346プロの関係者が現地入りするのはもう少し後だ。

 

「まぁ、先生ご納得の機器をセットにねじ込めただけヨシとするか。ハードウェアが整わないと出来るものもできなくなる」

 

古巣も可愛そうに。

これもフラッグシップ・プロジェクトの為だ。

もちろん、その努力は巡り巡って346プロ企画部へも見返りをもたらすだろう、多分。

 

 

 

現地周辺は東京と打って変わって大自然が身近に感じられる環境だ。

霞んで遠くに見えた富士山も、その植生が見て取れる程度に近い。

 

「私は設営の監督をするが、君はどうする?」

 

セットができていないのでは練習も出来ない。

大自然の中で舞い踊るのも悪くないかもしれないが、そんな趣味は無い。

今すべき事は、この非日常に慣れることだ。

 

「宿にチェックインします」

 

宿泊場所の居心地を確かめることはコンディション管理の一環だ。

決してサボタージュではない。

時間があれば今日の晩御飯の目星でも付けておこう。

 

 

 

***

 

 

 

「今のホテルが第二の故郷」とはとても言えないが「なじみの宿」程度に落ち着いてきた頃、346プロの関係者が現地入りを始め、前日夕方には多忙なトップアイドル達も揃ったようだ。

お陰様で目星をつけた飲食店は全滅状態。

まさかこんなところで夕食難民になるとは思っていなかった。

ファストフードやコンビニで片をつけることも出来るが、私の気分がそれを邪魔する。

せっかくの出張だ、もっと良い所で良い物が食べたいのだ。

 

仕方が無い、最終手段に訴えよう。

増毛Pの財布でも捕まえない限り行こうとは思わなかった場所。

念のためATMで下ろしてから店の暖簾を潜る。

 

「お1人様で?」

 

「いえ、私達の連れです」

 

私が店員に答えを返す前に、奥のテーブル席から聞いたことのある声がした。

自分の考えが浅はかだった事に唇をかみ締める。

てっきり他の未成年メンバーと健全なお店に行っていると油断していた。

食べ物の評判が良いとはいえ、ここはお酒がメインのお店だ。

貴女が居てもおかしくは無い。

 

「高垣さん……」

 

「やっほー。私も居るわよ」

 

それは分からなかったわ。

 

 

 

「お2人だけですか? てっきり1企の方々とお食事されていると思っていました」

 

断るわけにも行かず、346プロが誇るトップアイドル達と相席する。

私服に少々お酒の入った彼女らは中々どうして目の保養になる存在だ。

彼女らのPは変な虫が付かないように見張っているべきではないだろうか。

 

「そういうアイディアもあったのだけれど、皆仕事終わり次第バラバラにこっちに向かったから結局叶わなくてね。偶々一緒できた楓ちゃんと前夜祭って訳よ」

 

「ええ。安曇さんは何を飲まれますか?」

 

高垣楓からメニューを受け取る。

ペーペーに対して毒な行為だ、他のアイドルなら萎縮してお酒どころではない。

しかし女、安曇玲奈。

プライベートはきっちり分けるタイプだ。

職場では先輩であろうと定時外ではフラットである。

 

メニューを見たところここの生はヱ○スだ、初めの一杯には悪くない。

しかし、食事メインの気分で店に入ってしまった。

炭酸でお腹を膨らます気分ではない。

 

突き出しを運んできた店員に大吟醸を冷で一合頼む。

お猪口も人数分貰っておいた方がいいだろうか。

 

「それ4割5分よ、飛ばすわねー……」

 

中ジョッキを片手に川島瑞樹がこちらに半眼を向ける。

店に入ると決めたときから値段の事は頭に無い。

そんな事を心配していたら味がしなくなってしまうではないか。

 

「良いお酒は明日に残りませんから」

 

変なものを飲んで二日酔いでした、では話にならない。

だからといって、一切飲まないというのも面白みがない。

 

「ふふっ、安曇さんは普段から良いお酒を飲んでらっしゃいますよ」

 

「えっ? そうなの? ゲームって儲かるのね……私にも仕事来ないかしら」

 

アイドルの他業界進出が著しい昨今、その内来るのではないだろうか。

フラコンだと前職的に航空管制官とかだろう、ありえそうな話だ。

あと高垣楓、誤解を生むような発言は慎んで頂きたい。

今世ではあの1回しか行ってないのだ。

 

「今度は川島さんも誘って行きましょう?」

 

「良いわね、それ」

 

全然良くない。

だが断る理由がないのも確かだ。

 

 

 

「こうやってアイドルの後輩とお酒を飲んでいると、この業界に入って長い事がヒシヒシと感じられるわ」

 

キャリア持ちの貴女方で無い限り、346プロでお酒が飲めるアイドルはそれほど多くない。

夏フェス参加アイドルの内、成人済みなのはここにいる3人だけだ。

 

「アナウンサーから転向したときは、もう1度新人の頃に戻った様な若返った気分だったのに」

 

「これいじょう年を重ねるのはいや(year)ですね」

 

勝手に2人だけの回想に入らないで頂きたい。

私など前世から転向して21年になるが日々新たな気持ちの連続だ。

 

「アイドル業界が刺激に乏しいわけでもないでしょう」

 

会社員は同じ部署に配属されておおよそ2~3年目以降は学ぶ事が無くなり、惰性で仕事をするようになるという。

ルーチンワークが主だからだろう、様々な仕事が舞い込むアイドルは中々飽きがこないと思うのだが。

 

「うーん……飽きじゃなくて立ち位置かしら。後輩達が出来ると先輩としては中々失敗が許されなくなるわね」

 

「上手に後輩達を導いてあげる必要もあります。過剰な干渉も不干渉も問題なので、加減が難しいですね」

 

「その辺はどの業界でも変わらないわね」

 

社会人の真理かも知れない。

後輩や部下とどう接すればよいか、悩む人間は多いだろう。

下手をすると増毛Pと武内Pの様になりかねない。

 

尤も、アイドルは個を売る存在なので、その様な悩みは少ないと思ったのだが。

自分が給料に含まれない業務に巻き込まれるのは嬉しくない。

 

「意外と周囲の人はアイドルの事を見ているから、346プロ内部の人は勿論、一緒にお仕事をする全ての人に対する気配りが大事よ。少しでも欠けると、次のお仕事に響くわ」

 

金満と評判の346プロでさえそうなのか。

不安そうな後輩にはメンタルケアの専門家、委託先には十分な予算、顧客には予算相応のサービス。

それではダメなのか。

アナウンサーもモデルもそうだったのであれば。

 

「何故アイドルに転向したんですか、元の業界と変わらないのであれば」

 

アイドルとしても大成した彼女達だ。

別に元の業界で上手く行かなかったわけでもあるまい。

すると、2人は目を合わせ、ワザとらしくため息をついた。

 

「それは勿論、アイドルになってやりたかった事があったからよ。やりたい事が1%でも増えるなら、それは十分転職の理由になるわ」

 

濁りの無い、真っ直ぐな4つの目。

貴女方も彼女らと同じ部類か。

この世界のアイドルは皆こうだとでも言うのだろうか。

 

「貴女はもうアイドルよ。その上で聞くわ。"貴女はアイドルになって何がしたい"?」

 

「それは――」

 

 

 

その質問をすべき相手は――私ではない。

 

 

 

***

 

 

 

「リハーサルはどうだった、問題ないか?」

 

夏フェス当日午前。

未だ会場前のセットと利用してリハーサルが行われていた。

 

「私は2曲ともソロです。出ハケは問題ありません。むしろ衣装が厳しいかと」

 

"Ace, High."の衣装は慣れ親しんだとはいえ、特設の楽屋で着替える事は簡単ではない。

フラコン製作陣の様に、今回の衣装係がこの凝り性の塊の扱いに習熟しているわけではないのだ。

 

それに輪をかけて面倒なのが"World Wonders"の衣装である。

先生が"Ace, High."の衣装の出来を非常に気に入っていた為、同じところに発注した結果、またしても見てくれ特化の衣装となっている。

舞台装置とあわせて色が変わる機構を組み込んだため、広がったスカートの中には制御用の基盤が、服の裏地には配線が走っており、扱いは容易ではない。

 

「着脱があまりにも難しすぎます。今の衣装係の練度ならあと3分は必要です」

 

「分かった、楽屋からステージまでの移動ルートを詰める。事前に人を配置して君が進む最短ルートを確保させよう」

 

楽屋の一角に設けた専用のデスクで、増毛Pが端末を操作する。

増毛Pはここに座っているだけでフェスの全容を把握する事が出来、委託しているフラッグシップ・プロジェクト専属スタッフの指揮を執る事が可能だ。

――346プロ企画部を微塵も信用していないのは、流石にどうかと思うが。

 

「しかし、実質的にバッファである移動時間を詰めると余裕がなくなります」

 

「衣装係の練度を上げる必要がある。本番までに今の時間から1分短縮するんだ」

 

無茶だろう。

2着とも似たような衣装であれば互換が利くが、着脱方法が全く違う。

今から両方の練度を上げる事は困難を極める。

 

「現実的ですか?」

 

「"Ace, High."の脱ぐ方だけだ。後ろの"World Wonders"との間隔が一番狭い。それ以外は何とかなる」

 

正しい取捨選択だ。

両方を追えと言われても、どうする事もできないのだが。

 

「衣装以外はどうだ?」

 

概ね問題はない。

企画部と別注の舞台装置係は安定して素晴らしい仕事を見せてくれている。

 

ふぅ、と増毛Pが大きな息をついた。

様々な手配が一段落したのだろう、本番までしばらくの静けさといったところか。

 

「戦争は開戦前にケリがついているという。ライブ成功の是非も同じだな、どれほど入念に準備したかがものを言う」

 

まるでもうライブが成功したかの物言いだ。

少し早いのじゃないだろうか。

 

「増毛Pは10割の成功の自信を持っているのですか?」

 

「まさか。私も人間だ、絶対の自信など持てんよ。物事を進める基準は8割の自信だ」

 

奇遇だな、増毛P。

私も同じ考えだ。

 

「残り2割は? 神にでも祈るんですか」

 

「違うな、残り2割を動かすのはその場で演じる君だ」

 

2割か。

随分と重たい事を言う。

 

 

 

外が騒がしくなり、私は時計を見ずとも今が開場時間だと知る事が出来た。

増毛Pは関係者を出迎えに行き、私は"Ace, High."への衣装に着替え中だ。

指揮官である増毛Pが本番直前に席を外すのはどうかと思うと苦言を呈したら、予備の携帯端末を渡された。

曰く、私が次席であるとのことだ。

都合の良い時だけ社員採用だという事を思い出さないで欲しい。

 

諸先輩方からお呼びがかかったので、ステージ裏に向かう。

"Ace, High."の衣装の良いところは軍服をモチーフにしているだけあって、素体ではそれなりに動きやすいところだ。

 

「あら? 新しい衣装?」

 

途中で合流した川島瑞樹は既に"お願い!シンデレラ"の衣装に身を包んでいた。

 

「いえ、"Ace, High."の衣装です。これからアクセサリを付けていきます」

 

「じゃあ悪いときに呼んじゃったわね」

 

全くだ。

何だか知らないが、フェスに関わる事でないのならわざわざ全員を集める事もない。

私以外にも1分1秒を争っているアイドルがいるだろう。

 

「そんな険しい顔しないで。5分間で346プロのアイドル同士が上手く行くとすれば、この儀式も悪くないんじゃない?」

 

儀式、お偉いさんの会議みたいなものか。

それで丸く収まるのであれば、次善の策として受け入れるしかないだろう。

 

ステージ裏に入ると、今日出演するアイドルが全員揃っていた。

どうやら私達で最後だったらしい。

川島瑞樹の半歩後ろを歩いてゆくと、アイドル達がサッと左右に割れた。

流石、最年長の貫禄である。

 

川島瑞樹の一声で円陣が組まれることになった。

円陣の末席――高垣楓と川島瑞樹の反対側――に向かおうとすると、その2人に両脇からがっちりと固定される。

何でこの細腕にそんな力があるんだ。

 

「どこへ行くんですか」

 

いや、末席に。

 

「新人にイケナイ事をするのはだめよ」

 

私だっていたいけな新人だ。

先輩2人に拘束されて無事でいられるほど、こんな場に慣れてはいない。

 

そんな私のささやかな抗議は無かったことにされ、高垣楓の号令が掛かる。

途中、寒いギャグによるフリーズもあったものの、気を取り直して元気の良い音頭がとられた。

 

 

 

「346プロ・サマーアイドルフェス、皆で頑張りましょう!」

 

 

 

皆で、か。

そういえば、本当の意味で複数のアイドルと共に仕事をするのは初めてだ。

765プロとはフラコン関係で度々共演したが、プロダクションが違うと「外様」感が否めない。

彼女らが円陣を組んでいるのを、少し遠いところから眺めていたものだ。

 

しかし、こうして自分がその陣に組み込まれると、なんだろう。

悪くない。

陳腐な言い方をすれば、凄い一体感を感じる。

世間を斜めから見る生き方をしていた頃には無かった、何か熱い一体感を。

 

けれど、その感情に心身を委ねるにはあまりにも歳を取りすぎた。

私はその感情が良い事ばかりではない事を知っている。

その心の浮揚は今は心地よいが、後で様々な理不尽や不条理を呼ぶ切っ掛けになるだろう。

 

でも今は、今この瞬間だけは。

この波に乗ってみても良いかもしれない。

 

 

 

「「おーっ!」」

 

 

 

柄ではないが、思いっきり叫んでみた。

両脇の2人、誘ったのは貴女方だ。

そんなに驚くんじゃない。

 

 

 

***

 

 

 

"お願い!シンデレラ"を皮切りに、次々とセットリストが消化されてゆく。

膨大な人員・時間・予算を費やして開催した夏フェスが、この時期のカキ氷より早く溶けてゆくのを楽屋のモニターから眺めていた。

 

娯楽の消費速度はこんなにも早かっただろうか。

だが、早くなくては先駆者か大手が独占してしまう。

彼らの供給が追いつかない程に消費する世界であるからこそ、346プロは765プロと言う壁が存在するアイドル業界に参入したのだろう。

 

そのお陰で私はここに居る。

"恋風"を歌い終わった高垣楓がこちらへハケて来て、右手を上げた。

 

「何でしょう?」

 

「ハイタッチです、知りませんでした?」

 

ああ、そうか。

いつも増毛Pの岩の様な手としかやっていなかったから忘れていた。

優しい音、柔らかい女性の手同士の接触。

 

「私の後だけれど、無理しないでね」

 

「"Ace, High."のお披露目は天海春香らの後でした、何ら問題ありません」

 

曲の順序など、我々には些細な問題だ。

重要なのは、歌う曲が良いものかどうか、良いものとするために準備をしてきたかどうか。

私は、この曲と作った人々が貴女に見劣りしないと自負している。

 

 

 

人は慣れるものだ。

何時の間にか、目の前の群衆にも動じる事はなくなってしまった。

そして目の前の彼らも、私が何もせずとも水を打ったように静まり返っている。

お行儀の良い事だ。

 

けれど、同時に寂しくもある。

増毛Pと2人で考え、少しだけ周囲を驚かせたそれは、季節が1つ変わる間に陳腐化してしまったのだ。

飽きられないようにするには、既存の曲であったとしても毎回見せ方を変えなければならない。

 

幸い、私の後ろには今までの舞台に無かった大画面が備え付けられている。

帝国側DLCトレーラーの先行上映会と行こうではないか。

 

 

 

どうも、他のアイドルや関係者の話によると、私が歌った後は他のアイドルのそれと一風変わった雰囲気になるらしい。

その前後に歌いたくない・歌わせたくないから、2曲とも前後にMCがくっ付いているのだろう。

先程まで舞台袖で酷い顔をしていた高垣楓だが、そんなことは微塵も見せずに私の隣にいる。

流石はトップアイドルだ、踏んできた場数が違う。

 

「実は昨日の晩、瑞樹さんと玲奈ちゃんと3人でお酒を飲みに行ってきたんです」

 

おい、コラ。

 

一体、何が高垣楓の機嫌を損ねたのだろうか。

普通の、極普通のMCで良かったのだ。

夏フェスを企画したお偉方が求めているのは、私が残した雰囲気のリセットであって、私のプライベートの一部を暴露する事ではない。

 

「あの、高垣さん。MC(ここ)でそんな話をしなくても……」

 

私は貴女と違って酒キャラではないのだ。

新人の大事な時期に変なキャラクターを植えつけるのは止めて頂けないだろうか。

 

「でも、私と安曇さんがお話ししたのって、お酒のお店しかありませんし」

 

そういえばそうだ。

演技か素か分からないが、こちらに向けるのは透き通ったオッドアイ。

 

入念に準備した曲ならばともかく、即興のMCでは未だ敵わない。

神崎蘭子の"-LEGNE- 仇なす剣 光の旋律"が始まるまで、始終高垣楓ペースで進んでいった。

 

 

 

舞台を降りると待機しているはずの新田美波が居らず、代わりに出番がしばらく後の前川みくと多田李衣菜が居た。

行きは楽屋からステージ裏に直行したため気がつかなかったが、新田美波が発熱によって倒れたようだ。

"Memories"では神崎蘭子が新田美波の代わりを務め、衣装交換の時間を*(アスタリスク)の2人がMCで稼ぐという。

 

「増毛P、聞きました?」

 

衣装裏の携帯端末を取り出して増毛Pに連絡を取る。

 

「ああ、伝わっている。これで5分のビハインドだ。時間に余裕ができた、見舞いに行ってきても構わん」

 

見舞いか、新田美波とはそれほど話した事が無い。

入社数ヶ月で隣の室の人間と一定以上の関係が築けるほど、コミュニケーション能力に秀でているわけではないのだ。

 

「見舞いは、行かない方がいいと思うにゃ」

 

救護室へ足を向けようとしたところ、前川みくが進路を防いだ。

避けようとすると、隣は多田李衣菜がブロックしている。

 

「今は、千川さんと美嘉チャンが付き添っているし、一人ぼっちなわけではないにゃ」

 

「熱の原因は極度のストレスっていうから、安曇さんが行くと、その、ロックな感じになっちゃう」

 

何だそれは。

多田李衣菜の表現に思わず苦笑する。

けれど、私が行ったところで気を使わせるという考えには同意だ。

 

「玲奈チャンが心配していた事は後でちゃんと伝えるから、今はそっとしておいて欲しいにゃ」

 

そう。

では、よろしく頼む。

 

 

 

***

 

 

 

楽屋で直立不動の着せ替え人形になっていると、ずぶ濡れになった増毛Pが飛び込んできた。

残念な頭を守るためだろうか、白いタオルの上に帽子まで被っている。

戦争映画で見る旧軍の兵士のようだ。

 

「酷い雨だ、予報での降水確率は0%だったはずなんだが」

 

山の天気は変わりやすい。

端末に表示した雨雲レーダーは一過性の通り雨である事を示唆している。

1時間もしないうちに上がるだろう。

だが、降った水だけはどうしようもない。

 

「機材は無事ですか?」

 

「なんとかな。お陰で私はこの有様だ」

 

屋外用の機材とはいえ、雨に打たれるままにするわけにはいかない。

一部の機材はその辺のスタッフの年収より高かったりする。

防水の為の手当ては人間より機材優先で回されているようだ。

 

勿論、優先されている人間も居る。

 

「関係者席の先生方は一旦車の中に避難してもらった。この辺ではあの高級車の中が一番いい席だろう」

 

駐車場の一角を別世界にしている黒塗りのセダンの群れか。

確かに、雨が舞い込むテントや、このすし詰めの建物よりはずっとマシだろう。

 

「進行からは1時間程遅らせると連絡が入ったが、小雨になれば繰り上げて開始するだろう。天候に注意するんだ、着替えは予定通り行え」

 

 

 

実際、小振りになった時点で、"できたてEvo! Revo! Generation!"よりステージを再開させた。

池袋での初ライブは予定が重複した為見る事が出来ていない。

モニター越しとはいえ、生でnew generations(ニュージェネレーションズ)のライブを見るのはこれが初めてだ。

 

城ヶ崎美嘉のバックダンサーをしたときより、格段に表情が良くなっている。

彼女らの瞳が1人1人の観客を追い、唇は歌詞の一節一節を丁寧に届けるようで。

そして、そのあまりにも眩しい笑顔は、モニターの輝度を過剰に高めたように感じられた。

思わず目を背ける。

 

目線の先には帽子とタオルを外した増毛Pが居た。

 

「この数ヶ月で、一体何が……?」

 

「それが武内の魔法だ。端から見ているとどう考えても上手く行きそうにないものが、何が何だか分からないうちにいつの間にか上手く行っている。大方、私達の見えないところで努力しているんだろうが、それにしてもアレはやりすぎだ。努力云々で片付く問題じゃない」

 

魔法使いのプロデューサー。

彼にプロデュースされる14人は、文字通り「シンデレラ」だな。

お城のお姫様に恋焦がれる少女達。

 

「それは12時で解ける魔法なのでしょうか」

 

「さぁな、少なくとも私は解けたのを見たことが無い」

 

あぁ、そうか。

自分でもこれが非生産的な感情だと分かっている。

分かっているが、こうも一方的にやられっぱなしだと、収まるものも収まらないのだ。

 

才能を持った者達が努力を重ねて勝利する。

それはお約束だが、1度くらいもっと地道でアングラな組織が勝ったっていいじゃないか。

我々だって、日の目を浴びたいときくらいあるさ。

 

暫しの猶予だ武内P。

私が12時の鐘を鳴らそう。

 

 

 

***

 

 

 

城ヶ崎美嘉のMCによって、346プロ15年度生の紹介が簡潔に行われる。

時間配分はシンデレラプロジェクト4に対してフラッグシップ・プロジェクト1といったところか。

人数比や私と城ヶ崎美嘉との関わりの少なさに対して、多く時間を取って頂いた。

話す事が少なくて申し訳ないと思う、尺を稼ぐのは大変だったはずだ。

 

ステージ裏で衣装係と共に最後の衣装調整が行われる。

電装系と舞台装置のリンクを確認、衣装係が持つ端末のステータスが順次緑に変わって行く。

 

「衣装、OKです」

 

「舞台装置、何時でも動かせます」

 

ここには増毛Pはいない。

関係者席へ行くと言っていた。

心配していないという事だろう、舞台裏からステージ上までの一切は全て任されているということだ。

 

「ありがとう。では、行って来ます」

 

さぁ、残りの2割を取りに行こう。

私を支える数多のスタッフにお礼を言い、顔を軽くはたいて気合を入れる。

 

 

 

それは鐘を突く感覚か。

それともタイムカードを叩く感覚か。

 

 

 

ステージへの階段を上り始めた時点で、"World Wonders"は始まる。

これは夢破れ、社会で生きる為妥協した創作者が歌いたかった物語。

 

 

 

始まりは1人、何もない灰色の世界。

書いた詩が、弾いた曲が、一瞬光を放つが、それは誰にも受け止められることなく元の灰色に戻る。

彼は探し始める、自分の作品を輝かせる何かを。

 

旅の中で「世界」は輝きを彼に見せる。

彼は光るそれを1つ2つと手に入れるが、欲しいもう1つが見つからない。

彼は3つ目がある「世界」を探している。

 

彼が振りまく光は、"世界"の欠片の興味を引く。

彼を追おうにも、流浪の彼の行方は知れず。

"世界"は輝く彼を探している。

 

 

 

歌い終わった瞬間吸い込む空気が、ドッと胸を叩く。

その衝撃で、曲が終わった事を知覚する。

 

ここから降りるまでがステージだ。

作り上げた空気を壊さぬよう、消えるように舞台袖へと去った。

 

アイドルの雛達よ、輝く才能を持つ者達よ。

 

貴女はどの光を持っていて、どの光が必要な世界に行きたいのか。

 

貴女には何が出来て、何がしたいのか。

 

 

 

皆、私にはそう尋ねるのに、何故彼女達には尋ねないのか。

 

 

 

***

 

 

 

"World Wonders"を事前に見に行った千川さんは、"Ace, High."より落ち着いた曲だと言っていた。

だが、安曇さんがステージへの階段を上り始めた瞬間、違和感を感じた。

未だ曲は始まっていない。

しかし、周囲の空気が彼女の下に集まっていくような何かがあった。

 

隣にいる千川さんも、周りのプロジェクトメンバーも気付いていない。

自分の勘だけが警笛を鳴らしている。

 

「千川さん、少しの間ここを任せます。"GOIN'!!!"が始まる前には戻ってきます」

 

そう言い残して観客席へと駆け出した。

 

観客席の端に辿り着く頃には、違和感がいっそう強くなっていた。

しかし、未だ言葉にすることが出来ない。

ステージ上の安曇さんに惹きつけられそうな目線を無理やり戻して、観客席の中央を目指す。

 

彼女が何かやるとすれば、背後に増毛先輩が居るのは間違いない。

関係者席とステージを結ぶ直線上まで行けば、何かが分かるはずだ。

 

 

 

分かりたくなかった、違和感で抑えておけば良かったのだ。

観客席の中央通路まで来た自分は、ステージ上のアイドルに目線が固定されたまま、汗を拭う事すら忘れていた。

 

ライブ自体は何の変哲もない、普通のアイドルのライブだ。

だが、見た者に与える印象は普通のそれではない。

 

彼女が一歩歩く毎に、世界から色が消えた。

彼女が一息つく度に、世界に色が付いた。

 

――錯覚だ。

そう自分に言い聞かせた。

実際、視線を彼女から逸らせば、そこには見慣れたステージがある。

 

そういえば、高校生物の授業で聞いた事がある。

人間の目で色を感じる事が出来る部分は視界の中央のみで、大部分は輝度しか感ずる事が出来ないのだと。

しかし、ここから見えるステージはあまりにも小さく、その領域には収まりそうにない。

 

「衣装と舞台装置、ですか……」

 

増毛先輩が強引に持ち込んだ"World Wonders"専用の舞台装置。

彼女の一挙手一投足に合わせて動くそれが、錯覚を見せているのだとすれば。

 

「相当な、執念です」

 

口から出た言葉が正しいか分からない。

だが、このステージに掛かっている人員・予算・時間を考えれば、増毛先輩の本気である事が容易に窺えた。

先輩は安曇玲奈に、このステージに346での人生を賭けている。

1度左遷された人間が本流に復帰する事は難しい。

今後、先輩がどのようなキャリアを歩むかは想像できないが、本流に戻る事を望んでいるのであれば、この一撃に賭けていてもおかしくはない。

 

だからといって、してやられるわけには行かなかった。

こちらとて、自分や千川さん、そして何より大事なシンデレラプロジェクトのアイドル達14人の人生が懸かっている。

 

 

 

息を切らして舞台袖に駆け戻ったときには、自分がプロデュースするアイドル達が円陣を組んで声を上げていた。

ステージの異常には気が付いていない。

伝えようとする努力は、声の代わりに空咳となって宙に消える。

 

真っ先に気が付いたのは、ステージに上る途中、もっとも遠方に行かなければならない諸星さんだった。

階段を上がるはずの足が出ていない。

 

「……きらり? ――ッ!」

 

彼女が踏み出さないことに疑問を覚えたのだろう。

様子を伺いに前に出た渋谷さんが気付き、後はドミノ倒しの様に衝撃が広がった。

 

「プ、ロデューサーさん……」

 

新田さんが助けを求め、思わず駆け寄ろうと足が出る。

だが、駆け寄ったところでどうすればよいのか。

 

恐らくこれは、安曇さんが見てきた世界。

天海さんらや高垣さんの直後に歌う事を強いられてきた彼女が歩んできた道。

小規模な単独ライブでデビューし、今日まで鳥篭の中で飼われてきたシンデレラ達に対する1つの試練。

 

――アイドルになりたければ、この世界に入ってみなさい――

 

自分の脳内で、安曇さんが蠱惑的にそう囁く。

冗談ではない。

彼女達はこれから少しずつ大きな舞台や他のアイドル達との仕事をして、そういう世界に入っていく予定だ。

いずれ頂点にいたる可能性とはいえ、一歩一歩、1m1mと上っていく。

貴女の様に、ロケットで成層圏に打ちあがる存在ではない。

 

進ませるわけには行かない。

だからといって、下がらせるわけにも行かない。

 

打つ手の無くなった武内への救いの手は意外な、しかしお約束の声色で聞こえてきた。

 

 

 

「私達はアイドルに"なる"んです!! 今日、ここでぇ!!」

 

 

 

島村さんが踏み出した一歩を起点として、安曇玲奈の世界に放射状の罅が入る。

全員が駆け出す頃には硝子の様に砕け散り、元の世界の色を取り戻していた。

 

 

 

***

 

 

 

「……ィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」

 

楽屋への帰り道、人気の無い所を見計らって拳を壁に打ちつけた。

 

やはりそうなのか。

私では彼女らに及ばないのか。

 

懸命に作り上げたシンデレラ城への要害が島村卯月によっていとも簡単に踏み抜かれたことは、"World Wonders"の演技よりも私の呼吸器系に負担をかけていた。

脳に酸素が送れず、思考がヘドロの中から抜け出せない。

周囲の物音が途切れ、空気を引っかくような耳鳴りだけが私を包む。

その行き場のない思いの捌け口を、無機質なコンクリート壁に求めた。

 

「そんな顔もするんですね」

 

高垣楓……この辺に人は居なかったはずだが。

 

「この壁の向こう、私の楽屋なんです」

 

ああ、そうか。

随分とステージに近い、良い部屋だ。

 

「正直、今までの安曇さんはどう接すればよいか分かりませんでした。普通の人は自分の中から世界を見ているのに、安曇さんだけは自分の外から世界を見ているようで、どこか話がずれている気がしていたんです」

 

部分点だけで赤点を免れる程には、中々良い線を行っている。

世界を一通り見てきたんだ、人とは視点がずれていてもおかしくない。

 

「でも安心しました。安曇さんも喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、そしてまた、嫉妬もする"人間"だと分かったので」

 

その通りだ。

トップアイドルである貴女に言われると、あまり嬉しくはないが。

持てるあなたとは違って、工夫を凝らしてなお足りないのがこの私だ。

 

「知っていますか安曇さん、私達は足りないものがあるからアイドルになるんですよ」

 

 

 

「随分と荒れているようじゃないか」

 

高垣楓が連絡を入れたのだろうか。

迎えに来た増毛Pにエスコートされながら、楽屋への道を歩む。

 

「商売道具を傷つけるとは、らしくない」

 

壁に打ちつけた私の左手を取り、その青痣を眺める。

アンコールを含めて後2曲残っているが、両方とも全体曲だ。

立ち位置は新人の常で後ろの方なので、観客席から見ることはできないだろう。

 

「素晴らしいステージだった、先生も喜んでいたよ。関係者席へのPRは想像以上に上手く行った。何が不満だ?」

 

見ていなかったのか増毛P。

ステージの余韻を一撃で消し去った島村卯月を。

 

「勿論、見ていた。だが、それがどうした」

 

 

 

アンコールを含む全ての行程が消化され、観客もアイドル達もこの会場を去っていった。

私はイブニングドレスに着替えて、増毛Pがセッティングした先生方の会合に参加しなくてはならないらしい。

曰く、「営業活動」だそうだ。

時間外労働だ、1.25倍にして返してもらうからな。

 

「確かに、武内は鋭いシュートを放った。逆転の可能性があったことは確かだ」

 

社用車で会合の場所へ向かう途中、運転席の増毛Pが口を開いた。

目線は道路の先を捉えたまま、逸らさずに。

 

「だが、それはホイッスルの後だった。我々は目的を達成し、彼らは達成感を得た。誰も損をせずに丸く収まっている」

 

ああ、そうだ。

その通りだ、私以外は。

 

かつて、著名な武将が兵を募ったときの故事だ。

武将は募兵に来た男達の特技を尋ねていたという。

棒術が得意な者には槍を持たせ、足が速いものには伝令を任せたという。

そして、「何でも出来ます」といった者は追い返されたそうだ。

 

「何でも出来る人間は、何にも出来ない人間だ」

 

私は今世、スペックを平均的に伸ばしてしまった。

人を魅了できる突出した何かを作ることなく、教育期間を終えつつある。

 

「半年も経たない間に、随分と贅沢な発想をするようになったもんだ。初心に返れ安曇玲奈。私も専門技術委員会も、誰もそんなことは望んではいない」

 

初心か。

誘われたときは、普通の会社員とアイドルの生涯年収の期待値の差を天秤にかけていた気がする。

社員待遇かつ完全週休二日制を確保できると踏んで、貴方の誘いに乗ったのだ。

 

「今の君の仕事は専門家の手助けを得て顧客の要望を実現する事だ」

 

失礼、仕事の方ね。

初めての仕事は2人で調べ、練習をしていたというのに、今では随分と大所帯になった。

より遠く、より深い知識や技術にアクセスする事が出来、高度な表現が可能になっている。

 

「巨人の肩の上に乗れ。1人で高みに立とうとするな」

 

それはなんら恥じる事ではない、と増毛Pは続ける。

知の巨人の肩に乗ってアイドル界の巨人達と張り合う、あるいは少し凌駕する事ができるのなら十分だ、と。

 

専門技術委員会は複数人なので、組体操をしている上に乗っている、というイメージが正しいだろうか。

1人1人の位置が決まっており、きちんと組織だって組み上げないと崩れる高台。

しかし、統率さえ取れていればどのような場所にも、型にも組みなおす事ができる。

 

「君をアイドルにしてからようやくここまで来れた、この世界で戦っていける"形"ができた」

 

需要はあるが供給がない場所にすばやく移動し、高台を組み上げて私を仮初の巨人にすることで、我々は仕事を手に入れる。

今後もフラッグシップ・プロジェクトは仕事を求めて粘菌の様に動き、形を変え続けていくのだろう。

それが増毛Pの作り上げつつある組織だ。

 

「1人でこの海に出るのはただの遭難だ。船長や航海士といった数多の船乗りが組織されて、初めて航海が可能になる」

 

「私の役割は?」

 

そうだな、と間を置いてから一言。

 

「舳先の彫像(アイドル)だ」




アニメ1期終了です。
連載は一旦ここまでとさせていただきます。

1年半お付き合い頂き、ありがとうございました。
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