HOTD ガンサバイバー   作:ゼミル

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いつの間にかゲーム化されていたので短めですが12年ぶり初投稿です。
……12年ぶりかぁ……

とりあえずゲーム版の印象ですが、高城の胸が原作よりも盛られてますよね明らかに(オイ


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 床主市を空から眺めるのは3回目だ。

 

 1回目と2回目は平野と一緒に射撃ツアーに出発した時と帰国した時。

 

 あの頃は帰国してすぐに両親が事故死した知らせを受け取るなんて事も……

 

 それから世界中が<奴ら>が闊歩する地獄と化す未来を迎える事も、そんな中でピンを抜いた手榴弾を手に自衛隊のヘリコプターをハイジャックするなんて真似なんてやらかす事も予想だにしていなかった。

 

 だがまぁ今更な事だ。最早どうだっていい。

 

 

 

 

 

 

 今大事な事は、だ。

 

 知識で知ってはいたが実際ヘリコプターに乗ってみると飛行機とは比べ物にならない位エンジン音がやかましい事、それから――――

 

 

「見えてきた! あれが東署よ!」

 

 

 宮本の叫びがエンジン音越しでもハッキリ聞こえたので、釣られて宮本とは反対側に目線を逸らしてUH-60(ブラックホーク)Jの窓越しに外を見下ろした。

 

 東署は上から見てコの字型構造の5階建て建物。住宅街に近く周囲にはマンションや民家が多い。東署の前には片道2車線ずつの幅広い県道が走っている。

 

 俺は1度だけ――――両親の事故について、交通課の警官から経緯を聞く為に1度だけ世話になったのもあり見覚えがあった。

 

 すぐに視線と注意を機内に戻した。何せ手を離せば最後、数秒後には起爆する状態の手榴弾片手にハイジャックしている立場な訳で。

 

 小室と里香と平野と鞠川先生とありすちゃんについでにあさみさんは宮本と同じように、一斉にヘリのドアにへばりついて近付きつつある東署の姿に釘付けになっている。

 

 俺とは反対側(コクピット側)の折り畳み座席に腰を下ろしている高城と毒島先輩も一瞬だけ窓へチラリと目は向けた。

 

 が、すぐに視線を戻して高城は火を噴くような目で俺を睨みつけ、毒島先輩は腰に刷いた村田刀を彷彿とさせる鋭いが涼やかな眼差しで俺を見据えてきたが、まぁそれは仕方あるまい。

 

 でもってキャビン内に居る人間で最も険しい気配を放っているのが、本来のヘリの指揮官である自衛官のガトー氏であるのも当然な訳で。

 

 俺と宮本が単独行動する為の物資を詰め込んだ大型バッグを間に割り込ませて壁を作ってなければ、手榴弾を持つ俺の手に跳びかかって機の奪還を試みていたであろう事は想像に難くない。

 

 一応、狭い機内なせいで毒島先輩の村田刀の()()()()ではあるんだが、毒島先輩個人はここまで静観を貫いてくれたのは素直にありがたくはある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて目的地が見えてきたはいいがここからどうするべきか、なんて今更ながら考えていると。

 

 

「本気なのか!? インフラが全滅した街に民間人だけでこれ以上留まるのはあまりにも危険過ぎる!」

 

「本気も本気でなきゃ、最初っからこんな真似は起こしていませんよ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 恐らく東署は既に放棄されている可能性が高いんだぞ!」

 

 

 インカム付きのヘルメットが無いとエンジン音に掻き消されてまともに会話も出来ないので、自然と怒鳴り声でのやりとりになる。

 

 だからガトー氏の発言は小室達の耳にも届く事になった。

 

 信じられない、と云わんばかりに宮本が目をひん剥いた。

 

 そんな気はしていた、と小室達が目を伏せて宮本から顔を背けた。

 

 アワアワという擬音が聞こえてきそうな動きで鞠川先生とあさみさんが俺と宮本とガトー氏の間で視線を行ったり来たりさせている。

 

 ガトー氏やガンナー席の自衛隊員が無言で、だが銃口を突きつけてくるかのように視線で俺を射貫いてくる。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だから俺は全員に聞こえる様に、だが静かな口調でガトー氏を見据え返しながら、こう言ってやったのだ。

 

 

 

 

 

「 () () () () () 」

 

 

 

 

 

 多分この時、俺の顔は笑っていた気がする。

 

 小室やガトー氏が息を呑んだのが何故か手に取るように感じ取れた。

 

 しばらくの間、ヘリの騒音以外の音が機内から消えた。

 

 事此処に至ってガトー氏はようやく気付いた筈だ――――宮本や里香の家族を探したいなんて俺に取っちゃ只の建前で、<奴ら>が蔓延る地獄に残る事こそが俺の目的であるのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だけど現実は何時だって俺達を置き去りに流れていく。

 

 異質な空気を打ち破ったのはガンナー席の自衛隊員だった。聴覚保護と通信兼用のヘッドセットに手を当てて早口にガトー氏へ報告する。

 

 

『隊長、地上に動きあり! 生存者が標的(ターゲット)に追われている模様!』

 

「何だと!」

 

『3時方向の県道、距離300!』

 

「3時方向ってどっち!?」

 

「あっちの方角です!」

 

 

 平野が指差した方向へ乗り込んでいる乗客全員が意識を集中させた。

 

 高度100を切っているであろう地上の県道を見下ろしてみれば、ノロノロ歩きな<奴ら>から明らかにかけ離れた動きで必死に走る人影が2つ。

 

 それぞれ黒の革ジャンとフード付きパーカーを着込んだ若い男女―多分カップル―が必死になって俺達が乗るヘリを追いかけながら両手をブンブンと振り回している。口の動きから「助けて!」と叫んでいるのが此処まで聞こえてきそうだ。

 

 でもって2人の背後にはヘリの騒音か2人の生者の気配を追ってきたのかは知らないが、例によって<奴ら>の集団を引き連れている。

 

 

「FLIRでの確認を実施しろ!」

 

 

 緊迫した声でガトー氏が指示を出せば、ガンナー席の自衛隊員が腰のベルトから下げた大振りのポーチから、携帯やスマホでの撮影が主流になった今じゃむしろ珍しくなった家庭用の小型ビデオカメラに似た機械を引っ張り出し、それを覗き込んだ。

 

 

「なぁにぃあれ、変わったカメラねぇ」

 

「AN/PAS-13! レイセオン社が米軍向けに開発した熱赤外線式スコープです!

 この状況でそんな物を使うって事は――そうか、温度分布で生存者と<奴ら>を見分ける事が出来るのか!」

 

「やっぱり、そういう事なのね!

 いくら地上を歩き回って生きた人間を襲い掛かるんだとしても<奴ら>は所詮死体! 生命活動に伴って熱を発する生きた人間と違って()()()()()()()()()!」

 

 鞠川先生が疑問を発し、平野が自衛隊が取り出したアイテムを解説し、それを聞いた高城が驚きと納得を入り交えながらその意味を分かり易く語ってくれた。

 

 裏付けは直に取れた。件のスコープを覗き込んでいた自衛隊員がすぐさま報告したからだ。

 

 

「体温を確認! 2名共に生きた生存者です!」

 

 

 先程までとは違う緊張感が機内を包む。

 

 だから俺は言ってやった。

 

 

「少なくともこれで地上に降りないって選択肢は無くなったんじゃないですか?」

 

「……っ!!」

 

 

 さっさと決めろとばかりに煽ってやると、ガトー氏は険しい眉間の皺を更に深い物にしてから、コクピットの方へと顔を向けた。

 

 

「生存者の救出を行う! 機体を警察署前へ寄せろ!」

 

『了解! アプローチはホバリングからのラペリング(ロープ降下)を実施しますか!?』

 

「その余裕はない! 直接ヘリを着陸させた上で展開を行う!」

 

 

 ここまでで既に結構な時間を全力疾走していたらしいカップルの足は限界が近いらしく大分フラフラだ。

 

 カップルの走り方は背中は丸まり、顎は大きく突き出し、足は今にももつれそう。

 

 徒競走の練習や大会で何度も見てきた姿(そう俺自身最早忘れそうだが、両親が亡くなる前までの俺は健康優良陸上部員だったのだ)、体力の限界を迎えてぶっ倒れる寸前であり、スピードもそれに伴い<奴ら>に追いつかれてもおかしくない遅さにまで落ちていた。

 

 

「君も、それで構わないんだな!?」

 

「ええ、勿論」

 

 

 自分の口元がさっき以上に楽しげに、愉快そうに歪んでいる自覚があった。

 

 

 

 

 ――――俺はまた、あの地獄へと戻れるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガンナー! 救出対象に接近する<目標>を射撃せよ!」

 

 

 次に起きたのは銃声というよりも最早落雷が目の前に落ちたかのような轟音。

 

 口径は俺が持つM4カービンが使用する5.56ミリNATO弾の2.5倍、弾頭重量は10倍以上、生み出す威力は約15倍と桁が違う破壊力を持つ12.7ミリ×99ミリNATO弾を分間500発の連射速度で消費するM2重機関銃をガンナー席の自衛隊員がぶっ放した音だった。

 

 グレネードランチャーで吹っ飛んだ時の<奴ら>が打ち上げ花火なら、装甲車も貫通する大口径弾を喰らった時の<奴ら>は爆竹をたっぷり詰め込んだスイカだ。

 

 生身には過剰威力(オーバーキル)過ぎる威力に肉も骨も等しく丸ごと抉られるどころか弾け飛んでしまっている。人間レベルの肉体なら脆過ぎて簡単に貫通するもんだから、角度によっては1発の弾丸で<奴ら>が2体か3体ばかり原形も留めない有様に次々と変貌していってるのが見て取れた位だ。

 

 うーん。死ぬ事自体は今更怖くないんだが、ああいう()()は流石にちょっと嫌だなぁ。

 

 そんな感想が浮かんでしまう位の有様な訳だ。

 

 

「あ、あさみの耳がぁ~」

 

「うるさすぎて耳どころか頭までおかしくなっちゃいそ~」

 

 

 鞠川先生とあさみさん(とついでにありすちゃん)が両手で耳を塞いで目を回していたがそれはどうでもいい。

 

 ヘリからの機銃掃射でカップルに迫る<奴ら>を完全に排除出来た訳ではない。

 

 威力が高過ぎるのと不安定な空中からの射撃では、カップルへ最接近している<奴ら>の一部を下手に狙うと逆に流れ弾や着弾で飛び散る破片で救出対象へ被害を与えかねないので、ある程度奥に固まる<奴ら>を狙うしかなかったんだろう。

 

 そうこうしている内にヘリは東署前に着陸した。

 

 正確には東署と道路を挟んで隣接する大型マンションの中間にある、倉庫か店舗らしき平屋の平らな屋根の上にである。

 

 ……いや、よくよく感じ取ってみると主脚のタイヤを屋根に触れれさせてはいるけど機体の重みで屋根を突き破らないよう、着陸したように見せて実際には屋根に負荷を掛けない超低空ホバリングを維持してるのかこれ?

 

 そんな気はしていたがパイロットもまたWAiR(西部方面普通科連隊)のガトー氏らと同じく、危険な救出作戦へ投入されるに相応しい技量の持ち主なようだった。

 

 ミリオタというかガンマニアとして尊敬すべき精鋭達のヘリをハイジャックした事に、今更ながらちょっとだけ罪悪感を覚えてしまう――――本当にちょっとだけだが。

 

 

「それじゃあ俺はここで失礼します。んじゃ宮本、俺は先に行くぞ」

 

 

 宮本からの返事を待たず、手榴弾を握っていない方の手でヘリのスライド式ドアを押し開ける。

 

 予備の武器弾薬その他諸々を詰め込んだ大型バッグを蹴り落とし、ガトー氏が余計な行動を起こす前に俺もヘリを降り、平らな屋根を踏みしめる。

 

 ヘリの轟音。頭上で高速回転するプロペラが生み出す強風。ターボシャフトエンジンの排気口から吐き出される熱と燃料の灼けた臭い。

 

 そして、そこに混じって鼻を擽る血の匂い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

――――俺は、俺が居るべき場所に帰ってきたのだ。

 

 

 

 




とりあえず書きたい場面を書き終えるまで一通り投稿するつもりですが……
とうとう公開されたMW4の予告が自分が見たかった要素が詰め込まれていてMW熱が復活したので、もしかすると次はゲート2期かZERO編の短編を更新するかもしれません。


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